選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第二章 事件だらけのケモナー

いじわるメイド

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 いきなりのマルメリーの言葉に、ケルンはきょとんとしている。
 あ、養子の意味がわかっていないみたいだ。

「ようしってなに?」
 養子ってのは、血の繋りのないお父さんとお母さんのところにきた子供ってことだ。
「ぼく、養子じゃないよー?父様と母様の子だもん」
 だな。父様にどっちかっていうと似てるけど、母様にも似ているし、何より、あの二人のところだから産まれたんだって、俺には核心できている。
 棒神様ぼうじんさまもいっていたからな。
 良きところへ産まれるって。これ以上、良きところっていうのが浮かばない。それほど、ここはくすぐったいほどの愛情に満ちていて、最高の場所なのだ。

 というか、フェスマルク家の子供だっていうのは、近くの街のポルティの人たちですら知っているんだけど。
 まぁ、あそこは一応、うちの領地の一部?らしい。街全部じゃなくて、少しだけうちの領地で、あんまり気にするなと父様やキャスからもいわれている。レンタル料とかを貰っているのかな?

 それなのに、誰がどう考えたって嘘だってわかるようなことをいうとはな。

 こんないじわるなことをいうなんて、酷い見習いだ。
 ケルンの代わりに俺が怒ってやりたいところだ。ケルンがなんとも思っていないから、仕返しはしないでおいてやるけど。

「確かに、情報にはなかったけど…遠い血縁とか…魔法で顔なんてどうとでもなるし…」

 なんか、ぶつぶついってる。情報とか、どこから聞いたか知らないけど、遠い血縁…そういや親戚とか会ったことないな。

「ここの子だよ?」

 返事がないから、聞こえていなかったのかと思って、もう一度否定した。
 舌打ちされた。

 前言撤回。仕返しになにかしてやる。

「これだからガキは…あらあら、知らされてないなんてかわいそうね…フェスマルク家は子供ができないから、よそから仕入れてきたって噂でもちきりなの。でも…みたとこ本当のようね。才能なさそうだもの」

 嫌味たっぷりにいうと、せっかくの美人も台無しだな。むしろ、嫌味が引き立つ感じ?性格が本当に悪いんだろうな、見習い。
 聞いてたのじゃ、フレーシュ伯爵は温厚で娘が似ているとか、これでは伯爵も性格が悪いとしか思えないんだけど。

 しかし、なんか口調とか、話す内容が精神的にくるというか、精神を揺さぶるというか、わざと泣かせようとしてねぇか?こいつ。
 ケルンは俺が流す知識もだが、こいつの言葉をこれっぽちも気にしていない。
 どんなことがあっても、二人が両親なのは、間違ってはいないからだ。

 しかし…さっきから、髪の毛をふっているのは、なんでだ?ばっさばっさしているけど。枝毛予防?それとも伯爵の娘は人と話すときに、髪の毛を振り回す作法でもあるのか?習ってなかったから、知らないだけか…それか、癖?
 それにしても香水の匂いかな?それともお香?金木犀みたいな匂いがぷんぷんしている。トイレとかに置いておきたいな。

 ついでに流してやりたいな。色々、ケルンに悪態をつきまくっているが、楽しい計画やら、今日の予定やらを急いで立てて、俺の思考を流しまくって、マルメリーの言葉は一切ケルンに触れさせない。
 代わりに、一言一句、俺が記録していく。
 正直、愛玩あいがんやら稚児ちごやら、五歳児にいう言葉じゃねぇぞ。

 キレそうになり、どうやって離れるかを考えていると、マルメリーが不可解なことをいいだしたのだ。

「まぁ、あんたにいったってね…ただ、どんな奇跡か、禁忌の魔法か知らないけど、三十年近く前に産んだ子供がいるって噂もあるのよね…私の掴んだ情報だと、本当の子供は…エフデらしいじゃない。あんた、エフデを知ってる?」
「エフデ?」

 それを聞いて、ケルンはほっとしたようだ。
 心配していなかったが、いくら訂正しても聞き入れてくれなかったからな。しかし、これで安心できただろう。
 
 本当の子供もなにも、エフデは俺。俺=ケルンだっての。
 ケルンが屋敷にいる全員にいったのだ。

「僕の中にねー妖精さんがいてねー、妖精さんがねぇエフデなのぉ!」

 って具合にだ。
 ケルンの中に妖精がいて、その名前がエフデっていうのは、屋敷にいる全員が信じているわけではない。幼児特有の見えないお友達だと思っているのだ。
 独り言も気にされない。

 同年代の友達もいないぼっちだからな!イマジナリーでフレンドなのさ!

 うわ…マルメリーのいじわるよりも、やっぱり地味に友達いないのが、つらい。いや、やっぱり同年代と触れ合いをしないといけないと改めて感じたな。
 いくら俺が思考をしていても、ケルンは人に噛み砕いて説明する能力が低いのだ。家族は察してくれるが、知らない人は解読しにくい思う。幼児同士の会話っていうのは、お互い言いたい放題で、会話の間とか、いい方で読解力とかを鍛えれる環境になるんだがな。

 そう思う理由がケルンが話すエフデの説明だ。
 
「エフデはねー…なんでも知ってるよー。お利口さんでねー」
 よせやい。照れるじゃないか。まぁ、賢いとは思うぞ。暗記なら任せろ。

「お利口?…いい歳にお利口って?」

 いい歳いうなよ。俺はケルンと同じで五歳だぞ!ちょっと数十回分の知識があるだけだ。

「それでねーんーと…ケモ?で、僕とは仲良しなんだよー?」
 ケモナーなのは教えなくてもいい。ってか、将来的にきっとお前もなるんだからな!

「ケモ?と、とにかく、知ってるようね…どこにいるか」
「何をしているんですか?」

 あ、やっべ。エセニアがきた!
 え?

「エセニア?」

 どうしたんだろう。顔がなんだか赤いというか、酔っているみたいだ。お酒なんて飲まないし…体調が悪いのか?

「あら、先輩…何もないですよ。気にしないでください」
「そう…なら、いいわ」

 おかしい。怒られない。知らない人と二人で話なんて普通だと怒るはずだ。
 街での買い物だって。誰かを仲介にして話しているぐらいだからな。一応、うちの領地があるらしい場所だってのに。

「あ、そうだ。先輩。お屋敷の詳しい話をしてくださるんでしょ?」
「ええ…注意事項を…坊ちゃま…お部屋でお待ちしていてください」

 にやりと笑ったマルメリーはエセニアを連れて、屋敷の見学に行く。
 ありえないだろ。

 あのエセニアが、家族以外のいうこと優先しただと!明日はひょうが降るぞ!
「うひょー?」
 あ、違った。ひょうな。あと、ケルン、おっさんギャグをいわないでくれ。地味にいい歳がきいてくるぜ…くっ。

 まぁ、俺のダメージはどうでもいい。今はエセニアだ。どうしたんだろうか。
 普通なら…いや、普通じゃないんだけどな?マルメリーとかを怒鳴ると思うんだ。うちのメイドさんはそれぐらい余裕でやってのける。そうしないのは、逆に違和感がある。

「んー…エセニア、なんだか変だったね?」
 そうだなぁ。だいたい、ケルン一人を部屋に行かせるなんて、エセニアらしくない。 
 なにより、やっぱり風邪でもひいたのか、ふらついていたし。

 んー…あのマルメリーの言動とか…色んな謎があるように思う。

 これは謎を解く探偵が必要みたいだな。

「たんてい?」
 そう!探偵だ!しかも、名探偵!謎を暴くぞ!

「おもしろそー!やるー!」
 よっしゃー!やるぞー!
 いい退屈しのぎになりそうだとか、ちょっと思ってるだけだからな。
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