再会した御曹司は 最愛の秘書を独占溺愛する

猫とろ

文字の大きさ
9 / 26

しおりを挟む
つい返事に詰まり、体を固まらせていると「髪型も可愛いな」と言ってくれた。

そしてカツカツと外へと向かうから、私も慌てて後を追う。

黄瀬社長の横に並び。
ビルのエントラスホールからハイヤーが止まっている正面入り口へと向かう。

「しゃ。社長、今のは反則だと思いますがっ」

「何故? 俺の秘書を褒めただけだ。社員を褒めるのも俺の仕事だよ」

それを言われると、そうかも知れないんですけどっ。笑顔があまりにもプライベートみたいだったんです! 

とは周りの目を気にして言えなくて──ありがとうございますと、硬い返事をして結局は沈黙した。

その間、黄瀬社長は気さくに警備員に声を掛けたり、すれ違うキセイ堂の社員達と軽い挨拶を交わしている。

余裕あるその態度は、大人の色香とかも思ってしまう──のは。普段よりドレッシーな社長の姿のせい。そうだと思うことにしてコホンと咳払いをした。

ビルを出て正面入り口の横。道路に白い手袋をした運転手が黒い高級車の前で執事の如く、立っているのを見つけ。社長をそちらへと案内する。

「あのハイヤーで会場に向かいます。到着は二十分ほどの予定です」

「分かった。手配ありがとう」

また横並びで歩くと社長が喋り掛けて来た。

「パーティーが終わる予定時間は何時だ?」

「八時半の予定ですね。場所はホテルですから、時間が来たら会場の外へと押し出されるので、ダラダラした終わりにはならないと思います」

「なるほど。ではその後、君をバーに誘っても?」

「……え?」

「パーティーが終わったら俺に時間をくれる約束だったろ? ホテルの上にあるバーで待ってる。あそこは会員制のバーがあったから丁度いい」

「え、あの」

「それとも、日を改めて俺と一日時間を過ごしてくれるということだろうか。俺的にはドレス姿の君と私服の君。どちらも魅力的だから、両方に都合を付けてくれると実にありがたい」

まるでスケジュールを確認するかのように。あまりにも滑らかにいうから、私もするっと言葉が漏れてしまった

「勘違いでしたら申し訳ありません。それって──口説いているように聞こえますが」

「あたり」

「!」

「パーティーの後が楽しみ過ぎて、フライングしてみた」

次こそ、私は完全に動揺してしまった。
簡潔にはっきりと言われる方が、言葉の破壊力が高いと思い知ってしまった。

横を歩くこの人は、高校時代のことを間違いなく覚えている。

今こうしてはっきりと私を誘う気持ちを、いま考えていることを、すぐに聞きたい衝動に駆られる。

しかし、ハイヤーの運転手が恭しく車の扉を開けて中に私達を迎えてくれるので、ぐっと口を閉ざして車に乗り込むしかない。
既に行き先は告げていて、シートベルトを着用したら、車はするりと動きだす。

道中。私的な会話をする訳にもいかず。
何か会話をと思っていると、私を惑わす社長のスマホの音が鳴り。そのまま社長は新しい商談先と思われる、人物と軽快にトークを始めた。

私は手帳を開いてスケジュール確認をしている振りをしながら、ページをめくっていた。
あと数時間後にずっと燻っていた高校時代の思いが晴れるのか。初恋は実らないという呪いは、そのままになるのか。

敬慕と恋慕は表裏一体だと思ったり。
それとも大人になった黄瀬君に口説かれてしまうのか。

ネイルを施した指先で手帳をめくれば、未記入の白いページが現れる。

この手帳と同じように、数時間後の未来を私は全く予想出来なかった。それでも未来を手繰り寄せるように、ページをパラパラとめくってみるのだった。
パーティ会場に着くと芸能人。モデル。美容コスメのインフルエンサー。
その他の関係者が映画祭並みの華やかさでホテル会場を彩っており、目を見張った。

私も黄瀬社長もホテルのチェックインが終われば雰囲気に負けるまいと、あっと言う間に営業モードになった。

幾らパーティーとは言え、今私達は会社の代表で来ている。ゲスト気分ではいられない。
ここが格式高い一流のホテルということもあって、自然と身が引き締まった。

それからは黄瀬社長のヴィジュアルの良さもあって、セレモニーが終わったあとはこちらから挨拶周りをしなくても、後から後から人が来た。

それでも、こちらにも挨拶をしたいターゲットがいる。
昭義会長からの付き合いがある人達への挨拶は必須と、私達はタイミングを見計らって、広いホールをあちこと移動して行った。

そうして余興やスピーチ。取材などがあらかた終わると会場はゆっくりとした雰囲気になり。
黄瀬社長はドリンク片手に、次は有名人やインフルエンサーに囲まれ、写真撮影や談笑などに応じていた。

私はそれらを少し離れて見守り。
壁の方へと移動して、喉が渇いたなと思ったとき。

──ドリンクはいかがですか? と、目の前にグラスを差し出された。

思わず受け取り、差し出した人を見るとホテルのスタッフではなく。

赤井奏多社長。その人だった。
びっくりしてして、その場に硬直して赤井社長を見つめる。

少し焼けた肌。華があるくっきりとした顔立ち。
豊かな髪。カジュアルなスーツ姿。私が離れたときと変わらない──いや。目の下に少しクマが出来たかもと目元を見ていると、にっこりと笑われて直ぐに視線を逸らした。

間違いない。目の前の人物は赤井社長だ。

「久しぶり。紗凪も来ていたんだな。見かけてびっくりしたぜ。しかもあの黄瀬社長の秘書とは。再就職おめでとう。乾杯だな」

「あ、赤井社長」

私にした仕打ちを忘れたかのように、笑顔で杯を傾ける赤井社長に嫌悪感を抱くが、ここでそんな感情をむき出しに出来ない。

咄嗟に受け取ってしまったグラスも返したいぐらいだが、私の立場上。それは失礼な行為にあたるのでここは嫌々、にっこりと微笑んだ。

「──お久しぶりです。赤井社長。、今は黄瀬社長のもとで頑張っています。お元気そうで何よりです」

私も杯を傾けこくりとグラスに口付た瞬間。
思ったよりアルコールがキツく。ぐっと、喉につっかえそうだったが無理をしてゴクゴクっと飲んだ。

飲み干して小さく息を吐く。
次は水を貰うという口実で、この場を抜け出そうと思った。

私の飲みっぷりに赤井社長は満足したのか、ずっと軽薄な笑みを浮かべていた。
なんだか嫌な笑みだ。

「キセイ堂はどう? 若い社長は勢いがあっていいよな。ほら、俺との昔のよしみでウチとキセイ堂がコラボしないか社長に言ってみてよ」

「お褒めの言葉ありがとうございます。あとで社長に伝えておきますね」

テンプレの常套句と笑顔を貼り付けて、さらりと流す。

akaiの今の経営は、前にアナリストが言ってたように事業が縮小傾向。
だからこうして私に、いや。勢いのある黄瀬社長に近寄って来たのだろうと勘繰る。

そしてあの不審な電話。それもそちらの差し金かと思ったその時。

「お下げ致しましょうか」とタイミングよく。

私の空いたグラスをホテルのスタッフが目ざとく見つけてくれて、助かったと思った。

お礼を言って自ら水を取りに行くと伝えると、スタッフは笑顔で下がった。

「赤井社長、シャンパンご馳走様でした。酔ってしまうと社長に怒られてしまうので、酔い覚めの水を飲んできます。失礼しますね」

空になったグラスを見せつける。
これでこの場を抜けても不自然ではないし、逆に引き留める方が無粋。
さすがに赤井社長もこの機微はわかるだろうと、視線を送ると赤井社長はやけに笑顔で対応した。

「そうだよな。秘書が不祥事なんて世間にバレて、歓迎する社長はいない」

その言葉に『エッチを誘ってきた人が言う!?』と、口から出そうになった。

しかもお酒を一気に飲んだせいか気分も気持ちも悪く、酔いに拍車が掛かると思った。

それを顔に出さず「では、失礼致します」と笑顔で去ったが、私の背中にべったりと赤井社長の視線を感じて居心地が悪かった。

『あぁ本当に腹が立つ! ここがパーティー会場じゃなかったら水でも掛けてやりたい!』

叫びたい気持ちと気分の悪さを隠して、入り口近くにあるドリンクコーナーに近寄った瞬間。

「あ……」

くらりと、目の前が白くなり。走ってもないのに急に鼓動が早くなってびっくりした。

これは思ったよりアルコールが強かった。
もしくは食事をあまりしてなくて、アルコールを一気に摂取してしまったから、体に負担をかけたと思った。
どちらにしてもあまり良くない状況に内心焦る。

それでも顔を上げたらキラキラと頭上に光るシャンデリアが視界に入り、視界が乱れたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。 ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。 そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。 彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。 「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。

15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜 【完結】

日下奈緒
恋愛
雨の日の交差点。 車に轢かれそうになったスーツ姿の男性を、とっさに庇った大学生のひより。 そのまま病院へ運ばれ、しばらくの入院生活に。 目を覚ました彼女のもとに毎日現れたのは、助けたあの男性――そして、大手企業の御曹司・一ノ瀬玲央だった。 「俺にできることがあるなら、なんでもする」 花や差し入れを持って通い詰める彼に、戸惑いながらも心が惹かれていくひより。 けれど、退院の日に告げられたのは、彼のひとことだった。 「君、大学生だったんだ。……困ったな」 15歳という年の差、立場の違い、過去の恋。 簡単に踏み出せない距離があるのに、気づけばお互いを想う気持ちは止められなくなっていた―― 「それでも俺は、君が欲しい」 助けたはずの御曹司から、溺れるほどに甘やかされる毎日が始まる。 これは、15歳差から始まる、不器用でまっすぐな恋の物語。

愛を伝えられない君にもう一度会えたなら ~エリート警察官はママと娘を守り抜く~

真琴かなめ
恋愛
佐伯グループの社長秘書・藤堂凛音は、ある日現れた無口なボディガード・加藤と行動を共にすることになる。無表情で寡黙な彼の正体は、公安の潜入捜査官――彼女に近づいたのは、任務のためだった。 やがて凛音と加藤は、心を通わせ、一夜を共にする。 しかしその翌日、社長と凛音が何者かに狙われ、加藤は重傷を負って姿を消す。 彼の行方を知らぬまま、凛音は会社を去り、そして新たな命を宿していることに気づく。 すべてを失った彼女は、疎遠だった父と兄のもとへ身を寄せる――。 そして、二年半後。 父のもとで静かに暮らす凛音と娘の前に、警備責任者として現れたのは、名前を変えた彼だった。

再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

松本ユミ
恋愛
夏木美桜(なつきみお)は幼なじみの鳴海哲平(なるみてっぺい)に淡い恋心を抱いていた。 しかし、小学校の卒業式で起こったある出来事により二人はすれ違い、両親の離婚により美桜は引っ越して哲平と疎遠になった。 約十二年後、偶然にも美桜は哲平と再会した。 過去の出来事から二度と会いたくないと思っていた哲平と、美桜は酔った勢いで一夜を共にしてしまう。 美桜が初めてだと知った哲平は『責任をとる、結婚しよう』と言ってきて、好きという気持ちを全面に出して甘やかしてくる。 そんな中、美桜がストーカー被害に遭っていることを知った哲平が一緒に住むことを提案してきて……。 幼なじみとの再会ラブ。 *他サイト様でも公開中ですが、こちらは加筆修正した完全版になります。 性描写も予告なしに入りますので、苦手な人はご注意してください。

一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。 断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。 夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。 パリで出会ったその美人モデル。 女性だと思っていたら――まさかの男!? 酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。 けれど、彼の本当の姿はモデルではなく―― (モデル)御曹司×駆け出しデザイナー 【サクセスシンデレラストーリー!】 清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー 麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル) 初出2021.11.26 改稿2023.10

【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい

魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。 久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。 R18シーンには※をつけます 作家になろうでも連載しております

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

処理中です...