帝都・狐の嫁入り物語〜嫁いだ先は前世の私を殺した天敵〜

猫とろ

文字の大きさ
18 / 74
束の間の休息

しおりを挟む
雪華家もどうせ知っているだろうが、俺の見合いは今に始まったことじゃない。
前々から杜若家の後援者や貴族院の知り合い達から断り切れず、貴族の令嬢とお見合いをしたことは何回かあった。

しかし、俺の前では皆猫被り。俺が居ないところで我が儘放題。妖についての知識不足。
財産目当てに手っ取り早くと、俺夜這いをかけられたこともあった。
そう言ったことあり、ご破産になったのは言うまでもない。

だから今回、能力があり。妖に造形も深い雪華家との見合いを受け入れた。

杜若家は特に妖と直接対峙する機会が多い。
それは命をいつ落としてもおかしくないと言うこと。だから能力がある家は結婚を早くしろと、政府から急かされるのだ。

しかし何度か痛い目に遭っていたので雪華円の人柄が知りたいことや、調べたいこともあり。
見合いの話を受け入れたのと同時に、雪華家の内偵調査をした経緯があった。

その結果は環と言う、ずっと探していた『忌み子』に辿りついたので大収穫だった。
──これも明日、詳しく環に説明しなくてはいけない。

そんなことを、つらつらと考えていたらスッと手に持っていたグラスが奪われた。

「鷹夜。また何か考えごとしていましたね。眉間に皺が寄っていましてよ。このグラスは私が没収します。考えごとなら布団の中、もしくは可愛い新妻の元でしなさい」

早く寝ろと言うことだろう。
気を使われてしまい、言い返すことが出来なかった。

「失礼しました。早めに一人で就寝します」

俺の言葉に母はわかりやすく、つまんないという表情を隠さずにジト目で俺を見つめた。

「……環ちゃんのところに行けばいいのにって、コホン。なんでもありません。では、私は当分『女中頭、梅千夜さん』で環ちゃんのお世話をしたいから、そうね。環ちゃんには両親は出張中、とでも言っておいてね」

それは環を騙すようで問題があるのではと? と口から出そうになったが、母が頬を膨らませた。

「いいじゃない。あなたのお父様。飛鷹ひだかさんは西へと長期主張中ですし。挨拶は飛鷹さんが帰って来てからでいいのよ。ふふっ。さて、愛する飛鷹さんにお手紙を書かないと。やっといいお嫁さんが来たって報告しなくちゃ。では、おやすみなさい」

カラリとグラスの音を立てて、母は陽気に素早く出ていった。

部屋には静けさが戻り。
俺と微かにウィスキーの香りが肩を並べているだけ。ふっと肩の力を落として、そのまま窓ガラスに体を預けた。
シャツ一枚越しに伝わる、ひんやりとしたガラスの冷たさが気持ちよかった。

あの様子なら父も母の提案に乗るだろう。
両親の顔合わせは先になるだろうが、環と我が両親の関係は良好なものを気付けそうだとホッとした。
それからと──頭が勝手に次の問題ごとの引き出しを開けたので、拒否するように頭をゆるりと振った。

「今日はもう、これぐらいにしとくか」

気がつけば壁の振り子時計の針は明日を超えていた。どうせこれ以上は酔えない。

本邸に戻るのも億劫だし、このまま仮眠室で寝ようかと思うと。扉を叩く規則正しい音がして「杜若様、ご報告があります」と知った声が聞こえた。

どうやら寝るのはもう少し遅くなると苦笑する。

執務室の机に掛けてあった上着をキッチリと着込んで席に着席してから「どうぞ」と扉に声を掛けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)
恋愛
時期外れ、しかも偏差値の高い有名校からなぜかわざわざやってきた話題の転校生。 「どこに隠れていたの?」 そんな彼に、突然探していたと莉乃は背後から抱きしめられ、強引に連れて行かれる。 その日から莉乃は高塚くんに振り回される毎日。 この関係は何? 悩みながらもまるで大事な恋人のように莉乃を扱う彼に絆されかけていた、あの言葉を聞くまでは……。 高塚くんの重愛と狂愛。 すれ違いラブ。 見目がいいだけの男ではないのでご注意ください。 表紙イラストは友人のkouma.作です。

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

処理中です...