選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第一章 棒人間の神様とケモナー

本当に偉い人

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「謝罪しに行かれる。玄関まで来てくれ。ケルンも連れてきてくれ」

 遠くにいるような、弱い声だったけど、ヴェルムおじさんが、屋敷の全員あてに、『コール』を使ったのだろうか?

「これって『コール』の魔法?」

 そういや、何気に初めて『コール』を受けたわけだ。なんというか、水の中みたいに聴き取りづらいんだな。

「そうだよ、ケルン。しかし…リンメギンの魔法使いの腕前は落ちてる一方だな」

 父様は、ケルンの頭をなでながら答えてくれた。『コール』の魔法で間違いがなかったようだ。
 そのまま、父様に抱き上げられて、玄関前に集まる。すると、すぐに、ゲートの魔法が使われた。

 噴水の前の空間が揺らぎ、一番最初に現れたのは、やたらと立派な鎧を着た老いたドワーフだった。眼光は鋭く、背筋はぴんと伸びている。
 その後ろを総勢三十名ほどの兵士がついてきていた。

 屋敷の玄関前に、やたらと豪勢な鎧…式典用だろうな…の集団と、その鎧より上等な鎧の老人が隊列を組んで、整列した。
 片膝をついて、頭を下げる兵士たちを一瞥いちべつすると、お爺さんはまっすぐに、ケルンたちの方へと足をすすめる。

「この度は、我が国の元帥が、ご迷惑をおかけして、深くお詫びいたします」

 そういって、リンメギン国の紋章のマントをつけたお爺さんが、被っていた冑を脱いで、土下座をした。

 マントに国の紋章…国章だったかな…それをつけることが許されているのは、王族だけで、さらに、マントの色が旗印と同じ色なのは…王様だけだったような?宰相様じゃないよな?

「軍部の動きに気付かず、あまつさえ、エフデ殿の作品を私利私欲の為に売り捌こうとした…愚かなあの者は、厳罰に処すつもりであります。ドワーフともあろう者が、自らの誇りに泥をぬる行為をしただけでなく、皆様に剣をむけたこと、全てのドワーフに代わり、謝罪します」

 父様はかなり不機嫌そうに王様らしきお爺さんをみている。お爺さんは本気で謝罪しているのは、誰もが感じているようだが、お爺さんや、後ろに控えている兵士たち…しかも、ほとんどがかなり高齢な年齢に思えるんだけど…その全員が決死の形相なのだ。
 まるで今から…まさか。

「どうか私共の首でお許し下さい」

 そういって、一斉に全員が素早く剣を抜くと、首にあてがって、首をはね…

 ようとした。


 いつの間にか、王様の持っていた剣は、カルドの手の中に収まっていた。兵士たちの剣は、全部ハンクが取り上げたのか、噴水の横に積みあがっていた。ハンクが取り上げた証拠は、ぽいと高そうな意匠いしょうの剣を投げ込んで手をはらっているから。

 何、あの早業。手品か。
 できる使用人は、手品もできるのか。

「早まったことをするべきではありません」

 父様はそういって、王様の剣をカルドから剣を受けとると、いつの間にか持っていた鞘に納めた。本当に早業すぎて、どうやったのかわからない。凄い手品だな。

「しかし、フェスマルク首席殿…!此度こたびの一件、どのような詫びをいたせば、償えると申されますか!貴方様のお怒りで…我が国は!せめて!私の首で、どうか!どうかお許しを!」

 王様はもう一振り短刀を隠し持っていたのか、首に当てる。王様の言葉に兵士達も、短刀を抜いて王様に続こうとしていた。
 カルドたちが動く前に、もっと早く、俺の思考よりも早く。
 ケルンが叫んだ。

「そんなことしないで!」

 ケルンがそういうと、王様と兵士達は止まった。正直、流血沙汰を子供の前でやられるのは、教育上よくないどころか、トラウマものだ。虎と馬は好きだけど、トラウマは嫌だな。

 ケルンが叫んだ意味を誰もわかっていない。
 だから、きちんと伝えないとな。

「みんなを守ってくれている剣を…そんな風に使わないで!」

 空の散歩に出ていたペガ雄が、ケルンのそばにやってきた。

 ケルンは、刃物は料理や収穫に使うか、的当てで使うものと思っている。あとは、護身用…守ってくれるものとしてだ。エセニアが的当てが上手いから、宝石…いや、魔石か。狙ってもらったのだ。

 俺は剣の使い方を知っている。自殺にも使われることだってある。
 だがな、謝罪として、自殺の道具に選ばれた剣がかわいそうだろうが!

 使い手を守れるように。
 使い手が守れるように。
 そんな職人の祈りを馬鹿にしているようで、俺は許せなかった。ケルンには、この知識は流さないが、俺は忘れないぞ。

「そのお子は…?」

 王様は、父様に尋ねた。何だか、声が震えているようだけど。ペガ雄が、頭を下げるので、なでてやっているから、あんまり、詳しく見えない。石像でもツルツルしてるから、肌触りいいんだよ。

「私の息子です」

 父様が自慢気にいうので、ケルンも胸をはった。

 よし、自己紹介しようか、ケルン!

「ケルンです!五歳です!ペガ雄は僕が作ったの!だから、ちょっと怒ったけど、もう怒ってないから、もういいよ!」

 そこは隠せよ!ケルン!素直にいいすぎだろ!

 ほら、王様たちが唖然あぜんとしてるじゃ。

 土下座された。

「エフデ殿!いえ、ケルン殿!その御言葉は真でありましょうか!」

 凄く、びっくりした。兵士達も、土下座をしているからだ。

「僕が作ったって、信じてくれるの?」

 普通、子供が作ったと思わないだろう。ヴェルムおじさんも、半信半疑だったけど、父様と母様の息子だからな…と、遠い目をして、信じてくれた。

 でも、何で王様はすぐに信じてくれるのだろうか?

「我らドワーフはみな『鑑定』のスキルを持っております。また、生ける石像が、主と認めるのは、唯一制作者のみです。我が国の至宝『ハープのセリエリア』からも聞いております。このペガサスは本物であると。制作者が異なっても、同一のスキルの手によるものであることは、証明されております」

 へぇー。なるほどな。確かに、いうことを聞いてくれてるし、主人として、みてくれているのか…友達としてみてくれてもいいんだけどな。

 王様は、かしこまった様子だった。

「できれば、イムルの奇跡を再度見せてはいただけませんか?」

 そういって、一斉に、ケルンに向けて膝をついたのだ。
 え、なにすりゃいいのさ?
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