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一章 第一部
一章 第一部 転生翌日
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次の日の朝、目を閉じていても感じる太陽の明るさで僕は起きた。
若干寝苦しくはあったが、野宿と考えるとあまりの快適さだ。
この世界の気候と、アヌビスの毛布には、どれだけ感謝してもたりないだろう。
しかし、そんな僕の感謝の思いは、意識がはっきりするとすぐに、一発で吹き飛ばされた。確かに、寝苦しかった。
だが、その理由が、アヌビスが自分の腹を枕代わりにして寝ていたからなんて、誰が想像できただろう。
いや、この表現だけでは、お前はデュラハンだから鎧を着込んでるはずだろうアヌビスの重さは鎧に乗っただけで、お前にはなんの負担にもなっていないだろう、と指摘する人もいるかもしれない。
しかし、僕の鎧は、全体が鉄で覆われているような安っぽい物ではない。
動くところには布を使いながらも、要所要所の防御をしてくれる、動きやすいタイプの鎧を僕は着ているわけで。
つまりそれは、アヌビスの頭の重さが、すべて自分の腹に乗っているということに他ならないわけで。
どのくらい苦しかったかと言うと、自分が少女と一晩一緒のところで寝ていたということを感傷に浸ることもできないくらい苦しかった。
しかし、自分が退いてしまうと、アヌビスを無理矢理起こすことになり、それはそれでかわいそうなので、頑張って、僕は耐えることにした。
二時間後
まだアヌビスは寝ている。
しかし、もうそろそろ僕は限界だ。
何故、寝ている間にはできていたことが、起きるとできなくなるのだろう。
だが、限界は限界だった。
仕方が無いので、僕は楽になることにする。
とはいっても、声をかけたり、揺すったりして、アヌビスを起こすわけではない。
自分の腹をアヌビスの頭の下からどかせるだけだ。
慎重に、慎重に、ゆっくりと十分くらいかけて、僕は自分の腹をアヌビスの頭の下から抜いていった。
かなり息が上がった。
……この一連の動作で僕は気付いた。
頭と身体が離れていても、体の感覚はあるのだと。
昨日ケルベロス姿のアヌビスに襲われたときも思ったが、この感覚はなかなかに面白い。
まるでゲームのプレイヤーを操作しているようだった。
特にすることもないので、アヌビスの持ってきた風呂敷の中から、めぼしい物がないかとあさり始める。
本当に何でもあった。
消しゴムから戦車用の弾まで、世界のありとあらゆる物がこの中に詰まっているような印象だった。
そして僕は、自分の探していた物を見つけた。
ライトノベルだ。
今までほしくても買えなかった物や、書店に行ってもないものまで沢山ある。
僕は、死ぬ前まで読んでいたシリーズ最新作を取り出した。
「読みたかったんだよな…… これ」
そうつぶやきながら手に持っている重いものを(頭)横に置き、いつものように本を広げる。
そして、僕はある重大なことに気がついた。
「どうやって読むんだ? これ?」
目線が、違うのだ。
毎日毎日一冊以上の本を読み続けたため、もはやルーティンのようになっていた、本を開けて読む、という行為は、頭の場所が変わると、全く成り立たなくなっていた。
………………
「おい! アヌビス!」
僕は幸せそうに寝ているアヌビスの肩をつかみ、揺さぶる。
これは致命的だ。早く別の生物に変えてもらわないと……
「へ? あ! あぁ…… 何ですか?」
しばらくぼんやりとしていたアヌビスだが、すぐに意識をはっきりさせる。
「すまない、こればっかりは本当にだめだ。アヌビス、僕を吸血鬼にしてくれ」
「はあ? いきなりなんでですか? 多分無理ですが。」
アヌビスの頭がはっきりしたとはいえ、今は寝起きの状態だ。
アヌビスは眠そうな目をこすりながら僕へ不思議そうな顔を向けてきた。
「いや、それでも僕はエルフになりたいんだ。僕を悪魔にしてくれ」
「どんどんなりたい物が変わってますけど、何になりたいんですか?」
「人型だよ! じゃないと本が読めないんだ!」
「今、人型じゃないですか。スライムとか、触手系のモンスターじゃあるまいし、読めるでしょう? 何か問題が?」
「問題しか無いよ! 首がはずれてて読みづらいんだ!」
「はあ…… わかりました。ちょっと待っててください」
昨日より少し機嫌の悪そうに立ち上がるアヌビスを見て、少しまずいことをしたかな、と反省する僕。だが、現実はもっと恐ろしかった。
「後ろを向いてください」
「……なにを、するつもり?」
アヌビスの声に混じった殺気を感じ取り、僕は背中に寒気を覚える。
「五寸くぎで留めれば、そんなことで私の眠りを妨げることもなくなりますよ。」
「死ぬから!? それ絶対死んじゃうから! 怖い怖い! ちょっと、待って、やめ、
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
本当に釘と小槌を持って、僕ににじり寄ってくるアヌビス。
そのまま右手に持った小槌を振り上げる。
まるで生まれたてのような子鹿のように震えている僕を見て、満足したのか、アヌビスは馬鹿にしたように笑った。
「わかりましたか? だったらもう、私の睡眠の妨害をしないでください。」
そう言ってさっさと二度寝しようとするアヌビス。
だが僕は、例え五寸くぎを打ちつられようとも、確認しなければならないことがある。
「ちょっと待て、今、何時だ?」
「はあ? えっと…… 太陽の高さからして、十一時くらいでしょうか?」
さも当然そうにアヌビスは言う。
「それなのに、また寝ると?」
「はい」
「でも……」
「今から寝ます。お休みなさい。」
ためらうそぶりなんて微塵も見せず、即答し続けるアヌビスを見て、僕は溜息をつく。
もう何を言っても無駄なようだ。
さっさと毛布にくるまり、二度寝するアヌビス。
僕は、することがなくなったので、武器でも見ておこうかと思い、もう一度、アヌビスの持ってきた風呂敷を物色することにした。
刀、剣、銃、斧、槍、双剣、棍棒、大剣、と…… 結構いろいろあるな……
さっきはライトノベルを探すのに夢中になっていて見向きもしなかったが、アヌビスの持ってきた風呂敷の中には、実に様々な種類の武器が入っていた。
僕は、試しにその中にあった、狙撃銃らしき物を手に取り、構えてみる。が、スコープのところに目がないので、どうしても射撃位置がずれてしまう。
銃も持ってみたが、やはり、使い物になりそうではなかった。
「さて、どうするか……」
つまり僕の使える物は、接近用の武器であるらしい。
試しに、手近にあった剣を手に取り、昨日、ゲームの見よう見まねでした『頭を投げて、敵を攻撃する』という動作をおさらいしてみた。
まず、頭を上に投げる。
そして…… あれ?
頭自体が回転しているため目が回る。自分が何をしているか、全くわからない。
ドサッと重い衝撃が走り、地面に落ちる僕の頭。
体を近づけようとするも、その体もふらふらとなっていて、足取りがおぼつかない。
まさか、本当にデュラハンが、頭と体が離れているだけだったなんて……
僕がここまでデュラハンをいやがっていたのは、理由があった。
ゲームや漫画でデュラハンや、首無し騎士というモンスターが倒されるたびに僕は思ったのだった。
――首とれてるから、弱いんじゃね?―― と。
首が弱点なのは、どんな生物だって同じだろう。
ならばどうして切り離したんだよ! 首と胴体を!
だいたい、体が無かったら、首なんて何もできないだろ!?
いちいち首を上に投げなくても、胴体に首があればすむじゃん!?
全方向見回したいのなら、阿修羅や、千手観音のように、顔を多くすればいいんじゃないのか!?
何であえて取り外したんだよ!
首を持ってる手とか、疲れないのか!?
と、くるくる回る景色と、荒れ狂う自分の感情を冷静に見つめ直し、これは一刻も早く、この体に慣れないといけない、そう感じるようになった。
「ふぁぁぁ…… よく寝た。あれ? 何やってるんですか?」
しばらく練習を重ねていると、アヌビスが起き上がる音がした。
やっと起きたか。だが、僕はその質問には答えられない。
なぜなら、疲労困憊で動けないからな!!
「…… 馬鹿なんですか? 馬鹿なんですね? 馬鹿なんでしょう?」
見事な三段活用だ。
しかし、僕には、もう答えられるだけの気力が残っていない。
ああ…… 目の前が暗くなってきた。
もうすぐ僕は、力尽きるだろう……
せめて最後に…… ライトノベル読みたかった。
と、僕が少しの後悔とともに意識を投げだそうとしたその瞬間、何か堅い物が僕の口に押し当てられ、液体が口の中に流れ込んでくる。
…… 少し危険な感じのする表現の仕方だが、別になんということはない。
回復薬の入った小瓶を口に押し当てられ、回復薬を飲ましてもらっただけだ。
目の前の視界が急にはっきりとし、なんだか元気がわいてくる。
「あ、ありがとう。」
目の前で、呆れたような、心配しているような、そんな表情のアヌビスを見て、僕はなんて馬鹿なことをしてたんだ、と反省することにした。
「で? 何をしてたんです? まあ、だいたいの予想はできてますが……」
アヌビスは完全に復活した僕を見て、かわいそうな人を見る目を向けてくる。
まあ、確かに、訓練のためとはいっても、自分の頭を数時間ぶっ続けで投げる馬鹿など、そうそうはいないだろう。
最後の方は、頭ががんがんして、体の芯がぶれていたので、もはや訓練と呼べる物ではなかったが。
「はぁ…… そんなことをしなくてもできますよ。物をまっすぐに投げるくらいは。」
「何!?」
信じられないアヌビスの言葉に、僕は身を乗り出す。
「それはですね……」
そんな僕の様子に呆れながらも、アヌビスは話し始めた。
若干寝苦しくはあったが、野宿と考えるとあまりの快適さだ。
この世界の気候と、アヌビスの毛布には、どれだけ感謝してもたりないだろう。
しかし、そんな僕の感謝の思いは、意識がはっきりするとすぐに、一発で吹き飛ばされた。確かに、寝苦しかった。
だが、その理由が、アヌビスが自分の腹を枕代わりにして寝ていたからなんて、誰が想像できただろう。
いや、この表現だけでは、お前はデュラハンだから鎧を着込んでるはずだろうアヌビスの重さは鎧に乗っただけで、お前にはなんの負担にもなっていないだろう、と指摘する人もいるかもしれない。
しかし、僕の鎧は、全体が鉄で覆われているような安っぽい物ではない。
動くところには布を使いながらも、要所要所の防御をしてくれる、動きやすいタイプの鎧を僕は着ているわけで。
つまりそれは、アヌビスの頭の重さが、すべて自分の腹に乗っているということに他ならないわけで。
どのくらい苦しかったかと言うと、自分が少女と一晩一緒のところで寝ていたということを感傷に浸ることもできないくらい苦しかった。
しかし、自分が退いてしまうと、アヌビスを無理矢理起こすことになり、それはそれでかわいそうなので、頑張って、僕は耐えることにした。
二時間後
まだアヌビスは寝ている。
しかし、もうそろそろ僕は限界だ。
何故、寝ている間にはできていたことが、起きるとできなくなるのだろう。
だが、限界は限界だった。
仕方が無いので、僕は楽になることにする。
とはいっても、声をかけたり、揺すったりして、アヌビスを起こすわけではない。
自分の腹をアヌビスの頭の下からどかせるだけだ。
慎重に、慎重に、ゆっくりと十分くらいかけて、僕は自分の腹をアヌビスの頭の下から抜いていった。
かなり息が上がった。
……この一連の動作で僕は気付いた。
頭と身体が離れていても、体の感覚はあるのだと。
昨日ケルベロス姿のアヌビスに襲われたときも思ったが、この感覚はなかなかに面白い。
まるでゲームのプレイヤーを操作しているようだった。
特にすることもないので、アヌビスの持ってきた風呂敷の中から、めぼしい物がないかとあさり始める。
本当に何でもあった。
消しゴムから戦車用の弾まで、世界のありとあらゆる物がこの中に詰まっているような印象だった。
そして僕は、自分の探していた物を見つけた。
ライトノベルだ。
今までほしくても買えなかった物や、書店に行ってもないものまで沢山ある。
僕は、死ぬ前まで読んでいたシリーズ最新作を取り出した。
「読みたかったんだよな…… これ」
そうつぶやきながら手に持っている重いものを(頭)横に置き、いつものように本を広げる。
そして、僕はある重大なことに気がついた。
「どうやって読むんだ? これ?」
目線が、違うのだ。
毎日毎日一冊以上の本を読み続けたため、もはやルーティンのようになっていた、本を開けて読む、という行為は、頭の場所が変わると、全く成り立たなくなっていた。
………………
「おい! アヌビス!」
僕は幸せそうに寝ているアヌビスの肩をつかみ、揺さぶる。
これは致命的だ。早く別の生物に変えてもらわないと……
「へ? あ! あぁ…… 何ですか?」
しばらくぼんやりとしていたアヌビスだが、すぐに意識をはっきりさせる。
「すまない、こればっかりは本当にだめだ。アヌビス、僕を吸血鬼にしてくれ」
「はあ? いきなりなんでですか? 多分無理ですが。」
アヌビスの頭がはっきりしたとはいえ、今は寝起きの状態だ。
アヌビスは眠そうな目をこすりながら僕へ不思議そうな顔を向けてきた。
「いや、それでも僕はエルフになりたいんだ。僕を悪魔にしてくれ」
「どんどんなりたい物が変わってますけど、何になりたいんですか?」
「人型だよ! じゃないと本が読めないんだ!」
「今、人型じゃないですか。スライムとか、触手系のモンスターじゃあるまいし、読めるでしょう? 何か問題が?」
「問題しか無いよ! 首がはずれてて読みづらいんだ!」
「はあ…… わかりました。ちょっと待っててください」
昨日より少し機嫌の悪そうに立ち上がるアヌビスを見て、少しまずいことをしたかな、と反省する僕。だが、現実はもっと恐ろしかった。
「後ろを向いてください」
「……なにを、するつもり?」
アヌビスの声に混じった殺気を感じ取り、僕は背中に寒気を覚える。
「五寸くぎで留めれば、そんなことで私の眠りを妨げることもなくなりますよ。」
「死ぬから!? それ絶対死んじゃうから! 怖い怖い! ちょっと、待って、やめ、
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
本当に釘と小槌を持って、僕ににじり寄ってくるアヌビス。
そのまま右手に持った小槌を振り上げる。
まるで生まれたてのような子鹿のように震えている僕を見て、満足したのか、アヌビスは馬鹿にしたように笑った。
「わかりましたか? だったらもう、私の睡眠の妨害をしないでください。」
そう言ってさっさと二度寝しようとするアヌビス。
だが僕は、例え五寸くぎを打ちつられようとも、確認しなければならないことがある。
「ちょっと待て、今、何時だ?」
「はあ? えっと…… 太陽の高さからして、十一時くらいでしょうか?」
さも当然そうにアヌビスは言う。
「それなのに、また寝ると?」
「はい」
「でも……」
「今から寝ます。お休みなさい。」
ためらうそぶりなんて微塵も見せず、即答し続けるアヌビスを見て、僕は溜息をつく。
もう何を言っても無駄なようだ。
さっさと毛布にくるまり、二度寝するアヌビス。
僕は、することがなくなったので、武器でも見ておこうかと思い、もう一度、アヌビスの持ってきた風呂敷を物色することにした。
刀、剣、銃、斧、槍、双剣、棍棒、大剣、と…… 結構いろいろあるな……
さっきはライトノベルを探すのに夢中になっていて見向きもしなかったが、アヌビスの持ってきた風呂敷の中には、実に様々な種類の武器が入っていた。
僕は、試しにその中にあった、狙撃銃らしき物を手に取り、構えてみる。が、スコープのところに目がないので、どうしても射撃位置がずれてしまう。
銃も持ってみたが、やはり、使い物になりそうではなかった。
「さて、どうするか……」
つまり僕の使える物は、接近用の武器であるらしい。
試しに、手近にあった剣を手に取り、昨日、ゲームの見よう見まねでした『頭を投げて、敵を攻撃する』という動作をおさらいしてみた。
まず、頭を上に投げる。
そして…… あれ?
頭自体が回転しているため目が回る。自分が何をしているか、全くわからない。
ドサッと重い衝撃が走り、地面に落ちる僕の頭。
体を近づけようとするも、その体もふらふらとなっていて、足取りがおぼつかない。
まさか、本当にデュラハンが、頭と体が離れているだけだったなんて……
僕がここまでデュラハンをいやがっていたのは、理由があった。
ゲームや漫画でデュラハンや、首無し騎士というモンスターが倒されるたびに僕は思ったのだった。
――首とれてるから、弱いんじゃね?―― と。
首が弱点なのは、どんな生物だって同じだろう。
ならばどうして切り離したんだよ! 首と胴体を!
だいたい、体が無かったら、首なんて何もできないだろ!?
いちいち首を上に投げなくても、胴体に首があればすむじゃん!?
全方向見回したいのなら、阿修羅や、千手観音のように、顔を多くすればいいんじゃないのか!?
何であえて取り外したんだよ!
首を持ってる手とか、疲れないのか!?
と、くるくる回る景色と、荒れ狂う自分の感情を冷静に見つめ直し、これは一刻も早く、この体に慣れないといけない、そう感じるようになった。
「ふぁぁぁ…… よく寝た。あれ? 何やってるんですか?」
しばらく練習を重ねていると、アヌビスが起き上がる音がした。
やっと起きたか。だが、僕はその質問には答えられない。
なぜなら、疲労困憊で動けないからな!!
「…… 馬鹿なんですか? 馬鹿なんですね? 馬鹿なんでしょう?」
見事な三段活用だ。
しかし、僕には、もう答えられるだけの気力が残っていない。
ああ…… 目の前が暗くなってきた。
もうすぐ僕は、力尽きるだろう……
せめて最後に…… ライトノベル読みたかった。
と、僕が少しの後悔とともに意識を投げだそうとしたその瞬間、何か堅い物が僕の口に押し当てられ、液体が口の中に流れ込んでくる。
…… 少し危険な感じのする表現の仕方だが、別になんということはない。
回復薬の入った小瓶を口に押し当てられ、回復薬を飲ましてもらっただけだ。
目の前の視界が急にはっきりとし、なんだか元気がわいてくる。
「あ、ありがとう。」
目の前で、呆れたような、心配しているような、そんな表情のアヌビスを見て、僕はなんて馬鹿なことをしてたんだ、と反省することにした。
「で? 何をしてたんです? まあ、だいたいの予想はできてますが……」
アヌビスは完全に復活した僕を見て、かわいそうな人を見る目を向けてくる。
まあ、確かに、訓練のためとはいっても、自分の頭を数時間ぶっ続けで投げる馬鹿など、そうそうはいないだろう。
最後の方は、頭ががんがんして、体の芯がぶれていたので、もはや訓練と呼べる物ではなかったが。
「はぁ…… そんなことをしなくてもできますよ。物をまっすぐに投げるくらいは。」
「何!?」
信じられないアヌビスの言葉に、僕は身を乗り出す。
「それはですね……」
そんな僕の様子に呆れながらも、アヌビスは話し始めた。
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