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第六章 ケモナーと水のクランと風の宮
MIKOSHI
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無言で執事の後ろに着いていく。
空気は最悪だ。
結局、ミルディは奥へ続く扉の前で待機となった。ケルンも俺も帰ってもいい気だったが、ミルディがいった言葉で考えを変えた。
「私はここでお待ちしております。礼儀のなっていない使用人などお気になさらず…何かございましたら私の名前かナザドさん…ティルカさんを呼んでください」
「わかった!ミルディは立派な執事さんだもんね!何かあったらすぐに呼ぶね!」
「さすがはうちの執事だ。無礼者とは大違いだ…あとティルカは無理じゃね?」
魔王…じゃなかった。ナザドなら呼べば来そうだが、ティルカは無理…だよな?王都で仕事をしているはずだが、前回は休みでたまたま近くに来ていたと聞いていたし…来るだろうか。気になるが最終手段にしよう。
俺たちの会話で青筋で血管がぼこほごに浮き出てるが睨んでこない執事に、ケルンは舌を出している。どこであっかんべーなんか…チールーちゃんがヴォルノ君に怒られるときにみてたからか。
俺は教えていない。濡れ衣だぞミルディ。
かなり頭にきているから、ケルンはミルディに持たせていた荷物を執事に渡さずに自分で持って歩き出した。
殺風景な廊下であるが、掃除はされているようだ。廃墟の教会かと思ったが現役で使われているのかもしれない。
ケルンから話しかけられた。心の中でだ。口に出さないのは執事を気にしてだろう。
俺たちは無言ではあるが、触れあっているので少しは話ができる。
『あの人失礼だよね』
失礼というか、ミルディが気に入らないという風に見えたな。
『それだったらもっと失礼だよ!ミルディは僕たちのために頑張ってるんだよ!』
そういうのはまったく考えてないだろ。俺たちにすらあんまり態度はよくないぐらいだからな。
普通は呼び出したのならもっとこちらに対しての礼儀とかあると思うのだが、まったくない。もしかしたら、荷物を渡そうとしなくても最初から受けとる気はなかったのかもしれないな。
執事がそんなことをするっていうのは、かなり、身分の高い者に仕えているからだというプライドでもあるんだろう。
まったく、逆効果だがな。
ひょっとして、この人自身が身分が高いからわかっていないとか?執事には貴族の末子とかの人もいるらしいし。
特徴は緑色なとこだ。エルフが入っているみたいだけど、何かの種族が強いからか、エルフというかハーフリンクにもみえるけど、他国の貴族のことはよくわからない。
『お兄ちゃん。あれ何だろう?』
は?神輿?
執事が何者かを考えていれば目的の場所に着いたようだ。
そこは中庭なのか、バラ園となっていった。
そのバラ園に似つかわしくない神輿が担ぎ上げられていた。
神輿は立っているケルンよりも大きい。
その大きな神輿はたった四人で担がれている。異様なのは担ぎ手の男たちはみな、褌を締めた色黒のマッチョであること。そして四つ子なのか全員顔が似ている…そのままともいえる。頭もきれいに光っている。
つるっとマルゲリータ。
「ピザ?」
いや、あれはその対極…じゃねぇや。
見事に反り上がった頭をみてうっかり混乱してしまった。ケルンはピザが食べたいの?とか聞いてくるがそれは後で話そう。ピザを食べ過ぎるとピザるからな。
まずはつっこませろ。
「なんでマッチョが神輿をかついてんだよ!」
「みこし?あ、わっしょーい?わっしょーい?なの?あれ?」
「わっしょーいのだ。いや、ちょっと違うけど」
ご丁寧に神輿のてっぺんにまでマッチョがポーズを決めている小さな像までつけている。
絵面がひどい。
マッチョたちは、台座の上に神輿を置くと一歩下がる。
できればもっと下がってほしい。
台座の前には机とイスが置かれている。イスは一脚しか置いていない。神輿は御簾がついていて、中に誰か乗っているようだ。
「今日はよくぞ参ったな。楽にするがよいぞ」
するすると御簾があがると中にいたのは一人の老婆だ。かなり身長は小さくシワだらけの顔だ。髪も真っ白で何歳なのかはわからないが、かなり高齢なのは間違いないだろう。二百歳をひょっとしたら越えているかもしれない。
老婆は人族なのかすらわからないほどシワにまみれた顔だが、服装は人族の者だ。
それでも少し変わった服を着ている。
彼女が着ているのは和服だが、あれは喪服だ。
「こんにちは!」
「こら、ケルン。きちんとした挨拶!」
執事が無礼者だからとんでもない人が来ると思ったが、おばあさんなら話は別だ。お年寄りには優しくするのが俺たちの主義だ。
俺やケルンには祖父母がいない。けれどケルンがポルティに行くとご老人方がかなりよくしてくれるので、高齢者をみると挨拶をするのだ。
「無礼者が!」
初めて執事が激昂した。
ケルンがびっくりしてかたまったのをみて、俺は静かにキレた。
確かにケルンは礼儀のなっていない挨拶をした。
でもな、俺が今…注意しただろ?それを無視したのか?しかも自分の無礼を忘れて?
ちらっとケルンのポケットを見れば杖が葉先を出している。
「やるっすか!やるっすか!」
シャドウボクシングのようなことをしている。器用だな。
まぁ、やるなら俺が。
「黙れ。わしと子供たちの中に入るな」
老婆の凍てついた声で執事は一瞬で顔を青ざめた。何事かいおうとしたのだろうが、口だけが動いて声は出ていない。
「すまんの。無礼者はこちらじゃろうに…それにしても…ふふふ…かわいらしい元気な挨拶じゃないか」
ころころとやわらかな声で笑う老婆で確信した。
この人はエレス様のような人種だ。
「申し訳ありません。あまり慣れていないもので」
ケルンに代わり謝罪する。王族ではなくても高位の貴族の関係者と想定してだ。
どこの国にしろ、貴族相手の対応はケルンも覚えておく方がいい。
礼儀作法が苦手だからな。
「構わぬよ。フェスマルク家は代々礼儀作法を捨てておるからな」
うちやっぱりそう思われてんだ。父様も苦手っていってたしな。
「元気な挨拶をしたのが、ケルンで…ティストールの声に似ているのがエフデかのぉ?」
「そうです!父様を知っているんですか?」
楽しそうなケルンに少し驚く。いくら老人が好きでも人見知りするんだが…いや、俺もこのおばあさんが敵とは思えない。
俺たちへのまなざしに険がないのだ。とても優しそうな視線しかむけられていない。
「若い頃に一度の…あやつも親になったのか…早いものじゃな。そうじゃ、自己紹介をせねばのぉ。わしのことは、ユリばあと呼んでくれ」
「ユリばあ様?」
「うむ。それでよいぞ。エフデも遠慮をするでないぞ?」
「は、はぁ」
ケルンがユリばあ様と呼んだ瞬間、執事からにらまれたんだけど、嫌がらせであえて呼んでやろう。
「ほれ、ババアの話は長い。茶でも飲もう。エフデは机の上で構わぬかの?」
「ええ。無作法ですが、机の上に座らせてもらえれば助かります」
「よいよい。顔が見えぬでの。座るがいいぞ」
俺用のイスなんか用意されても座ったところで、机に手が届かないから、机にじか座りになる。
許可も得たことだし、ケルンに机の上に置いてもらい、ケルンとユリばあ様の対面に座る。ユリばあ様の言葉に執事がお茶を用意した。
「これは…緑茶?」
俺たちへも出すとは思っていなかったが、お茶も変わっている。お茶会といえば紅茶なのだが、緑茶をだされるとはな。
「紅茶もあるでな。砂糖はいるかのぉ?」
「お砂糖ください!お兄ちゃんは?」
「俺は緑茶で…あ、手土産というか…茶菓子として持参したのがあんこのケーキなんですが」
ほうじ茶を好む俺と紅茶を好むケルンが同時に楽しめる茶菓子としてあんこが入ったケーキだ。二人してあんこブームが来ているからあきずに食べているのだが、あんこが嫌いという人もいるし、老人だから好きとは限らないだろう。
お茶会をするときのマナーとして、呼ばれたがわが茶菓子を用意するので、なんとなくこれをハンクに頼んだ。
緑茶ならさらにいいだろうとは思うが…ダメならクッキーならケルンのポケットに入っているからそれを出そう。
「おーおー…これはうれしい。わしはあんこが大好きなのじゃ。死んだ旦那にはよく怒られたぐらいあんこが好きでの!いやはや、うれしや」
ユリばあ様は喜んでくれた。和服を着ているから、サナギッシュの人…なのか?にしては、なまりがない。古い言葉を使っているがここら辺の言葉だ。
ケーキは切り分けられており、執事に渡せば皿に盛り付けられ俺たちの前に置かれた。気のせいか俺の前に置くときはちょっと雑に感じた。
「お毒味を」
「いらん。わしの分が減る。わしに毒が効くと?それにフェスマルク家がわしを害するなどありえぬ」
「も、申し訳ございませんでした!」
毒味を執事が口に出せば、ユリばあ様の機嫌はいっぺんに落ちた。
まぁ、毒味は気にしないが、ああもあからさまに信用してませんというようにいわれたら気分が悪い。
そもそもユリばあ様とは初対面だし、毒とかいらないだろ。もし何かするっていうなら…ナザドを呼んだら終わるだろうな。
うっすら笑い出したケルンの手をぺしぺしたたいて、頑張ったら新しい絵本を読んでやると伝える。
機嫌が戻ったのはいいが、新作を部屋に帰ったらすぐに書かないとならなくなった。つらい。
「ふん…不快にさせていたら、すまんな。ババアを殺そうとする輩がおると勘ぐるのがこやつらの仕事ゆえ、許してやっておくれ」
「大丈夫です!父様や母様とお兄ちゃんから身分のある人はお毒味が必要って聞いたことあるもん!」
ユリばあ様が謝る必要はない。ケルンがいうとおり、当たり前のことではあるからな。気に入らなかったのは、執事の態度だけだ。
最後まで敬語でいえたら満点だったのにな。
「うむうむ。父母…それに、兄から聞いておるか」
ユリばあ様は俺をじっと見た。
少しの間を置いて執事と後ろのマッチョたちへ声をかける。
「お主らはしばらく下がっておれ。時間が来るまで入室を禁ずる」
「かしこまりました」
表情を消す前に不服そうな執事たちとは異なり、親指をあげてにっと笑うマッチョたち。彼らをともなって執事は中庭の先の扉をくぐる。
「さて、うるさいのがようやく消えたわい…さっそく一口いただくかの」
ユリばあ様はシワだらけでも、わかるほど嬉しそうにケーキを頬張っている
「んー!うまいのぉ!牛の乳で作ったこれは…クリームじゃったかの?あまり好きではないが、あんことはよく合うのぉ!フレーシュ牛の乳かの?」
「いい舌を持っていますね…あ、お茶うまぁ」
「紅茶もケーキもおいしーね!」
お茶会じたいは和やかな始まりになりそうだ。
お土産でこの茶葉もらえないかな?徹夜するときにほしい。特に今日は徹夜な予感がする。新作…いくつあるかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ずっと脳内でこんな感じです。
('ω')<み…MIKOSHI!?
(*‘∀‘)<わっしょーい?
くすっと笑えたらお気に入りなどよろしくお願いします。
空気は最悪だ。
結局、ミルディは奥へ続く扉の前で待機となった。ケルンも俺も帰ってもいい気だったが、ミルディがいった言葉で考えを変えた。
「私はここでお待ちしております。礼儀のなっていない使用人などお気になさらず…何かございましたら私の名前かナザドさん…ティルカさんを呼んでください」
「わかった!ミルディは立派な執事さんだもんね!何かあったらすぐに呼ぶね!」
「さすがはうちの執事だ。無礼者とは大違いだ…あとティルカは無理じゃね?」
魔王…じゃなかった。ナザドなら呼べば来そうだが、ティルカは無理…だよな?王都で仕事をしているはずだが、前回は休みでたまたま近くに来ていたと聞いていたし…来るだろうか。気になるが最終手段にしよう。
俺たちの会話で青筋で血管がぼこほごに浮き出てるが睨んでこない執事に、ケルンは舌を出している。どこであっかんべーなんか…チールーちゃんがヴォルノ君に怒られるときにみてたからか。
俺は教えていない。濡れ衣だぞミルディ。
かなり頭にきているから、ケルンはミルディに持たせていた荷物を執事に渡さずに自分で持って歩き出した。
殺風景な廊下であるが、掃除はされているようだ。廃墟の教会かと思ったが現役で使われているのかもしれない。
ケルンから話しかけられた。心の中でだ。口に出さないのは執事を気にしてだろう。
俺たちは無言ではあるが、触れあっているので少しは話ができる。
『あの人失礼だよね』
失礼というか、ミルディが気に入らないという風に見えたな。
『それだったらもっと失礼だよ!ミルディは僕たちのために頑張ってるんだよ!』
そういうのはまったく考えてないだろ。俺たちにすらあんまり態度はよくないぐらいだからな。
普通は呼び出したのならもっとこちらに対しての礼儀とかあると思うのだが、まったくない。もしかしたら、荷物を渡そうとしなくても最初から受けとる気はなかったのかもしれないな。
執事がそんなことをするっていうのは、かなり、身分の高い者に仕えているからだというプライドでもあるんだろう。
まったく、逆効果だがな。
ひょっとして、この人自身が身分が高いからわかっていないとか?執事には貴族の末子とかの人もいるらしいし。
特徴は緑色なとこだ。エルフが入っているみたいだけど、何かの種族が強いからか、エルフというかハーフリンクにもみえるけど、他国の貴族のことはよくわからない。
『お兄ちゃん。あれ何だろう?』
は?神輿?
執事が何者かを考えていれば目的の場所に着いたようだ。
そこは中庭なのか、バラ園となっていった。
そのバラ園に似つかわしくない神輿が担ぎ上げられていた。
神輿は立っているケルンよりも大きい。
その大きな神輿はたった四人で担がれている。異様なのは担ぎ手の男たちはみな、褌を締めた色黒のマッチョであること。そして四つ子なのか全員顔が似ている…そのままともいえる。頭もきれいに光っている。
つるっとマルゲリータ。
「ピザ?」
いや、あれはその対極…じゃねぇや。
見事に反り上がった頭をみてうっかり混乱してしまった。ケルンはピザが食べたいの?とか聞いてくるがそれは後で話そう。ピザを食べ過ぎるとピザるからな。
まずはつっこませろ。
「なんでマッチョが神輿をかついてんだよ!」
「みこし?あ、わっしょーい?わっしょーい?なの?あれ?」
「わっしょーいのだ。いや、ちょっと違うけど」
ご丁寧に神輿のてっぺんにまでマッチョがポーズを決めている小さな像までつけている。
絵面がひどい。
マッチョたちは、台座の上に神輿を置くと一歩下がる。
できればもっと下がってほしい。
台座の前には机とイスが置かれている。イスは一脚しか置いていない。神輿は御簾がついていて、中に誰か乗っているようだ。
「今日はよくぞ参ったな。楽にするがよいぞ」
するすると御簾があがると中にいたのは一人の老婆だ。かなり身長は小さくシワだらけの顔だ。髪も真っ白で何歳なのかはわからないが、かなり高齢なのは間違いないだろう。二百歳をひょっとしたら越えているかもしれない。
老婆は人族なのかすらわからないほどシワにまみれた顔だが、服装は人族の者だ。
それでも少し変わった服を着ている。
彼女が着ているのは和服だが、あれは喪服だ。
「こんにちは!」
「こら、ケルン。きちんとした挨拶!」
執事が無礼者だからとんでもない人が来ると思ったが、おばあさんなら話は別だ。お年寄りには優しくするのが俺たちの主義だ。
俺やケルンには祖父母がいない。けれどケルンがポルティに行くとご老人方がかなりよくしてくれるので、高齢者をみると挨拶をするのだ。
「無礼者が!」
初めて執事が激昂した。
ケルンがびっくりしてかたまったのをみて、俺は静かにキレた。
確かにケルンは礼儀のなっていない挨拶をした。
でもな、俺が今…注意しただろ?それを無視したのか?しかも自分の無礼を忘れて?
ちらっとケルンのポケットを見れば杖が葉先を出している。
「やるっすか!やるっすか!」
シャドウボクシングのようなことをしている。器用だな。
まぁ、やるなら俺が。
「黙れ。わしと子供たちの中に入るな」
老婆の凍てついた声で執事は一瞬で顔を青ざめた。何事かいおうとしたのだろうが、口だけが動いて声は出ていない。
「すまんの。無礼者はこちらじゃろうに…それにしても…ふふふ…かわいらしい元気な挨拶じゃないか」
ころころとやわらかな声で笑う老婆で確信した。
この人はエレス様のような人種だ。
「申し訳ありません。あまり慣れていないもので」
ケルンに代わり謝罪する。王族ではなくても高位の貴族の関係者と想定してだ。
どこの国にしろ、貴族相手の対応はケルンも覚えておく方がいい。
礼儀作法が苦手だからな。
「構わぬよ。フェスマルク家は代々礼儀作法を捨てておるからな」
うちやっぱりそう思われてんだ。父様も苦手っていってたしな。
「元気な挨拶をしたのが、ケルンで…ティストールの声に似ているのがエフデかのぉ?」
「そうです!父様を知っているんですか?」
楽しそうなケルンに少し驚く。いくら老人が好きでも人見知りするんだが…いや、俺もこのおばあさんが敵とは思えない。
俺たちへのまなざしに険がないのだ。とても優しそうな視線しかむけられていない。
「若い頃に一度の…あやつも親になったのか…早いものじゃな。そうじゃ、自己紹介をせねばのぉ。わしのことは、ユリばあと呼んでくれ」
「ユリばあ様?」
「うむ。それでよいぞ。エフデも遠慮をするでないぞ?」
「は、はぁ」
ケルンがユリばあ様と呼んだ瞬間、執事からにらまれたんだけど、嫌がらせであえて呼んでやろう。
「ほれ、ババアの話は長い。茶でも飲もう。エフデは机の上で構わぬかの?」
「ええ。無作法ですが、机の上に座らせてもらえれば助かります」
「よいよい。顔が見えぬでの。座るがいいぞ」
俺用のイスなんか用意されても座ったところで、机に手が届かないから、机にじか座りになる。
許可も得たことだし、ケルンに机の上に置いてもらい、ケルンとユリばあ様の対面に座る。ユリばあ様の言葉に執事がお茶を用意した。
「これは…緑茶?」
俺たちへも出すとは思っていなかったが、お茶も変わっている。お茶会といえば紅茶なのだが、緑茶をだされるとはな。
「紅茶もあるでな。砂糖はいるかのぉ?」
「お砂糖ください!お兄ちゃんは?」
「俺は緑茶で…あ、手土産というか…茶菓子として持参したのがあんこのケーキなんですが」
ほうじ茶を好む俺と紅茶を好むケルンが同時に楽しめる茶菓子としてあんこが入ったケーキだ。二人してあんこブームが来ているからあきずに食べているのだが、あんこが嫌いという人もいるし、老人だから好きとは限らないだろう。
お茶会をするときのマナーとして、呼ばれたがわが茶菓子を用意するので、なんとなくこれをハンクに頼んだ。
緑茶ならさらにいいだろうとは思うが…ダメならクッキーならケルンのポケットに入っているからそれを出そう。
「おーおー…これはうれしい。わしはあんこが大好きなのじゃ。死んだ旦那にはよく怒られたぐらいあんこが好きでの!いやはや、うれしや」
ユリばあ様は喜んでくれた。和服を着ているから、サナギッシュの人…なのか?にしては、なまりがない。古い言葉を使っているがここら辺の言葉だ。
ケーキは切り分けられており、執事に渡せば皿に盛り付けられ俺たちの前に置かれた。気のせいか俺の前に置くときはちょっと雑に感じた。
「お毒味を」
「いらん。わしの分が減る。わしに毒が効くと?それにフェスマルク家がわしを害するなどありえぬ」
「も、申し訳ございませんでした!」
毒味を執事が口に出せば、ユリばあ様の機嫌はいっぺんに落ちた。
まぁ、毒味は気にしないが、ああもあからさまに信用してませんというようにいわれたら気分が悪い。
そもそもユリばあ様とは初対面だし、毒とかいらないだろ。もし何かするっていうなら…ナザドを呼んだら終わるだろうな。
うっすら笑い出したケルンの手をぺしぺしたたいて、頑張ったら新しい絵本を読んでやると伝える。
機嫌が戻ったのはいいが、新作を部屋に帰ったらすぐに書かないとならなくなった。つらい。
「ふん…不快にさせていたら、すまんな。ババアを殺そうとする輩がおると勘ぐるのがこやつらの仕事ゆえ、許してやっておくれ」
「大丈夫です!父様や母様とお兄ちゃんから身分のある人はお毒味が必要って聞いたことあるもん!」
ユリばあ様が謝る必要はない。ケルンがいうとおり、当たり前のことではあるからな。気に入らなかったのは、執事の態度だけだ。
最後まで敬語でいえたら満点だったのにな。
「うむうむ。父母…それに、兄から聞いておるか」
ユリばあ様は俺をじっと見た。
少しの間を置いて執事と後ろのマッチョたちへ声をかける。
「お主らはしばらく下がっておれ。時間が来るまで入室を禁ずる」
「かしこまりました」
表情を消す前に不服そうな執事たちとは異なり、親指をあげてにっと笑うマッチョたち。彼らをともなって執事は中庭の先の扉をくぐる。
「さて、うるさいのがようやく消えたわい…さっそく一口いただくかの」
ユリばあ様はシワだらけでも、わかるほど嬉しそうにケーキを頬張っている
「んー!うまいのぉ!牛の乳で作ったこれは…クリームじゃったかの?あまり好きではないが、あんことはよく合うのぉ!フレーシュ牛の乳かの?」
「いい舌を持っていますね…あ、お茶うまぁ」
「紅茶もケーキもおいしーね!」
お茶会じたいは和やかな始まりになりそうだ。
お土産でこの茶葉もらえないかな?徹夜するときにほしい。特に今日は徹夜な予感がする。新作…いくつあるかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ずっと脳内でこんな感じです。
('ω')<み…MIKOSHI!?
(*‘∀‘)<わっしょーい?
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