双珠楼秘話

平坂 静音

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再出発 四

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「考えてみるがいい。自分が使用人として働いていた家が、自分のものになり、そこで女主として君臨するなど、これほど幸福なことはないでしょう」
「だが、それは汚れた金で買われたものだ」
 英風は厳しい口調になってしまった。
「その金は、法に背いて稼いだものでしょう? そんな金で買った家で、彼女が幸せになれると思いますか? 万が一、彼女が自分の出生を知って、幸福を感じられると思いますか? 母が夫を裏切り、その結果自分が生まれたのだと知って?」
「金は金だ。……それに罪はすべて私が背負って地獄に持っていく。それも、そう遠くない」
 呆殷は咳きこんだ。たしかにその日はそう遠くないようだ。英風はすぐに決断した。
「もし……良ければ、私に彼女をまかせてくれませんか?」
「君に? だが、君はすでに一度は結婚した身だろう。まぁ、少々事情があるが」
「そういう意味ではありません!」
 英風は必死に言葉を考えた。自分でもうまく説明つかないのだ。
「友人として彼女の後見をします。そして……新しい生き方と、正しい幸福を見つけようと思っているのです」
 言っていて、自分でも面映おもはゆい。だが、このまま輪花があの呂家に住むことになっても、決して幸せになれるとは思えない。
 しばし二人の間に沈黙の帳が張り詰められた。そして、ようやく呆殷は口を開いた。
「好きにするといいでしょう」

 英風はこのときの会話は自分の胸に秘めておくことにした。
「待たせたな。荷物はこれだけか?」
 西破が大きな手で荷物を馬車に放りこんでいく。
「ありがとうございます」
 輪花は行儀良く頭を下げる。
「世話になりっぱなしだな」
「気にするな。水臭い。さ、行くぞ。都まで、ちょっとした旅になるな」
 三人は馬車に乗り込んだ。 
 三人の前方には、長い道が続いている。 

                           終わり





 この作品は完全なファンタジーですが、次の資料を参考にしています。

 『紅楼夢』
 岩波書店 曹雪芹作 井波陵一訳

 『日本と中国の文様事典』
       視覚デザイン研究所

 八仙の呼び名に関しては、Wikpediaを参考にしました。


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感想 4

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みんなの感想(4件)

戸影絵麻
2017.11.11 戸影絵麻
ネタバレ含む
2017.11.11 平坂 静音

ご感想をありがとうございます。
最後まで読んでくださったのかと思うと、本当にありがたいです。
やっぱり、登場人物多過ぎですね。うーん。

解除
木漏れ日
2017.10.31 木漏れ日

 ずっと愛読していましたが、物語進むにつれて黙って読んでいられなくなりました。
 読み終わると緊張が解けてふぅっと息を吐いている自分がいます。
 あんまり素晴らしいと思ったので、拙い感想でも伝えたくなってしまいました。
 物語の世界に引き込んでくださってありがとうございました。
 

2017.10.31 平坂 静音

ありがとうございます。ちょっとでも楽しんでくださったら、嬉しいです。まだ続きますので、最後まで見届けてください。

解除
戸影絵麻
2017.10.29 戸影絵麻

ご無沙汰しております。
たびたびの駄文、申し訳ありません。
いやはや、素晴らしいペースで話が進んでいきますね。展開の妙に目が離せません。
まさかあの人があんなことになるとは…。英風と主人公のコンビ、いい味を出していると思います。
あのシーンでは、国は違いますが、なんとなく『獄門島』や『悪魔の手毬唄』を思い出して、うれしくなりました。作者様の素晴らしい所は、単なる中華ファンタジーで終わらず、そこに骨太のミステリの構造をそれとなく溶け込ませているところです。更新、楽しみにしています。

2017.10.29 平坂 静音

ありがとうございます。その作品の作者も好きなんです。ミステリーというと、ちょっとレトロな雰囲気のなか、人間関係のいざこざや、家族のどろどろした確執のなか、誰かが死ぬ、というタイプが好きなんです。どうか、この後も引き続きお付き合いください。

解除

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