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第六章 ケモナーと水のクランと風の宮
大嵐
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バラの匂いが時おりしてくる。あまり香りは強くない品種なのだろうな。
スラ吉が食べる品種と似ているがこちらの方が香りは弱い気がする。まぁ、ランディがスラ吉専用に品種改良しているのかもしれないけど。
イライラしていたのもお茶と花で落ち着いてきた。バラと緑茶は微妙なところではあるけどどちらも芳香が弱いから気にならない。
ケルンの方は紅茶でリラックスしているのか、もぐもぐとケーキを食べている。食べかけだが、俺のを半分やれば喜んで食べた。
しばらく菓子を堪能してまったりと、お茶を味わっていると、ユリばあ様はしっかり完食されてから手をぽんと打った。
「おお、茶菓子で忘れておった…ごほん。まずは水のクラン戦の優勝おめでとう」
「ありがとうございます!」
ニコニコとユリばあ様が、さらにしわを深くして笑う。
「水のクラン戦は、技術系や芸能系のスキル持ちが新入生でも活躍できるクラン戦であったが、ここ何年かは楽団が優勝しておった。時点も例年同じでの。どうにかならぬかと思っておったのじゃ」
新入生が目立てる場としては確かに水のクラン戦しかないだろう。とりわけ、制作や技能系は派手さがない。
新入生が入ったクランに限定しているのも目立たない子たちにも少しでも光が当たるようにしたかっただろう。
楽団の演奏は午後から聴けた。だからこそわかる。他のクランが真剣さを持っていなかった理由明白だった。
新入生のみで他のクランメンバーは出ていなかったらしいが、確かに新入生レベルではなかった。
「負けて当然。そんなのでは停滞してしまう。停滞は物事の死じゃからの」
どうあがいても負けるなら、新入生の顔見せ程度にしようという流れは普通の学校なら問題はないだろう。
けれどここはサイジャルだ。学者や研究者たちが集まって作られた都市。
「それで、映画とやらはエフデが指揮をとり、ケルンが演じたのじゃろ?」
ユリばあ様にまでケルンが演じたことが知られている。
何でだ?普通はクランの誰かだと…あ、そうか。クランのメンバーはケルンのみだから子供の声でばれたってことか。とくに、声に特徴はなくてもそれならわかるか。
「僕も絵を描きました!」
「頑張ったよな。万ぐらい」
手をあげてケルンがユリばあ様に伝えているが、俺は学園側にアニメ制作について伝えたときの反応を思い出した。
かなり引かれた。
これはおそらくなんだが、一枚の絵を描いて仕上げる時間を考えて、十五万を越える枚数っていうのを考えたからだろう。
一応、原画さえ用意したらあとは細かい動作の動画を決めて描いていく作業だ。トレスとか色々時間を短縮する技を使いまくったけどな。一番効果的だったのは結局人海戦術だったが、それでも俺とケルンは頑張った。
ケルンには俺の知識が伝えられてそのノウハウで作業は効率よくできたのと、俺が欲しいシーンをすぐ用意できるっていうのがある。イメージを伝えたらすぐ描けるっていうのは便利だ。
そこまでやっているとは思わなかったのだろう。ユリばあ様が口を開けている。なんとシワだらけの顔ではあるけど、入れ歯じゃなく自前の歯のようだ。入れ歯だったら落ちているぐらい開いている。
「それは…なんとも…いやはや、そうか、そうか。フェスマルク家はたまーに『建築』なんかのスキルが出てくるからの。エフデのことは聞いておったがケルンも制作技能じゃったか」
「うん!僕、お兄ちゃんと一緒なの!」
「『絵画』のクランですからね」
一瞬、緊張をした。
『エフデ』が『造物』スキルを持っていることはエフデを広めるときに一緒に広めた。
理由はイムルの存在だ。『造物』スキルでドワーフから注目を浴びることがわかってから、ケルンに発現した『造物』スキルを隠す必要ができたのだ。公にはケルンは『絵画』と『彫刻』のスキルを持っていることにしている。
本当は自分の手で作ることならだいたいのことはできる。『調合』や『料理』や『鍛冶』などだ。でも習熟度があるのか、今ケルンや俺が作ったりしても専門的にやっている人にはかなり劣るだろう。知識はあっても動作がともわないのだ。
しかし、お兄ちゃんと一緒か…危ないとこだった。ぽろっと話しそうだからまた注意しとかないとな。
「制作技能ならとてもいいのぉ…形として残せるからの。ここもあの子が建て直してくれたから、快適になったからのぉ…先を考えて色々部屋を増設できるようにするとは、さすがはフェスマルク家の男子じゃて」
感心しているようなユリばあ様に、俺とケルンは同時に顔を見合わせた。
「ユリばあ様は『大嵐』の…トーマお祖父様を知っているの?」
トーマ・フェスマルク。『大嵐』の二つ名を持つご先祖様。ケルンのひいひいひいお祖父様だと父様から教えてもらった。
建築家としては、学園や屋敷どこかの教会も建てたりしているので歴史に名を残している。
それだけではなく、トーマお祖父様は鍋狂いの一面があった。暇さえあれば鍋パをしたがるような人だったので、鍋料理研究者兼鍋評論家といくつも本を書いていて、料理史にも名前を残していて文化面だとフェスマルク家で一番の人だそうだ。
だから知られていることは変ではないが、ユリばあ様のいい方は知識として知っているようないい方ではなく、本人をよく知っているかのようないい方だったのだ。
「長ーく…生きておるからな…」
長く生きている…って、トーマお祖父様は軽く五百年は昔の人の話だぞ。何歳なんだ、この人。
最初から不思議なんだ。俺たちを呼ぶ必要はあったのだろうか。有権者とのお茶会を捻じ曲げて個人で会うなぞいくら革新的なことをしたからといえ、ユリばあ様のような人が希望していても簡単には通らないはずだ。
よほど権力を持っているからこそかなり強引にやらなければこのお茶会はなかったはずだ。
そこまでして何を話したいんだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
書いていたのが消えたのがつらすぎます。
明日続きを載せます。
スラ吉が食べる品種と似ているがこちらの方が香りは弱い気がする。まぁ、ランディがスラ吉専用に品種改良しているのかもしれないけど。
イライラしていたのもお茶と花で落ち着いてきた。バラと緑茶は微妙なところではあるけどどちらも芳香が弱いから気にならない。
ケルンの方は紅茶でリラックスしているのか、もぐもぐとケーキを食べている。食べかけだが、俺のを半分やれば喜んで食べた。
しばらく菓子を堪能してまったりと、お茶を味わっていると、ユリばあ様はしっかり完食されてから手をぽんと打った。
「おお、茶菓子で忘れておった…ごほん。まずは水のクラン戦の優勝おめでとう」
「ありがとうございます!」
ニコニコとユリばあ様が、さらにしわを深くして笑う。
「水のクラン戦は、技術系や芸能系のスキル持ちが新入生でも活躍できるクラン戦であったが、ここ何年かは楽団が優勝しておった。時点も例年同じでの。どうにかならぬかと思っておったのじゃ」
新入生が目立てる場としては確かに水のクラン戦しかないだろう。とりわけ、制作や技能系は派手さがない。
新入生が入ったクランに限定しているのも目立たない子たちにも少しでも光が当たるようにしたかっただろう。
楽団の演奏は午後から聴けた。だからこそわかる。他のクランが真剣さを持っていなかった理由明白だった。
新入生のみで他のクランメンバーは出ていなかったらしいが、確かに新入生レベルではなかった。
「負けて当然。そんなのでは停滞してしまう。停滞は物事の死じゃからの」
どうあがいても負けるなら、新入生の顔見せ程度にしようという流れは普通の学校なら問題はないだろう。
けれどここはサイジャルだ。学者や研究者たちが集まって作られた都市。
「それで、映画とやらはエフデが指揮をとり、ケルンが演じたのじゃろ?」
ユリばあ様にまでケルンが演じたことが知られている。
何でだ?普通はクランの誰かだと…あ、そうか。クランのメンバーはケルンのみだから子供の声でばれたってことか。とくに、声に特徴はなくてもそれならわかるか。
「僕も絵を描きました!」
「頑張ったよな。万ぐらい」
手をあげてケルンがユリばあ様に伝えているが、俺は学園側にアニメ制作について伝えたときの反応を思い出した。
かなり引かれた。
これはおそらくなんだが、一枚の絵を描いて仕上げる時間を考えて、十五万を越える枚数っていうのを考えたからだろう。
一応、原画さえ用意したらあとは細かい動作の動画を決めて描いていく作業だ。トレスとか色々時間を短縮する技を使いまくったけどな。一番効果的だったのは結局人海戦術だったが、それでも俺とケルンは頑張った。
ケルンには俺の知識が伝えられてそのノウハウで作業は効率よくできたのと、俺が欲しいシーンをすぐ用意できるっていうのがある。イメージを伝えたらすぐ描けるっていうのは便利だ。
そこまでやっているとは思わなかったのだろう。ユリばあ様が口を開けている。なんとシワだらけの顔ではあるけど、入れ歯じゃなく自前の歯のようだ。入れ歯だったら落ちているぐらい開いている。
「それは…なんとも…いやはや、そうか、そうか。フェスマルク家はたまーに『建築』なんかのスキルが出てくるからの。エフデのことは聞いておったがケルンも制作技能じゃったか」
「うん!僕、お兄ちゃんと一緒なの!」
「『絵画』のクランですからね」
一瞬、緊張をした。
『エフデ』が『造物』スキルを持っていることはエフデを広めるときに一緒に広めた。
理由はイムルの存在だ。『造物』スキルでドワーフから注目を浴びることがわかってから、ケルンに発現した『造物』スキルを隠す必要ができたのだ。公にはケルンは『絵画』と『彫刻』のスキルを持っていることにしている。
本当は自分の手で作ることならだいたいのことはできる。『調合』や『料理』や『鍛冶』などだ。でも習熟度があるのか、今ケルンや俺が作ったりしても専門的にやっている人にはかなり劣るだろう。知識はあっても動作がともわないのだ。
しかし、お兄ちゃんと一緒か…危ないとこだった。ぽろっと話しそうだからまた注意しとかないとな。
「制作技能ならとてもいいのぉ…形として残せるからの。ここもあの子が建て直してくれたから、快適になったからのぉ…先を考えて色々部屋を増設できるようにするとは、さすがはフェスマルク家の男子じゃて」
感心しているようなユリばあ様に、俺とケルンは同時に顔を見合わせた。
「ユリばあ様は『大嵐』の…トーマお祖父様を知っているの?」
トーマ・フェスマルク。『大嵐』の二つ名を持つご先祖様。ケルンのひいひいひいお祖父様だと父様から教えてもらった。
建築家としては、学園や屋敷どこかの教会も建てたりしているので歴史に名を残している。
それだけではなく、トーマお祖父様は鍋狂いの一面があった。暇さえあれば鍋パをしたがるような人だったので、鍋料理研究者兼鍋評論家といくつも本を書いていて、料理史にも名前を残していて文化面だとフェスマルク家で一番の人だそうだ。
だから知られていることは変ではないが、ユリばあ様のいい方は知識として知っているようないい方ではなく、本人をよく知っているかのようないい方だったのだ。
「長ーく…生きておるからな…」
長く生きている…って、トーマお祖父様は軽く五百年は昔の人の話だぞ。何歳なんだ、この人。
最初から不思議なんだ。俺たちを呼ぶ必要はあったのだろうか。有権者とのお茶会を捻じ曲げて個人で会うなぞいくら革新的なことをしたからといえ、ユリばあ様のような人が希望していても簡単には通らないはずだ。
よほど権力を持っているからこそかなり強引にやらなければこのお茶会はなかったはずだ。
そこまでして何を話したいんだろうか。
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書いていたのが消えたのがつらすぎます。
明日続きを載せます。
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