選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
77 / 229
第三章 運命の出会いとケモナー

賑やかな街

しおりを挟む
 新年があけて半月。モフーナでは半月樹はんつきと表している。もう新年の残り香が少しあるかないか程度までになっているというのに、街は賑やかさがまだある。今年は例年にないほどの賑わいだ。

 理由は、俺にある。
 正確にはエフデの新作をわざわざみに、王都からの帰りに立ち寄っている人が多くいるというのが原因だ。

 今回、描いた絵はポルティの教会に奉納した。かなりケルンも頑張って描いた作品だ。構図は俺が指定したが、俺がいうまえにケルンが気に入らなくて、何度も描き直したのだ。

 題名は『もふもふに囲まれる棒神様ぼうじんさま』という一枚の絵画だった。
 教会に奉納したら名前が『慈愛あふれる我らが主神』っていう味気のない題名になっていて、不服ではあるんだがな。

 絵画の内容は題名のとおりだ。図鑑に載っていたもふもふした子犬や子猫、小虎に子兎…もふもふしてそうな動物の赤ちゃんを片っ端に描いてそれにに囲まれてる棒神様を描いた。キャンパスは八十号だ。
 なかなかもふもふが上手く描けなくて納得するまで描いた。

 棒神様は、まぁ、棒人間に凛々しさを出すために、やたらと陰影にこだわったら、劇画みたいになった。
 まるで世紀末に一片の悔いなしって感じで天にむけて腕をあげているようだったが、まぁ、こんなもんだろう。

 不思議なことになんでか、棒神様を描くと喜ばれるんだよな。みんな描かないらしいが、簡単だから逆に難しいのかもな。

 とにかく、そんなわけで、観光客が増えている。他にもエフデの作品をいくつか飾っている場所があるからそこも観光地になっているようだ。
 今まであまり見なかったドワーフが団体で、護衛付きでみにきていたりする。
 それに合わせて珍しいものもたくさんポルティに来ているのだ。

「すごい!火を吹いた!熱くないのかな?」
 火吹き芸か。熱いかもな。真似すんなよ。
「真似しないもん!あ、あっちで音楽がする!」
「坊ちゃま!走ってはいけません。私の手をちゃんと握ってください」
「はーい。ミルデイも迷子にならないようにしようねー!」
 いや、ケルン。お前が一番怪しいからな。手を離すなよ。迷子になったらしばらく外で遊べないぞ。

 あと、ミルデイ。そんな風に恥ずかしそうにするんじゃない。ただでさえ髪ものびてきて、ただの美少女と間違えられて、また変な人に声をかけられるかもしれないじゃないか。もう蹴っちゃダメなんだぞ?

 音楽が鳴っているところにミルデイと手を繋いでむかうと、そこでは楽器が空中に浮かんで独りでに軽快な音楽を奏でていた。
 ヴァイオリン、木琴、鉄琴、フルート、トランペット、ピアノまである。

「凄いね!これって魔法かな?」
 んー。ちょっと、待てよ…似たようなのはあるが、魔法より、どちらかというと魔道具かもな。
「魔道具?」
「坊ちゃま、あそこの看板をみてください」

 ミルデイが指した看板には『自動音楽生成器、注文承ります』と書かれていた。

「どうやら魔道具らしいですね…どのような仕掛けなんでしょうね」
「おー!魔道具!これはお兄ちゃんが欲しがるから買おうかなぁ」
 いや、ちょっと、気になるし、分解してみたいけど、ケルンが欲しがってるんだろ!
「えへへー…いくらかな?」
「坊ちゃま…金貨三十枚からとあそこに」

 ミルデイが指した看板の下に小さく『金貨三十枚からです。貧乏人は諦めておひねりを払うです』と別人の字で書かれていた。

 金貨三十枚…買えなくはないんだけど、セットじゃないとあんな派手なのは聴けないよな。

「購入は可能だと思いますが…」
「そうだね…一つだけ買う?」
 そうだなぁ…分解ありきで買うならヴァイオリンがいいな。他の楽器よりはわかりやすいだろうし。

 木と金属の二種類の楽器を使って同じようにしている。ということは、木でできたヴァイオリンを調べた方がわかりやすいだろう。金属だったら、溶かすときに細工をしているかもしれないが、木製のヴァイオリンならピアノと違って分解しても隅々まで短時間で調べれる。

「では、少し」
「あのぉ」

 ミルデイが店の店員と話そうとケルンと一緒に向かおうかとすると、ふいに声をかけられた。
 さっきまで確かに誰もいなかったケルンの隣でだ。

「わっ!」
 うぉ!なんだ!誰だ!幽霊か!塩持ってこい! 

 幽霊かと思ってよくみれば、ちゃんと足がある生きた人間だった。
 本当に突然現れた人は若い男の人だ。ティルカぐらいかな?いや、ティルカの実年齢だと三十代なんだけど、見た目の方だ。モフーナでは見た目と年齢は合わない人が多いからな。
 うちの母様とかな。
 たぶん、この男の人はティルカと同じくらいの年齢なんだろうな。

「どちら様ですか?」

 ミルデイがすぐにケルンの腕をひき、背中に庇う。確かに急に現れて怪しいが、まだ不審者と決まったわけではないが…まぁ、怪しくないこともないか。

「あ、ごめんねー。申し訳ないんだけど」

 男性はへらへらと困った顔で…あれ?この人…よく整っているが、金髪に緑色の目か…珍しくはないんだけど、どっかで見たような顔立ちだ。しかも、ごく最近。

「ここ、どこだか教えてくれないかなぁ?」
「迷子なの?」
「そうかもぉ…どうしよう…」

 そう笑いながらポロポロと泣き出した。
 なんで、泣いてんの!
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...