選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
24 / 229
第一章 棒人間の神様とケモナー

さらばどくきのこ

しおりを挟む
「わかりました。坊っちゃま、下がっていてください」
 エセニアはそういうと窓を開けて、スカートをまくし上げるなり、足に装着していたナイフを投げつけた。
 ナイフは風を切って、ペガ雄の首輪にまっすぐ向かっていく。ペガ雄に。エセニアの腕前はよく知っている。二十メートル先の木のみを割らずに落とせるほど得意なのだ。
 ギィーン!という、凄まじい音がして、宝石が砕けた。

「ヒヒィーン!」
「うわぁぁぁぁ!」

 宝石が割れた変化はすぐに出た。ペガ雄は、キノコ元帥を振り落とすと、二階の部屋まで飛んできた。うん、喜んでいるなー。そう思いながら、叩かれた頭を撫でてやる。
 かわいそうに…元が魔石とはいえ建築用だ。簡単に削れたりへこんだりはしなくても、金属で叩かれたら、多少傷つくかもしれない。

 生き物ではないペガ雄の場合では自然治癒などできるはずがない。と、するなら削ることになるかもしれない。一部を削って補修で済めばいいが、全体を補修しなければならなくなったら…そもそも、スキルで動いているといわれても、原理が理解できないのだ。
 下手すれば、動かなくなるかもしれないと思うと補修に手を出すのは二の足を踏んでしまう。

 とりあえず、ぱっとみは問題ないようだ。しきりに頭をつきだすのは、痛いからか?
「ペガ雄、痛いの?」
 石像でも痛覚あるかも…なのか?

「いたいの、いたいの…とんでけー!」
「いつもの変わった詠唱ですね。ペガ雄?痛くない?」

 魔法が使えなくても、おまじないなら!…使えるといいな…自信ないんだよ…気持ちはだいぶこめてあるんだけど。
 効果があったのか、顔をすりよせる。んー。もし効いたら、ナザドを入れて二人目…いや、一人と一頭か。
 とにかく、たぶん、横からみたら、かなりシュールな光景だろうな。だって、窓に空飛ぶ馬が首を突っ込んでいるんだ。
 
 ホラーか。いや、そんな物語があったが…あれはベッドに投げ込まれるんだっけか。

「僕、ぷんぷんだよ!めっしたい!」
 おーケルンが珍しくお怒りモードしているな。けれど完全同意だ。俺の思考領域でも可決だ。文句の一つもいいたい。

「ええ。めっしましょう」

 うちのメイドさんも乗り気なんだ。ちょっとニュアンスが違うような気もする。

「エセニアー。下に行ってもいい?」

 とはいえ、下におりていいのかわからない。父様たちは危険があると思えばおりるのを禁止するだろうし、とりあえず、ダメ元で聞いてみる。

「少々、お待ち下さい。『コール』坊っちゃまが、下におりたいと申されておりますが、そちらは片付きましたか?…ええ。わかりました。坊っちゃまと、そちらへ参ります」

 相手はカルドかな?それとも、フィオナかな?

「坊っちゃま。執事長様に確認したところ、旦那様のおそばにいらっしゃるほうが、安心できるとのことで、下におりてもよいとのことです。安全は確保されていますので、参られますか?」
「うん!」

 父様のそばにいた方がいいっえちうのは、いざってときに、どこかに『転移』するつもりなんだろうか?父様いわく、家族全員ぐらいなら『転移』はできるっていっていた。
 ああ、そうか。キノコ元帥も『転移』を使ってきたのかもしれないな。父様いわく簡単だっていっていた。ナザドは苦手だから自分一人が限界とはいっていたけど『転移』使えるわけだし。学園の先生が使えるんだから偉い人のお付きの魔法使いとか余裕だろう。

 おりてびっくり。キノコ元帥は、顔まで紐でぐるぐる巻きにされていた。鎧とかをはがされて、呼吸できるのか、あれ。
 ぴっちぴちの…美味しくなさそうなハム?なんか、紫色になってるけど、大丈夫?

 他の護衛の兵士も抵抗したのか、ちょっと汚れた服装になっているのだが、全員地面に倒れている。何人か髪の毛がアフロになっているのは、フィオナが雷でも落としてたのかな?それか感電させたのかな?雷系の魔法しか使えないけど、フィオナは我が家の『歩く家電』だからな。料理の温めから、自分の息子に物理的な雷を落とすまでなんでもござれだ。

 あっというまに縛って回っているのはうちの料理長のハンクだ。調理で縛ることもあるし手馴れているんだろう。ほら、チャーシュー作るし。ハムも作るから。

 比較的、元気そうな兵士をみてみるが、口をあけてよだれが出ていたり、目の焦点があっていなかったり、不気味だ。
 何だろう…生気がないというか、本当にゾンビのようだ。紐で縛られているけど、キノコ元帥のように、暴れるでもなく、反省しているわけでもなく、他の反応も特にないし…変だ。
 あ、毛を逆立ててランディがキノコ元帥の上に座った。ランディも怒っているんだろうな、遠慮がない。でも、きのこ元帥…潰れてないよな…「めきょぉ!」って聞こえ…なかった、うん。なにも聞こえなかった。
 
 汁がでているけど、気にしない。

 一人何もされず、立ち尽くしているドワーフがいる。
 快活な表情が削げ落ちたヴェルムおじさんが、頭をふらふらとさせながら揺れている。

 ヴェルムおじさんも、やはりおかしい。ぼんやりと立ちっぱなしだ。何も話さない。キノコ元帥に反抗すらしなかったのだ。
 父様が近寄ろうとすると、おじさんが父様に殴りかかった。

「なっ!ヴェルム!やめろ!」

 父様が声をかけても止まらない。体勢を崩した父様に当たるかと思った。その時。

「ヴェルム様、失礼いたします」

 いつのまにか、母様が父様とヴェルムおじさんの間に割り込んでおじさんの拳を片手でいなし、足でおじさんのアゴをけりあげていた。
 けれど、その蹴りをおじさんは避けて見せた。

「あら、けるのは無粋ぶすいでしてよ?殿方とのがたなら受け止めてくださらないと」

 そういって、思いっきり、母様は平手打ちをした。

 速度もだが、振りぬいた音が凄まじい。鉄同士ががぶつかりあったような、ゴンっ!という音だった。

 凄い音がして、痛そうで半泣きになってしまった。エセニアが抱っこしてあやしてくれているが、母様のいうことは、絶対に逆らわないようにしような。

 大人の男がぶっ飛ぶスイングって、どんだけだよ。

「いってぇ…」

 壁をへこませて止まったおじさんから、やっと言葉をきくことができた。生きててよかった。

「ヴェルム!正気に戻ったか!」

 父様がそういって近寄ろうとすると、ヴェルムおじさんは目を血走らせながら叫んだ。

「近付くな…!隷属を…食らった…」

 おじさんは、そういって、自分の頭を自分で殴った。

 隷属の魔法。この国では使う人がほとんど途絶えた魔法とキャスの歴史の授業で習った。

 隷属の魔法は、奴隷にかける魔法らしく、反抗を抑える為らしい。奴隷制度のある国はあるし、奴隷のいる地方もある。奴隷にも生活があるから、奴隷制度を無くせ!とは言わないが…反抗されると思っているから、魔法で従わせるのは、ズルいのではないだろうか。

 状況から推測するに、ヴェルムおじさんや兵士の人に隷属をかけたのは、キノコ元帥だろうな。

「耐性…持ってても…ろくに…」

 おじさんは、凄く苦しそうだ。反抗したら、苦しめる効果があるのだろう。

「待ってろ!すぐに解く!精霊よ、力を貸してくれ『サーヴァントリリース』!」

 父様が魔法を使うと、おじさんは、あの嫌な宝石の小さい物を吐き出した。宝石は吐き出されると、自然とヒビが入って割れた。

「助かった…あいつ、隷属の魔石なんてもの持ってやがった。くっそ…あんなやつにこきつかわれるなんざ、今まで生きてきた中で二番目の恥だ!…だが…これで、証明されたな」

 隷属の魔石なんてものがあったのか!初級魔法のかかった魔石は疑似魔石ぎじませきだったら絵の具の材料でっくってもらっている。
 だから知っている。人工的にできるものではないということを。父様がいっていたのだ。

「いいかい?ケルン。四大元素…火、水、風、土っていうのが精霊様が一番得意なんだ。氷は水に、雷は風に属しているけど、魔石にこうして付与ふよ…効果を与えるのは少し難しい。もちろん、初級なら氷だって雷だって簡単だ。でも、上級は誰にもできない」
「父様も?」
「そう、父様でもできない。だから、難しい魔法は付与できない。すまないな」
「ううん!ありがとう!大事に描くね!」

 そう、お願いした時に聞いていたんだ。
 隷属は上級だ。意識を従わせるんだ。自然にどういった魔石がどっかで発掘されたのだろうか。
 
 しかし、今はわからないことは考えないようにしよう。気になることをヴェルムおじさんがいったのだ。証明されたって、何がだろうか?

「隷属の魔石は、生物にしか効果がでない。つまり、このペガサスは生きているということだ」

 二階の窓からケルンのそばにおりて頭をずっとこすりつけているペガ雄。かわいい。
 あらためていうのってなんだか、嫌な気分だ。いや、前提が嫌なんだ。ペガ雄が生きているって、変だよな。だって、ペガ雄は自由に飛んだりしてるし。生きてるじゃん。

「ペガ雄ー。苦しくなかった?」

 ペガ雄に聞くとペガ雄は、気にしないでというように、顔をすりよせてきた。

「そうかー…ごめんね?僕が頼んだから、悲しいことになっちゃったよね…」

 それは違うぞ。
 俺が提案したばかりに、ペガ雄に酷いことが起こっただけではなく、ヴェルムおじさんにも迷惑がかかってしまった。
 
 俺がもっと思考すればよかったんだ。ごめんな。
「…ううん、だいじょーぶ!」

 ケルンは少しだけ本当にお兄さんになったな。自分の行いを反省して、次からはしないと決めている。それを俺がきちんとサポートしていけばいい。

「すまねぇ…ケルン…まさか、お前の馬を利用されるとは思いもよらなかった…」

 おじさんがそういうが、それこそおじさんは悪くないだろう。戦争を止めるつもりだったんだから。

「そこの転がってるやつは、ドワーフの作品を私利私欲の為に売り捌いている疑惑があってな。戦争支持派でもあったんだ。上手く戦争を回避できたら、更迭して取り調べる予定だった。ペガサスを王都まで連れていってから、やたらと旅の護衛につくとほざいていたが、必要ねぇと断って、内密に国を出たんだ」

 そのういいながら、キノコ元帥を蹴ったら、キノコ元帥が動いた。よかった生きてたようだ。これで事故物件は回避できた。

「ドリュフの野郎は、どこで嗅ぎ付けたのか、襲撃をかけてきやがったんだ。ご丁寧に、隷属の魔石なんてもんを持ってな!俺の弟子どもを人質に取りやがって…宰相殿は、弟子どもと、途中の宿に縛られたままだ。すぐに助けにいかねぇと」

 父様は兵士たち全員の隷属を解くと、兵士たちは全員深く頭をさげた。彼らも被害者に変わりないように思う。
 そのままヴェルムおじさんが、偉そうにしてたキノコ元帥を国に連れて帰るといって、二日後のことだった。

 屋敷にいる全員に『コール』がかかったのだ。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
たくさんのブックマークありがとうございます!
凄い勢いでランキングもあがっていて、嬉しい限りです。
みなさんに楽しんでもらえたら幸いでございます。
だいたい、一日に二、三回の更新予定ですのでこれからもぜひお付き合いください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...