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黒願成就 七
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「気の毒に、お婿さんも罪なことをしたものだなぁ」
宴の帰り、出席していた酔客たちは笑いながらそんなことを噂しあった。
今日の結婚式ではとんでもない珍事が起こった。新郎側の客として来ていた若い娘が、発狂したのだ。
どうやらその娘は新郎を恋いしたっていたらしく、失恋のいたみのあまり、気が触れたようだ。自分は花嫁の麗蘭だと言いはり、奇声をあげて、壇上の花嫁衣裳につつまれた新婦に言いつのった。
「あなた、誰なの? わたしが麗蘭よ。わたしは今日、結婚するのよ」
その娘は、驚いてかけつけてきた薬問屋の両親に、抱えあげられるようにして式からつれだされたという。
「蓮華、なんて馬鹿なことを言っているんだ! お前は蓮華じゃないか」
「いやよ! やめて、あなたたちなんか知らないわ! わたしは麗蘭よ!」
「ああ、なんてことでしょう。この子、小鳳を想うあまり、気が触れてしまったんだわ」
「わたしは麗蘭よぉ!」
壇上で新郎とともにならんでいた心優しい新婦は、泣きさけびながら両親に強引に連れられていく娘を見おくって、気の毒そうに呟いたそうだ。
「可哀想に。あの蓮華さんという方、よっぽどあなたを愛していたのね」
「そうじゃないかとは思っていたけが……」
新郎はこまったように眉をよせた。
「きっと、わたしと代わって、あなたと結婚したいとあまりに強く望むあまり、狂ってしまったんだわ」
「気の毒だけれど、どうにもしょうがないよ。僕が結婚したいのは彼女ではなくて、君なのだから」
新郎、小鳳は悲しげに首をふった。
(嘘かと思ったけれど、わたし、本当に麗蘭になっているんだわ)
頭が割れるかと思ったほどの激しい頭痛のあと、気がつくと蓮華は花嫁として小鳳のとなりで黒檀の椅子に座っている自分に気づいた。
(ああ……これは、わたしの結婚式なのだわ)
夢を見ているような心持ちだ。
式も終わり、客も大半がひけて月が空に顔を見せ、二人が床入りのためにならんで廊下を歩いていたころ、村の北西では無数の馬の嘶きが響きわたっていた。
宴の帰り、出席していた酔客たちは笑いながらそんなことを噂しあった。
今日の結婚式ではとんでもない珍事が起こった。新郎側の客として来ていた若い娘が、発狂したのだ。
どうやらその娘は新郎を恋いしたっていたらしく、失恋のいたみのあまり、気が触れたようだ。自分は花嫁の麗蘭だと言いはり、奇声をあげて、壇上の花嫁衣裳につつまれた新婦に言いつのった。
「あなた、誰なの? わたしが麗蘭よ。わたしは今日、結婚するのよ」
その娘は、驚いてかけつけてきた薬問屋の両親に、抱えあげられるようにして式からつれだされたという。
「蓮華、なんて馬鹿なことを言っているんだ! お前は蓮華じゃないか」
「いやよ! やめて、あなたたちなんか知らないわ! わたしは麗蘭よ!」
「ああ、なんてことでしょう。この子、小鳳を想うあまり、気が触れてしまったんだわ」
「わたしは麗蘭よぉ!」
壇上で新郎とともにならんでいた心優しい新婦は、泣きさけびながら両親に強引に連れられていく娘を見おくって、気の毒そうに呟いたそうだ。
「可哀想に。あの蓮華さんという方、よっぽどあなたを愛していたのね」
「そうじゃないかとは思っていたけが……」
新郎はこまったように眉をよせた。
「きっと、わたしと代わって、あなたと結婚したいとあまりに強く望むあまり、狂ってしまったんだわ」
「気の毒だけれど、どうにもしょうがないよ。僕が結婚したいのは彼女ではなくて、君なのだから」
新郎、小鳳は悲しげに首をふった。
(嘘かと思ったけれど、わたし、本当に麗蘭になっているんだわ)
頭が割れるかと思ったほどの激しい頭痛のあと、気がつくと蓮華は花嫁として小鳳のとなりで黒檀の椅子に座っている自分に気づいた。
(ああ……これは、わたしの結婚式なのだわ)
夢を見ているような心持ちだ。
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