選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
56 / 229
第二章 事件だらけのケモナー

帰宅もしくはホラーハウス

しおりを挟む
 ミルデイに背負ってもらいながら、屋敷にたどり着いたら、やはり夕方になっていた。
 歩き慣れていないミルディを思い、休憩をはさんではいたんだが、ミルディは全然疲れていない。むしろまだまだ元気だ。
 一方、ケルンはどうかというと。

「お腹減ったねー」
 
 絶賛、腹ペコだ。
 いや、魔力を使うと疲労が凄いだけじゃなく、腹が減るんだなと学べてよかった。道中、ミルディが鳥を捕まえて食べるかきいてきたが、生肉は遠慮だ。魔法で焼けるとは思うが、練習しないと調整ができずに、高い可能性で消し炭な気がする。

「食べ物は」
「あ、大丈夫!今日はねーごちそうなの!」

 誕生日会でごちそうなんだが…あー…ヤバい。誕生日会が、そろそろ始まるよ…間に合わないな。

 いや、その前に、ミルデイのこととか、どう説明しようか。売られていたから、買ってきたとか、嫌な子供だぞ。

 というより、考えたくなくて逃避していたが、事故とはいえ勝手に抜け出してしまったのは非常にまずい。

 あー…屋敷の門が見えてきた…どう説明しようか…疲れすぎて、頭が回らないんだって…思考が時折、飛ぶんだよ。睡魔というか…思考の加速化が上手くいかない。

 道中、何もなかったんだけど…嵐の前の静けさというか、フラグだよな…そういえばミルディは人間をみたことがあまりなかったのか、街を不思議そうにみていた。
 あのに檻は外から見えないように布をかけてあったから、みえなかったというが…一発殴っておけばよかったな。急いで離れなきゃよかった。

「坊っちゃま、あそこですか?」
「うんー…あの門を入ったらお屋敷だよー…ごめんね?疲れた?」
「いいえ。大丈夫です」

 汗一つかかないミルデイには、悪いけど、街からずっと背負われっぱなしだ。じわじわと魔力の回復がしているようで、まぁ、歩けなくもないけど、それとは別にお昼寝してないから、睡魔が軽めのジャブをしてきている。

 しかし、困った。秋とはいえ、汗をかかないのは少しまずいのではないだろうか。なるべく、ミルディは普通の子として生きて欲しいのだけど…容姿は目立っているけどな。

 もしかしたら、蛇人間になったミルデイは、汗をかかないのかもしれない。
 蛇は汗をかかないからというより、変温動物だからな。人間になったことで、冬眠はないだろうけど…いや、元が魔物だから、元々冬眠はないのかもしれない。

 でも、冬になる前に、様子をみよう。直接聞くのは…なんていうのかな…魔物として見られているとミルディに思ってほしくないし、本人も触れて欲しくないかもしれないからな。

 魔物から、人間になったばかりで、ほぼ、刷り込みのように、ケルンに懐いているけど、落ち着いたら、きっと、本来のミルデイになるだろうからな…狂暴な性格ではないと思う。ケルンに対して、ちょっとした気づかいとか優しいし。魔物についての図鑑とかないからな…学園にはあるといいな。

 図書館とか引きこもりそう。図鑑の海とかだといいな。

 さて、それんしても、二人とも汚れているし帰ったら、風呂かな。それに着替えもしないと…着替え?

 今の服装。

 上着は消えてる。
 シャツ、ミルデイの血がついてる。そういや、治し忘れてて、血は止まってるけど、頬の傷そのまま。

 ヤバい。

 今日は誰々くるかって、屋敷の使用人が全員集合なんだよ!もちろん、三兄弟のあ、ナザドをのぞく、二人も!
 減点されるぅぅぅ!

 安心なのは、ナザドがいないことだ。

「来年からは、僕が!坊ちゃまと、二人で!この僕が!お誕生日をお祝いしますからね!」

 と、珍しく闇のない、いや、病みはあるかもだけど、笑顔でいってくれたから、問題はないんだけど。

 代わりに昨日、欲しかった羽ペンを貰った。珍しい羽で、赤い羽だったから、何の羽?って尋ねたら、犬のっていわれた。

 この世界の生き物は、空に憧れでもあんのか。
 どうして、みんな空に飛ぶんだよ!くっそ!見てぇぇ!いや、どんな犬種なんだろうか。是非、その姿を絵にしたい。

「空を飛ぶ犬ってみたことある?」
「…みたとありますが…危ないです」

 ミルディはみたことがあるのか。いいなぁ。
 なんて、軽くテンションあげて、怒られる心の準備という、精神ゲージをあげていたら、もう、屋敷が目の前にある。

 とりあえず、屋敷に入って…って、何だ?悲鳴?怒鳴り声?
「あれぇ?」
「縄張り争い?」

 ミルディの言葉に頷きかけた。それほどの気迫がここまで届いているのだ。

「貴様ら!何をしていたぁ!」

 まだ、門をくぐって、距離がかなりあるのに、ここまで響く声が…考えたくない。
 このダンディな声は…カ、カル、ドじゃ、ない、よね、ね?

「坊っちゃま!探す!坊っちゃま!どこ!俺、探す!」

 あの、片言だけど大声なのは、いつも小声のハンクか?ムササビマントが見えるが…そんなはず…いや、現実をみよう。屋根の上に、ムササビマント広げてるのは、うちの料理長か。

 どうして、お前まで空を飛ぼうとするんだ。ハンク。やめてくれ!

「もう観念して誘拐犯の共犯者は、今すぐ名乗りでなさい!さもなくば、右端のお前から指を潰していくぞ!」

 エ、エセニアさーん。鬼は鬼でも、それは地獄の獄卒ですよー!

「豆できたのかな?痛そうだからザクス先生呼ばなきゃ!」
 いや、ケルン。あの、呼ばなくていいから。

 アカン。もう何も怖くなくねぇよ。
 こえぇよ。阿鼻叫喚だよ。
 
 屋敷の中から、知らない人達の悲鳴が聞こえてるよ。ホーンテッドなの?お化け屋敷なの?ここ、俺の家だよな?間違えちゃった?

「坊っちゃま…俺と別なとこで、住む?俺、頑張って、坊っちゃまを飢えさせないようにするよ?任せて」
「ミルデイ…僕の家って、やっぱり、変かな?」

 ミルデイが、かなり真剣に聞いてくる。
 プロポーズかな?あはは。
 言葉遣いも崩れてるから、本心なんだろうな。ってか、ヒモになるつもりはないからな。仮にも主といってくれたんだから、ご飯くらいは、財布から…!

 あっ…財布…全財産が…!

 うっかり、忘れてたけど、全財産がなくなったんだよな。ミルディのお給金払えるかな…家のではなく、ケルン専属の執事だから、ケルンが給金を支払わないとな。
 俺の計算だと…まぁ、一ヶ月…銀貨二枚かな?住み込みで、食事と服は父様達が出すとして…あの財布がなくなったのはな…しかし、クレエル大金貨四枚って、金貨四千枚分持って歩いてたのか…子供に持たす金額ではないぞ。

 まさか、うち…実は貧乏ではなかったのか!

 そう色々と思って、全部ひっくるまとめて変だよな?って意味で聞いたんだが、ミルデイが、首をふる。

「俺は人間をあまり知らないけど…ここまで、殺気に満ちているのは、魔物の縄張り争いでもなかった」

 そ、そうなんだぁー。お墨付きありがたくないけど、今日から住むんだよー?
 って、ケルンにいってもらおうかとも、思ったがやめた。説得力なさすぎる。むしろ、このままどこかに連れていかれて楽しいヒモ生活が始まる気がする。

「と、とにかく!玄関まで行けば、たぶん、誰か」
「お帰りなさい、坊っちゃま…って、いいてぇけど…誰だ…俺の主に傷をつけやがったのは…」

 いきなり、目の前に立ちふさがった何者か。
 風も気配もなにもなかった。まるで最初からそこで立っていたかのように、違和感もなく声をかけてきた人物。安心できる声なんだけど、今日だけは背中がびくついた。

 おうふ…この響く野性味ある低音…そして、明らかに殺気だっているのは…一人しかいない。

「や、やっほー!ティルカ!久しぶりー!」

 髭を綺麗にそってきたから、刀傷の残る頬が日に焼けてみえる。何より、フィオナに似ている栗毛。引き締まった身体は、彫像のようだ。無駄の一切ない、全身が筋肉といってもいいほど引き締められた男。とはいえ、やたらと筋肉量があるわけではない。
 すらっとした見た目からは想像できないだろうが、あの腕も触ればまるでゴムのように固い弾力で、ランディを背中に乗せて腕立て伏せができるほどの腕力を持つ。ランディの体重は大人三人分らしい。本人の申告では大人二人と子供一人とかサバを読んでかわいいことをいってたな。

「坊ちゃま?俺の話をきいてますか?」

 にっこりと目が笑っていない三兄弟の長男が、目の前にいる。い、今は会いたくなかったな…あと、心を読まれたような気がするぞ。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...