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ここは天国でしょうか?
④
しおりを挟むジャスティンは、また大きな声で笑った。その笑顔は清々しいほどに美しい。
「あと、俺ね。
俺は凪と同じ28歳、日本生まれ日本育ち、でも、大学はハーバード、見た目から想像つかないでしょ?」
舞衣は大きく頷いた。頷いていいのかも分からないけれど。
でも、ジャスティンには、天は二物を与えたのね…
「よし、じゃ、行こうか。皆を紹介するよ」
ジャスティンはそう言うと、社長室の重厚なドアを開けた。
社長室を開けたすぐの部屋は、エントランスのような休憩室のような不思議な空間だった。そして、そこを抜けた先に自動扉がある。
ジャスティンがその自動扉を開けると、そこは日当たりのいい開放的な白一色で統一された空間だった。部屋の中央に長細いオフィスデスクが置かれていて、その周りを個人のブースが扉のない状態で並んでいる。
「みんな~、ちょっと来てくれ。新しい仲間を紹介するから」
舞衣は思わず驚いて息を止めてしまった。
十人十色のイケメン達が私を見てる…
心臓が飛び出しそう…
B専の私のはずなのに、それすらももう分からなくなってきた。
あの…
ここはもしかして天国ですか?…
「はい、舞衣、自分で自己紹介」
ジャスティンはそう言うと、自分もギャラリーの一員となって前へ移動した。
舞衣は目を見開いたまま、まばたきができない。いや、まばたきすることすら、舞衣の脳は忘れてしまっている。
「は、初めまして……
私は、松村舞衣と、も、申します……
あ、あの、ここに立って、このように自己紹介をしてることが、まだ全然信じられなくて……
夢を見ているのか、それとも異次元の世界に来てしまったのか、あ、いや、ごめんなさい、そんな事は別にどうで もよくて……
あの、その、私はもう24歳になりますが、一般社会の常識は身についていると思ってますが、あの、ここでのハイレベルな仕事環境に適応できるのか、まだ全く分かりません。
あ、すみません、自己紹介をします…
身長158センチ、体重ちょっと重め、おとめ座のO型です。
どうぞよろしくお願いいたします」
最初に拍手をしてくれたのは、一番普通に見えるメガネが似合う正統派のイケメンだった。彼の笑顔は優しさに満ち溢れていた。
ツーブロックの髪形はサイドとトップで色を少し変え、トップはワックスで綺麗に固めている。高校生で例えると、優等生の生徒会長タイプに違いない。メガネの奥に見える瞳は、ちょっと垂れ目で人懐っこい雰囲気を醸し出している。
「初めまして、舞衣ちゃん。
僕は、中山トオルと言います。
可哀想に、こんなに緊張して。
大丈夫、ここにいる連中は見た目はワイルドだけど、舞衣の事を取って食べたりはしないから。
舞衣ちゃん、よろしくね」
そう言って舞衣の近くまで来て、握手を求めてきた。
中山トオル……
ジャスティンの話では、何かに豹変するから要注意だったっけ??
こんなに素敵なのに?
何に豹変しちゃうの??
舞衣は必死に作り笑いを浮かべトオルと握手をすると、それと同時に、たくさんのイケメンが舞衣の前に集まってきた。
「はい、今度は僕の番ね。
ちょっと太めな舞衣ちゃん、ちょっとだけ僕にほっぺを触らせて」
舞衣は直立不動のまま、されるがままだ。
「真っ白でぷにゅぷにゅで、マシュマロみたい。
なんて可愛いんだ、食べちゃいたいよ」
舞衣はもう分かっていた。
この人は、このビルの中で一番のイケメンのバイの彼だ。
長身で細身で、スーツのCMから飛び出してきたみたいな完璧なルックスで、ハーフなのに黒髪で、でも顔は思いっきり欧米人の顔で、そして、そのアンバランスさが最高にクールで際立っている。
「僕は堀江映司です。
舞衣みたいな子が入ってくれて、ほんとに嬉しいよ。
そのぷにゅぷにゅ感、最高~~
もう一回、触っていい?」
舞衣は必死に笑顔を作ったが、それでもやはり直立不動でされるがままだった。
そして、その様子を目を細めて見ている男性がいる。細めた目は妙に色っぽくて、舞衣は何だか落ち着かない気持ちになった。
その人は長い黒髪を後ろで一つに束ね、肌がつるんつるんで、大きな瞳は長方形の角張った黒のメガネに隠れているけれど、それでも艶っぽく目力だけで圧倒されてしまう。
「初めまして、子猫ちゃん。
僕は、前田謙人と言います。
僕の周りにはいないタイプの女の子だからか分からないけど、なんだか、ちょっとだけ胸がときめいてる。
よろしくね、舞衣ちゃん」
舞衣はつま先から髪の先までぶるっと電気が走った気がした。
前田謙人さん?
星の数ほどseフレがいる人だ……
でも、落ちちゃう女の人の気持ちも分からないでもないかも…
舞衣は少しだけホッとした。自分の周りに集まっていた人達への自己紹介が終わったから。
「凪!」
すると、ジャスティンの声が響いた。
舞衣から離れたデスクの近くに、その伊東凪という男は座っていた。ジャスティンに呼ばれた凪は、面倒くさそうに舞衣の前へやって来た。
明らかに、今まで見たイケメン達とは全く部類が違う。ミディアム系のゆるいパーマがかかった髪形は、黒に近い灰色のカラーで染め上げている。でも、無造作に仕上がっているその髪型にグレーの色は絶妙に似合っていた。
その凪という男は、見た目は本当に怖かった。奥二重の切れ長の目は、少しだけ釣っているせいでワイルドに拍車がかかっている。それでいて、灰色の髪。他の人に比べて、なんだかラフな格好も、凪の存在感を際立たせた。
舞衣は、猛烈に心臓が高鳴るのを感じた。それは恐怖からなのか何なのか、さっぱり分からない。
「ソフィアは何を思ってこんな子を選んだんだ?」
凪は面倒くさそうな顔をして、ジャスティンにそんな事を聞いた。
「凪、本人の前で失礼だろ。
俺は、舞衣で良かったって思ってる。
ギスギスしてなくて、ほんわかしてて、俺は好きだよ」
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