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第二章 事件だらけのケモナー
目的と薬
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いくら暴れてもエセニアの腕の力はいっこうに弱くならない。外から、落雷の音がひっきりなしに聞こえてくる。ランディも心配だ。それに、睡眠薬を飲ませられた母様もだ。
ああ!みんなが心配だが、ケルンの体は一つっきりだ!他に頼れる人も…父様や、三兄弟は屋敷にいないし…どうすりゃいいんだ!
「まったく!すぐに終わるって聞いてたのに、なんでこうも上手くいかないもんだろうね!」
俺の苛立ち以上にいらだっているマルメリーは、屋敷の扉を蹴りながら開けた。マジか。この分厚い扉を蹴って開けたぞ。どんな脚力をしてんだ、こいつ。
唾を吐き捨て、マルメリーはじろりと屋敷を見渡す。
「こっちは命がけだってのに…おい、ガキ!エフデはどこにいるんだい?フェスマルク家には秘密の部屋があるんだろ?なんだって、あのフェスマルク家だ!建築の奇才が建てた家なんだから、さっさと教えな!」
秘密の部屋?んなもんあるか。
「昔々のお爺様はそんなの作ってないもん!」
ケルンの『造物』スキルがあることを、家族全員が何にも思わなかったのは、ご先祖の一人に『建築』スキルを持っている人がいたからだ。なんでも『魔法の建築家』として少し有名だった人らしい。
そういう制作系スキルを持っていた人がいたので、よくわからない『造物』という制作系スキルがあっても、逆に喜ばれたほどだ。ご先祖様の傑作は、なんでもまだ現役で使われいるそうだ。
そんなご先祖様が秘密の部屋なんて作っているはずがないだろう。あったら、父様が絶対にケルンが喜ぶから教えてくれているだろうし。それっぽいのも、地下にある祝福の儀で使った部屋くらいだが、あそこは秘密でもなんでもない場所だし、マルメリーのいうのは何らかのギミックありのものだろ?
俺だってみてみたいわ。
「ふん!だったら、早く教えな!エフデはどこに隠してんだい!」
髪の毛をばさばさとまた振っている。つけている香水をケルンにかがせているんだろうか?まったく効果が出ていないっていうのに。
あ、エフデ関係の物は全部、ケルンの部屋に置いてあるんだったな。
「えーと…二階の僕の部屋に」
「あんたの部屋かい!…なるほどねぇ…子供部屋にねぇ…さっさとエフデを攫ってとんずらするに限るね」
納得顔のところ訂正する気もないが、お目当ての人物はお前の後ろにいるっていうのにな。
キノコ元帥のようにエフデに何かを作らせるつもりなんだろうが…それにしたって、本性をさらしたマルメリーはかなり荒い気性だったようだな。
とても伯爵令嬢には思えない。もっとこう、荒くれの冒険者みたいだ。歩き方も、がに股だし。なのに、音もたてないのは、礼儀作法を一応受けているからかな?
どうにか父様に連絡をできないだろうか。父様の魔法の実力は知らないけど、マルメリーを倒すぐらいはできるはずだ。でも『コール』は母様かカルドにしかできない。やはり、母様のところにいって、どうにか起こして連絡してもらう方が早いか…ハンクがカルドを正気に戻すのが先か…とにかく逃げないといけない。
どうにか思考を加速させて、いくつか案を浮かべていると、マルメリーは階段を上りつつ、ぶつぶつと罵詈雑言を呟いていた。
「しかし、この犬っころにしても、おかしんじゃないか?普通、不満の少しもあるもんだよ。だっていうのに、まったくない!これじゃ、薬がいい感じに効いてくれないし…早くここからおさらばしないとね」
「犬じゃないもん!エセニアたちは僕の家族だもん!」
ケルンの怒りは全面同意だ。エセニアたちは使用人ではあるが、大事な家族だ。それを知りもしないやつに、犬呼ばわりされて、誰だって腹が立つ。
「犬だよ、犬。飼い主に尻尾を振って生きてんだ…この犬だってあれだろ?下種の枯れたじじいの夜の相手をしてご奉仕してくれんだろ?まぁ、あんたにゃまだはやいだろうがねぇ…きゃははは」
そう醜悪な笑みでいいやがった。
ケルンはよくわかっていないが、こいつはエセニアだけじゃない。父様まで馬鹿にしやがった。父様にとってエセニアは娘のような存在だ。母様だって、エセニアを実の娘のようにかわいがっている。今でもエセニアの誕生日には、二人が贈り物を用意しているぐらいだ。だからこそ、ケルン専属メイドにエセニアをしているのだ。
それにエセニアはケルンだけでなく、俺にとっても姉のようなもんだ。
その姉を馬鹿にされ、父親を下種だと罵られた。
こいつは、ぶっとばす。
「エセニア、放して!」
「ダメだよ、犬っころ。あたしがいいというまでガキを持っておくんだ!」
「はい…坊ちゃま…坊ちゃま?あれ…?」
エセニアに頼んでも、マルメリーの薬が強いのか、ケルンの言葉通りに動かない。
けど、俺を傷つけるような命令は従っていなかった。
つまり、もっと上位の本能に及ぼすような命令だったら…聞いてくれるかもしれない。
思考加速していても考え込んだが、これしかない。まさか、ヒントをマルメリーがいうとは思わなかったが。
「ごめん!エセニア!」
先にエセニアには謝っておく。本当は、こんなことをしたくなかった。
あとで図鑑一週間…いや、三日で勘弁してほしいが、抜きの刑を受けるからな。
「おすわりー!」
前にケルンが読んでいたケルベロスを従えた英雄って絵本で読んだ話に書いてあったのだ。クウリィエンシア皇国ができる前に、暴れていたケルベロスを従魔にした人の話を。
その人は話の中で「上の立場の者のいうことをきく。その中でも一番きく言葉」だと。
試しにやったら、エセニアにきいたのだ。そのあともの凄く怒られてからはやっていなかった。
犬扱いなんてごめんな。
「なっ!なんでいうことを!」
お座り状態のエセニアをふりかえり、ハンクから渡された小瓶の蓋をとった。
おう。すでにつんとくるな。
そのまま、唐辛子たっぷりの液体を鼻にかけた。
「ああああああ!いったぁぁぁあいいいい!」
かけた瞬間から、のたうちまわっている。
ここで豆知識だ。唐辛子は水でも辛みはでるが、油などにつけると辛みは早く出る。そこに、ハンクは何種類かのハーブ…ミントもきついよな…を混ぜた自家製の気付け薬を作ったようだ。恐ろしいのは、分量を整えたら、普通に下味に使えそうなんだ。臭み取りにはよさそう。
まぁ、塩以外のもので臭みをぬいたり、下味の調味料は結構、臭う
しかも唐辛子を鼻に直撃。悶絶するよな。
「ぼ、坊ちゃま!こんなイタズラ!めっですよ!めっ!」
「エセニア!ちゃんと僕がわかるんだ!」
涙をぼろぼろとながしているが、その瞳ははっきりとしている。いつものエセニアに戻ったようだ!
だけど、痛いだろうな。ごめんよ。
「頭がぼんやりしてましたが…私…坊ちゃまに酷いことしてしまいましたか…?」
「大丈夫!だっこしてただけ!それより、ごめんね!」
まったく記憶がないわけじゃなさそうだ…正気に戻ったらフィオナは倒れこむかもしれないな…母様に睡眠薬とはいえ、薬を盛るなんて…これは早めに母様を起こしてこなきゃな。
その前に、まずはエセニアに謝って、マルメリーを。
と、意識を放したのが間違いだった。
「ちくしょうめ!なんてガキなんだ!計画がおじゃんだよ!」
「坊ちゃま!」
マルメリーに後ろを掴まれて…首が!しまる!
「こんなガキにあたしが!失敗なんて!くそが!」
「く、くるしい!」
ケルンを持ち上げて逃走を図ったようだ。人質にする気か!
フィオナは薬の影響か、気付け薬の影響か、いつもの機敏さを感じさせない足取りで、マルメリーに飛び掛かろうとしている。
「坊ちゃまを放しなさい!ただじゃ逃がしませんよ!」
ただ、まだふらついている。
それをマルメリーは見逃さなかった。
「捕まえるなら…こっちにしときな!」
「ふぇっ!」
突然の浮遊感。
ケルンは二階から投げ飛ばされていた。
ああ!みんなが心配だが、ケルンの体は一つっきりだ!他に頼れる人も…父様や、三兄弟は屋敷にいないし…どうすりゃいいんだ!
「まったく!すぐに終わるって聞いてたのに、なんでこうも上手くいかないもんだろうね!」
俺の苛立ち以上にいらだっているマルメリーは、屋敷の扉を蹴りながら開けた。マジか。この分厚い扉を蹴って開けたぞ。どんな脚力をしてんだ、こいつ。
唾を吐き捨て、マルメリーはじろりと屋敷を見渡す。
「こっちは命がけだってのに…おい、ガキ!エフデはどこにいるんだい?フェスマルク家には秘密の部屋があるんだろ?なんだって、あのフェスマルク家だ!建築の奇才が建てた家なんだから、さっさと教えな!」
秘密の部屋?んなもんあるか。
「昔々のお爺様はそんなの作ってないもん!」
ケルンの『造物』スキルがあることを、家族全員が何にも思わなかったのは、ご先祖の一人に『建築』スキルを持っている人がいたからだ。なんでも『魔法の建築家』として少し有名だった人らしい。
そういう制作系スキルを持っていた人がいたので、よくわからない『造物』という制作系スキルがあっても、逆に喜ばれたほどだ。ご先祖様の傑作は、なんでもまだ現役で使われいるそうだ。
そんなご先祖様が秘密の部屋なんて作っているはずがないだろう。あったら、父様が絶対にケルンが喜ぶから教えてくれているだろうし。それっぽいのも、地下にある祝福の儀で使った部屋くらいだが、あそこは秘密でもなんでもない場所だし、マルメリーのいうのは何らかのギミックありのものだろ?
俺だってみてみたいわ。
「ふん!だったら、早く教えな!エフデはどこに隠してんだい!」
髪の毛をばさばさとまた振っている。つけている香水をケルンにかがせているんだろうか?まったく効果が出ていないっていうのに。
あ、エフデ関係の物は全部、ケルンの部屋に置いてあるんだったな。
「えーと…二階の僕の部屋に」
「あんたの部屋かい!…なるほどねぇ…子供部屋にねぇ…さっさとエフデを攫ってとんずらするに限るね」
納得顔のところ訂正する気もないが、お目当ての人物はお前の後ろにいるっていうのにな。
キノコ元帥のようにエフデに何かを作らせるつもりなんだろうが…それにしたって、本性をさらしたマルメリーはかなり荒い気性だったようだな。
とても伯爵令嬢には思えない。もっとこう、荒くれの冒険者みたいだ。歩き方も、がに股だし。なのに、音もたてないのは、礼儀作法を一応受けているからかな?
どうにか父様に連絡をできないだろうか。父様の魔法の実力は知らないけど、マルメリーを倒すぐらいはできるはずだ。でも『コール』は母様かカルドにしかできない。やはり、母様のところにいって、どうにか起こして連絡してもらう方が早いか…ハンクがカルドを正気に戻すのが先か…とにかく逃げないといけない。
どうにか思考を加速させて、いくつか案を浮かべていると、マルメリーは階段を上りつつ、ぶつぶつと罵詈雑言を呟いていた。
「しかし、この犬っころにしても、おかしんじゃないか?普通、不満の少しもあるもんだよ。だっていうのに、まったくない!これじゃ、薬がいい感じに効いてくれないし…早くここからおさらばしないとね」
「犬じゃないもん!エセニアたちは僕の家族だもん!」
ケルンの怒りは全面同意だ。エセニアたちは使用人ではあるが、大事な家族だ。それを知りもしないやつに、犬呼ばわりされて、誰だって腹が立つ。
「犬だよ、犬。飼い主に尻尾を振って生きてんだ…この犬だってあれだろ?下種の枯れたじじいの夜の相手をしてご奉仕してくれんだろ?まぁ、あんたにゃまだはやいだろうがねぇ…きゃははは」
そう醜悪な笑みでいいやがった。
ケルンはよくわかっていないが、こいつはエセニアだけじゃない。父様まで馬鹿にしやがった。父様にとってエセニアは娘のような存在だ。母様だって、エセニアを実の娘のようにかわいがっている。今でもエセニアの誕生日には、二人が贈り物を用意しているぐらいだ。だからこそ、ケルン専属メイドにエセニアをしているのだ。
それにエセニアはケルンだけでなく、俺にとっても姉のようなもんだ。
その姉を馬鹿にされ、父親を下種だと罵られた。
こいつは、ぶっとばす。
「エセニア、放して!」
「ダメだよ、犬っころ。あたしがいいというまでガキを持っておくんだ!」
「はい…坊ちゃま…坊ちゃま?あれ…?」
エセニアに頼んでも、マルメリーの薬が強いのか、ケルンの言葉通りに動かない。
けど、俺を傷つけるような命令は従っていなかった。
つまり、もっと上位の本能に及ぼすような命令だったら…聞いてくれるかもしれない。
思考加速していても考え込んだが、これしかない。まさか、ヒントをマルメリーがいうとは思わなかったが。
「ごめん!エセニア!」
先にエセニアには謝っておく。本当は、こんなことをしたくなかった。
あとで図鑑一週間…いや、三日で勘弁してほしいが、抜きの刑を受けるからな。
「おすわりー!」
前にケルンが読んでいたケルベロスを従えた英雄って絵本で読んだ話に書いてあったのだ。クウリィエンシア皇国ができる前に、暴れていたケルベロスを従魔にした人の話を。
その人は話の中で「上の立場の者のいうことをきく。その中でも一番きく言葉」だと。
試しにやったら、エセニアにきいたのだ。そのあともの凄く怒られてからはやっていなかった。
犬扱いなんてごめんな。
「なっ!なんでいうことを!」
お座り状態のエセニアをふりかえり、ハンクから渡された小瓶の蓋をとった。
おう。すでにつんとくるな。
そのまま、唐辛子たっぷりの液体を鼻にかけた。
「ああああああ!いったぁぁぁあいいいい!」
かけた瞬間から、のたうちまわっている。
ここで豆知識だ。唐辛子は水でも辛みはでるが、油などにつけると辛みは早く出る。そこに、ハンクは何種類かのハーブ…ミントもきついよな…を混ぜた自家製の気付け薬を作ったようだ。恐ろしいのは、分量を整えたら、普通に下味に使えそうなんだ。臭み取りにはよさそう。
まぁ、塩以外のもので臭みをぬいたり、下味の調味料は結構、臭う
しかも唐辛子を鼻に直撃。悶絶するよな。
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「エセニア!ちゃんと僕がわかるんだ!」
涙をぼろぼろとながしているが、その瞳ははっきりとしている。いつものエセニアに戻ったようだ!
だけど、痛いだろうな。ごめんよ。
「頭がぼんやりしてましたが…私…坊ちゃまに酷いことしてしまいましたか…?」
「大丈夫!だっこしてただけ!それより、ごめんね!」
まったく記憶がないわけじゃなさそうだ…正気に戻ったらフィオナは倒れこむかもしれないな…母様に睡眠薬とはいえ、薬を盛るなんて…これは早めに母様を起こしてこなきゃな。
その前に、まずはエセニアに謝って、マルメリーを。
と、意識を放したのが間違いだった。
「ちくしょうめ!なんてガキなんだ!計画がおじゃんだよ!」
「坊ちゃま!」
マルメリーに後ろを掴まれて…首が!しまる!
「こんなガキにあたしが!失敗なんて!くそが!」
「く、くるしい!」
ケルンを持ち上げて逃走を図ったようだ。人質にする気か!
フィオナは薬の影響か、気付け薬の影響か、いつもの機敏さを感じさせない足取りで、マルメリーに飛び掛かろうとしている。
「坊ちゃまを放しなさい!ただじゃ逃がしませんよ!」
ただ、まだふらついている。
それをマルメリーは見逃さなかった。
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