聖白薔薇少女 

平坂 静音

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 美波は目を見開いていた。突き付けられた暗い事実に、一瞬光が差し込んできた気分だ。

「写真を……、問題のある人の写真に修正をつけて、いっそう危なそうな顔に見えるようにしたりとか。だが、それは当時ではよくある写真の技法だとかも言われていて、つまり……、断言ができないんだよ。そして現在では、カリカック家にかんする調査はかならずしも正確ではないと言われている」

 美波は黙って聞いていた。

「こういった調査は難しいものらしくて、……まぁ、俺も学者じゃないからわからないが。例えば……」

 どうしたらうまく説明できるだろうか、というふうに考え込むような表情を見せてから言う。

「ある学者が双子の性格や行動を調べようと百組の双子を調査するとする。だが、それをすべて完全に調査するには大変な手間暇がかかる。必ずしも正確ではないうえに、やっぱり学者であっても先入観や偏見は捨てきれない。こうなるんじゃないか、こうあるべきじゃないか、という想いは常にどこかにあるはずで、無意識に自分の予想に従うような結果を導きだしてしまうこともあり得る。統計の嘘とか、数字の嘘とかいう言葉があるけれど、あれは事実だ。調査の結果がどこまで真実かなんて、わからないもんなんだよ。現に、」

 司城は美波の目を見た。

「かつて『マグダレン・ホーム』創設当時に集められた女性たちが三百人ぐらいだとして、実際に孫やひ孫の代まで問題がある――と言ってはなんだけれど、そういう傾向があったのは、わかっているだけで二十人ほどだろう?
 三百のうちの二十ですべてを判断出来るかい? パーセンテージや可能性というのはどこまでいっても断定できないもんじゃないか?」

 司城の説明は美波の耳にじわじわと暖かく響く。

「仮に、障害を持った人からかならずしも障害を持った子が生まれるとは限らないし、健常な親からかならずしも健常な子が生まれるとは限らない。結局は、可能性はどこまでも可能性で百でもぜろでもない。それを統べるのは、知っているのは、神様だけさ。人間は、どれほど頭が良くても、金や権力があっても、神にはなれないんだし、なろうとしてもいけないはず」

 その言葉は動揺していた美波の胸を撫でおろしてくれた。

「そ、そうよね……」

「ヤクザの子がヤクザになるとか、売春婦の子が売春婦になるとか実際あったとしても、それは、遺伝よりも環境じゃないかと俺は思うよ。君の話からすると、雪葉なんていう子は特にそうなんだろうね。そういうお母さんを見て育ち、そのお母さんも母親を見て育つうえでそうなったんだんろうし……」
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