選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第一章 棒人間の神様とケモナー

どくきのこがきた

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 さて、そんなことを話していたのが、九日ここのか前。
 嬉しいことにこの九日の間で、三日間ほど雪が降り続け、ようやく降り積もったのだ。この冬の最初で最後の雪合戦と思うと残念だが、三日前にやった。今年も楽しかった。
 
 ケルンが楽しみにしているのをみんな知っていたから、わざわざ休みを取ってくれ、父様が三兄弟をむかえに行ったぐらいだ。
 屋敷が沈んだ雰囲気なのを父様も気にしていたのと、うっぷん晴らしがしたかったようだ。

 まぁ、今年も白熱した。特に問題は…一つぐらい?

 キャスの眼鏡がスペアも破壊されて、ナザドがフィオナから説教を受けてる最中に「キャスばかりずるい…僕だって、坊っちゃまを膝にのせて、勉強を教えたいのに…」とハイライトのない瞳で言っていたぐらいかな。

 その後、膝に乗って勉強を少し教えてもらったら、瞳に輝きが戻ったのだが、一体学園の生徒って、どんな子達がいるのか、不安になってきた…学級崩壊起こってる疑惑が…うちのナザドってば繊細なんだけど。

 おっと、つい、ナザドの闇に思考がいってしまった。
 現実を見ようか。

「はではでー」
 ありゃあ、派手ってか、常識がねぇっていうんだ。

 ヴェルムおじさんが手紙で知らせていた偉い人というのが到着したようなんだが、本当に常識がない。屋敷の門の所に、リンメギンからからのはお客様がきているのだが、その様子がどうもおかしい。

 リンメギン国の旗印…赤色の旗に、金色の金槌と剣が交差して、交差の中心に青い大剣。そして、下部に「我ら物作りの匠」という言葉が刺繍されている。

 その旗を先導するように、ペガ雄に乗っている知らないドワーフ。
 他にも鎧姿のドワーフが十数名つきしたがっている。兵士らしき姿の中、旗持ちの後ろにヴェルムおじさんがいるのがみえた。

 奇妙なのは、今回は訪問と聞いていた。いくら護衛とはいえ、あきらかに今から戦でもするの?というような姿で、みんな腰に剣をぶら下げていた。
 あんな姿で国境を越えてきたんだろうか。いや、偉い人の護衛なら普通なのか?それにしても、全員、遠目からみても顔色が悪い。

「風邪かなぁ?」
 ドワーフだから二日酔いかもな。酒呑みが多いだろうし。

 戦闘の偉い人に付き従うようにヴェルムおじさんが控えているのだが、どうもおかしい。頭がふらふらと止まらない。やっぱり、二日酔いなんだろうか?

 部屋の窓から、そのままのぞいていると、すぐそばにいるエセニアが怪訝な表情をしだした。

 護衛の人にしても、みんな腰元の剣に手をかけている。宰相様がどの人かわからないけど、ペガ雄に乗ってる人じゃないよね?
 先導するってことは、地位が高い人だろうな。この世界では、地位が高い人が先頭を歩いて、そのすぐ側を護衛が歩いて、その後ろに側近が歩くと習ったし。

「あれが偉い人ー?なんで、ペガ雄に乗ってるんだろう?」
 んー。ペガ雄に乗ってくるってのは、ペガ雄が嫌がってたら、乗せないだろうから問題ないけど、あの人が宰相なのかな?
「他の人とちがうねー」
 他のドワーフが筋肉の塊に対して、あの偉い人は脂肪が多そうだ。文官専門なのかもしれない。

 ペガ雄から下馬することもなく、兵士たちも兜を脱いでわきにはさむこともなく、屋敷内に入ってきた。
 おい、さすがに変だ。他人の屋敷に入るときは、必ず下馬をして、兜を脱いで先ぶれを出すのが訪問の礼儀だって習っているんだ。これでは訪問ではない。
 憲兵の家宅捜査のときの兵士の動きじゃないか。

「坊ちゃま、こちらに」
「ううんん、ここでもう少しみてたい。ダメ?」
「…わかりました。けれど、私のそばから離れないようお願いします」
「うん、わかった」

 エセニアの表情から感情がどんどん失われていく。耳はぴんっとたっている。

 玄関前に、父様と母様。それに、カルドが並んで立っていた。あ、屋敷の門の所に、仕事中なのか、クワを持ったランディが見えるな。噴水の陰に隠れているのは、洗濯していたフィオナかな?作業場の屋根の上に、仕込みしているはずのハンクがいたように見えたけど…お菓子は!お菓子はないのかな…。

「これじゃ、お菓子ないない?かなー…?」
 つい、ケルンにもお菓子の欲求が流れてしまった。もっと小さいころの口調に思わずなるほど、ショックを受けてしまう。

 そういやハンクがお客様用に特別なお菓子を作るかもしれないっていった。そのお菓子が何かはわからないけど、今、ケルンの手元にはない。

「お菓子…ないないなのかな…」
「はい、坊っちゃま。ハンクがクッキーを焼いてくれましたよ。秋に作った野イチゴのジャムをつけてお召し上がりください」
「わーい!お菓子!」

 しょんぼりと、肩を落としたが、エセニアは、いつの間にか運ばれていた、クッキーを皿ごと持ってきてくれたことで、今では背筋もしゃきーんとのびた。
 クッキーに添えられたジャムはただの手作りではない。
 このジャムは、ケルンがみんなと摘んだ野イチゴを、みんなでわいわい騒いで作ったジャムなのだ。家族総出で作った思いで深いジャムでなおさら、甘くて美味しい。

 クッキーを口にくわえて、はて?とケルンが首をかしげる。その疑問は俺でも答えることができない。
 あれ?さっきまで、カートなかったよな?扉は開けてないし、誰がいつ持ってきてくれたんだろ?

 んー…しかし、美味しいな。サクサクしてるのと、しっとりしてるのがあるから、たまらない。食欲が満たされたら考えよう。

「お客様には?あげないの?」
「あれはお客様ではありませんよ、坊ちゃま」
「そっかー」

 窓越しに、整列しているお客様(仮)を見ていると、先頭の人が、父様達の前に、ペガ雄を進めた。
 ドワーフの声量は、本当にデカイからよく声が届く。

「我はリンメギン国元帥にして、ドワーフ連合軍総帥であるドリュフ!この屋敷にエフデという者がいるであろう!即刻引き渡せ!」

 にたにたとなんだか、ねばっこい笑いと共に父様たちを見下した。
 あ、この人アカン人や。
 宰相様ではなくて、軍人が来たようだ。

 ドリュフ元帥…髪形も名前からも、キノコみたいだから、キノコ元帥にしようか。毒キノコみたいな派手な服だし、ちょうどいい。

 馬上から降りようともしない態度は、キャスの授業できいたが、とても失礼なことだ。減点だな。せっかくのクッキーが不味くなるじゃねぇか。

「エセニアーありがとー」
 御馳走様でした。お茶美味しいな。
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