白蛇様の花嫁はじっくりと執着淫愛される(4月3日ごろ非公開)

猫とろ

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片鱗

きざし④

白透君に手を引かれ。連れて行かれた場所は拝殿の後ろの建物。
本殿だった。
そこは拝殿よりも小さな建物で、お堂と言った方が私にはしっくりと来た。

でも中は立派なもので、いぐさの香りが漂う清潔な畳。壁には白い垂幕。正面には対になっている六角のぼんぼり。その奥には神棚をそのまま、大きくした威厳ある神様を祀る祭壇があった。

「中、こんなふうになっていたんだ。お香の香りかな? いい香り……」

白檀のようにほんのり甘く、ウッディ系の深みのある香りを感じた。
お寺にも似た雰囲気と照明も落ち着いた暖色系のもので、無言の人達から離れて少しは落ちついた。

「ここがこの神社で一番格式ある場所だから、嘘偽りなく喋るには向いているかなって。あ、そこにある座布団の上にどうぞ座って」

白透君にすすめられ、座布団の上に座る。肉厚の座布団で座り心地は良かった。
白透君は祭壇の前で何か用意しているようで、私に背を向けている。その背に話し掛ける。

「ありがとう。あの、白透君。あそこに居た人たちってどうしているのかな? 皆、お見合いが終わるまであそこにいる感じ?」

「まさか。あれは結希ちゃんへの顔を見せ的な意味合いもあったから、あれでもう終わり。皆、今頃帰っていると思うよ」

「そう。帰りまでいたら、またびっくりしてたと思う。良かった。じゃあ、白透君のご両親は後でお会いしたりするのかな」

当人同士のお見合いだと言っても、挨拶ぐらいはしたいと思った。

白透君はこちらを振り向かず。かちゃりと。小さな音を立てていた。
なにか飲み物でも用意しているんだろうか。そんな音だった。

「僕の両親は五年前、決別していてね。僕が神職を目指すことに反対されてしまって……今は遠い県外で暮らしている。だから僕の両親の介護をして欲しいとか。両親と一緒に住んで欲しいとか、そう言ったことはないよ」

白透君の言葉は軽やかだったが、その中身には触れにくく。
そう言った家族もあるだろうと思い「そうだったんだね」としか言えなかった。

そして白透君は、くるりとこちらを振り向くと。その手には鏡餅とか。十五夜お月様のイラストとかで良く見る。木の台を手にしていた。

その上にはお餅ではなく。朱塗りの杯が二つと注ぎ口が長い、急須があった。

そのまま私の正面に座り、私との間に木の台を静かに置いた。
まるで本当にこれから二人だけのお見合いじゃなくて、三々九度を交わす結婚式みたいだと思ってしまった。

「結希ちゃん。まだちょっと緊張してるのかな。そんな緊張は不要だよ。僕は両親のことより。ゆっくりと結希ちゃんが、どんな未来を夢みているか。本当はどんなことを考えているか。そう言ったことを話したいんだけども、結希ちゃんはもっと違うことが聞きたいのかな? 年収とか。お風呂はどこから洗うとか。プライベートなことでも、なんでも聞いてくれていいよ」

少し悪戯ぽっい口調で笑う白透君。

そうだ、お見合いなんだからお互いのことを話さなくては。
いや、私のことをちゃんと話さないといけない。

先ほどの見慣れない光景はひとまず、胸に納めて。
今は正面にいる白透君に向き合おうと思った。
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