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第六章の裏話
クウリイエンシア皇国第五軍
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クウリイエンシア皇国第五軍副官ベルマリー・メルヴィアムは戸惑っていた。
メルヴィアム家の開祖の再来、神童といわれた弟の豹変を思い出すほどのできごとであった。
「何があったんだ?誰か説明できるか?」
部下の一人にそう尋ねるが首を横に振るばかりで、部下の誰一人としてベルマリーに返答を返すことはできなかった。
彼女たちが困惑している原因は、常日頃、飄々としている自分たちの上官である将軍が項垂れた姿のまま訓練所の片隅でいじけていたからだ。
「上官はいったいどうしたというのだ?」
ここのところ上官であるティルカ将軍の様子がおかしいことは全軍に知られている。
剣の素振りをしていれば、剣は手元からすり抜けてしまい、それでも素振りを続けていたり、いつも決まった方角にむけてため息をしていたりという奇行が目立っていた。
誰かしら気になる良人ができたのか。はたまたありし日の冒険の日々を取り戻したいと願っているのか。
そんな噂が聞こえてくる中で今日もティルカは部下たちから不審な目で見られている。
「何で壁に向かって謝っているのだ?」
「わかりませんよ。上官の行動なんて」
訓練の時間になったというのに、ティルカは訓練所の片隅でひたすらに頭を下げている。
定刻よりも早くに来て自主訓練をしているような人物ではあったが、壁に頭を下げるような訓練はこれまでしていない。そもそも、何の訓練にもならないだろう。
ベルマリーはやれやれと内心で思いつつ、表情には一切出さなかった。幼い頃から表情を消してきた彼女は感情はあれども、表情筋は役割を放棄してしまっている。
どんなことをおもっていても誰にも読みとることはできない。そう思っていたのだが読みとれる人間も少なからずいる。
「上官」
「…すいません…いや、違うな…お許しを…土下座で?…もっと誠意を」
「上官!聞こえてますか!」
そんな一人であるティルカに近づいて声をかけても彼はまったく気づかなかった。ベルマリーはただ驚きしかなかった。
「副官か…何だ?そんな顔して」
いいたいことはいくつもある。何故、壁に謝っているのか。ぶつぶつと謝ることを繰り返しているのか。どうしてそんなに隙だらけになるほどか心を乱しているのか。
どれも聞きたいところだ。だが、用件を先に済ませなければならない。
「何だ?とはなんですか。すでに訓練の時間ですよ」
「は?いやいや、まだ一時間はあるだろ?」
訓練の時間をすでに五分は過ぎていた。ベルマリーは黙って時計台を指差した。
「…時の精霊に騙されたか…」
ティルカはベルマリーがこれまで見たことがない表情をしていた。彼との付き合いは長くはないが、彼の副官として彼女は行動を共にする機会が多い。だからこそ、こんなにも幼い表情を見せたことに疑問を深めた。
「いったいどうしたというのですか?ここのところいつもよりもおかしいですよ」
「いつもって…俺の主が入学したから気になってんだよ」
彼の言葉に彼女は納得した。確かにティルカにとっては命よりも優先すべき事柄である。
「そういえば、愚弟と同窓になったと聞きました…それだけですか?」
事実は異なるだろう。彼女は自分が持つ情報から単純に推測した。
「…若様が臨時職員になられたんだ…あんな警備がザルなサイジャルなんかでお二人を守れるなんて思えねぇんだよ」
「それでここのところ奇行が目立ったのですか」
若様とは秘匿され続けた芸術家エフデのことだ。正式にフェスマルク家から長男であるとの宣言が回ってきた。病弱なため嫡男は次男のケルンのままだが、現在は人形を作って遠方の土地から操作しているとのだ。
遠距離で人形を操作するというスキルと魔力の多さを考えれば、病弱でなければ嫡男であったことだろう。
ただフェスマルク家は、長らく子供は一人であったとクウリイエンシア皇国の貴族、とりわけ建国貴族は思ってきていた。
貴族であるため私生児や獣人として産まれた子を秘匿することはある。病弱としているが当主のティストールが愛人に産ませた子、もしくは獣人なのではないかとの噂もある。だが、回された情報は奥方との子供であるとも明記されていた。
ベルマリーは実家からも調べるようにいわれていたことをついでに尋ねようと思った。
「そういえば、上官にお聞きしたいことがあったんです」
「何だ?改まって」
「エフデ・フェスマルク殿はどのような方ですか?」
ちょっとした雑談がてらに人柄を聞ければそれでよかった。彼女は軽い気持ちで聞いたのだ。
彼が笑顔を捨て無表情になり、軽い殺気を込めた瞳で自分を射抜いてくるとは思わなかった。
「…若様はお前たちの主にはならんぞ」
低く唸るようにティルカは彼女に牽制をする。
「こればかりはメルヴィアム家の性ですので…ですが上官がそうおっしゃるなら諦めるしかありませんか」
メルヴィアム家は従者の家だ。誰かに仕えることを喜びとする変わった建国貴族でもある。特に建国貴族の人間ならば仕えるに足る人物が多い。それゆえ、秘匿されていたエフデの人物像が知りたかったのだ。
「若様も坊ちゃまも従者はもう必要ないからな」
「非常に残念です…愚弟がせっかく同窓になった縁でようやく全ての建国貴族の子弟を把握できましたのに…そういえば嫡男殿は普通のお子として健やかであると聞いております」
暗にケルンはメルヴィアム家の誰かしらの主には不向きであると伝えれば、ようやく彼の機嫌も戻ってきた。メルヴィアム家の人間が心を引かれるのはとんでもないことをやる人間なのだ。それ以外は仕える価値を感じない。
彼女は手持ちの情報を開示して興味が失せたことをティルカに伝えることにした。
「エフデ殿に関しては…宰相家や我が家ですら把握できておりませんでしたが、さすがはフェスマルク家ですね。予想もできないことをやっておられます」
「旦那様と奥様。親父の本気で隠せないことなんてないからな」
代々の当主からして突拍子もないことをしでかしてきたフェスマルク家。初代の頃からメルヴィアム家も付き合いはあるが、今代の当主であるティストールになってから、付き合いはほとんどなくなっていた。
子供がいなかったのが原因なのだが、それも昔の話になった。
だから彼女の実家以上に情報を集めている家も増えていた。
「ですが、王家やあのザクス家も探りを入れておりますよ?他の貴族のように露骨ではありませんが」
建国貴族以外のただの貴族はかなり露骨に情報を集めようとしている。エフデは貴族の嫡男ではないが、フェスマルク家の長男であり芸術家として大成している。彼の作品がどれほどの価値で取引されているのかを知っているならば、病弱なことを差し引いても自分の娘と縁を結ばせたい親は多いのだ。
それにもしもエフデの血を引く子供が産まれれば、高い魔力を持つ子供である可能性がある。そうなればその家は安泰だろう。魔力の質が悪くなり、平均の魔力値が下がっている昨今の事情を鑑みれば誰でも欲しがる縁だ。
「ちっ…若様を嗅ぎ回る馬鹿は牽制するが…ザクス家は家としてか?」
「前当主殿が父に尋ねてこられたそうです」
「…ザクス先生か…厄介だな…」
クレトス・ザクスは元医務官であり、現在は王族とフェスマルク家専属の医師になっている。本当はフェスマルク家専属の医師に専念をするといって医務官と当主の座をおりたのだが、王の懇願により王族の診察もしている。
そんな彼が知らないというエフデは、当初はフェスマルク家とは無縁の者だと思われていたのだ。しかも情報が何一つとして出ない。徹底的なまでに情報を規制されている。
「上官はエフデ殿とよくお会いになられるんですか?どのような殿方ですか?ご容姿は?性格は?」
「だからお前んちの誰かの主に若様はならないっていってるだろ!」
やや興奮して彼女が尋ねるのも無理はない。ある程度の情報を開示した分は彼も話してくれるのだと知っているからだ。けれども、今回ばかりはそうはいかなった。
それに、とティルカは呟いた。
「…俺は…若様に会わせる顔なんてねぇ…資格がないんだよ…」
寂しそうで、申し訳なさがいっぱいという気持ちが混ざった彼にさすがに問いただすのをためらい、訓練をしようという言葉に素直に従った。
幾日かたったある日。部下たちは顔を青ざめて彼女のところに避難してきていた。
無表情な彼女ではあるが、彼女すらそれでも軽く青ざめてしまうほど状況は悪い。
「副官。聞いてきてください…自分たちじゃ、死ぬ気しかしません。近づけば確実に寿命が減るか終わります」
部下の一人が進言する。魔族の貴族の位持ちと戦うときですらここまでひどい殺気は放っていないというのに、訓練所の周囲は殺気で満ちていた。
空には鳥すら飛んでいない。
「…仕方ない。お前たちは念のためさがっておけ」
暴れまわることはないだろうが、事情を聞いて殺気が強まれば、いくら軍に所属
して鍛えてきた部下たちでもどうなるかはわからない。気絶して粗相をするならまだいいが、心臓が止まりでもすれば処置が面倒なのだ。
消去方法で彼女なら近づけると部下たちも考えるほど今日のティルカは様子がおかしかった。
「上官。いかがなさいましたか?」
ビリビリと、肌を刺してくる殺気は、細かない刃物で刺されたような幻痛を思わせる。魔力がこもれば実際に怪我をするかもしれない。
「副官か…あー…何でみんな離れてんだ?」
ぼぅと心ここに在らずといった彼には現状がわかっていない。そのことにベルマリーは素直に教えることにした。変に言葉をかけて遠回しにしても理解しないと判断したのだ。
「上官の殺気が強すぎます。自重してください」
「殺気?…そんなもん出してるつもりはねぇんだけど」
「無自覚なのが一番たちが悪いです…何かあったのならお聞きしても?」
話していけば殺気は少しだけ収まってきた。それでもまだ危険域なのは変わっていない。まるで手負いの獣が首元を狙っているかのような殺気は生きた心地がしない。
「何だかよ…朝から嫌な予感がずっとしててよ…起きたときなんて寝汗でびっしょりだったんだぜ?」
「嫌な予感ですか?まさか国家存亡の危機ですか?」
たかがそんなもので。普通の人間がいえばそう思うだろう。
ティルカは普通の人間ではない。神がかった直感は何度も命を救い、そして魔族を屠ってきた。その彼が嫌な予感というのだから、国家の危機かと勘繰ってもおかしなはなしではない。
「国家とかどうでもいい…気のせいならいいんだ…でもよ…俺はこの感覚を知ってるんだ…何だったかな…思い出したくなくてよ…」
「よほど嫌なことなんですね」
国に使えている者が聞けば、聞き捨てならないような二人の会話ではあるが、彼らは国に使えていない。国家がどうなろうと関係ないのだ。
国家としてみれば危険思想ととられるだろう。
第五軍に関してはこれが当たり前だ。平民の将軍への当て付けとして、半端者や鼻つまみ者たちが集まってしまった。
それでも彼らは優秀な軍人として上官たちの行動をうかがいながら、かなり離れた位置からいつでも逃げれるように警戒をしているが、訓練所から離れないでいる。
似たような思考を持つ者たちで構成された第五軍は一癖も二癖もある。それをまとめる二人が一番の異常者なのだ。
「嫌なことな。いい得てるが、俺の人生で嫌なことなんて…そうだ。あのときに…似ている…」
すっと殺気が完全に消えた。ほっとした、部下たちとは対照的にベルマリーは心臓が冷えて動きを止めたように思った。
暗く憎しみで染まったティルカの瞳をみた瞬間に、軽く意識が遠のくほどの恐怖を感じたのだ。
「すまん。俺はちょっと走ってくるわ」
「え?どこまでですか?」
一瞬でほの暗い瞳を消すとにかっと彼はいつもの笑みをみせた。
その口からあり得ないことをいいだし、彼女の体も自由になった。
「サイジャルまで」
突然何をいいだすのかと、準備体操をし始めたティルカにベルマリーは信じれないといった心情を隠すことができなかった。
「馬でも一日はかかりますよ!まさか自力で行くつもりですか!」
「馬だと休憩したりするから。俺より遅せぇし。大丈夫だって。走れば二時間でつくからよ。じゃ、お前らは訓練しておけよ」
そういうと、止める間もなく走り出した。徐々に速度を上げていきすでに、後ろ姿もみえなくなった。
「副官。ティルカ上官は?」
「サイジャルに行くと」
部下たちが安心したように近づいてきたが、ベルマリーの言葉にすぐにかたまった。
「サイジャルって…やっぱり将軍っておかしいです」
「おい、将軍って呼ぶなよ。俺らまで連帯責任で走らされるだろ!」
第五軍の決まりの一つがティルカを将軍と呼ばないことだ。もし将軍と呼べば罰則としてティルカの訓練に付き合うことになる。
化け物としかいえない彼だけの訓練により、軍で鍛えられていても、翌日から数日は寝込むことになる。それを嫌というほど知っているからこそ、全員が嫌そうな顔になる。
すでに見えなくなってはいるが、やたらと勘のいい上官のことだからもしかしたら…とその場にいた者は思ったのだ。
「…ともかく、みな訓練に励むように。上官は…機嫌をよくしてか悪くして帰ってくるからわからないんだからな」
予定通りに訓練に入る。ティルカがいなくても訓練をしなければならない。
第五軍ははぐれ魔族と戦う唯一の軍なのだから訓練をさぼることは死に繋がる。
彼らは国家に忠誠を向けない。彼らは一度捨て駒にされた者たちや、魔族を恨む者たち、一族でも異端者扱いの者などだからだ。
夕方になってティルカは上機嫌に帰ってきた。服や袖は真っ赤に染まっていたがそれをみた全員は触れないで過ごした。
「おい、副官。お前は映画を観たか?」
「映画をですか?…ええ。たまたま観る機会に恵まれましたから」
またある日のことだ。訓練も終わり次の遠征についての打ち合わせも終わり解散の流れとなったときに、ティルカはベルマリーに話をふった。
映画は今最も王都で話題になっている娯楽だ。
王都でも一番大きな舞台のある劇場を映画館として改装して上映をしている。鑑賞券は毎日完売しており、丸一日上映をしていても人が途切れることがない。
建国貴族であっても鑑賞券がなかなか手に入らないため、ベルマリーも最近になって観ることができた。
噂では王妃が連日鑑賞券を手にいれては極秘に鑑賞をしているだとか、レダート家は映画に必要な道具をすでに購入しているだとか様々な真実の噂を彼女は思い出していた。
そうなるのもわからなくはない。何せ、新しい技術なのだ。
「よかっただろ?あれ、若様と坊ちゃまが作ったんだ。主役はなんと坊ちゃまが演じたんだぞ!やっぱり坊ちゃまは天才だよな!」
子供のようにはしゃいで自慢をする彼をみながら、そういえばとベルマリーは思い出していた。
エフデ・フェスマルクは確かに芸術家だ。だが、発明家としても広く知られるようになってきている。
ふと彼女の脳裏にドラルイン帝国のことがよぎった。あの国にとってフェスマルク家は触れてはいけない存在であると同時に、強く渇望していることを。
けれども上機嫌な上官の機嫌を損ねるのは彼女も望んでいない。すぐに映画の話題に頭を切り替えた。
「上官も出てませんか?」
「ちょっとだけな」
演技ができるとは思っていなかったがなかなか上手かったように思う。所作さえかちんとすれば、王都でも役者として大成するだろう。それほど、ティルカは存在感がある。
そう思ったベルマリーだが、関係者である彼なら一番気になる役者の正体を知っているのではないのだろうかと気付いた。
「私は謎ペンギンを演じた役者がが気になります。名前が載っていなかったので。どんな人かと。新人の役者でしょうか?」
「いや。あれは若様だ」
若様。そう聞いた彼女は心が踊った。
「なかなかよいお声をしておられましたね…」
「やめろ。副官を斬るのはしたくねぇからよ」
彼女好みの声と言葉のいい回しに、隠しきれていない皮肉屋なところなど、彼女の求める存在にかなり近いと思ったのだ。
ティルカが止めなければすぐにでもフェスマルク家に手紙でも書いただろう。
「本人は目立ちたくないらしい…まぁ、もう目立ちまくってるけどな…あー、そうだ。副官」
「何でしょうか?」
「…お前のその…実家の特性を少し借りたいんだが」
顔には不本意としっかりと書いてある彼をみて、彼女は内心で微笑んだ。
これで自分の願望が叶うだろう。
「構いませんが…ですがよろしいのですか?高くつきますよ?」
ただではしない。軍人としてではなく、メルヴィアム家の一人として依頼を受けるのだ。それに見合った報酬でなければ受けるつもりはない。
「三時間」
「半日」
時間をいいあう二人。ティルカは嫌そうに三時間といえば、すぐにベルマリーは半日と指定する。
「三時間半!」
「話になりません。五時間はいただきます」
そうきっぱりといわれ、ティルカはげんなりしながら自分に出せる最大限の譲歩をする。
「…お前んち独特の奉仕で二時間でどうだ?」
「いいですよ。それで、何をお望みですか?早くおっしゃってください。新しい服を仕立てに行かねばなりませんから」
「…ほんと、お前の家って特殊すぎる…」
ティルカが心底嫌がっていたのは、メルヴィアム家の特殊な性癖による。
メルヴィアム家は建国貴族ながら序列は一番下であり、主を見つけることを掟としている。仕えるに足る人物ならばどんな人間でも構わない。
ただ、彼らは一人に仕えるのではなく複数に使われたいのだ。物のように、雑な扱いを受ければ受けるほどメルヴィアム家よ者は喜ぶ。
いわゆる奉仕型ドエムという業の深い一族なのである。
「初代メルヴィアムはもっとすごかったのですよ?他の十名を献身的にご奉仕をしたのですから…初代がうらやましい…」
初代メルヴィアムは執事の祖とされている人物であり、初代の王に献身的に仕えた。
初代建国貴族たちの食事や身の回りの世話を一人でこなしていた姿から現在では使用人の守護者として信仰もされている。
使用人、特に執事やメイドはメルヴィアム家から派遣されているのは、貴族や商家では当たり前のことになっている。
「現在のフェスマルク家は別ですが…クウリイエンシアにおいて、貴族の出でない全ての執事とメイドは我が家の管轄です。そんな我が家の特性で何をなさりたいのですか?」
貴族の行儀見習いや、箔付けに一時的に使用人として赴くわけではなく、どのような業務もこなす本来の使用人はメルヴィアム家へと情報を渡している。
どのような噂話であっても仕えるに足る主を見つけるためには必要なことなのだ。
ベルマリーは現在の仮の主であるティルカに望みを聞く。仮とはいえ、主のためなら情報を渡すことに忌避感はない。
それが例え秘匿されるべき情報でもだ。
「建国貴族の子供たちの話を少し聞きたいんだ…生存している全員のは無論、死亡したことになっている分もな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
明日から毎日更新します。誤字脱字はご容赦ください・
全作品を毎日更新しますので。
メルヴィアム家の開祖の再来、神童といわれた弟の豹変を思い出すほどのできごとであった。
「何があったんだ?誰か説明できるか?」
部下の一人にそう尋ねるが首を横に振るばかりで、部下の誰一人としてベルマリーに返答を返すことはできなかった。
彼女たちが困惑している原因は、常日頃、飄々としている自分たちの上官である将軍が項垂れた姿のまま訓練所の片隅でいじけていたからだ。
「上官はいったいどうしたというのだ?」
ここのところ上官であるティルカ将軍の様子がおかしいことは全軍に知られている。
剣の素振りをしていれば、剣は手元からすり抜けてしまい、それでも素振りを続けていたり、いつも決まった方角にむけてため息をしていたりという奇行が目立っていた。
誰かしら気になる良人ができたのか。はたまたありし日の冒険の日々を取り戻したいと願っているのか。
そんな噂が聞こえてくる中で今日もティルカは部下たちから不審な目で見られている。
「何で壁に向かって謝っているのだ?」
「わかりませんよ。上官の行動なんて」
訓練の時間になったというのに、ティルカは訓練所の片隅でひたすらに頭を下げている。
定刻よりも早くに来て自主訓練をしているような人物ではあったが、壁に頭を下げるような訓練はこれまでしていない。そもそも、何の訓練にもならないだろう。
ベルマリーはやれやれと内心で思いつつ、表情には一切出さなかった。幼い頃から表情を消してきた彼女は感情はあれども、表情筋は役割を放棄してしまっている。
どんなことをおもっていても誰にも読みとることはできない。そう思っていたのだが読みとれる人間も少なからずいる。
「上官」
「…すいません…いや、違うな…お許しを…土下座で?…もっと誠意を」
「上官!聞こえてますか!」
そんな一人であるティルカに近づいて声をかけても彼はまったく気づかなかった。ベルマリーはただ驚きしかなかった。
「副官か…何だ?そんな顔して」
いいたいことはいくつもある。何故、壁に謝っているのか。ぶつぶつと謝ることを繰り返しているのか。どうしてそんなに隙だらけになるほどか心を乱しているのか。
どれも聞きたいところだ。だが、用件を先に済ませなければならない。
「何だ?とはなんですか。すでに訓練の時間ですよ」
「は?いやいや、まだ一時間はあるだろ?」
訓練の時間をすでに五分は過ぎていた。ベルマリーは黙って時計台を指差した。
「…時の精霊に騙されたか…」
ティルカはベルマリーがこれまで見たことがない表情をしていた。彼との付き合いは長くはないが、彼の副官として彼女は行動を共にする機会が多い。だからこそ、こんなにも幼い表情を見せたことに疑問を深めた。
「いったいどうしたというのですか?ここのところいつもよりもおかしいですよ」
「いつもって…俺の主が入学したから気になってんだよ」
彼の言葉に彼女は納得した。確かにティルカにとっては命よりも優先すべき事柄である。
「そういえば、愚弟と同窓になったと聞きました…それだけですか?」
事実は異なるだろう。彼女は自分が持つ情報から単純に推測した。
「…若様が臨時職員になられたんだ…あんな警備がザルなサイジャルなんかでお二人を守れるなんて思えねぇんだよ」
「それでここのところ奇行が目立ったのですか」
若様とは秘匿され続けた芸術家エフデのことだ。正式にフェスマルク家から長男であるとの宣言が回ってきた。病弱なため嫡男は次男のケルンのままだが、現在は人形を作って遠方の土地から操作しているとのだ。
遠距離で人形を操作するというスキルと魔力の多さを考えれば、病弱でなければ嫡男であったことだろう。
ただフェスマルク家は、長らく子供は一人であったとクウリイエンシア皇国の貴族、とりわけ建国貴族は思ってきていた。
貴族であるため私生児や獣人として産まれた子を秘匿することはある。病弱としているが当主のティストールが愛人に産ませた子、もしくは獣人なのではないかとの噂もある。だが、回された情報は奥方との子供であるとも明記されていた。
ベルマリーは実家からも調べるようにいわれていたことをついでに尋ねようと思った。
「そういえば、上官にお聞きしたいことがあったんです」
「何だ?改まって」
「エフデ・フェスマルク殿はどのような方ですか?」
ちょっとした雑談がてらに人柄を聞ければそれでよかった。彼女は軽い気持ちで聞いたのだ。
彼が笑顔を捨て無表情になり、軽い殺気を込めた瞳で自分を射抜いてくるとは思わなかった。
「…若様はお前たちの主にはならんぞ」
低く唸るようにティルカは彼女に牽制をする。
「こればかりはメルヴィアム家の性ですので…ですが上官がそうおっしゃるなら諦めるしかありませんか」
メルヴィアム家は従者の家だ。誰かに仕えることを喜びとする変わった建国貴族でもある。特に建国貴族の人間ならば仕えるに足る人物が多い。それゆえ、秘匿されていたエフデの人物像が知りたかったのだ。
「若様も坊ちゃまも従者はもう必要ないからな」
「非常に残念です…愚弟がせっかく同窓になった縁でようやく全ての建国貴族の子弟を把握できましたのに…そういえば嫡男殿は普通のお子として健やかであると聞いております」
暗にケルンはメルヴィアム家の誰かしらの主には不向きであると伝えれば、ようやく彼の機嫌も戻ってきた。メルヴィアム家の人間が心を引かれるのはとんでもないことをやる人間なのだ。それ以外は仕える価値を感じない。
彼女は手持ちの情報を開示して興味が失せたことをティルカに伝えることにした。
「エフデ殿に関しては…宰相家や我が家ですら把握できておりませんでしたが、さすがはフェスマルク家ですね。予想もできないことをやっておられます」
「旦那様と奥様。親父の本気で隠せないことなんてないからな」
代々の当主からして突拍子もないことをしでかしてきたフェスマルク家。初代の頃からメルヴィアム家も付き合いはあるが、今代の当主であるティストールになってから、付き合いはほとんどなくなっていた。
子供がいなかったのが原因なのだが、それも昔の話になった。
だから彼女の実家以上に情報を集めている家も増えていた。
「ですが、王家やあのザクス家も探りを入れておりますよ?他の貴族のように露骨ではありませんが」
建国貴族以外のただの貴族はかなり露骨に情報を集めようとしている。エフデは貴族の嫡男ではないが、フェスマルク家の長男であり芸術家として大成している。彼の作品がどれほどの価値で取引されているのかを知っているならば、病弱なことを差し引いても自分の娘と縁を結ばせたい親は多いのだ。
それにもしもエフデの血を引く子供が産まれれば、高い魔力を持つ子供である可能性がある。そうなればその家は安泰だろう。魔力の質が悪くなり、平均の魔力値が下がっている昨今の事情を鑑みれば誰でも欲しがる縁だ。
「ちっ…若様を嗅ぎ回る馬鹿は牽制するが…ザクス家は家としてか?」
「前当主殿が父に尋ねてこられたそうです」
「…ザクス先生か…厄介だな…」
クレトス・ザクスは元医務官であり、現在は王族とフェスマルク家専属の医師になっている。本当はフェスマルク家専属の医師に専念をするといって医務官と当主の座をおりたのだが、王の懇願により王族の診察もしている。
そんな彼が知らないというエフデは、当初はフェスマルク家とは無縁の者だと思われていたのだ。しかも情報が何一つとして出ない。徹底的なまでに情報を規制されている。
「上官はエフデ殿とよくお会いになられるんですか?どのような殿方ですか?ご容姿は?性格は?」
「だからお前んちの誰かの主に若様はならないっていってるだろ!」
やや興奮して彼女が尋ねるのも無理はない。ある程度の情報を開示した分は彼も話してくれるのだと知っているからだ。けれども、今回ばかりはそうはいかなった。
それに、とティルカは呟いた。
「…俺は…若様に会わせる顔なんてねぇ…資格がないんだよ…」
寂しそうで、申し訳なさがいっぱいという気持ちが混ざった彼にさすがに問いただすのをためらい、訓練をしようという言葉に素直に従った。
幾日かたったある日。部下たちは顔を青ざめて彼女のところに避難してきていた。
無表情な彼女ではあるが、彼女すらそれでも軽く青ざめてしまうほど状況は悪い。
「副官。聞いてきてください…自分たちじゃ、死ぬ気しかしません。近づけば確実に寿命が減るか終わります」
部下の一人が進言する。魔族の貴族の位持ちと戦うときですらここまでひどい殺気は放っていないというのに、訓練所の周囲は殺気で満ちていた。
空には鳥すら飛んでいない。
「…仕方ない。お前たちは念のためさがっておけ」
暴れまわることはないだろうが、事情を聞いて殺気が強まれば、いくら軍に所属
して鍛えてきた部下たちでもどうなるかはわからない。気絶して粗相をするならまだいいが、心臓が止まりでもすれば処置が面倒なのだ。
消去方法で彼女なら近づけると部下たちも考えるほど今日のティルカは様子がおかしかった。
「上官。いかがなさいましたか?」
ビリビリと、肌を刺してくる殺気は、細かない刃物で刺されたような幻痛を思わせる。魔力がこもれば実際に怪我をするかもしれない。
「副官か…あー…何でみんな離れてんだ?」
ぼぅと心ここに在らずといった彼には現状がわかっていない。そのことにベルマリーは素直に教えることにした。変に言葉をかけて遠回しにしても理解しないと判断したのだ。
「上官の殺気が強すぎます。自重してください」
「殺気?…そんなもん出してるつもりはねぇんだけど」
「無自覚なのが一番たちが悪いです…何かあったのならお聞きしても?」
話していけば殺気は少しだけ収まってきた。それでもまだ危険域なのは変わっていない。まるで手負いの獣が首元を狙っているかのような殺気は生きた心地がしない。
「何だかよ…朝から嫌な予感がずっとしててよ…起きたときなんて寝汗でびっしょりだったんだぜ?」
「嫌な予感ですか?まさか国家存亡の危機ですか?」
たかがそんなもので。普通の人間がいえばそう思うだろう。
ティルカは普通の人間ではない。神がかった直感は何度も命を救い、そして魔族を屠ってきた。その彼が嫌な予感というのだから、国家の危機かと勘繰ってもおかしなはなしではない。
「国家とかどうでもいい…気のせいならいいんだ…でもよ…俺はこの感覚を知ってるんだ…何だったかな…思い出したくなくてよ…」
「よほど嫌なことなんですね」
国に使えている者が聞けば、聞き捨てならないような二人の会話ではあるが、彼らは国に使えていない。国家がどうなろうと関係ないのだ。
国家としてみれば危険思想ととられるだろう。
第五軍に関してはこれが当たり前だ。平民の将軍への当て付けとして、半端者や鼻つまみ者たちが集まってしまった。
それでも彼らは優秀な軍人として上官たちの行動をうかがいながら、かなり離れた位置からいつでも逃げれるように警戒をしているが、訓練所から離れないでいる。
似たような思考を持つ者たちで構成された第五軍は一癖も二癖もある。それをまとめる二人が一番の異常者なのだ。
「嫌なことな。いい得てるが、俺の人生で嫌なことなんて…そうだ。あのときに…似ている…」
すっと殺気が完全に消えた。ほっとした、部下たちとは対照的にベルマリーは心臓が冷えて動きを止めたように思った。
暗く憎しみで染まったティルカの瞳をみた瞬間に、軽く意識が遠のくほどの恐怖を感じたのだ。
「すまん。俺はちょっと走ってくるわ」
「え?どこまでですか?」
一瞬でほの暗い瞳を消すとにかっと彼はいつもの笑みをみせた。
その口からあり得ないことをいいだし、彼女の体も自由になった。
「サイジャルまで」
突然何をいいだすのかと、準備体操をし始めたティルカにベルマリーは信じれないといった心情を隠すことができなかった。
「馬でも一日はかかりますよ!まさか自力で行くつもりですか!」
「馬だと休憩したりするから。俺より遅せぇし。大丈夫だって。走れば二時間でつくからよ。じゃ、お前らは訓練しておけよ」
そういうと、止める間もなく走り出した。徐々に速度を上げていきすでに、後ろ姿もみえなくなった。
「副官。ティルカ上官は?」
「サイジャルに行くと」
部下たちが安心したように近づいてきたが、ベルマリーの言葉にすぐにかたまった。
「サイジャルって…やっぱり将軍っておかしいです」
「おい、将軍って呼ぶなよ。俺らまで連帯責任で走らされるだろ!」
第五軍の決まりの一つがティルカを将軍と呼ばないことだ。もし将軍と呼べば罰則としてティルカの訓練に付き合うことになる。
化け物としかいえない彼だけの訓練により、軍で鍛えられていても、翌日から数日は寝込むことになる。それを嫌というほど知っているからこそ、全員が嫌そうな顔になる。
すでに見えなくなってはいるが、やたらと勘のいい上官のことだからもしかしたら…とその場にいた者は思ったのだ。
「…ともかく、みな訓練に励むように。上官は…機嫌をよくしてか悪くして帰ってくるからわからないんだからな」
予定通りに訓練に入る。ティルカがいなくても訓練をしなければならない。
第五軍ははぐれ魔族と戦う唯一の軍なのだから訓練をさぼることは死に繋がる。
彼らは国家に忠誠を向けない。彼らは一度捨て駒にされた者たちや、魔族を恨む者たち、一族でも異端者扱いの者などだからだ。
夕方になってティルカは上機嫌に帰ってきた。服や袖は真っ赤に染まっていたがそれをみた全員は触れないで過ごした。
「おい、副官。お前は映画を観たか?」
「映画をですか?…ええ。たまたま観る機会に恵まれましたから」
またある日のことだ。訓練も終わり次の遠征についての打ち合わせも終わり解散の流れとなったときに、ティルカはベルマリーに話をふった。
映画は今最も王都で話題になっている娯楽だ。
王都でも一番大きな舞台のある劇場を映画館として改装して上映をしている。鑑賞券は毎日完売しており、丸一日上映をしていても人が途切れることがない。
建国貴族であっても鑑賞券がなかなか手に入らないため、ベルマリーも最近になって観ることができた。
噂では王妃が連日鑑賞券を手にいれては極秘に鑑賞をしているだとか、レダート家は映画に必要な道具をすでに購入しているだとか様々な真実の噂を彼女は思い出していた。
そうなるのもわからなくはない。何せ、新しい技術なのだ。
「よかっただろ?あれ、若様と坊ちゃまが作ったんだ。主役はなんと坊ちゃまが演じたんだぞ!やっぱり坊ちゃまは天才だよな!」
子供のようにはしゃいで自慢をする彼をみながら、そういえばとベルマリーは思い出していた。
エフデ・フェスマルクは確かに芸術家だ。だが、発明家としても広く知られるようになってきている。
ふと彼女の脳裏にドラルイン帝国のことがよぎった。あの国にとってフェスマルク家は触れてはいけない存在であると同時に、強く渇望していることを。
けれども上機嫌な上官の機嫌を損ねるのは彼女も望んでいない。すぐに映画の話題に頭を切り替えた。
「上官も出てませんか?」
「ちょっとだけな」
演技ができるとは思っていなかったがなかなか上手かったように思う。所作さえかちんとすれば、王都でも役者として大成するだろう。それほど、ティルカは存在感がある。
そう思ったベルマリーだが、関係者である彼なら一番気になる役者の正体を知っているのではないのだろうかと気付いた。
「私は謎ペンギンを演じた役者がが気になります。名前が載っていなかったので。どんな人かと。新人の役者でしょうか?」
「いや。あれは若様だ」
若様。そう聞いた彼女は心が踊った。
「なかなかよいお声をしておられましたね…」
「やめろ。副官を斬るのはしたくねぇからよ」
彼女好みの声と言葉のいい回しに、隠しきれていない皮肉屋なところなど、彼女の求める存在にかなり近いと思ったのだ。
ティルカが止めなければすぐにでもフェスマルク家に手紙でも書いただろう。
「本人は目立ちたくないらしい…まぁ、もう目立ちまくってるけどな…あー、そうだ。副官」
「何でしょうか?」
「…お前のその…実家の特性を少し借りたいんだが」
顔には不本意としっかりと書いてある彼をみて、彼女は内心で微笑んだ。
これで自分の願望が叶うだろう。
「構いませんが…ですがよろしいのですか?高くつきますよ?」
ただではしない。軍人としてではなく、メルヴィアム家の一人として依頼を受けるのだ。それに見合った報酬でなければ受けるつもりはない。
「三時間」
「半日」
時間をいいあう二人。ティルカは嫌そうに三時間といえば、すぐにベルマリーは半日と指定する。
「三時間半!」
「話になりません。五時間はいただきます」
そうきっぱりといわれ、ティルカはげんなりしながら自分に出せる最大限の譲歩をする。
「…お前んち独特の奉仕で二時間でどうだ?」
「いいですよ。それで、何をお望みですか?早くおっしゃってください。新しい服を仕立てに行かねばなりませんから」
「…ほんと、お前の家って特殊すぎる…」
ティルカが心底嫌がっていたのは、メルヴィアム家の特殊な性癖による。
メルヴィアム家は建国貴族ながら序列は一番下であり、主を見つけることを掟としている。仕えるに足る人物ならばどんな人間でも構わない。
ただ、彼らは一人に仕えるのではなく複数に使われたいのだ。物のように、雑な扱いを受ければ受けるほどメルヴィアム家よ者は喜ぶ。
いわゆる奉仕型ドエムという業の深い一族なのである。
「初代メルヴィアムはもっとすごかったのですよ?他の十名を献身的にご奉仕をしたのですから…初代がうらやましい…」
初代メルヴィアムは執事の祖とされている人物であり、初代の王に献身的に仕えた。
初代建国貴族たちの食事や身の回りの世話を一人でこなしていた姿から現在では使用人の守護者として信仰もされている。
使用人、特に執事やメイドはメルヴィアム家から派遣されているのは、貴族や商家では当たり前のことになっている。
「現在のフェスマルク家は別ですが…クウリイエンシアにおいて、貴族の出でない全ての執事とメイドは我が家の管轄です。そんな我が家の特性で何をなさりたいのですか?」
貴族の行儀見習いや、箔付けに一時的に使用人として赴くわけではなく、どのような業務もこなす本来の使用人はメルヴィアム家へと情報を渡している。
どのような噂話であっても仕えるに足る主を見つけるためには必要なことなのだ。
ベルマリーは現在の仮の主であるティルカに望みを聞く。仮とはいえ、主のためなら情報を渡すことに忌避感はない。
それが例え秘匿されるべき情報でもだ。
「建国貴族の子供たちの話を少し聞きたいんだ…生存している全員のは無論、死亡したことになっている分もな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
明日から毎日更新します。誤字脱字はご容赦ください・
全作品を毎日更新しますので。
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