選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第三章 運命の出会いとケモナー

神名継承

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 父様と母様の表情に、ちらっと影がよぎったように思うんだけど、ただの名前でそんなに、問題扱いだったのか?あ、キャスがそういや、直接名前をいってはいけないとかいってたな。と、いうことは、つまり、名前をつけちゃいけなかったとか?確かに、街中に溢れそうだよな。建国王の名前とか。
 あれ?でもこの名前って、両親がつけたんじゃなかったはずだ。

「司祭様がディエルって、名付けてくれたんじゃないの?」

 父様に確認すると、父様は頷いた。そこで、ミケ君が、やはりな呟いて、何事か納得したように見える。
 司祭様が名づけ親になってくれた理由は、聞いたことがないが、よく遊びにくる人だから、父様か、母様が名づけを頼んだのかと思っていた。でも、そういえば、父様も、母様もセカンドネームなくね?何で、俺、ケルンだけにあるんだ?それこそ、謎なんだけど。

 その謎に頭を悩ませていると、ミケ君が、わかりやすく説明してくれた。

「名前は、親がつけるもの、私の場合は、ミケーレがそうだ。そして、時折、神官が名前を授ける、トゥエリ。古代スメイン語で愛しき真のという意味だ。そして、王族は皇子であれば、ウル、皇女になれば、オルテ。最後に家の名がつく。自分で変えれるのは家名のみだ」

 あー。つまり、普通なら、名前・家名つまりは苗字だな。で、人によっては、名前・地位・家名。家名っていうのは、当主が変わった時に、変更できるんだっけか。
 で、問題なのが、名前が二つあって、片方が神官様、ケルンの場合だと、司祭様か。しかも、その名前が問題なのが、司祭様が名付けたということだな。

 あー…わかってきた…つまり『神託』か。

「神官が名を付けるのではない。ボージィン様や、精霊の神託によって名付けられる」

 ミケ君が思った通りのことをいう。

 この世界で、創造神は棒神様だけであるが、それこそ、精霊様は、身近で、崇拝されている。その意思を捻じ曲げようなんていう考えを持つことは、ない。何故、簡単にいい切れるかというと、もしそんなことをすれば、魔法が使えなくなるだとか、寿命が減るだとか、存在が消されるなどという、本当か嘘かわからない、そんな言い伝えがあるからだ。実際、精霊様が怒ると、魔法が使えないということになるそうなので、全て嘘ともいいきれないんだけどな。

「そして、ディエルは、我が王朝の開祖。開祖は神として、祀られる。ケルン、お前はその神の名を継承しているんだ」

 はは、いや、本当、笑いがこみ上げてきそう。これは、父様が王家に近づけさせないようにするわけだ。
 いちゃもんつけられそう。

「んー…」
 つまりだな、その初代の王様とケルンが関係あるって思う人がでてくるってことだ。例えば生まれ変わりだとかな。でも、それは

 俺にはそんな知識は元からなかったからな。

「へぇー…でも、それだけでしょ?名前が同じだけってこと…それがなんなのかな?」

 ま、だからって、関係ないよって、気持ちでいっぱいだった。
 正直、頭こんがらがってるからな。許容オーバーなんて、とっくにしてる。ケルンの顔が半笑いなんだぞ?六歳にして、引いてしまった笑い方覚えてしまうなんてな…もう、驚くこともない。

「ケルン、私の名前を知ってる?」

 突然、それはそれは、素敵な笑顔で、母様が尋ねてきた。知ってるけど、母様?父様が『コール』でカルドに襲撃かかける準備をとかいってるから、そっち止めよう?

「知ってるよ!ディアニア・ノルリスだったんでしょ?」

 ほら、ちゃんと覚えてるよ。親の旧姓ぐらい覚えてるって。たまたま、宿題で、両親のことっていうのがあって、母様の旧姓を知る機会があっただけってのもあるんだけどな。

「本当はね、ディアニア・オルテ・ノルリスというの」

 ん?オルテって、皇女ってさっきメリアちゃんがいってたような、あれ?

「私と先代の王妃…今の王大后は、従姉妹なの。父が…ケルン、貴方のお爺様は、神聖クレエル帝国の先代国王の弟で、私には、事情があって…特別に王位継承権が与えられていたの」
「え!母様、ほんと?」

 はぁぁ!?え、母方のお爺様って、家臣になったんだよな?その時点で王位継承権が無くなるんじゃないのか!
 それに、神聖クレエル帝国の王様の苗字って、クレエルのままじゃないの?勉強したから、覚えているけど、クウリィエンシア王国の前の王朝の末裔…って、先代王妃、今の王太后って!ミケ君とメリアちゃんのおばあちゃんだよな!

 ってことは、俺達、血の繋がりあんじゃん!

「じゃあ、僕とミケ君とメリアちゃんって、親戚なの!やった!これからも、一緒に遊べるよ!」
 そうだな!

 って、二人にいったら、メリアちゃんは嬉しそうに、してくれたのに、ミケ君は何もいってくれなかった。凄くショックなんだけど、嫌われた?嫌われたのかな?うん、ちょっと、泣いてこよ。もう、やだ、彫像す…ん?
 ミケ君がそばまで来て、そっと耳打ちしてきた。

「そうだ、私達は親族だな…だから、その…と、特別だぞ!さっきの礼も兼ねてだ」

 と、手に感触が。

 ひええええええ。
 しいぃぃぃぃぃぃ。
 ぽおおおおおおおお。

 右手に尻尾様が!つ、つるんて!
 やわらけえぇぇぇぇ。
 あと、ミケ君、照れてるの可愛いよ!

「あら、お兄様ばかりずるいですわ…私からも、お礼ですわ」

 首すじにぃぃぃ。
 あなたのぉぉぉ。
 尻尾さまぁぁぁ!

 ひょおおおおお!

「ケルン?聞いてるの?」
「え!う、ううん。何?」

 え?時間が飛んだぞ。いつの間にか、二人とも離れているし、え、夢?白昼夢?いや、尻尾の間隔が残ってっるってことは、気絶してたのか!

 抱きしめて!尻尾の先までぇぇぇぇ!
 ふわっ☆

 って、幻聴が聞こえて、気づいたら、母様の膝なんだけど。

「でね、ノルリス公爵の家を捨てても、継承権がついてまわるなんて、思ってもいなかったのよ」

 ああ、継承権ね。つまり、母様の家のことだとね?今、幸福過ぎて、話半分ほど覚えてないというか、さっきの感触を記録、そう、記憶じゃなく、記録している最中なんだ。魂に刻むぜ!

「でも、ケルンはフェスマルクを継いだらいいの。母様の家は、そうね…エセニアも、ランディも、もちろんミルデイも雇ってくれないの」
「絶対、継がない!僕、そんな家の子にならない!」

 はぁ?何、その家。行かないって。みんな行くならいいけど、そもそも、一度も行ってみたことない国の家とか、親戚でも、ほぼ赤の他人みたいなもんだと思うのだが。

「神聖クレエル帝国もまた、王族が病にかかって、数が減っているのが原因か…」

 ん?ミケ君、そんな、考える猫ポーズするなんで、こっそりスケッチしちゃうよ?

 しかし、病…病か…あれのことだよな。

「ミケ君も、どこか悪いの?」

 さきほどまで、胸をおさえて、苦しんでいたのだから、ミケ君やメリアちゃんも病にかかっているかもしれない。王族だけにかかる病気というものは、なくはないだろ。遺伝しやすい病気とかもあるだろうからな。

「ケルン、私やメリアが病弱であるという噂はきいたことがあるな?あれは、全てが嘘ではないのだ」

 と、いうことは…何か持病があるのか。

「特に、私は病に倒れる回数が多いのだ…だが、ここ最近は落ち着いていたのだがな…」

 むしろ、抑えていたものが爆発したような…でも、たぶん、もう二度とあんなに苦しむことはないと思う。元気な時まで、きちんと治したからね!

「驚いたことに、ケルンが癒しの魔法を私にかけてくれた時に、不思議と今までにないほど、身体が軽くなったのだ。まるで、呪われた我が身が、普通の人のようになったようだ」
「殿下、あまりご自分を卑下するものでは、ありません」

 父様が、ミケ君を少し叱った。父様は、ミケ君のいう呪われた身というのが気に障ったようだ。
 もちろん、ケルンも、ぷんぷんしている。ほっぺを膨らませて、母様に、空気を抜かれている。

 そんなに、猫の姿嫌なの?って、口に出そうだったが、本人が、そのことで悩んでいるようなのに、それを責めていいのだろうか?
 ダメだよな。俺は、その姿が好きだけど、本人は好きでその姿に産まれたわけじゃない。色々、辛いこともあったのだろうな。

 エゴを押し付けようとしていた。反省だな。
 とりあえず、父様にもみてもらった方がいいかも。ミケ君、苦しんでたし…いや、もう診察終えたあとなのか…話の流れ的に、そうなのかも…どんだけ、気絶してたんだよ…マジで。

「ミケ君はね、特に胸が苦しそうだったから魔法頑張ったんだー」
「私はそばで見ていましたが、流石ティストール様のご子息でしたわ!あれほど濃密な魔力をお持ちですもの!余波で私も元気にしてしまうななんて…流石ですわ…」

 メリアちゃんが、そういって見つめてくるので、ケルンが照れてしまった。いや、でも、一人の力じゃないからな?

「でも、最初は上手くいかなくて…お兄ちゃんもね、頑張ってくれたんだけど…ちょっとだけ、ボージィン様にお願いしたの。そうしたら、魔法が強くなるように思って…棒神様の加護があるからかな?ぶわああって光ったの」

 あ、口にだした。
 って!加護のことは内緒だっただろ!

「ケルン!どこか具合は?気分や何かおかしくなったところは?」
「まさか!貴方たち、二人ともなにもない?エフデは?なんともないの?」
 
 あ、やばい。父様と母様がケルンの体に異常がないかを調べ出した。

 おい、ケルン!無事だって母様に早くいってくれ。また心配させたくない。
「うん。あのね。平気だよ。でもねー、エフデが少し疲れたみたい。お兄ちゃんだからって無理したから母様に叱られる!って」
 待て!そこまでいってないから!
「そう…もう、無理ばかりして」

 母様にぎゅぅと抱きしめられながらようやく家族以外がいることを思い出した。
 血の気がさぁぁっと引いていく。
 全部聞かれた。

「あ、あの聞いちゃった?」
 
 ミケ君たちに尋ねると二人は頷いて、それからなんとも思っていないような表情だった。驚いてすらいない。
 逆に、俺たちが驚かされた。

「加護は私にもある」
「私もです」

 いきなり、二人は揃って、そういったのだ。
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