選ばれたのはケモナーでした

竹端景

文字の大きさ
137 / 229
第四章 学園に行くケモナー

杖を狙う人

しおりを挟む
 杖の謎行動をサーシャル先生も気にしていないのか、たまたま目に入るときに動きを止めるのか先生はそのことに触れない。 

 それよりも、先生の顔が少し怖くなった。

「これは…本当に、貴方が作ったの?」

 杖を持ちながら、先生の目の色が変わる。
 木の質を確かめるように、何度か握りつつ、表面に彫ってある彫刻を食い入るように見ている。

「あの正体不明の発掘品が、のはわかるわ。でも、貴方の年齢でこれほど精密な彫刻を…霊木にできるほど技量が?お家の所蔵品だといわれた方が納得できます」

 霊木に彫刻をしたことがそれほどのことだったのだろうか。ケルンが作ったとは信じていないかのようだ。
 疑われるのも嫌だからある程度の事情を話すか。

 エフデのことをそれとなく伝えようぜ。
「うん。あの、学長先生から聞いてませんか?」
「学長から?…いいえ。何も聞いてないわ」

 サーシャル先生は、さらに不審そうな顔をした。

「やはりすげ替えですか?子煩悩な家系ですし…はぁ…」

 疑われているだけではなく、まるで父様が杖を用意したと思ったようだ。
 確かに父様なら頼めば用意をしてくれるだろう。
 だけど、不正は嫌いだ。
 疑うほどの品だと思われるのは嬉しいが、ちゃんと話をしておこう。

 おい、ケルン。俺の弟子っていっとけ。お前や父様が疑われたままなんて、俺は嫌だからな。
「うん!先生!僕はお兄ちゃんの一番弟子なんです!いっぱい教えてくれたから、僕だって作れるんです!」
「お兄ちゃん?」
「エフデです!」

 嘘はいっていない。ケルンは、知識を俺から渡されてやっているのだ。ただ、ケルンがエフデを兄といったとき、一瞬、目つきが変わったような気がする。
 先生の勘なのかわからないが、それに引っ掛かったのだろうか。

「なるほどねー…エフデの弟子…兄、ね。噂では聞いたけれど、師匠級の人族は珍しいの。徒弟で引き上げるとして…スキルは『彫像』か『木工』かしら?…あ!スキルのことは、聞いてはいけないことだったわ!…ごめんなさいね…あんまりにも、びっくりしちゃって」

 家名を聞く以上に、スキルのことは、内密にしないといけない。これは、サイジャルではなく、どこの国でも同じ常識だ。系統がわかれば、対策されるからな。
 サーシャル先生は、不思議に思わなかったところを見ると、学園を立て直した大嵐とかいう二つ名の先祖の『建築』スキルがあったことから、製作関係のスキルが発現していると思ったのだろう。外れてはいないが、当たりでもないな。

 師匠級とか徒弟とかいう初めて聞く単語もあったが、師匠と弟子という意味か?師匠がなにかすれば弟子のスキルの習熟を上げれるみたいにいっていたが、どうすればいいのか聞いておきたいな。

 ケルンを誰かに弟子入りさせて、『造物』スキルを習熟させていけば、もしかしたら、俺と意識を統合させることができるかもしれないからな。

「お兄ちゃん…」
 ん?
「知らない!」
 なに、怒ってるんだ。

 小声であるがケルンが怒っている。何か気に障ることでもあったかと周囲を見聞きするが、先生が杖を見ているぐらいだ。会話を変にとられていないのは先生がケルンのことを忘れているからだ。

「素晴らしい彫刻だわ…エフデの弟子でこれなら本人に注文したらもっと素晴らしい…あら…この宝石…宝石にしては何かあるわね…微弱だけど…まさか!」

 ブツブツと自分の世界に入っていたところをみると杖マニアなのだろう。
 おかげで助かったというのもあるが、それにしても先生の様子はおかしい。

 古竜王の涙石を見て、先生の顔は、見たことがない…そうだ。涎を垂れ流さんばかりの飢えた獣のような顔だったのだ。

「ケルン君…この石は、ティストール様から貰ったの?」
「いいえ。父様からは貰ってません。街で買いました」

 ウロを隠すのに、お婆さんから、買った石が綺麗だったから嵌めたのだが、宝石だったのか?
 先生がギラギラとした目で見るということは、ただの宝石ではないようだ。

「魔石…ではないわ。魔封じの石?…でも、こんなに大きな物があるわけないわ!」

 魔封じの石?魔除け的なものなのか?
「魔封じっ?」
 わかんねぇな。
「それを確認するためにも少し、魔法を使ってもいいかしら?」
「ど、どうぞ」

 有無をいわせない表情だったので、即答をした。

「精霊よ、答えて『サーチコレクト』…!重ねて、答えて!『マジックオープン』」

 サーシャル先生が、魔法を発動すると、『サーチコレクト』の魔法で涙石だけでなく、杖全体が光に包まれ、『マジックオープン』の魔法は、先生の目の前に、幾つかの魔法円を浮かべた。
 重ねて魔法をかけるってのは、結構疲れると、父様がいっていたんだけど。先生って、ひょっとして、凄い先生なのかもな。

「相変わらず杖の材質は不明ね…石は…魔封じの石!でも、魔法が読めないなんて…もしかしたら、この魔法…」

 驚嘆している先生と、置き去りのケルン。
 あと、嵌め込んだ涙石を外そうとしているみたいだけど、外せないと思う。かなりピタッと嵌まってしまっていて、杖を壊さない限りは取れそうもないからな。
 というか、勝手にはずそうとすんなよ。

「あのー…先生?」

 人の物を勝手に壊そうとしないでくれますか?ケルンが初めて作った杖なんだぞ?
 あと、葉っぱがブンブンして嫌がってる。祟られる前に手を引くのをおすすめします。

「…でも…フェスマルク家の家宝…いや、先生からは…どんな…研究」

 無我夢中なのか、思考の波に飲まれてしまっているようだ。俺が動物見た時も、こんな感じなのだろうか?
「もっと元気いっぱいだよ。楽しそう!」

 ケルンがあっけらかんと肯定する。若干…そう、若干!ダメ人間に見えてしまうから、今度からは自重しよう。

「なんで外せないの!精霊よ!答えて!『リムーブ』!『リムーブ』!もう!」

 なんか乱暴に魔法を連発しだしたんだけど。

 止めよう!
「先生!」

 机をたたいて、大きな声をしたら、ようやく、先生は、こちらの世界に帰ってくることができた。
 そんなに、珍しい物だったのか?ちょっと、狂気染みてたぞ。

「あっ!ご、ごめんなさいね!つい、夢中になっちゃってたわ!ところで…この石…譲っては」
「無理です」

 懇願する先生の手から、机に飛び乗るようにして杖を奪い返した。行儀はかなり悪いがそれどころではなかった。目つきが本気だったからな。

 最悪、石だけだったら良いけど杖を壊して譲るのは、無理だな。ケルンが頑張ったんだぞ?
 なにより元呪木さんが、祟らないとも限らないじゃないか。

「はぁー…そうよね…下手をするとナザド君の野郎が、うるさいわね…」

 ナザド君の野郎…?ナザドのことを知っているとは、思っていたが、親しい関係なのか…はっ!ひょっとして、キャスに続いてナザドにも春が…!ティルカ!長男のお前が負けているぞ!

 わたわたと慌てて、ティルカに『コール』か、手紙を出そうかと考えていると、サーシャル先生は、さっきまでの興奮が嘘のように、静かにいった。
 まるで仮面のような表情を削いだなんの感情も伝わらない顔だった。

「この石には、とても強い魔法が込められています。どんな魔法かは、私には解読できませんでした。だから、危険性もあるということは、覚えていて欲しいの」

 先生でもわからない魔法が、この石に…?でも、危険なものなのか?
 手元にある古竜王の涙石を見ると、母様を思い出して、胸が暖かくなる。別に嫌な感じはないんだけどな?懐かしいって気持ちになる。

「魔封じの石には、それぞれ、鍵となる言葉があるの。それがわからない限りは、質の良い宝石でしかないわ」

 キーワードをいうと、発動するのか。でも、キーワードがわからなかったら、質の良い宝石か。

 ん?魔石と、魔封じの石の違いがわからなくなってきた。

「魔封じの石って、どんな物になるんですか?普通の魔石との違いって、何ですか?」

 先生に問いかけると、真剣に答えてくれたのだが、口元が少し緩んでいる気がする。

「魔封じの石は、かなり数が少ないの…元々は、神々の品や、精霊達の宝とか。ボージィン様の祝福ともいわれているわね」

 神々の品。そうすると、自然発生はないわけか。

「国の宝として、あるいは、迷宮の奥に鎮座していたりするのだけど、魔石との違いはね…魔法が込められていることなの」

 魔法が込められていることが、重要なのか?魔石にも、魔法と同じ効果があるのに?
 その疑問を読んだのか、先生は尋ねる前に、教えてくれる。

「知らないかもしれないことだけど…魔石は、効果として無属性の魔法と似た物があるの。魔法が封じられているわけではないの。…どちらかというと…魔石には、自然が封じられているといえばいいかしらね…人工的にも作ることは可能よ。ただ強い魔法は込めることができないの」

 自然。そういえば、暖かいとか、冷たいとか、自然界にある現象しか魔石は効果を見せないな。
 それに父様が前にいっていた。強い魔法は込めれないとは一般的な話なのだろう。

「私が知っている魔封じの石は、ドラルインの国王が嵌めている指輪があるわ。初代ドラルイン国王の遺物で、神宝。小さな青い石なのに、上級の魔法が込められているの」

 そういいながら、先生は机の引き出しから、一本の杖を取り出した。
 その杖は灰色ながらやけに煌めく木肌に、金細工が施された指揮棒によく似た杖だった。

「何度でも使えるし、その魔法を使うよりも、ずっと魔力の消費が少ない…三流以下の魔法使いが超一流になれるの。だから、欲しがる人は多い…それとね…魔封じの石は大きさと光度で込められた魔法の質が高まるの」

 杖をなでながらすっと、目が細められ、背中を悪寒が襲う。目の前の人からくる、プレッシャーだと、すぐにわかった。

「その大きさと光度ならかなり強力な魔法でしょうね。もしかしたら、魔封じの石だと気づく人に出会うかもしれないわね…そうなったら、かなり危険よ?…それに、残念だけど、フェスマルク家と聞いたから、率直にいうわ」

 知らず知らずに、息を飲んだ。

「同じ魔法使いからみれば、それは、貴方を殺してでも欲しい物になるの」

 それは、先生も同じということなんだろうか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こちらの方で人形作りをしていたりします
https://www.youtube.com/channel/UCpXqxiwCARtsF1AhcnQ2U4Q
疑問などがあればこちらで答えますのでよければ見に来ていただけたらなと思います。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...