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開花 四
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本来なら使用人であるヴァイオレットにそれほど気を遣うことはないのだが、ヴァイオレットにはどことなく犯しがたい品位があり、フランソワは眩しそうに彼女を見つめている。それから、彼女の背後にいるマルゴにあらためて気づいたようで、目を見張った。
「やあ、クララ、久しぶりだね。君は本当に変わっていないね」
クララだと思い込んで疑っていないのだ。
内心、ひどく緊張しながらマルゴは、教えられた通りに背筋を伸ばして天鵞絨の靴で優雅に床をすすんだ。
「お久しぶりです。会えて嬉しいわ」
「……写真で見たときより、大人っぽくなったね。素晴らしいレディだ」
目を見張るフラソワに、マルゴははにかむような笑顔を向けた。
「あなたも素敵よ。立派な紳士になったのね」
マルゴは自分の声を他人のもののように聞いていた。今、この瞬間、自分の身体にクララの魂が忍び込んできたのではないかとさえ思える。
「あの、クララ、ヴァイオレットから聞いていると思うんだが、」
言いにくそうに目を伏せるフランソワに、ヴァイオレットがすかさず会話に割り込む。
「取りあえず、お食事にしましょう。さ、こちらへ」
先頭にたつヴァイオレットにしたがって、二人を広間へと向かった。
「旦那様はお加減が悪いので……」
取りつくろうように説明するヴァイオレットにフランソワは思案気に眉をしかめた。
「容態は、相変わらずですか?」
「……ええ」
演技ではなくヴァイオレットの顔は曇り、マルゴも気が沈む。それでも三人が食席に着くと、静かな晩餐がはじまった。
「こんなときですので、大したおもてなしもできないのですが」
料理を運ぶのは老女マリア一人である。今日はそれでもフランソワの前に出るので、いつもよりはこざっぱりとしたメイドの衣装を着せているし、ヴァイオレットの言うとおり、時期が時期なのでフランソワも訝しむような顔は見せなかった。
実際、この時期に客人と食事が出来るというのは富裕層の特権なのだ。食器やナイフやフォークも高価なもので、純白のテーブルクロスの中央には、庭から摘んできた遅咲きの鈴蘭が広口のガラスの花瓶いっぱいに盛られている。
この一見優雅な食事の光景だけを見れば、ブルーム家はまだどうにか上流階級といえるだろう。出された料理を見るフランソワの顔が輝いているのを、食卓の燭台の灯りが照らしだす。
「やあ、クララ、久しぶりだね。君は本当に変わっていないね」
クララだと思い込んで疑っていないのだ。
内心、ひどく緊張しながらマルゴは、教えられた通りに背筋を伸ばして天鵞絨の靴で優雅に床をすすんだ。
「お久しぶりです。会えて嬉しいわ」
「……写真で見たときより、大人っぽくなったね。素晴らしいレディだ」
目を見張るフラソワに、マルゴははにかむような笑顔を向けた。
「あなたも素敵よ。立派な紳士になったのね」
マルゴは自分の声を他人のもののように聞いていた。今、この瞬間、自分の身体にクララの魂が忍び込んできたのではないかとさえ思える。
「あの、クララ、ヴァイオレットから聞いていると思うんだが、」
言いにくそうに目を伏せるフランソワに、ヴァイオレットがすかさず会話に割り込む。
「取りあえず、お食事にしましょう。さ、こちらへ」
先頭にたつヴァイオレットにしたがって、二人を広間へと向かった。
「旦那様はお加減が悪いので……」
取りつくろうように説明するヴァイオレットにフランソワは思案気に眉をしかめた。
「容態は、相変わらずですか?」
「……ええ」
演技ではなくヴァイオレットの顔は曇り、マルゴも気が沈む。それでも三人が食席に着くと、静かな晩餐がはじまった。
「こんなときですので、大したおもてなしもできないのですが」
料理を運ぶのは老女マリア一人である。今日はそれでもフランソワの前に出るので、いつもよりはこざっぱりとしたメイドの衣装を着せているし、ヴァイオレットの言うとおり、時期が時期なのでフランソワも訝しむような顔は見せなかった。
実際、この時期に客人と食事が出来るというのは富裕層の特権なのだ。食器やナイフやフォークも高価なもので、純白のテーブルクロスの中央には、庭から摘んできた遅咲きの鈴蘭が広口のガラスの花瓶いっぱいに盛られている。
この一見優雅な食事の光景だけを見れば、ブルーム家はまだどうにか上流階級といえるだろう。出された料理を見るフランソワの顔が輝いているのを、食卓の燭台の灯りが照らしだす。
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