選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第三章の裏話

追話 エセニアの冒険 ②

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 ポルティの検問所まで連れてこられ、そのまま奥の個室へと通されました。尋問を受ける部屋だったように思うのですけど、こんな所で会わせたい人とは?

「一兄さん。どなたと私を会わせるつもりなんですか?」

 兄と違って私は犯罪者の知り合いはいないのですけど。

「あー…とりあえず、お客様だと思って接してくれたらいいぞ」
「それは…お屋敷にとってのということですか?」
「ああ…意味はわかるな?」

 兄が珍しく念を押すということは、よほど高貴な方が部屋の中におられるようです。傍若無人が歩いているような人なのに、ここまで気を使うとは、坊ちゃまに関わるどなたかということでしょうか。

「そのような方がどうして私に?」

 私はただのメイドです。身分が高いわけでもありませんし、兄たちのように国へと勤めに行ったことはありません。

 メイドでは兄たちのように出稼ぎはできません。

 たまに勘違いをされた貴族の方が父や母に縁談を持ってきているようですが、兄たちはあくまで出稼ぎです。国に仕えているのではなく、勤めにいっているのですから。

「本当はナザドを…って思ったんだけどよ…あいつ今だいぶキレてるからな。下手に火がつくと国が半分くらい吹き飛びそうでな」
「…勘ですか?」
「おう。奥様も同意見だ。旦那様からは一切の情報を渡すなと厳命されたしな」

 三番目の兄の名前が出ると、少し眉を寄せてしまいます。
 今は人間らしくなりましたけど、血の繋がった兄ながら、あの人は色々と人智を越えることがあります。
 旦那様に一つだけ勝っている属性がある時点で、普通ではありません。

 それに一兄さんが勘といいました。外したことがない勘ですから、国が半分吹き飛ぶのでしょう。
 奥様までもが同意見ならなおさらです。

 坊ちゃまがお屋敷からいなくなってしまったあの事件。
 大事な坊ちゃまのほほを、傷つけた下衆どもは死んだそうですが、あの件を三兄さんが聞いてしまえば、ポルティはよくて半壊…いえ、地図から消えますね。

「坊ちゃまを守れもしない街なんて必要がない」

 などといいながら魔法を行使するでしょう。

 せっかく、あそこまで大きくした街を壊すなんて…もし坊ちゃまが欲しいものがないからと王都なんかに憧れでもしたらどうするつもりなんでしょう。

 古びた大聖堂しかなかった小さな街を建物だけ大急ぎで旦那様と作ったのに、愛着がわかなかったのかしら?
 移民も増えてきてはいますが、引退した冒険者が多いですし、フェスマルク家に逆らう者は街にはいないようにしたのに。

 それにしても、三兄さんの怒りはなかなか下がらないようですね。
 気持ちはわかりますが、深夜に坊ちゃまの部屋の前をうろうろしているのを見かけるのもうんざりなんですが。

「三兄さん、一昨日も坊ちゃまの部屋の前をうろうろしていたの…一兄さんから注意してもらえませんか?」

 一兄さんのいうことなら、多少は聞いてくれる。
 一番はもちろん、坊ちゃまですけど、ケルン坊ちゃまは三兄さんが無理をしているとわかれば、心配をするでしょうし、そうなればエフデ様がケルン坊ちゃまになにかの知恵を貸すかもしれない。そんなのずるいです。
 三兄さんは、好きで出ていったんですから、今さら後悔したって遅いんです。
 それに以前は坊ちゃまに興味がなかったんですから。

「めんどくせぇ…あいつどんだけこじらせてんだよ…」

 そういっていますが、兄妹の中でも拗らせている二人が比べあってもどっちもどっちです。

「一兄さんもでしょ?」

 そういえば、すぐに一兄さんは否定します。長兄だから常に冷静だといいたいようですが、一兄さんはある意味で三兄さんよりも狂暴です。

 次兄さんが一番常識があります。まぁ、あの人も坊ちゃまを素直に甘やかすような人ではないので、ある意味拗らせているのですけど。

「あ?俺は別に…坊ちゃまは俺の主だし…そりゃ、エフデ様は特別だけど…お前だってそうだろ?」
「…うん」

 つい、言葉が砕けてしまいます。屋敷の外ではフェスマルク家のメイドとして言葉づかいには気をつけているのですが…やはり、ダメね。エフデ様のことになると。

「わりぃ」

 一兄さんが謝るけれど、私は気にしていない。それどころな、一兄さんは当時の記憶が鮮明なぶん、私なんかよりつらいはず。
 それこそ、いまだに夢にみるから、王都から走って坊ちゃまに会いにくるのを坊ちゃま以外のみんな知っているもの。
 坊ちゃまと朝食を食べているけど、毎回、坊ちゃんの顔をみるまで青ざめている。

 きっと一生治らないでしょうね。もし同じことがあったら…私もそうなっていたもの。

「いいの…私ね、ミルデイに全部託してるの」
「ミルデイにか?」
「ほら、三兄さんだけでしょ?学園に行ったのって…私も行かせてもらえたけど…なんだか申し訳なかったんですよね」
「そうだな…あのときは、特に…な」

 学園に行くか?
 と旦那様や、奥様に尋ねられた。けれど、私は断った。

 一兄さんのように武の天才ではない。
 つぐ兄さんのように知識に飢えてない。
 三兄さんのように魔法の才能はない。

 私には一緒に行けた幼馴染はいない。
 私だけが行くなどできるわけがない。

「だから、私の代わりっていうのかな?…託しているの」

 でも今は…坊ちゃまとミルデイをみると、もしかしたら、こうなっていたのかな?って、夢をみてしまう。

「それで、三兄さんですが…」

 うっかり外であるのに、家族だけの話をしてしまっていた。
 頭を切り替えないといけません。

 一兄さんについでとして、気になっていたことを聞くことにしましょう。

「三兄さん…まだあの女を生かしてるんですか?」

 あの暗殺者。裏ギルドからやってきたあの女。
 依頼者の情報を得るために引き渡しましたが、両親も私も…できれば己の手で始末をつけたかったのですが…どこで情報を得たのか三兄さんが横からさらっていったらしい。
 尋問が得意とは知りませんでしたが、容赦はなかったでしょう。

 それと、三兄さんの鬱憤晴らしに使われたのなら、きっと楽に死ねないでしょうから。

「頑丈みたいだからな…まぁ、坊ちゃまを二階から投げたんだ。楽にはならんだろうな」
 
 一兄さんが嫌そうな顔をするということは…三兄さんが契約している精霊までもが喜んでいるということですか…同情はしませんが、あの精霊は恐ろしいですからね。

「んじゃ、いいな?…失礼します」

 一兄さんにしては珍しく、一応は声をかけ、返答を待たずに入室していきますが…いいのでしょうか?

「失礼します」

 一兄さんについて入室すれば、せまい部屋に机と椅子が置いてあり、椅子に座った男性が私をみた。

「こんにちわぁ…よくきてくれたねぇ」

 笑みを張り付けたような男性。瞳はまるでこちらを値踏みするかのような感情がこもっていない瞳です。
 貴族…なんでしょうか。気品はありますが、それよりも独特の威圧感があります。

「君がティルカ将軍の妹さん?いやぁ、素敵な妹さんだねぇ」

 男性がそういっているが、世辞だとすぐにわかります。
 しかし、この男性は何者なんでしょう。

「あ、自己紹介をするねぇ…俺はこの国の」

 突然、ぞくりとするほどの威圧感を増して、男性はにやりと笑った

「王様だよぉ」



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最近、体調がよくない日もありますができるだけ毎日投稿をしますので、よろしくお願いします。
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