コミュ障の少年は異世界で無双する

蓮ゆうま

文字の大きさ
3 / 15
第一章

新たな日々の始まり①

しおりを挟む
朝の光が瞼を通して差し込む。

「ん・・・?」

目を開けると、青い空が広がっていた。
空気も澄んでいるようで色彩がよりくっきりと鮮やかに見える。
明らかに東京ではない。

「・・・・・・・・・?」

少しフラつく頭を押さえながら起き上がる。周りの景色を見渡した瞬間にそれまでの記憶が一気に蘇った。

「匠海様。」
「・・・・・・!」

突然後ろから声がした。
突然のことに喉の奥で声が絡まる。

「アグレス様に頼まれて参りました。」
「そ、う・・・です、か・・・。」

その子はアグレスより少し年上ぐらいの姿だった。もちろん実年齢は違うだろうけど。
ショートカットの金髪に碧眼、まるで爽やかな王子のような印象を受けるが、膨らんでいる(現在進行形っぽい)胸部が女性であることを主張している。

「申し遅れました。私、エルフのアマビリアと申します。アグレス様の従者です。」

黙って頭を下げる。本当は失礼に当たるのかも知れないが、僕の名前を知っているのできっと大丈夫。

「まずは無事に異世界転生おめでとうございます。つきましては、この世界や今の匠海様自身についての説明をさせて頂きます。」

とりあえず頷く。
我ながらなんと情けない。

「こちらが匠海様のステータスカードでございます。ステータスカードは随時更新されますので時折ご確認ください。」

便利だな。スキルや称号なども表示されるみたいだ。例えるなら、薄い半透明のタブレットのような感じだ。材質はなんだろうと考えかけてここはファンタジーの世界だと苦笑する。

「次に、会話についての説明です。アグレス様から匠海様は会話が苦手だと聞きました。きっとこの世界の者とのコミュニケーションに不安を抱かれているとご察ししますが、不安に思うことはございません。アグレス様がこんなスキルをご用意されています。」

ステータスカードをいじってスキルの欄に触れてください、と言われて指示に従う。

「このスキルの文字に触れると、匠海様が現在保有されているスキルが表示されます。その中のこちら・・・。『念話』と唱えてください。」

言われた通りに唱える。
・・・何も起こらない。

「これで、頭で思ったことが相手に伝わるようになりました。会話の対象として認識することと文にしてからではないと伝わりませんので考えていることがダダ漏れになる訳ではありませんが、まあ、うっかり変なことを思わないようにお気をつけください。」
《そうですね、気をつけます。》
「あと、文字など基本の常識は刷り込まれているようですので。」

至れり尽くせりだ。
その後色々説明を受けて、気がつけば陽は傾いていた。

「あ、申し訳ございません!匠海様が余りにも聞き上手だったのでつい・・・!」
《大丈夫です。久しぶりに楽しかったです。》

本音だ。
こんなに充実した時間を過ごしたのは何時ぶりだろうか。

「では最後に、竜人族の特徴について話して終わりにしましょう。」

それはなんだろう。何か特別な力でもあるのだろうか。

「竜人族は身体のどこかに特異な能力を持ちます。能力は部位によって決まっていますが、どこの部位を選ぶかによって変わってきます。本来は生まれた時に決まっているようですが、アグレス様が特別に選べるようにしてくださったみたいです。お好きな所を直感でお選びください。」
《どんな能力がつくかは分からないのですか?》
「それは少し・・・。アグレス様も滅多にお話されないので私には分かりかねます。」

分からないものは仕方ない。
よし、運任せ、直感に従おう。

「どれになさいます?」
《目でお願いします!》

アニメとかで見る、目に特別な能力がある人にすごい憧れていた。

「ではそのように。」

効果が現れるには少し時間がかかるらしい。
この付近は魔物なども出没しない場所なので、心配するようなことは何も無いそうだ。
それに、相手が竜人族だと皆怖気づいて襲って来ないらしい。

「これで私は失礼します。匠海様の人生が充実してより良いものになるよう祈っております。」

なんて温かい言葉だろう。
両親が感謝の気持ちを忘れずに、と言っていたが、本当に忘れてはならないものだと実感した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...