選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第五章 影の者たちとケモナー

試験後のケルン

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 ヴォルノ君までいなくなって、僕は悲しくていつも美味しかったご飯が美味しくなくなっちゃった。

「ほら、ケルン。口を開けろ…ちゃんと食べてくれよ?」
「うん…」

 お兄ちゃんに食べさしてもらっても、あまり食べれなくて、残しちゃってハンクにごめんなさいの手紙を書いた。
 お腹が減らないけど、果実水とサンドイッチは食べたから試験は大丈夫だと思う。

 ヴォルノ君やチールーちゃんは…ご飯を食べれているのかな…?

「それでは始め!」

 魔法史のナタリア先生が合図を出した。百二十歳をこえている人族の先生だけど、とても元気だ。
 元気なのはいいことだって、父様やお兄ちゃんがいってたから、いいことなんだろうなぁ。

 試験の問題は…わかる。昨日、お兄ちゃんが出るかもしれないからって教えてくれたとこだ!これなら早く書けそう!

 書き終わったから、ナタリア先生に試験用紙を、渡して僕はお兄ちゃんのとこに行く。ほめてもらうんだ!

「お兄ちゃん、お待たせ!…お兄ちゃん?」

 扉を開けたらお兄ちゃんがいない。
 おかしいなぁ?って思って廊下をきょろきょろしてみても…いない。

「かくれんぼ?」

 もしかして、僕をびっくりさせる気かな?お兄ちゃん、僕が元気ないからって、ずっとはげましてくれてたし…昨日も寝るときずっと頭をなでてくれたもんね。

 遊んでくれてるのかと思って、探してみた。
 お兄ちゃんのことだから、きっと僕をみてると思うから…あっちかなぁ?それとも、この花びんの裏?

 いない。

「もー!降参!お兄ちゃん出てきて!」

 今日のお兄ちゃんのかくれぼはむずかしい!いつもはここだぞー!とかいって教えてくれるのに、今日はないんだもん。みつかんないよぉ。
 はやく、出てきてよ。ほめてほしいのに。

「ねぇー!お兄ちゃん!降参だって!…お兄ちゃん?どこ?」

 あれ?お兄ちゃん…どうして返事をしてくれないの?いじわるなんてお兄ちゃんはしないのに。
 やだ。そうじゃないよね?お兄ちゃんはかくれぼしてるんだよね?

「お兄ちゃん…いないの?」

 そう思ったら涙が出てきちゃった。

「ふぇ…」

 お兄ちゃんがいない。ヴォルノ君みたいに、あとでって約束したのに。いない。お兄ちゃん…どこ?僕を一人にしないでよぉ…一人はやだよぉ。

「どうしたんだ?ケルン?」

 ミケ君が試験が終わったから、出てきたから、抱きついた。ぎゅっとすると、頭をなでてくれた。それでも涙は止まらない。
 むねがぎゅってする。

「どうしたんだ?義兄上はどうしたんだ?姿が見えないが」
「お兄ちゃんが…いないの」

 僕がそういうと、ミケ君もふるえた。僕と同じだ。
 お兄ちゃんがいないからむねがぎゅってなったんだ。

「少しここで待っていろ。話をしてくる…すいません。エフデ先生を見ませんでしたか?ボージィンの姿の先生なんですが」

 ミケ君は少し離れたところで話をしていた人たちのところへ行く。
 待っていても、むねがぎゅってしたままだから、ミケ君の後ろについていく。大きな人たちでも、ミケ君は怖くないみたい。
 僕は大きな人は怖い。お兄ちゃんがいたら怖くないけど、一人じゃ怖くて話しかけられない。

 ミケ君はすごいなぁ。大人みたい。

 大きな男の人。獣人さんじゃないけど、ちょっとランディに似てる。

「エフデ様?…見ていないな。ちょっと待ってくれ。おい、みたか?」
「俺は見てないぞ。エフデ様がいたら拝んでる」

 大きな人がヴェルムおじさんと同じドワーフ族の人…より大きいから人族が入ってるのかな?その男の人に聞いてもだめだった。
 ドワーフ族の人はお兄ちゃんを大事にしてくれるし、僕にも優しい。授業のときも遊んでくれるから、困ったら、たよろうってお兄ちゃんと約束してる。キノコげんすいは嫌いだけど、あのあとに会うドワーフ族の人やドワーフ族が入っている人はお話もたくさんしてくれるから好き。

 だからお兄ちゃんを見ていないっていわれて、むねのぎゅってしてたのが、痛くなっちゃった。これって、お兄ちゃんが心配のときになるやつなのかな?こんなに痛くなるの?…僕、お兄ちゃんをあんまり心配させないようにしよう。痛くてまた涙が出ちゃいそう。

「俺みたぞ」

 三人の中じゃあまり大きくない…手のところにうろこがあるから、とかげとかの獣人さんかな?その男の人がいったから、涙はどっかにいっちゃった。

「そこの教室の前で立っていたけど」
「それで、お兄ちゃんはどこに行きました!?」

 ミケ君がきく前に僕がきいちゃった。
 お兄ちゃんがどっちに行ったかわかれば、探しに行くもんね。
 でも、なんだか落ちつかない。お兄ちゃんが約束を破るなんて初めてだからかな?

 男の人は困った顔だ。

「何かにぶつかったのか持ってた資料を落とした生徒の手伝いをしてたら見失っちまった…ごめんな力になれなくて」
「ありがとう…ございました」

 お礼はきちんといいなさいと、母様にいわれてたからお礼をいって男の人たちからはなれた。
 なんだか残念な気持ち。晴れてたらピクニックだったのに雨が降っちゃったときみたいな気持ち。

 ミケ君が追いかけてくれたけど…廊下にあるいすに座って廊下をみてる。どっちからお兄ちゃんが来ないかなって。でも、お兄ちゃんは来ない。

「どこかで時間を潰されているのかもしれないな」
「約束したもん。待ってるって…勝手にどっか行かないもん」

 クランの人たちがお兄ちゃんを連れていくのはないと思う。ここで僕が終わるのを待って、みんなで今作ってるやつのことを話すと思うから。
 僕がおもしろいって思ったらだいせーこーって、お兄ちゃんがいってるから、みんな僕のはんのう?っていうのをみて作ってるから…他にお兄ちゃんの用のある人…なんているのかな?

「話しかけてみてはどうだ?」

 ミケ君にいわれてそうだ!って思った。
 僕とお兄ちゃんは離れていてもお話ができる。前みたくはっきりとは聞こえないけど、黙って目をつぶって、しゅーちゅーをすればわかる。魔力操作の練習でやってた、めーそ?と同じ。

 めーそみたくやってみる。お兄ちゃん…うん。お兄ちゃんと僕、ベルトみたいなものがある…これにしゅーちゅー…お兄ちゃん、聞こえる?どこにいるの?

「お兄ちゃん…切ってるみたい…繋がってるけど応えてくれない感じがする…」

 だめだった。お兄ちゃんには伝わっていると思う。でも、お兄ちゃんから僕には伝えないってときには伝わらない。
 知ったら僕が悲しむことや僕が危なくなることは、お兄ちゃんは伝えないようにしてきてくれた。それと似ている。

 お兄ちゃん、今なにをしているんだろ…危ないこと?

「まさか…義兄上まで神隠しなのか?」

 ミケ君が怖いことをいうから、ミケ君をみれば、しまった!って顔になってる。

「…お化けがお兄ちゃんを連れていったの?」
「あくまで、可能性だ…落ち着いてくれ」

 落ちついてるよ。だって、ミケ君の言葉で謎がとけたもん。僕ね、お兄ちゃんからめいたんてーって認められたんだもん。謎をとくのは得意なんだ。

「お兄ちゃんも、僕もお化け苦手なんだ。きっとお兄ちゃんは僕をお化けから守ろうとしてくれている」

 危ないから、僕をそれからはなそうとしてくれてる。
 お兄ちゃんは僕をずっと守ってくれてる。体がないときでも、僕が傷つかないようにしてくれて、体をもらってからは、怖い人たちからも守ってくれて、じまんのお兄ちゃんなんだ。

 ずっとずっと欲しかった僕だけのお兄ちゃん。まだ抱っこはしてもらえないけど、ちゃんとした体を悪い人からとりかえしたら、抱っこしてもらうんだ。
 なのに、お化けが…またお兄ちゃんをとっていったの?

「お化けなんかに…お兄ちゃんを傷つけさせたりしないんだから!」

 絶対に許せない。僕からお兄ちゃんをとっていくなんて。

 そんなことを誰が許した?誰の許可を得た?どの精霊が許可をした?どの種族が求めた?
 認めぬ。認めることなど永劫にない。

「落ち着け!ケルン!魔力を押さえろ!これじゃナザド先生以上だぞ!」

 逆巻く魔力の波を抑えねばならぬのか。何故だ?そのようなことを何故せねばならぬ?
 処罰せねばならぬのだ。それが。

「エフデ義兄上に叱られるぞ!深呼吸しろという義兄上のお言葉を思い出せ!」
「やだ!お兄ちゃん怒ると怖いもん!しんこきゅー!」

 お兄ちゃんに怒られたくない!お兄ちゃん怒ると遊んでくれなくなっちゃう。そんなのやだ。僕が悪い子になったらお兄ちゃん怒っちゃう!
 ミケ君にいわれてしんこきゅー!少し魔力がいっぱいになっちゃったから、体にもどしてー、あふれたのは、大気にいる精霊様におすそわけ?してあげるようにして、すーはー。

「落ちついたー!」
「…警備員が来るぞ…危ないな」

 ケイさんがくるのかな?それともビインさんかな?二人でくるから僕はどっちがケイさんでビインさんなのかわかんない。

 しんこきゅーは大事だね。お兄ちゃんを助けなきゃって気持ちがまとまるもん。
 父様に頼もうかな…あれぇ?

「僕の杖?どうしてポケットから出て…どうしたの?」

 僕の杖とお兄ちゃんは仲良しさんだ。お兄ちゃんとお話をしているみたいなときがある。僕にはよくわからないけど、僕の杖は動いたりするってお兄ちゃんはよくいってる。

 形も変わる不思議な杖。でも、僕の杖なんだよ。この樹木さんじゃないといけなかったんだと思う。お兄ちゃんはわかんないっていってたけど、僕たちはこの樹木さんのこと知ってると思うんだぁ。僕、すぐ忘れちゃうから忘れちゃってるけど。

 でもこの形は忘れていないよ。初めて作ったときの形。お兄ちゃんと話して決めた僕の杖の本当の形。

 猫さんの尻尾みたいに曲がって、葉っぱがぴんっと出ている。葉っぱがひらひらと動いてる。風かな?
 まるで何かを教えてくれてるみたい。ぴんぴんって、葉っぱがさしてる場所にあるのは…!

「『失せ物探しの鐘シーク・チャイム』!お兄ちゃんはどこ?」

 そうだ!これならお兄ちゃんの場所がわかる!くるって杖をまわす。
 からん。
 鐘が鳴った。あっちは、校内じゃないけど…お兄ちゃんはあっちにいるんだね!

「待っててお兄ちゃん!助けに行くからね!」
「おい!ケルン!待つんだ!」

 ミケ君が追いかけてこようとしたけど、なんだか僕の足がすごくはやくなったみたいで、置いてきちゃった。
 後ろをみたらあきらめて誰かを呼びにいってた。

 はやくお兄ちゃんをむかえに行ってあげなきゃ!お化けは一人だと怖いけど、怖い気持ちを半分こにしたらいいもんね!





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 ケルンは漢字の描写が増えてきたんですが、まだ子供なんでなかなか表現が難しいです。
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