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出会い
⑦
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「遅くなって申し訳ありません。遅くなった理由はこの隣に居る我が妻。環と夫婦としての口付を交わし、婚姻の契りである祝膳を共に食していたからです」
その言葉に騒めきが広間に広がる。
誰もが動揺する。
その中で「な、なんですって?」と姉が意味がわからないと聞き返すが、本当にその通りだと思った。
両親は驚きを通り越してポカンとしていた。
でも、すぐに我に返ったのはお母様だった。その場に立ち上がって、銀の着物を袖を揺らす様は強い風に乱されているようにも見えた。
「か、杜若様が何を言ってるのかさっぱり分かりませんが、今日ここに来た理由は雪華家の娘、円と婚姻を結ぶ為に来たのですわよね!?」
「正しくは婚姻を前提にした、顔合わせでは無かったですか」
どちらも同じことこです! とお母様は剃刀みたいな鋭い声で反論したけど、杜若様は穏やかに艶髪を揺らして軽やかに違う話題を投げた。
「約十七年前ほどから妖どもは力を付けて、この帝都にさえ被害が及ぶほどになって来た。それらに対抗するべく、我ら帝都を守る五家もその他の機関も公的、私的問わず。力を合わせて妖を祓って来た。しかし慢性的な人不足は否めない。そのことは雪華家も存じているはずだ」
杜若様の淡々とした声にお母様は険しい顔付きながらも、肯定をしているようで、ぐっと口を一文字に結んでいた。
「だから政府の方針の一つとして、力がある家同士が結び付くことを推奨した」
その言葉にお母様が目を見開く。
「そうです。仰る通りですわ。これは政府、ひいては帝様のご意向でもあります。それに杜若鷹夜様と言う立場あるお方が雪華家に来たと言うのに、円とは結婚しないと言うことはつまり──日本国そのものに、反旗を翻すと言うことではありませんかっ」
──そうだったんだ。
このお見合いは日本国を守るためのもの。それは凄く誉れ高いものなのだろう。
でもこんなの。おかしい。まるで血統の掛け合わせじゃないか。
姉はこんな結婚で本当に嬉しいのだろうか。
杜若様が乗り気じゃないと言っていた意味が、分かった気がした。
それでも、お母様の言うことも理解出来て気持ちが不安になると、すぱっと不安を切り裂くように。杜若様の声が朗々と広間に響いた。
「私に反抗の意志などありません。政府の意志に従うのも仕事です。だから私はちゃんと雪華家の娘、この環と婚姻を結び妻としました。それのどこが反旗を翻したと言うことになるのでしょう」
「~~ッ! その娘は、忌み子なのです! 見たらお分かりのように雪華家の家にはない、金髪、金眼! 不吉の象徴に決まっています! おまけに禍々しい力まで使うのですよ!」
お母様に睨まれ、ビシッと指を刺された。
思わずその迫力に負けて体を後ろに引いてしまうと、ぐっと杜若様に肩を抱き寄せられてしまった。
その様子を見て姉と両親の顔が益々歪む。
「そうですか。私にはこの金色は、とても美しく見えるのですが」
「そんなの他人だから言えるのですっ! 身内が変化する様なんておぞましい。雪華の家にない色を、疎んで何が悪いというのですか! ……私が、私が産んだ子なのにっ……」
そこでお母様は嗚咽を漏らしながら、畳の上にぺたりと座り込んでしまった。
お母様はガリっと畳に爪を突き立て、肩を震わしていた。
そんなお母様の様子を見て胸が痛くなる。
その言葉に騒めきが広間に広がる。
誰もが動揺する。
その中で「な、なんですって?」と姉が意味がわからないと聞き返すが、本当にその通りだと思った。
両親は驚きを通り越してポカンとしていた。
でも、すぐに我に返ったのはお母様だった。その場に立ち上がって、銀の着物を袖を揺らす様は強い風に乱されているようにも見えた。
「か、杜若様が何を言ってるのかさっぱり分かりませんが、今日ここに来た理由は雪華家の娘、円と婚姻を結ぶ為に来たのですわよね!?」
「正しくは婚姻を前提にした、顔合わせでは無かったですか」
どちらも同じことこです! とお母様は剃刀みたいな鋭い声で反論したけど、杜若様は穏やかに艶髪を揺らして軽やかに違う話題を投げた。
「約十七年前ほどから妖どもは力を付けて、この帝都にさえ被害が及ぶほどになって来た。それらに対抗するべく、我ら帝都を守る五家もその他の機関も公的、私的問わず。力を合わせて妖を祓って来た。しかし慢性的な人不足は否めない。そのことは雪華家も存じているはずだ」
杜若様の淡々とした声にお母様は険しい顔付きながらも、肯定をしているようで、ぐっと口を一文字に結んでいた。
「だから政府の方針の一つとして、力がある家同士が結び付くことを推奨した」
その言葉にお母様が目を見開く。
「そうです。仰る通りですわ。これは政府、ひいては帝様のご意向でもあります。それに杜若鷹夜様と言う立場あるお方が雪華家に来たと言うのに、円とは結婚しないと言うことはつまり──日本国そのものに、反旗を翻すと言うことではありませんかっ」
──そうだったんだ。
このお見合いは日本国を守るためのもの。それは凄く誉れ高いものなのだろう。
でもこんなの。おかしい。まるで血統の掛け合わせじゃないか。
姉はこんな結婚で本当に嬉しいのだろうか。
杜若様が乗り気じゃないと言っていた意味が、分かった気がした。
それでも、お母様の言うことも理解出来て気持ちが不安になると、すぱっと不安を切り裂くように。杜若様の声が朗々と広間に響いた。
「私に反抗の意志などありません。政府の意志に従うのも仕事です。だから私はちゃんと雪華家の娘、この環と婚姻を結び妻としました。それのどこが反旗を翻したと言うことになるのでしょう」
「~~ッ! その娘は、忌み子なのです! 見たらお分かりのように雪華家の家にはない、金髪、金眼! 不吉の象徴に決まっています! おまけに禍々しい力まで使うのですよ!」
お母様に睨まれ、ビシッと指を刺された。
思わずその迫力に負けて体を後ろに引いてしまうと、ぐっと杜若様に肩を抱き寄せられてしまった。
その様子を見て姉と両親の顔が益々歪む。
「そうですか。私にはこの金色は、とても美しく見えるのですが」
「そんなの他人だから言えるのですっ! 身内が変化する様なんておぞましい。雪華の家にない色を、疎んで何が悪いというのですか! ……私が、私が産んだ子なのにっ……」
そこでお母様は嗚咽を漏らしながら、畳の上にぺたりと座り込んでしまった。
お母様はガリっと畳に爪を突き立て、肩を震わしていた。
そんなお母様の様子を見て胸が痛くなる。
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