双珠楼秘話

平坂 静音

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弔う女たち 一

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 弔いのためにかぶっていた被衣かつぎを下ろすと、彼女の長い黒髪があふれ、輪花は愛莉がまだ若さを残していることを意識した。
「自害だという人もいるけれど……」
「ありえないわ、あの香玉が」
 即座に否定する桂葉に向かって、愛莉が首を左右にふった。
「そればかりは解らないわよ。もしかしたら、人知れず悩みでもかかえていたのかも」
「まさか!」
 葬儀の場で不謹慎なほど桂葉はたかい声を出し、唇を、まるで滑稽な話でも聞いたかのように笑いにゆがめる。輪花は冷や冷やした。 
 愛莉はそんな桂葉を見て、眉をしかめて目を曇らせる。
「香玉のような身の上なら……。私もそうだけれど、ふと生きるのがなくなるときがあるかもしれないわよ」
 一瞬、輪花たちは黙ってしまった。
 さらに愛莉はびっくりするようなことを口にした。
「あなたたちはまだ若いから未来があるし、夢だって見られるだろうけれど、私や香玉のような歳になると、もう人生は先が見えてしまっているんですもの」
「そんな……、愛莉はまだまだ若いじゃない」
 輪花の言葉に愛莉は寂しげに笑う。
「ありがとう。……でも、私はもう盛りを過ぎた花だわ。香玉も。それでも私はもう自分の将来を見定めて、それなりに覚悟を決めているけれど、香玉はまだ夢を捨てられないから……。知っていた? 香玉が出入りの商人の男と恋仲になっていたこと」
「え? そうなの?」
 輪花は目を見張ったが、桂葉が落ち着いているところを見ると、彼女は知っていたようだ。
「絹問屋の人でしょう? 噂には聞いたけれど……。あの人には許婚者いいなずけがいるって聞いたわ」
「そうよ。でも、香玉は彼との結婚を真剣に願っていたみたい」
 桂葉の唇がやや残酷にゆがむ。
「無理よ。相手の男の方が若いって……」
 輪花はたしなめるように、そっと桂葉の袖を引いた。だって……、とまだ何か言いたげに桂葉は頬をふくらませた。
「香玉は夢を見ていたの。そしてその夢がやぶれたら、いくら普段は気強くて明るい香玉だって死にたくなるかもしれないわ」
 そう言い終わると愛莉はため息を吐く。
「そ、それじゃ、香玉はやっぱり自害?」
 胸にひっかかるものを抑えながら言った輪花にたいして、愛莉はまた眉を寄せた。
「いくら浅瀬でも、本人が死ぬ気だったら死ねたかもしれないわ」
 そんなことがあり得るだろうか。輪花は悩んだ。
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