選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第五章の裏話

?ち?り

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 それは数えきれぬほどの食事を繰り返していた。
 弱っていた動くものは、何かで自分にしていたようだが、その何かごと肉を#食_は__#めば弱って簡単に食事となった。
 動きの早いものも、時間をかければ必ず食事となった。

 幾度もの食事をする中で生きるための食事から、楽しむための食事へとかわっていった。
 それは戸惑った。これはなんだと。それにはまともな感情がなかったからだ。

 動くものたちが奏でる音がそれに楽しさというものを教えた。

 あううええ。
 いいあうあい。

 動くものがよく使う音を真似て音を出せるようにもなった。
 動くものはそれにむかって何度も使っていた。だから覚えた。

 その日の食事は初めて苦戦した。動くものが何かの音をたてれば、それの体が確実に減ったのだ。
 何度も何度もそれは謎の音をきき、体が減っていく。

 恐怖はない。
 あるのは動くものへの強い怒りだった。食事を邪魔するなぞ動くものはどうかしている。そう考えた。

 動くものは最初は自信があったのか、あまり動き回らなかった。
 けれどもそれは死なない。体は減ってもすぐに戻る。

 それを理解した動くものは、ようやくいつもの動くものになった。

 狂ったように動くものが逃げ惑い、当てずっぽうに何かをしてくるがそれはその何かすらも、#食_は__#みだした。

 初めて味わう。美味なるもの。それは味というものを覚えた。味を覚えればもっと味わいたくなるものだ。
 動くものを食べたいのを我慢して少しずつ追いやっていく。
 美味なる何かを体が受ければもう減ることはない。それどころか味わえるのだ。

 残念ながらすぐに飛んでこなくなった。
 悲しくなりながらも食事をすることにした。#食_は__#んでも問題のない部分からじわじわと食事をする。

「助けて!死にたくない!」

 ああ、また楽しい音だ。

 ぐちゃり、ぐちゃりとゆっくり食事をしていけば、たまらなくいい音が響きながらの食事となる。

 怒り、喜び、悲しみ、楽しむ。
 それは感情を得ていたのだ。
 それは生命を得てしまった。

「満ちる満ちる」

 それを見守るものが新しい食事を穴へと落としながら声をあげて喜んだ。
 投げ込まれたものはどこかの紋章を胸に抱きしめながら祈っていた。
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