聖白薔薇少女 

平坂 静音

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「……不純異性交遊も未婚の母も、罪だったのね」

 ぽつり、とそんな言葉を吐いていた。

 どこの国でも昔はそういったことに偏見が強かったろうが、罪として収容されるというのはかなり過激な気がする。

 それもアジアやアフリカの未開の国ではなく、ヨーロッパのなかの文明国であるアイルランドでそういうことがあったとは、美波には奇妙にすら思える。

 いや、と司城は首を振る。

「それどころか、男の子と軽口をたたいていたというだけで入れられるケースもあったぐらいだ。出来心での窃盗、もしくは家庭が貧しく育てられず預けられたという例もあったし、親から虐待され行き場のない子どもが放り込まれるということもあった」

 最初の一言がひっかかって、後の言葉は美波の耳に入らなかった。

「男の子とおしゃべりしただけでも入れられるの?」

 目を見張る美波に、司城は苦笑してみせた。

「ひどい話だと、可愛いから入れられた子もいた。いや、冗談じゃないって」

 美波は疑わしげな顔をしていたようだ。

「本当だって。その子があんまり可愛いと、男の心をそわそわさせて罪を引き起こすからっていう理由で入れられることも実際にあったんだ」

 可愛いから排斥はいせきされ、施設に収容される? 美は罪というが、そんなことが本当にあるのだろうか。美波は嘆息した。

「昔のこととはいえ、ひどいわね」

 司城はまた首を振る。

「そう昔でもないよ。最後のマグダレン修道院が閉鎖されたのは一九九六年だったからね」

 美波にとってはかなり昔のことに思えるが。

「まぁ、俺もそう覚えているわけじゃないけれど、調べてみると、安室奈美恵が人気になって、アムラーって言葉が流行った年だ。援助交際が問題になった年でもあるよ。日本の女子高生が金欲しさにオジサンとホテルへ行っていた同じ頃まで、可愛い女の子がそれだけで罪だとみなされ修道院に放り込まれるようなことがあったってわけだよ」

 そう言われるといっそう過酷な話に思える。

「そしてこの修道院というのがまたひどい。修道院というのはもともとそういうものかもしれないけれど、服は貧相で食事は質素きわまりない。もともとヨーロッパの学校っていうのは、元がみな修道院や教会みたいなもんだったから、規律が厳しいうえに体罰も多い。それこそローウッド学院みたいなのが普通にあったみたいだ」

「ローウッド学院?」

 美波は首をかしげた。どこかで聞いたような気がするが。
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