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七
しおりを挟む荷物をまとめながら裕佳子は苛立ちに床を踏みそうになった。
これから岡山の家に帰ってどうすべきか。両親はまたあらたな学校をさがすだろうが、この学院ほど居心地良く過ごすことはできない気がする。レイチェルと呼ばれることももうない。
すべては貝塚寧々が愚かなのだ。
だが……、裕佳子は少し悩む。
(どうして、あんなことしてしまったんだろう?)
生徒たちの私物を調べに行くまえ、ふとトイレに行きたくなって用を済ませにいくと、異様な匂いがし、煙が見えた。
驚いて掃除道具置き場を開けてみると、集められたゴミ袋のなかで赤く光るものが見えた。掃除した人間がまとめて捨てるためにいったん集めたゴミを掃除道具置き場に置いていることがあるが、よく見ると、まるめられた紙が半透明のゴミ袋のなかで燃えはじめていたのだ。誰かが煙草の火を完全に消すことなく捨てたのだ。すぐに思い浮かんだのは貝塚寧々だ。時折り彼女から煙草の匂いがすることに気づいていた。
そのときすぐ対処すれば消せたかもしれない。
だが、そうするかわりに裕佳子は燃えやすいトイレットペーパーを赤い光の側にまとめて置いた。そして、そのままトイレを出た。予想外だったのは、近くに置いてあった洗剤かなにかのスプレーに引火作用があったようだ。
石造りの建物なのでそうひどいことにはなるまいと踏んでいたし、実際煙はすごかったが、建物自体の被害はトイレの辺りだけだったのだ。別館が使えないのは、消防車による噴水が激しかったせいだ。
思えば、何故あんなことをしてしまったのか。
(あんなこと言った美波が悪いんだわ。それに学院長も悪いのよ。私が堕落した女なわけがないわ。罪の血なんて私にはないわ)
ここにいることが自分の罪ゆえなどと絶対に信じられないし、そんなことはあってはならないはずだ。ここが罪ある女性のためだと聞いてから、聖ホワイト・ローズ学院というものに対して初めて拒絶感をおぼえたのだ。それをすこし壊してやりたいと思ったのだ。
それだけだ。
「あーあ」
荷物をまとめながら裕佳子は慨嘆《がいたん》する。
しかし思うことはひとつだった。
(私は何も悪くないわ……)
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