選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第七章 ケモナーと精霊の血脈

雑然とした部屋

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 部屋に入れば俺やケルンはただ呆然とその場を見るしかできなかった。
 部屋の広さはかなりある。目測になるが、縦横二十メートルの正方形の部屋だろう。

 けれど広さを感じることはない。
 そこはまさに何でもありそうなほど物に溢れていた。右手の壁には古びた剣や槍、弓などの武具がある。かと思えば大量の蔵書がその前にうず高く積まれている。
 左手には鎧や盾といった物がいくつも見える。

 ただ、どれだけ何があるかはわからない。
 なぜならば、その荷物類よりも多いタンスや食器類がところせましと置かれているのだ。
 わずかに獣道のように人が歩けるスペースが確保されているが…片付けられていない部屋というか、とりあえず荷物をどんどんと置いていったような部屋だ。

「すげぇ荷物の山だな…」
「宝物がいっぱいだね!」
「宝物ってか」

 ガラクタ?
 武具類とかは全て錆びていいるし、食器類も割れた物も多い。タンスの中はどうなっているかわからないが、たぶんろくなものはないだろう。
 本とかは読んでみないとわからないが…ざっと足元に落ちている本のタイトルが『美味しいお水の作り方』とかいうものだからな…期待はできない。

 まぁ、そんなことはご機嫌クライマックスなケルンにはまったく関係ないようだけど。

「探検!探検だよ!行くよー!お兄ちゃん、ミルディ!」
「坊ちゃま!足元にお気を、あっ」

 テンションも高くブンブン、手を振って行進をするかのように足を進めれば、手が積まれた本を軽く吹き飛ばしてしまう。
 飛んだ本は積まれた皿に当たり、皿が崩れた先に立ててあった盾に当たり、盾が倒れる。すると鎧に当たり…そのままいくつもの鎧を倒していく。その先にあるタンスまで巻き込んで。

「…ドミノ倒しかよ」

 ガシャーン、どが、ぐしゃ、ぱりっ!ドーン!
 そんな盛大に壊れていく音と共に埃が舞う。
 ガラクタが増えたな。

「ご、ごめんなさい…ちゃんと気をつける…」
「おわかりになったのならいいです…」

 ミルディが額を押えながらため息を吐く。まだ若いのに苦労をかけて申し訳ない。

 しかし、はずみとはいえかなり部屋が…ん?逆に歩きやすくなったかもしれないぞ。鎧や食器類なんかで通れそうになかったとこには、タンスが上に乗っかってくれたから、タンスを道がわりにすれば進めれるだろうし。

「タンスの上に乗って移動するか」
「お行儀悪いよ?」
「あー…割れた食器の上より安全だから」
「そっか!そうだねー!」

 行儀が悪いというか、普通はタンスの上になんか乗って移動しないからな。でも、割れた食器の上を歩くよりましなのは本当だ。靴を履いていても危ないもんは危ない。

「はぁ…」

 おっとミルディがため息をついたぞ。俺まで密告されたら困るからさくっと探検してケルンを満足させて帰ろう。
 タンスに上がって部屋をみればまだ埃が舞っている。

「ケルン大丈夫か?喉とか痛くないか?」
「平気!」

 どんだけ掃除をしていないのかは知らないが、埃が大量だ。それを巻き上げた原因のケルンは平気そうだからいいが…ちょっと待てよ。なんでこの部屋は自動掃除が機能していないんだ?学園の廊下ですら埃を吸うようになっているっていうのに…完全に部屋が閉じられていたのか。
 貴重品でもあるのか?っていってもぼろぼろで古い物が多いだけにしか見えないんだけど。

 高価な物も…あ、あの机は黒壇かな?瓶と羽ペンもあるからあそこで何かを書いていたんだろう。紙も置いて…紙?

「おい、あそこの机の上に何か書いてあるもんがあるぞ!」
「本当!」

 遠目だが文字らしきものが見える。そこまでタンスが倒れてくれている。
 かなり運がいいな!さっとそこまで行けるし、倒れたときの風圧で紙が飛んでもいない。
 タンスの上を駆け足で行こうとするケルンをミルディは声をかけて止める。

「坊ちゃま!今、いったばかりですよ!エフデ様も坊ちゃまをお止めしてください!」
「あ、ごめん」
「あ、すまん」

 俺とケルンがまったく同じタイミングで謝る。
 ちょっと謝り方は違うがケルンと顔を見合わせて笑う。

「お兄ちゃん、一緒!あはは」
「ハモったな、はは」

 だいぶやんちゃになってきたな。うんうん。この調子で体も大きく逞しくなってもらいたいところだ。
 気のせいか、今日はケルンから出ているキラキラがいつもより輝いてみえるぜ。絶好調なんだろうな。

「まったく、似たご兄弟で…はぁ…」

 喜んでいいのか、悲しむべきか悩むな、それ。

「悲しむ?お兄ちゃん悲しい?」

 ケルンと触れていたから考えが伝わってしまったか。せっかくの笑顔が雲ってしまった。キラキラも減ってしまう。

「あ、いや。ケルンと同じ歳にとられると年長者としてなんだか、悲しくなるだけだから。ケルンと一緒なのは嬉しいぞ?」

 年齢が二桁もいっていないケルンと同列ってのは、保護者としての沽券に関わるからな。

「ねんちょーしゃ?んーと…僕もお兄ちゃんと一緒なのは嬉しいなぁ」
「おま…マジで誰にでも同じように笑いかけるなよ?兄ちゃんとの約束な?頼むから」
「うぇっ?う、うん?」

 俺が真剣にいえば、ケルンはびっくりしてとりあえず頷いた。わかってないが、俺が真面目にいったから約束してくれたのだろう。

 頬を上気させ、とろりとした瞳でこちらを見つめ、ふわりと笑う。
 信じれるか。母様そっくりな微笑みだったんだ。慈愛の塊かってくらい。

 え?やっぱり天使なのか?ケルンって翼とか生えてんじゃね?

 と俺ですら混乱して、いやいや、昨日も風呂に入って背中を洗ってやったわ、落ち着け、俺!と取り乱すほどだった。
 いや、身内贔屓上等だが、ケルンってどんだけの美少年なんだろうか…知りたいような、知りたくない話だ。

 たぶん、このキラキラは美少年とか美少女にしか出せないもんなんだろう。効果は異常状態付与とかだ。

 証拠にキラキラが全力で俺に降りかかり、当たって弾いた先にいたミルディにまで飛んでいけば効果のほどがわかる。キラキラにかかったミルディは顔を背けてプルプルと震えている。膝にきてんな、あれ。呼吸も荒いけど意識を保ってるのは流石だ。他の人だと失神しているかもしれない。実際、いたし。
 慣れているミルディですら理性と戦うほどなんだから、外では禁止させよう。
 ジゴロに育てる予定はないからな。
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