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出会い
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夏休みになると、ひまわりは必ず訪れる。
大好きな祖父母が住んでいた小さな一軒家。
今年は初めて一人で訪れた。
三年前、離婚により女手一つでひまわりを育てることになった娘の好子を案じながら、先に天国で待つ祖母の元へ旅立った祖父。
一人っ子だった好子と、一人っ子の好子の娘ひまわりは、祖父母の思い出が詰まったこの家を手放すことができずにいた。
そして、時間が経つにつれ、その祖父母の家は好子とひまわりの癒しの場所となっている。
ひまわりはここへ来ると、必ず最初に庭の手入れにとりかかる。庭の手入れは、いつも心を軽くしてくれた。
内向的なひまわりは、小さい時から忙しい母に気を遣う日々だった。父と母が別れを決めた朝も、ひまわりは何も言わずに頷いた。本当は父の事が大好きだったけれど、別れてほしくないという気持ちは心の奥に押し込み、幼い胸の中に封印した。
そして、ひまわりは祖父の家に訪れると、季節に応じてささやかな模様替えをする。夏には風鈴をかけ、リビングにはござの敷物を敷き涼しさを演出した。
穏やかに過ぎて行く時間。ここに居ると、一人の時間がとても愛おしい。
十九歳のひまわりは、年の割には落ち着いて見られる事が多かった。可愛いというより綺麗で端整な顔立ちが、より一層そういう雰囲気を醸し出した。性格も大人しい上に人見知りでもあり、自分の殻に閉じこもる事に居心地の良さを感じていたからかもしれない。
大学に通ってはいるけれどこれといって仲の良い友達もいない。
母との二人暮らしのせいで一人でいることには慣れている。
自分のペースでいられることが唯一の楽しみ。
彼氏…?
今のところ必要ない。必要ないというところで、本気で人を愛したことがない。
本気で人を愛すること、そんな時が私に訪れるとは考えられない。
でも、少しは憧れる。
何もかも投げ捨てて人を愛するって、一体どういう感じなんだろう…
その日は、蝉の声が倍に聞こえるほどの暑さだった。
いつもの海岸沿いの道への散歩を珍しく変更したひまわりは、小さい頃によく祖父と一緒に出掛けた小高い丘の上にある公園まで行くことにした。
夕方前に出発し、夏特有のスコールを想定して折り畳みの傘は忘れずに持った。
古びた階段の近くまで辿り着いたところで、案の定、空の色が変わってきた。
ひまわりは階段を上った先に東屋風のベンチがあったことを思い出した。
一目散に階段を駆け上り、大粒の雨がポツポツ降り出すと同時にベンチに滑り込むことができたが、その建物の中のベンチは想像していた以上に小さくてカビ臭かった。
空はあっという間に暗くなり、遠くに雷の音が聞こえる。
ひまわりは、不気味さの中、何故か高鳴る心臓の音に戸惑っていた。
薄気味悪い空気がひまわりを取り囲み、雨の音が誰かの声に聞こえてくる。この数分の間に、外もこの建物の中も暗闇に包まれてしまった。
でも、こういう状況の中で、携帯の明かりだけが、ひまわりを落ち着かせ勇気づけてくれる。
その時、急に外が真っ赤に光った。
大好きな祖父母が住んでいた小さな一軒家。
今年は初めて一人で訪れた。
三年前、離婚により女手一つでひまわりを育てることになった娘の好子を案じながら、先に天国で待つ祖母の元へ旅立った祖父。
一人っ子だった好子と、一人っ子の好子の娘ひまわりは、祖父母の思い出が詰まったこの家を手放すことができずにいた。
そして、時間が経つにつれ、その祖父母の家は好子とひまわりの癒しの場所となっている。
ひまわりはここへ来ると、必ず最初に庭の手入れにとりかかる。庭の手入れは、いつも心を軽くしてくれた。
内向的なひまわりは、小さい時から忙しい母に気を遣う日々だった。父と母が別れを決めた朝も、ひまわりは何も言わずに頷いた。本当は父の事が大好きだったけれど、別れてほしくないという気持ちは心の奥に押し込み、幼い胸の中に封印した。
そして、ひまわりは祖父の家に訪れると、季節に応じてささやかな模様替えをする。夏には風鈴をかけ、リビングにはござの敷物を敷き涼しさを演出した。
穏やかに過ぎて行く時間。ここに居ると、一人の時間がとても愛おしい。
十九歳のひまわりは、年の割には落ち着いて見られる事が多かった。可愛いというより綺麗で端整な顔立ちが、より一層そういう雰囲気を醸し出した。性格も大人しい上に人見知りでもあり、自分の殻に閉じこもる事に居心地の良さを感じていたからかもしれない。
大学に通ってはいるけれどこれといって仲の良い友達もいない。
母との二人暮らしのせいで一人でいることには慣れている。
自分のペースでいられることが唯一の楽しみ。
彼氏…?
今のところ必要ない。必要ないというところで、本気で人を愛したことがない。
本気で人を愛すること、そんな時が私に訪れるとは考えられない。
でも、少しは憧れる。
何もかも投げ捨てて人を愛するって、一体どういう感じなんだろう…
その日は、蝉の声が倍に聞こえるほどの暑さだった。
いつもの海岸沿いの道への散歩を珍しく変更したひまわりは、小さい頃によく祖父と一緒に出掛けた小高い丘の上にある公園まで行くことにした。
夕方前に出発し、夏特有のスコールを想定して折り畳みの傘は忘れずに持った。
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ひまわりは階段を上った先に東屋風のベンチがあったことを思い出した。
一目散に階段を駆け上り、大粒の雨がポツポツ降り出すと同時にベンチに滑り込むことができたが、その建物の中のベンチは想像していた以上に小さくてカビ臭かった。
空はあっという間に暗くなり、遠くに雷の音が聞こえる。
ひまわりは、不気味さの中、何故か高鳴る心臓の音に戸惑っていた。
薄気味悪い空気がひまわりを取り囲み、雨の音が誰かの声に聞こえてくる。この数分の間に、外もこの建物の中も暗闇に包まれてしまった。
でも、こういう状況の中で、携帯の明かりだけが、ひまわりを落ち着かせ勇気づけてくれる。
その時、急に外が真っ赤に光った。
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