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片鱗
きざし③
「あぁ。びっくりさせてごめん。この人達は……今日のお見合いの立会人的な人達かな。結希ちゃんへの挨拶も兼ねている感じだよ」
挨拶って。私はこんなふうに挨拶されるほど凄い人物ではない。
だから気にしなくていいよ。落ち着いてと、優しく私の肩に手を乗せる白透君に向き合う。
「で、でも。立会人ってこんな感じなの? なんかこのお見合い、おかしくない? お母さんの様子も変だったしっ。白透君は何も思わないの?」
「結希ちゃんはずっと都会に居たから、そう思うのかもね。結希ちゃんのお母様のことは、ちょっと僕には分からない。一人娘のことを思案しているんじゃないかな」
白透君の思い過ごしでは? と言う口調に強く反論出来なかった。白透君はそれにねと、言葉を続ける。
「ここに来てくれた人達や、僕に向かって手を合わせてくれる人。それはこの神社への信仰心の表れだよ」
「信仰心……」
私がつぶやくと、さぁっと境内に風が吹いた。
そして白透君は君は滔々と語り出した。
「人が存在しない世界に神様はいるかどうか、なんて僕にはわからない。でも、人が居るこの世界には神様はいる。神様は人によって認知されてこそ、神様でいられるんだよ。誰にも信仰をされない神様に力があると思うかい?」
また風が拭いて、私と白透君の着物の袖を揺らし。私の心をも揺らす。
「神様の力は人々の願いの力。それらを叶えて行くことで神様の力も大きくなる。そして──神様も伴侶を持つと力が大きくなる。この日本を産んだのだって二人の夫婦神。イザナギとイザナミ。夫婦だからこそ、国産みの神になった。決してどちらが欠けていても、この日本は生まれなかった」
「そ、そんなことを言われてもわからない。それが白透君となんの関係があるの?」
「僕が大好きな結希ちゃんと結ばれることで、この神社に、この土地にもっと良いことをもたらせることが出来る。僕の力……いや。影響力が大きくなると、白寺夜村ではそんな風に、考えられているってコトだよ。地元の繁栄を望むのは悪いことじゃないだろう?」
それはそうだけども。
私が居たときこんな『お見合い』があったなんて知らない。こんな風習なんて知らない。
部屋を出るときのお母さんの戸惑いが、気になって仕方ない。
普段体験しないことの連続で胸がざわついてしまい、私は少し混乱しているのかとも思い。
ゆっくりと呼吸を繰り返す。
「それに、別にここに居る人達含め。地元の人達も僕達の味方だよ。それとも結希ちゃんはここの人達に何か怖いことでもされた? 不安だったら……今日のお見合いやめておこうか?」
「!」
白透君に困った顔であやされるように言われて、ハッとなった。
白透君の言うとおり。
私は別に何か危害を加えられたとか言うわけではない。むしろ丁寧な扱いだと思う。
ここでお見合いをやめると、ここに居る人達も含め。両親にも迷惑を掛けてしまうと思った。
もう一度、深呼吸して。
「……取り乱してごめんなさい。普段とは違うことに戸惑ってしまって……お見合いはちゃんとする。ごめんなさい……」
本当はまだ戸惑っている。不安は拭いきれない。しかし、だからと言ってここまで来てお見合いを放り出すほど、私は無責任な子供でもない。
良い大人なのだから、しっかりせなばと思った。
「謝ることなんかないよ。僕もね事前にこう言う感じだって言えば良かったね。でも、言うとびっくりさせるかもって思ったから。これ以上は部屋の中でちゃんと話そう」
白透君は「さぁ、おいで」と、私の手を引いた。
その手は一番最初に出会ったときと同じく。ひんやりとしていて冷たかった。
挨拶って。私はこんなふうに挨拶されるほど凄い人物ではない。
だから気にしなくていいよ。落ち着いてと、優しく私の肩に手を乗せる白透君に向き合う。
「で、でも。立会人ってこんな感じなの? なんかこのお見合い、おかしくない? お母さんの様子も変だったしっ。白透君は何も思わないの?」
「結希ちゃんはずっと都会に居たから、そう思うのかもね。結希ちゃんのお母様のことは、ちょっと僕には分からない。一人娘のことを思案しているんじゃないかな」
白透君の思い過ごしでは? と言う口調に強く反論出来なかった。白透君はそれにねと、言葉を続ける。
「ここに来てくれた人達や、僕に向かって手を合わせてくれる人。それはこの神社への信仰心の表れだよ」
「信仰心……」
私がつぶやくと、さぁっと境内に風が吹いた。
そして白透君は君は滔々と語り出した。
「人が存在しない世界に神様はいるかどうか、なんて僕にはわからない。でも、人が居るこの世界には神様はいる。神様は人によって認知されてこそ、神様でいられるんだよ。誰にも信仰をされない神様に力があると思うかい?」
また風が拭いて、私と白透君の着物の袖を揺らし。私の心をも揺らす。
「神様の力は人々の願いの力。それらを叶えて行くことで神様の力も大きくなる。そして──神様も伴侶を持つと力が大きくなる。この日本を産んだのだって二人の夫婦神。イザナギとイザナミ。夫婦だからこそ、国産みの神になった。決してどちらが欠けていても、この日本は生まれなかった」
「そ、そんなことを言われてもわからない。それが白透君となんの関係があるの?」
「僕が大好きな結希ちゃんと結ばれることで、この神社に、この土地にもっと良いことをもたらせることが出来る。僕の力……いや。影響力が大きくなると、白寺夜村ではそんな風に、考えられているってコトだよ。地元の繁栄を望むのは悪いことじゃないだろう?」
それはそうだけども。
私が居たときこんな『お見合い』があったなんて知らない。こんな風習なんて知らない。
部屋を出るときのお母さんの戸惑いが、気になって仕方ない。
普段体験しないことの連続で胸がざわついてしまい、私は少し混乱しているのかとも思い。
ゆっくりと呼吸を繰り返す。
「それに、別にここに居る人達含め。地元の人達も僕達の味方だよ。それとも結希ちゃんはここの人達に何か怖いことでもされた? 不安だったら……今日のお見合いやめておこうか?」
「!」
白透君に困った顔であやされるように言われて、ハッとなった。
白透君の言うとおり。
私は別に何か危害を加えられたとか言うわけではない。むしろ丁寧な扱いだと思う。
ここでお見合いをやめると、ここに居る人達も含め。両親にも迷惑を掛けてしまうと思った。
もう一度、深呼吸して。
「……取り乱してごめんなさい。普段とは違うことに戸惑ってしまって……お見合いはちゃんとする。ごめんなさい……」
本当はまだ戸惑っている。不安は拭いきれない。しかし、だからと言ってここまで来てお見合いを放り出すほど、私は無責任な子供でもない。
良い大人なのだから、しっかりせなばと思った。
「謝ることなんかないよ。僕もね事前にこう言う感じだって言えば良かったね。でも、言うとびっくりさせるかもって思ったから。これ以上は部屋の中でちゃんと話そう」
白透君は「さぁ、おいで」と、私の手を引いた。
その手は一番最初に出会ったときと同じく。ひんやりとしていて冷たかった。
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