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夢の館で 二
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「マルゴ……、すっかり綺麗になって」
感心したように言うブルーム氏に、ヴァイオレットが誇らしげに笑った
「この子も、もう十六歳ですもの……。クララと劣ると勝らずの美少女ですわ」
「……そうだな。二人とも、もっと近くへおいで」
窓からさしこむ五月の光が、舞台照明のようにマルゴの頬を照らした。マルゴはおずおずと、ベッドに近づく。ブルーム氏のすぐ近くまで来ると、マルゴの目は涙でかすんできた。
「旦那様、……お会いしたかったです。ずっと、ずっと、心配でたまらなかったのです」
こうして近くまでくると、温厚そうな氏の顔、少し疲れてはいるようでも、威厳や寛大さがほのかな熱となって、しみじみとマルゴに伝わってくる。田舎の男たちにはない、都会で身につけた彼の洒落気も若いマルゴにとっては眩しく慕わしいものだった。
マルゴは幼いときからブルーム氏が好きだった。ただ単に主人だからという理由だけではなく、本能的な慕情を感じてしかたないのだ。勿論、それは娘が父を思うような、生徒が師を慕うような一点の曇りもなき敬愛ではあるが、もしマルゴがもう少し大人だったら、間違いなく氏に恋をしていたろう。
「マルゴ……すっかり大人になったな。前に見たときは、まだ子ども子どもしていたが……」
ブルーム氏が感慨深げに言う言葉が耳に降ってくる。マルゴは気恥ずかしくて、話題を変えた。
「クララお嬢様も、旦那様のことを心配して。……お会いしたがっていました」
「クララは元気にしているかい?」
「はい」
「いつも、私のピアノのレッスンをさぼろうとするのですよ」
ヴァイオレットが口をはさみ、氏は目を細めた。
「困った子だな。もうすぐ嫁に行こうというのに」
「……結婚は、まだ早いのでは」
固い声で告げるヴァイオレットにブルーム氏は首をふった。
「いやいや、そうも言ってられんのだよ。フランソワが今回の大学入学資格試験に合格したら、結婚させてパリに一緒に住ませるつもりだったが……。しかし、この分だとしばらくパリには来させない方がいいかもしれないな。本当に、明日何が起こるか判らない状況だ。おまえたち二人が無事に来れたのは奇跡だよ」
感心したように言うブルーム氏に、ヴァイオレットが誇らしげに笑った
「この子も、もう十六歳ですもの……。クララと劣ると勝らずの美少女ですわ」
「……そうだな。二人とも、もっと近くへおいで」
窓からさしこむ五月の光が、舞台照明のようにマルゴの頬を照らした。マルゴはおずおずと、ベッドに近づく。ブルーム氏のすぐ近くまで来ると、マルゴの目は涙でかすんできた。
「旦那様、……お会いしたかったです。ずっと、ずっと、心配でたまらなかったのです」
こうして近くまでくると、温厚そうな氏の顔、少し疲れてはいるようでも、威厳や寛大さがほのかな熱となって、しみじみとマルゴに伝わってくる。田舎の男たちにはない、都会で身につけた彼の洒落気も若いマルゴにとっては眩しく慕わしいものだった。
マルゴは幼いときからブルーム氏が好きだった。ただ単に主人だからという理由だけではなく、本能的な慕情を感じてしかたないのだ。勿論、それは娘が父を思うような、生徒が師を慕うような一点の曇りもなき敬愛ではあるが、もしマルゴがもう少し大人だったら、間違いなく氏に恋をしていたろう。
「マルゴ……すっかり大人になったな。前に見たときは、まだ子ども子どもしていたが……」
ブルーム氏が感慨深げに言う言葉が耳に降ってくる。マルゴは気恥ずかしくて、話題を変えた。
「クララお嬢様も、旦那様のことを心配して。……お会いしたがっていました」
「クララは元気にしているかい?」
「はい」
「いつも、私のピアノのレッスンをさぼろうとするのですよ」
ヴァイオレットが口をはさみ、氏は目を細めた。
「困った子だな。もうすぐ嫁に行こうというのに」
「……結婚は、まだ早いのでは」
固い声で告げるヴァイオレットにブルーム氏は首をふった。
「いやいや、そうも言ってられんのだよ。フランソワが今回の大学入学資格試験に合格したら、結婚させてパリに一緒に住ませるつもりだったが……。しかし、この分だとしばらくパリには来させない方がいいかもしれないな。本当に、明日何が起こるか判らない状況だ。おまえたち二人が無事に来れたのは奇跡だよ」
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