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忘却
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時は流れ、今年の冬でひまわりは26歳になる。
海人との出会いから7年の月日が経っていた。
ひまわりは大学を卒業し、近くの図書館の司書として働いていたが、その仕事を一か月前に辞めた。
ひまわりのこれまでの日々は、海人との再会を夢にばかり見るそんな毎日だった。
映画を観たり、合コンをしたり、旅行にもたくさん行って普通の20代の女の子がする生活も人並みに送った。
そして、他の男の人との出会いも、それなりにいくつかあった。
だけど、ひまわりの中にいる海人はひまわりを手離す事はなかったし、ひまわりも海人から離れる事はできなかった。
でも、こんな生活にピリオドを打つことを決めた。
もうこれ以上海人を思っても、彼が戻ってくることはない…
海人との出会いから七年目の夏が過ぎた頃、ひまわりはやっと二人の思い出を心のひきだしにしまえそうなそんな気がした。
忘れるわけではない…
忘れる事なんてできないのだから…
でも、もう、海人が私を自由にしたがっている…
不思議と、そう思えるようになっていた。
そして、ひまわりが仕事を辞めた理由の一つは、祖父母の家を売却するためだった。
好子とひまわりは、管理の負担の大きさからあの家を手放す事を決めた。
ひまわりは祖父母の荷物がまだ残っているあの家に、片付けのためにしばらく帰ることにした。
一つの大きな区切りとして、ひまわりは海人との思い出の詰まったあの家に別れを告げる。
前を向いて進むには、一つ一つ整理をする事、それが今のひまわりには必要だった。
祖父の家の片付けを始めて、四日が過ぎた。
思いの外、祖父母が残していた荷物は多く、仕分けをする作業にかなりの時間を費やしていた。
祖父の部屋は、特に荷物が多かった。
半分以上はひまわりと好子との思い出の品ばかりで、アルバムや手紙、写真等には、なおさら時間がかかった。
几帳面な性格だった祖父は、手紙に関してはそれぞれ名前ごとに箱を分けていた。
その箱は10箱以上にもなり、祖父の人となりが垣間見える。
ひまわりの手紙が入った箱には「ひまわり」と書いてあり、子供らしい可愛い模様の柄がついていた。
そして、もう一つ、男の子向けの子供っぽい柄のついた箱がある。
その箱には「佐藤君」と書かれていた。
ひまわりはその箱にとても興味を抱いたが、片付けが終わった後に実家で見ることにして段ボールにしまった。
明日には引っ越し業者の人が荷物を引き取りに来るために、ひまわりは先を急いだ。
そして、ひまわりは、倉庫にしまっているベンチを久しぶりに外に出した。
このベンチは海人がこの家の庭の整理をしている時に、私のために作ってくれたものだ。
海人の話では、もう少しお洒落にするつもりだったらしい。
しかし、廃材を利用して作ったため、これが限界だったと言っていた。
このベンチを見ると、あの頃が甦ってくる。
海人はこのベンチを作り終えると同時に、良平とあの民宿に行くことになった。
この小さな二人掛けのベンチは、海人がここで過ごした証しだ。
ひまわりは、それを梱包する前にきれいに洗うことにした。
ベンチの表面をスポンジで丁寧に磨き、そして、裏返しにした時にその側面に古びた手紙が貼りついている事に気がついた。
心臓が止まりそうだった。
ボロボロになった紙切れは、きっと海人からの手紙だ。
ひまわりは震える手で、四つ折りに折ってある小さな手紙を開けてみた。
“ひまわり、ごめん
突然、出て行くことになりました でも心配しないで
ちゃんと一人前の男になったら 必ずひまわりを迎えにくるから
約束する
これはひまわりのために作りました
これに座ってこの庭を見てそして僕のことを思い出して
追伸
良平さんのことを責めないで 僕はありがたく思っているから
海人”
また迎えにくると書いてある…
迎えになんて来れないくせに…
ひまわりは、久しぶりに海人を想って声を上げて泣いた。
隠しても隠し切れない海人への想いを改めて気付かされた。
七年経った今も、私の心はやっぱり何も変わらない…
海人との出会いから7年の月日が経っていた。
ひまわりは大学を卒業し、近くの図書館の司書として働いていたが、その仕事を一か月前に辞めた。
ひまわりのこれまでの日々は、海人との再会を夢にばかり見るそんな毎日だった。
映画を観たり、合コンをしたり、旅行にもたくさん行って普通の20代の女の子がする生活も人並みに送った。
そして、他の男の人との出会いも、それなりにいくつかあった。
だけど、ひまわりの中にいる海人はひまわりを手離す事はなかったし、ひまわりも海人から離れる事はできなかった。
でも、こんな生活にピリオドを打つことを決めた。
もうこれ以上海人を思っても、彼が戻ってくることはない…
海人との出会いから七年目の夏が過ぎた頃、ひまわりはやっと二人の思い出を心のひきだしにしまえそうなそんな気がした。
忘れるわけではない…
忘れる事なんてできないのだから…
でも、もう、海人が私を自由にしたがっている…
不思議と、そう思えるようになっていた。
そして、ひまわりが仕事を辞めた理由の一つは、祖父母の家を売却するためだった。
好子とひまわりは、管理の負担の大きさからあの家を手放す事を決めた。
ひまわりは祖父母の荷物がまだ残っているあの家に、片付けのためにしばらく帰ることにした。
一つの大きな区切りとして、ひまわりは海人との思い出の詰まったあの家に別れを告げる。
前を向いて進むには、一つ一つ整理をする事、それが今のひまわりには必要だった。
祖父の家の片付けを始めて、四日が過ぎた。
思いの外、祖父母が残していた荷物は多く、仕分けをする作業にかなりの時間を費やしていた。
祖父の部屋は、特に荷物が多かった。
半分以上はひまわりと好子との思い出の品ばかりで、アルバムや手紙、写真等には、なおさら時間がかかった。
几帳面な性格だった祖父は、手紙に関してはそれぞれ名前ごとに箱を分けていた。
その箱は10箱以上にもなり、祖父の人となりが垣間見える。
ひまわりの手紙が入った箱には「ひまわり」と書いてあり、子供らしい可愛い模様の柄がついていた。
そして、もう一つ、男の子向けの子供っぽい柄のついた箱がある。
その箱には「佐藤君」と書かれていた。
ひまわりはその箱にとても興味を抱いたが、片付けが終わった後に実家で見ることにして段ボールにしまった。
明日には引っ越し業者の人が荷物を引き取りに来るために、ひまわりは先を急いだ。
そして、ひまわりは、倉庫にしまっているベンチを久しぶりに外に出した。
このベンチは海人がこの家の庭の整理をしている時に、私のために作ってくれたものだ。
海人の話では、もう少しお洒落にするつもりだったらしい。
しかし、廃材を利用して作ったため、これが限界だったと言っていた。
このベンチを見ると、あの頃が甦ってくる。
海人はこのベンチを作り終えると同時に、良平とあの民宿に行くことになった。
この小さな二人掛けのベンチは、海人がここで過ごした証しだ。
ひまわりは、それを梱包する前にきれいに洗うことにした。
ベンチの表面をスポンジで丁寧に磨き、そして、裏返しにした時にその側面に古びた手紙が貼りついている事に気がついた。
心臓が止まりそうだった。
ボロボロになった紙切れは、きっと海人からの手紙だ。
ひまわりは震える手で、四つ折りに折ってある小さな手紙を開けてみた。
“ひまわり、ごめん
突然、出て行くことになりました でも心配しないで
ちゃんと一人前の男になったら 必ずひまわりを迎えにくるから
約束する
これはひまわりのために作りました
これに座ってこの庭を見てそして僕のことを思い出して
追伸
良平さんのことを責めないで 僕はありがたく思っているから
海人”
また迎えにくると書いてある…
迎えになんて来れないくせに…
ひまわりは、久しぶりに海人を想って声を上げて泣いた。
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