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He is ジャスティン
①
しおりを挟む「ジャスちゃん、ジャスちゃん、この先はどうすればいいのかしら?」
ジャスティンは、木の実のマンションのオーナーでもある澤さん宅で、料理教室とやらの先生をさせられている。
木の実がこのマンションへ引っ越した後、もれなくジャスティンも付いてきた。1LDKの間取りは二人が暮らすにはちょうど良く、それはジャスティンが勝手に言っている事だけれど、この澤さん老夫婦ともジャスティンの方が木の実以上に仲良しだった。
木の実とつき合い始めてから、木の実が休みの平日にジャスティンも休みを取り、そして木の実のマンションの近くに月極の駐車場も借りた。
実は、木の実以上に、ジャスティンの方がこのマンションやこの地域を気に入っている。
と、いうわけで、料理上手なジャスティンの腕を知った澤さんがご近所のお友達を集めて、週末に料理教室を開いていた。
「ジャスちゃん、今日は、木の実ちゃんも休みなんでしょ?」
木の実の事情は全て把握している澤さんが、料理教室の準備をしながらそう聞いてきた。
「はい、後で顔を出すって言ってましたよ」
「ウフフ、良かった」
ウフフって…?
澤さんやその仲間達は本当に可愛いおばあちゃんが多かった。そして、そのおばあちゃん達の間で、ジャスティンはどの往年のスターにも負けないほどのアイドルだった。
「澤さん、今日は、いつもより人が多いんですね…」
いつもの日曜日より明らかに人が多い。
そして、皆、気持ち程度にお洒落な気がする。
「そうかしら? ニ、三人多いだけよ」
そう話す澤さんも何だかいつもより化粧が濃い気がするし、エプロンも普通よりレースのヒラヒラが多い気がする。
ジャスティンは、ルーフバルコニーに繋がっている澤さん宅の広いリビングダイニングが気に入っていた。人数が少々増えたところで手狭になることはない。
「じゃ、皆さん、始めましょうか~~?
今日は、ジャスティン先生が、デザートのティラミスを教えて下さるそうで~す」
澤さんがそう言うと、一斉に澤さんの仲間達がジャスティンの近くに群がってくる。皆さんの事は大好きだけれど、未だにこの光景に慣れない自分がいる。
すると、ちょっと遅れて木の実が入って来た。木の実が来ると、また一斉に、皆、木の実に群がった。
「ジャスティン先生、今日は私にも教えて下さいね」
木の実はジャスティンを茶化したようにそう言うと、丁寧にお辞儀をした。
その二人の姿を見て、澤さん達ギャラリーは、キャーキャー言って喜んでいる。
「じゃ、始めますか。
今日は、メチャクチャ簡単なティラミスを作ってみたいと思います」
あらかじめ、材料は澤さんの方で準備している。生徒達は見よう見まねで、ジャスティンの作り方を習得する。
でも、今日は、小さなガラスのコップに盛り付けるティラミスだ。インスタントコーヒーとカステラで作るので、はっきり言って30分もあれば終わってしまうだろう。
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