35 / 40
向き合う
そして……③
「もしもし、部長。白寺夜村のことはどうでしたかっ!?」
食い気味で部長に問うと『申し訳ない』と言う言葉から始まり。
部長がネットで調べたことや編集部関係への村の情報は私が調べたこと、とあまり大差がなかった。
五年前に少年が溺れたという記事もわからず仕舞い。
短時間で調べて貰っただけ、ありがたい。仕方ないかと思っていると。部長は声を潜めた。
『そんな訳で、私や編集部の方面はダメだったが記者関係では以外なことが分かったぞ』
「え。意外なこと?」
思わず姿勢を正す。
『あぁ。本当に偶然なんだがな。知り合いの記者が白寺夜村のことを知っていた。秘密なんだがな、最近そのあたりの地方議員達が力を付けて。中央の有力な議員達と、密な関係を築きつつあるそうだ』
意外な話題で驚きながら、話を続ける。
「えっと、それって裏金がどうしたとか。献金問題とかですか?」
『さぁ。そこまでは教えて貰え無かったと言うか。今そこを探っているらしい。なにしろ地方議員達は先見の明があるらしく。カンが良くて、土地の売買や株で得た利益を使い。それを足掛かりにして勢力を増していってるそうだ』
株と言う部長の言葉に、胸がざわつく。
「……それっていつから、なんですか?」
『大体五年前ほどから、らしい』
「!」
五年前。土地。株。
その言葉に白透君がトレーダーをやっていたことを思い出す。
さらには作務室でみた議員や弁護士の名前。
私が思っている以上に、白透君は社会に影響するほどの権力を持っているのではと、ごくりと生唾を飲んだ。
『で、その連中達が入り浸っているのが白寺夜村の白蛇神社。表向きには蛇の神様はご利益が高いから、参っていると言うことらしいが……』
そうなんですねと、返事をする一方で頭の中で先程齧った知識を思い出していた。
蛇の神様は蛇は脱皮をすることから再生や復活を表し。立身出世のご利益がある。
七福神の一人。弁財天の化身とも言われていて、財運や病気の回復もあるとか。
蛇の神様はメジャーで世界中で信仰対象になるぐらい、ご利益が多い神様。
それにあやかりたいと人はごまんといるだろう。
そこに人々がお参りをしても不自然ではない。
そう、表向きには……。
脳内に白透君があの琥珀色の瞳を妖しく輝かせ。不思議な力で大勢の人達の前に君臨している姿が、容易に浮かんでしまった。あの美貌と本当に不思議な力を備えていたらそれは、いっそ。
因習村での新興宗教の教祖様、ではないかと考えてしまった。
『これが有益な情報になるかは、わからないが。今の私の精一杯だ。記者の奴はコネで教えてくれたが、それ以上は難しそうな感じだったしな……どんなことに首を突っ込んでいるかは知らないが、ヤバいのは確実……って、おい。大丈夫か?』
「えっ、あ。はい」
思考の海に潜り、部長への反応が鈍くなってしまった。
部長はこの後も出来るだけ調べてみると言ってくれた。
そして、私が手を貸したことによって、仕事が上手くまとまったとも言ってくれた。
そして最後に。
会社で待ってるから、帰って来るんだぞと。そう言ってくれて会話は終わった。
会話が終わったスマホを見ながら。
「私もそのつもりですから」と呟き。その手で新幹線のチケット販売画面を開き。帰りのチケットを手配した。
結局、五年前。池に溺れた少年は白透君かは不明。
しかし、夢がどうあれ。
現実的に白透君の影響は、この社会に影響を及ぼしているのは確実だと思った。
であれば余計にどこに逃げても。逃げれば逃げるほど。それこそ蛇のように。絡めとられるのも時間の問題のような気がした。
スマホの時計を見ると18時過ぎ。
外も夜の帳が下がり始めている。
しかし私は都会に帰るために。キャリーケースに荷物をまとめ。机の上のゴミを片付け。
旅館を出る準備を始めたのだった。
「どうなるか分からないけど……最後に白透君に会いに行こう」
そのまま白透君に別れを告げて、私は新幹線に乗って帰るつともりだ。
私のことが本当に好きならば。私の意思を尊重してくれると思いたい。
それしか、このお見合いの突破口が見当たらなかった。
もう二度とこの村には帰って来ないようにと。
お母さんが無事であるようにと。
そんな思いを抱えながら、誰にも何も告げず。旅館の非常階段から、旅館をそっと後にしたのだった。
食い気味で部長に問うと『申し訳ない』と言う言葉から始まり。
部長がネットで調べたことや編集部関係への村の情報は私が調べたこと、とあまり大差がなかった。
五年前に少年が溺れたという記事もわからず仕舞い。
短時間で調べて貰っただけ、ありがたい。仕方ないかと思っていると。部長は声を潜めた。
『そんな訳で、私や編集部の方面はダメだったが記者関係では以外なことが分かったぞ』
「え。意外なこと?」
思わず姿勢を正す。
『あぁ。本当に偶然なんだがな。知り合いの記者が白寺夜村のことを知っていた。秘密なんだがな、最近そのあたりの地方議員達が力を付けて。中央の有力な議員達と、密な関係を築きつつあるそうだ』
意外な話題で驚きながら、話を続ける。
「えっと、それって裏金がどうしたとか。献金問題とかですか?」
『さぁ。そこまでは教えて貰え無かったと言うか。今そこを探っているらしい。なにしろ地方議員達は先見の明があるらしく。カンが良くて、土地の売買や株で得た利益を使い。それを足掛かりにして勢力を増していってるそうだ』
株と言う部長の言葉に、胸がざわつく。
「……それっていつから、なんですか?」
『大体五年前ほどから、らしい』
「!」
五年前。土地。株。
その言葉に白透君がトレーダーをやっていたことを思い出す。
さらには作務室でみた議員や弁護士の名前。
私が思っている以上に、白透君は社会に影響するほどの権力を持っているのではと、ごくりと生唾を飲んだ。
『で、その連中達が入り浸っているのが白寺夜村の白蛇神社。表向きには蛇の神様はご利益が高いから、参っていると言うことらしいが……』
そうなんですねと、返事をする一方で頭の中で先程齧った知識を思い出していた。
蛇の神様は蛇は脱皮をすることから再生や復活を表し。立身出世のご利益がある。
七福神の一人。弁財天の化身とも言われていて、財運や病気の回復もあるとか。
蛇の神様はメジャーで世界中で信仰対象になるぐらい、ご利益が多い神様。
それにあやかりたいと人はごまんといるだろう。
そこに人々がお参りをしても不自然ではない。
そう、表向きには……。
脳内に白透君があの琥珀色の瞳を妖しく輝かせ。不思議な力で大勢の人達の前に君臨している姿が、容易に浮かんでしまった。あの美貌と本当に不思議な力を備えていたらそれは、いっそ。
因習村での新興宗教の教祖様、ではないかと考えてしまった。
『これが有益な情報になるかは、わからないが。今の私の精一杯だ。記者の奴はコネで教えてくれたが、それ以上は難しそうな感じだったしな……どんなことに首を突っ込んでいるかは知らないが、ヤバいのは確実……って、おい。大丈夫か?』
「えっ、あ。はい」
思考の海に潜り、部長への反応が鈍くなってしまった。
部長はこの後も出来るだけ調べてみると言ってくれた。
そして、私が手を貸したことによって、仕事が上手くまとまったとも言ってくれた。
そして最後に。
会社で待ってるから、帰って来るんだぞと。そう言ってくれて会話は終わった。
会話が終わったスマホを見ながら。
「私もそのつもりですから」と呟き。その手で新幹線のチケット販売画面を開き。帰りのチケットを手配した。
結局、五年前。池に溺れた少年は白透君かは不明。
しかし、夢がどうあれ。
現実的に白透君の影響は、この社会に影響を及ぼしているのは確実だと思った。
であれば余計にどこに逃げても。逃げれば逃げるほど。それこそ蛇のように。絡めとられるのも時間の問題のような気がした。
スマホの時計を見ると18時過ぎ。
外も夜の帳が下がり始めている。
しかし私は都会に帰るために。キャリーケースに荷物をまとめ。机の上のゴミを片付け。
旅館を出る準備を始めたのだった。
「どうなるか分からないけど……最後に白透君に会いに行こう」
そのまま白透君に別れを告げて、私は新幹線に乗って帰るつともりだ。
私のことが本当に好きならば。私の意思を尊重してくれると思いたい。
それしか、このお見合いの突破口が見当たらなかった。
もう二度とこの村には帰って来ないようにと。
お母さんが無事であるようにと。
そんな思いを抱えながら、誰にも何も告げず。旅館の非常階段から、旅館をそっと後にしたのだった。
あなたにおすすめの小説
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?