選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第四章 学園に行くケモナー

入学日和だ

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 春が訪れて今は四樹月。
 四樹月は、特別な月で、物事を完璧にこなすといわれていて、引越しとか、結婚とか、まぁ、祝い事をするのに最適な月なのだ。

 四つの元素精霊が基礎であるから、四という数字は、この世界においては、縁起が良い数字なのだ。

 ということで、入学シーズンなわけだ。秋前にも途中入学というのがあるらしいが、友達作りは早いことにこしたことはないだろう。

「すごぉーく人がいっぱいだね!お兄ちゃん、ミルディ!」
 いっぱいというか…多すぎというか…とりあえず、ちゃんと、前をみろよ?
「坊ちゃま。手を離さないでくださいね」

 そんなわけで、学園に入学するため、サイジャルにきたわけだが、現在の俺たち、ミルデイとケルンの二人は仲良く橋の上で人波にもまれている。

 ケルンの周りはミルディが確保してくれているから窮屈ではないが、他の人は大変そうだ。ケルンの周りで気絶する人がでているみたいだしな。

 同じぐらいの子供に混じって、使用人の大人がいたり、本当に、何、これ…人多すぎない?一応、これでも人数制限あるんだよな…そう聞いたから二人できたんだけど?

「お兄ちゃんも一緒!三人できたの!もう!」
 えーと…三人でな。

 本当は屋敷から何人かついてくるといっていたんだが、やめてもらった。
 とくに、父様。
 入学者は学園の門を通ってくださいって聞いてたのに、直接入ろうとかいうもんで、なんとか説得させてもらった。
 最後まで心配していたから、橋の前に送ってもらってからもついてきそうになっていたんだけど…さすがに父様をこんな人波にいれたいとは思わない。仕事で大変そうだったし。

「いいか?なにかあったら、ナザドにいうんだよ?ケルン。エフデのいうことと、ミルディのいうことをきちんと聞くんだぞ?迷子になってはだめだぞ?それから、エフデ、お前も急に色んな物を作ってはダメだぞ?父様と約束だからな?」

 と何度もいってたが、俺をケルンのようにマイペースだと思っているようだ。
 俺はケルンよりもマイペースではないんだがなぁ。

 そもそも、こうしてたくさんの人がいても、門の前でみんな離れていくのか、学園に入る流れと、帰っている人の流れとの二つができている。
 迷子になることの方が難しいんじゃないか?

 まぁ、こうして、ミルディと入学式にむかっていくが、学園に入れても入学式場は入学者しか立ち入れないんだし、父様たちはきても外で待つだけだったろうしな。

 あ、ミルデイは、執事だから、特に問題はないんだけど、無事に入学までこれたんだと思うと嬉しいを通り越して、達成感しかないな。

 いやー…本当に入学できたんだな…うん。
「大変だったかなぁ?」
 試験はそうでもなかったんだけどな。試験は、な。

 簡単に入れると思っていたが、入学するためには、試験を受けなければならなかったのだ。

 まず、おかしいなと思ったことだが、申し込みぎりぎりで間に合った。
 あと一日ずれていたら、ダメだったらしいけど、間に合った…というか、司祭様が手続きをしなさいと持ってきてくれたから、わかった。

 父様がうっかり忘れていた…ってことらしい。

「父様も、うっかりさんねー」

 とケルンがいっていたが、あれは確信犯だろう。

 ついでとばかりに、ポルティ大聖堂にいって、手続きをしたあと、入学試験になった。

 凄く簡単で、水晶玉に手をかざしたら、入学許可をすぐに貰えた。まぁ、祝福の時に、五千という数字がでていたから、誰も気にしてなかったんだけどな。

 魔力の量と知識があれば通るとのことだったが、キャスが試験として出してたのが入学試験とは思わなかったな。

「旦那様はきっと反対するでしょうが…私は坊ちゃまには自由でいてもらいたいのです」

 なんていうから、ケルンも嬉しくなったけど「…まぁ、外が酷ければお屋敷や領地の素晴らしさがわかるでしょ?」って小声でいってたのはよくないと思うぞ。

 あと、問題というか、教会でも試験を阻止しようとする父様を監視するために司祭様がポルティ大聖堂にもついてきてくれていたんだが、ポルティ大聖堂の司祭さん達が、慌てていたので、時間がかなりかかったぐらいだ。
 司祭様をお医者さんと勘違いしてる人多くて、ケルンが何度もほほをふくらませてたがな。

「司祭様なの!お医者様じゃないの!」

 と、怒っても、大人はスルーしていた。
 だって、ゲカーって、外科のことだろ?外科手術がこの世界でも行われていたのかと知れたのは、よかったのだが、司祭様って、その外科の先生に似ているんだろうか?

 変だな。
「へんだねー?」

 と二人で試験を終えたあと悩んだ。ゲーカーだったかもしれないが、なんのことだろ?

 あ!隣の人がよろけて危ないぞ!ケルン!
「あっ」

 足を踏まれ…ミルデイ!わき腹を回し蹴りしたらダメだ!

「危ないですね」

 いや、ミルディ?あのな…ああ…ほら、将棋倒しみたいに…救助してあげたいけど、また流されてるから…すまない。

「ミルディ?だめだよ?ミルディが怪我したら、僕、悲しいから」
「坊ちゃま…」

 あ、ミルディが赤面して微笑みしたのをみた人が固まってしまう。ああ…急に止まるからまた事故が…これは注意しないと。

 ほら、ケルン。橋から落ちないようにしないと…あの人みたいに落ちたくないだろ?だから、前に集中だぞ?
「はーい!ミルディ、お兄ちゃんがね、前に集中しなさいってー。橋から落ちないようにって」
「そうですね。しかし…本当に人が多いです」

 とはいえ、危険はないんだがな。橋には魔法がかかっていて、落ちても出発地点に戻されるだけらしい。しかし、もう一度人波に飲まれるのは嫌すぎる。落ちないにこしたことはない。

 前になかなか進めないという事態ではないけど、立ち止まれないっていう事態はある意味問題だな。
 なんで一本しか橋がないんだろうか?

 目指す学園は橋の先の島にある。というよりも、サイジャルが湖の中に浮かぶ島なのだ。この湖もかなり広い。なにしろ先が見えないんだからな。
 端にかかっている魔法のおかげでかなり早くすすんでいるが、普通に歩いていたら何時間かかるだろうか。
 
 サイジャルは湖にあるのだが、船がない。それどころか、橋が一本だけかかっているだけだ。
 なかなか不便だ。

 ん?ケルンが珍しいことに緊張していないか?

「…緊張するねー」
 そうだなぁ。考えれば初めての学校だもんな。

 さて、今後のケルンの学園生活をいかに楽しくさせるかってことを踏まえ、入学期間までに起こったいくつかをもう一度整理しよう。
 本当に、驚きしかなかったんだ。


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四章開始です。
リメイク前とだいぶ変わったのでプロトの見直しをしていました。
個人的に四章は好きな話があるので、ぜひ読んんでいってもらえると嬉しいです。
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