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第七章 ケモナーと精霊の血脈
氷の魔法
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ケルンが人ではない?そういわれて思い当たるところがある。
確かに人ではないってほど顔が整っている。子供の顔っていうのは日を追うごとに大人になっていく。
どちらかというと父様に似ているんだが、ふとしたときに微笑んでいるときなんか母様もだが、人じゃないといわれたら納得してしまうほどだからな。
それだけじゃない。
優しさの化身かな?というぐらい他人を思いやれる子だ。そして男女平等思考を持っているが、紳士としてレディファースト精神をすでに持っているし、俺がいうのもなんだが、歳のわりに物事をよく考えている。
賢く紳士なんだから将来はモテること間違いなし。すでにお嫁さん候補がいたりもする。体力は…見ないことにして。
フェスマルク家の生まれで魔法の才能はあるし…ああ。一番大事なことがあった。
ケルンはこんな姿の俺が大好きだという。ほとんど俺と一緒に過ごしているが、感覚的に子育てしてる気になる。
一言でいうならかわいすぎか。
思考を加速させてゼロコンマの時間でつらつらと浮かんできてしまった。だからかぽろっと杖相手にいってしまった。
「は?天使ってときもあるが人間だぞ?」
杖に自慢するのも変だからと端的に思ったことを伝えたんだが、失敗だ。
伝えるんじゃなかったとすぐに後悔する。
『何、馬鹿なこといってんっす?』
ブリザードとかの魔法でも使っているのか?ってくらい冷めきった声音と、空気も冷えた気がした。
おかしいな。こいつも今は目とかないのに、頭のおかしいものを見たような視線を感じるんだけど。
ってかお前だけにはいわれたくねぇ!
いい返してやろうと思ったんだがいきなり『はっ!』とわざとらしい声を出す。
『まさか、エフデってばいたいけなご主人と受粉』
「ぶっ壊すぞ」
そういう冗談は嫌いだ。それもケルンを使っての冗談だと?
削るぞ、マジで。
わりと本気で半分に折ってやろうと探す。小さくすれば少しは性格もマシになってくれねぇかと思う。ってかなれ。
ちっ…刃物がねぇ…あってもこいつは硬いからケルンの宝箱にいれてある彫刻刀を借りて…いや、他にハンマーとか手頃なもんがあればそれをガンガンと…そうだ叩けばこの歪んだ性格も直るかもだしな。
『冗談っすよ!だから刃物とかを探すのはやめるっす!不穏な気配はさよならしてっす!でも…ばちこい!いやらしい視線っす!』
「あーもう…いいから…ただ次はねぇかんな」
くねくねする葉っぱをみていると精神がおかしくなりそうなうえに、同レベルになるかもしれないと思うから話を切り上げる。構えば図に乗るからな。
めんどくせぇ杖。イニシャルMだし。
といっても…俺がおかしなことをいったからこうなったのか。別におかしなことをいったつもりはねぇんだけどなぁ。
『ああん!…いけずなとこも…あ、それよりも!ご主人のことっす!ただの人なら負担がすごいことになるっす!』
喜んだ声のあとに真剣になる。切り替えが早い。
ケルンのことならこいつも真剣になるから、俺も仲間だとこいつを認めている。
かなり疲れるがな。
「負担っていうが…氷の魔法は父様も使っていたが、そんなに負担になるのか?」
本の受け売りだが、氷の魔法は使い手といわれるほど有名な人が少ないが、使い手が全然いないわけじゃない。初級なんて氷を作る程度だから飲食店でも使われているらしい。
上級だと使い手が少ない上に、名前が本に載るとなると…父様の父様、俺たちの祖父であるクオーレお祖父様がいる。
クオーレお祖父様は戦場で魔法の使いすぎによる衰弱で亡くなった。
妻であるお祖母様も同じ戦場で亡くなったこと本に書いてあったが…そういやお祖母様は異名しか載ってなくて名前を知らないな。
その異名は『死なさずの花』だ。
儚げの美人らしいことはそこそこの腕前の肖像画で知っている。
お祖母様はエルフの先祖返りで、見た目はエルフだった。
エルフの先祖返りだから儚げの美人なのは当然だ。
あ、今はケルンのことに集中しないと…やたらと思考がまとまらないが、眠気でもきたのか?
『普通のは問題ないっす。でもご主人が習得した氷の魔法はかなり特殊みたいっすよ。普通の人族では負担なしでの行使は無理っす』
「特殊?」
『たぶん、魔族の炎や氷とも戦えるっす』
「炎はわかるが…魔族の氷?どういう意味だ?」
杖のいう特殊の意味がわからなかったのだが、返ってきた言葉に首をかしげる。
『魔族の氷は冷たくて鋭いっす。でもご主人の氷は熱く広いっす!』
魔族の氷は冷たくて鋭い…氷だもんな…ケルンの氷は熱くて広い?氷が熱くて?…広さとか関係あるのか?
「わかるように説明してくれ」
杖に限ったことじゃないが、魔法を説明する人はだいたい感覚で説明している。授業でもこんな感じでイメージさせている。ケルンや他の生徒たちはわかっているが、俺にはわからん。どうも具体的に魔法を説明するのは難しいようだ。
『魔法を知らないなら、仕方ないっすねー。いいっすか?魔族の氷は炎でも溶かせないっすからね。同じ氷でも性質が異なる氷だと溶かせるっす…魔族には気をつけるっすよ?』
「そうか…まぁ、魔族なんかと会うなんてないだろ。この辺でも魔物すらいないんだぜ?」
魔法だから氷の融点が違うってことか?
やはり専門外のことだといまいちわからないものだな。
杖が心配しているが、魔族に会うなんてない。魔物も見たことがないのに、魔族を見るなんてどんな確率だって話だ。
このサイジャル周辺ではたまに猛獣が出るらしいが、今は違うところに行ってしまったのか見かけなくなったって話だし。ティルカからも太鼓判を押してもらっている。
「若様や坊ちゃまの付近に魔物なんていませんよ」
さわやかな笑顔でいいきっていた。あいつが俺に嘘をつけるはずもねぇし…魔族や魔物は気にしないでいいだろう。
『それはおかしいっす…対応されてんじゃねぇっすか?確か…冒険者?とかいうのが駆除してると思うっすよ』
「冒険者か…」
あんまりいい思い出がねぇんだけど…まともな冒険者からは話を聞いてみたいんだけど、王都まで行けば冒険者とかと話せるだろうか?
護衛は必要とかいわれるなら…ティルカでいっか。暇だっていってたし…軍でも下っ端ってのは気楽でいいな。
『そんなことよりも、本題っす。ご主人には人間じゃない血が入ってるっすか?』
ああ、そうだった。やたらと話がずれてしまうな。やっぱり眠気がきてるせいだな。
「それは当然だろ。他の種族の血は流れてるぞ。獣人とか…あ、お祖母様はエルフの先祖返りだったから、エルフとかもな。スキルとかを考えれば…たぶん、ドワーフも流れてるはずだ」
純潔主義が横行してもまったく興味がなく、恋愛一直線っていうのがフェスマルク家の家風だ。元凶は…初代のフェスマルクの奥さんがぞっこん押しかけ女房だったらしく、うちは一目惚れでしか結婚しない呪いがかかっている。
なんて父様が酒を飲み交わしながら、にやっと笑って俺とエセニアを見て教えてくれた。
母様にのちほど父様は叱られるように仕向けたのはいうまでもない。
一目惚れか…まぁケルンはまさに血筋というか呪いを受けているな。
かなり美人の人だったらしいけど、呪い関係のスキルでも持っていたんだろうか。
『エルフ…精霊はどうっすか?』
「精霊様?精霊様と結婚?そんなのが可能なのか?」
『なくはないっす。精霊はエルフに転じるっす!…ただ、下級とかじゃないとできないっす。器が壊れるっすからね』
「転じる…転生か?」
精霊様と結婚をするなんてお伽噺でも聞いたことのない話だ。いや、この世界の中ではないだけで、別世界では聞いたことがあるが…とはいえ、お伽噺の話でしかない。
転生だとしても棒神様いわく記憶は無へと帰るっていってたから、前世が精霊様とはわからないと思うんだけど。
『転生…なんか聞いたような言葉っすが、人とし生まれるってことすか?』
「ああ。輪廻転生っていうのはわかるか?」
『なんすか?それって?』
人間に限らず生き物は生と死を繰り返し、あるときは人間、あるときは動物、あるときは魚、あるときは虫と転生を繰り返す。
その輪から離れることを目的とした宗教は意外と多くの世界にある。生と死の克服や存在をあげるというお題目を持っている。
そんなことをかいつまんて説明する
『んー…ちょっと違うんっすよね。精霊が転じるのはそのまま人に転じるんすよ。記憶もそのままっす。受肉して肉体を人にするっす。でも、肉体が朽ちたら精霊に戻るっす』
どうも輪廻転生ではないようだ。
杖の言葉で浮かんだのは『取り憑かれる』だ。もしくは寄生なんだが、中身のない肉体に精霊様が入り込むってことなんだろうか。
あと記憶がそのままっていうのはやはり転生ではないんだろう。
「記憶もか…ってことは、本人のまま肉体の種族だけが変わるってことか?…つまるとこ俺とかお前みたいな感じってことか?」
俺たちのように意識だけを人形にいれることができるってことなのかと問えば杖は葉っぱを縦に振る。
『その認識でいいと思うっす。自分も受粉のときはあの姿じゃないとだめらしいっすから』
「受粉は置いておいて…精霊様が肉体を得て人になるか…珍しいんじゃねぇか?それって」
人族と精霊様では時間の概念が違う。一緒にいる時間は精霊様にとっては一瞬だろう。紛れ込んで生活をする精霊様が本当にいるのかと思ってしまったのだ。
あっても珍しいのかと思えば否定された。
『そうでもないっす。昔っからあるみたいで、エルフの血統が魔法の才能があるのも、魔法に耐えれるってのも精霊の記憶があってのことっす。それを子供に伝えればエルフが魔法を得意になるのも変じゃないっすよ』
そういや、エルフは精霊の子っていわれてたりするが、そういう事実があってのことか。
なるほどな。杖の言葉で確信が持てた。
「ご先祖様がもしかしたらそうかもしれないが、だったらケルンは精霊様ではないな」
ケルンは魔力が那由多もある棒神様に選ばれた子供だ。精霊様の記憶はない。もちろん、取り憑いているような状態の俺も記憶はない。
むしろ棒神様に記憶はなくなったといわれたのだから、俺が精霊様ってこともないな。
『でも、本人でないとすると魔法を使う器はなかなか広がらないっすから…自分が歯止めになるっすけど…極力避けた方がいいっすね』
俺に眉があればぴくりと動いただろう。
ケルンに危害がある魔法なのか?
「それって…反動が強いのか?」
『回復も遅くなるっす。肉体も精神も衰弱していくっす』
衰弱。クオーレお祖父様の死因だ。
「お祖父様が氷の魔法使いだったのもご先祖様の影響があったんだろうか?…短命だったのもそれが原因か?」
『ご主人のおじいさんのことは知らないっすけど、そうだと思うっすよ。前線とかにいたら便利っすからね』
便利…便利だからとお祖父様は前線にいたのか?そう思うと…怒りではないが、もやっとした気持ちがわいてくる。
『それと気に』
「お兄ちゃん?どこー?」
葉っぱを話好きなおばさんのようにぶんぶんと手招きしていた杖だが、ケルンの声にびくっと反応してすっと杖に巻き付いて動きをとめる。
またろくでもないことをいうつもりだったんだろうな。
「俺はここだぞー。飲み物を飲んでたんだ。起きたのか?」
ちゃんと寝かしつけていたんだが、まだ眠りが浅かったのか。
「うん…おしっこ…」
「そうか。ついていこうか?」
「うん…待っててね?」
「おう」
さすがにトイレの中には入らないが扉の前で待っていてやる。寝ぼけてたまにトイレの中にも連れてかれるが今日は寝ぼけてないようだ。
子供の成長って本当に早いもんだな。
そんなことを噛み締めてトイレを済ませたケルンと部屋に戻って一緒に寝た。
手を繋いで寝たからか、子供体温に引きずられて俺も熟睡してしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
八月はほぼ毎日投稿します。
次の章のプロトを書いたり、夜勤の仕事を始めたりとわたわたしておりますが、更新をしていきたいと思います。
それと賞に応募しました。人が読んでくれている実感が持てると執筆速度が速くなるのもあります。
少しでも楽しんでもらえる作品になるようにしていきたいです。
確かに人ではないってほど顔が整っている。子供の顔っていうのは日を追うごとに大人になっていく。
どちらかというと父様に似ているんだが、ふとしたときに微笑んでいるときなんか母様もだが、人じゃないといわれたら納得してしまうほどだからな。
それだけじゃない。
優しさの化身かな?というぐらい他人を思いやれる子だ。そして男女平等思考を持っているが、紳士としてレディファースト精神をすでに持っているし、俺がいうのもなんだが、歳のわりに物事をよく考えている。
賢く紳士なんだから将来はモテること間違いなし。すでにお嫁さん候補がいたりもする。体力は…見ないことにして。
フェスマルク家の生まれで魔法の才能はあるし…ああ。一番大事なことがあった。
ケルンはこんな姿の俺が大好きだという。ほとんど俺と一緒に過ごしているが、感覚的に子育てしてる気になる。
一言でいうならかわいすぎか。
思考を加速させてゼロコンマの時間でつらつらと浮かんできてしまった。だからかぽろっと杖相手にいってしまった。
「は?天使ってときもあるが人間だぞ?」
杖に自慢するのも変だからと端的に思ったことを伝えたんだが、失敗だ。
伝えるんじゃなかったとすぐに後悔する。
『何、馬鹿なこといってんっす?』
ブリザードとかの魔法でも使っているのか?ってくらい冷めきった声音と、空気も冷えた気がした。
おかしいな。こいつも今は目とかないのに、頭のおかしいものを見たような視線を感じるんだけど。
ってかお前だけにはいわれたくねぇ!
いい返してやろうと思ったんだがいきなり『はっ!』とわざとらしい声を出す。
『まさか、エフデってばいたいけなご主人と受粉』
「ぶっ壊すぞ」
そういう冗談は嫌いだ。それもケルンを使っての冗談だと?
削るぞ、マジで。
わりと本気で半分に折ってやろうと探す。小さくすれば少しは性格もマシになってくれねぇかと思う。ってかなれ。
ちっ…刃物がねぇ…あってもこいつは硬いからケルンの宝箱にいれてある彫刻刀を借りて…いや、他にハンマーとか手頃なもんがあればそれをガンガンと…そうだ叩けばこの歪んだ性格も直るかもだしな。
『冗談っすよ!だから刃物とかを探すのはやめるっす!不穏な気配はさよならしてっす!でも…ばちこい!いやらしい視線っす!』
「あーもう…いいから…ただ次はねぇかんな」
くねくねする葉っぱをみていると精神がおかしくなりそうなうえに、同レベルになるかもしれないと思うから話を切り上げる。構えば図に乗るからな。
めんどくせぇ杖。イニシャルMだし。
といっても…俺がおかしなことをいったからこうなったのか。別におかしなことをいったつもりはねぇんだけどなぁ。
『ああん!…いけずなとこも…あ、それよりも!ご主人のことっす!ただの人なら負担がすごいことになるっす!』
喜んだ声のあとに真剣になる。切り替えが早い。
ケルンのことならこいつも真剣になるから、俺も仲間だとこいつを認めている。
かなり疲れるがな。
「負担っていうが…氷の魔法は父様も使っていたが、そんなに負担になるのか?」
本の受け売りだが、氷の魔法は使い手といわれるほど有名な人が少ないが、使い手が全然いないわけじゃない。初級なんて氷を作る程度だから飲食店でも使われているらしい。
上級だと使い手が少ない上に、名前が本に載るとなると…父様の父様、俺たちの祖父であるクオーレお祖父様がいる。
クオーレお祖父様は戦場で魔法の使いすぎによる衰弱で亡くなった。
妻であるお祖母様も同じ戦場で亡くなったこと本に書いてあったが…そういやお祖母様は異名しか載ってなくて名前を知らないな。
その異名は『死なさずの花』だ。
儚げの美人らしいことはそこそこの腕前の肖像画で知っている。
お祖母様はエルフの先祖返りで、見た目はエルフだった。
エルフの先祖返りだから儚げの美人なのは当然だ。
あ、今はケルンのことに集中しないと…やたらと思考がまとまらないが、眠気でもきたのか?
『普通のは問題ないっす。でもご主人が習得した氷の魔法はかなり特殊みたいっすよ。普通の人族では負担なしでの行使は無理っす』
「特殊?」
『たぶん、魔族の炎や氷とも戦えるっす』
「炎はわかるが…魔族の氷?どういう意味だ?」
杖のいう特殊の意味がわからなかったのだが、返ってきた言葉に首をかしげる。
『魔族の氷は冷たくて鋭いっす。でもご主人の氷は熱く広いっす!』
魔族の氷は冷たくて鋭い…氷だもんな…ケルンの氷は熱くて広い?氷が熱くて?…広さとか関係あるのか?
「わかるように説明してくれ」
杖に限ったことじゃないが、魔法を説明する人はだいたい感覚で説明している。授業でもこんな感じでイメージさせている。ケルンや他の生徒たちはわかっているが、俺にはわからん。どうも具体的に魔法を説明するのは難しいようだ。
『魔法を知らないなら、仕方ないっすねー。いいっすか?魔族の氷は炎でも溶かせないっすからね。同じ氷でも性質が異なる氷だと溶かせるっす…魔族には気をつけるっすよ?』
「そうか…まぁ、魔族なんかと会うなんてないだろ。この辺でも魔物すらいないんだぜ?」
魔法だから氷の融点が違うってことか?
やはり専門外のことだといまいちわからないものだな。
杖が心配しているが、魔族に会うなんてない。魔物も見たことがないのに、魔族を見るなんてどんな確率だって話だ。
このサイジャル周辺ではたまに猛獣が出るらしいが、今は違うところに行ってしまったのか見かけなくなったって話だし。ティルカからも太鼓判を押してもらっている。
「若様や坊ちゃまの付近に魔物なんていませんよ」
さわやかな笑顔でいいきっていた。あいつが俺に嘘をつけるはずもねぇし…魔族や魔物は気にしないでいいだろう。
『それはおかしいっす…対応されてんじゃねぇっすか?確か…冒険者?とかいうのが駆除してると思うっすよ』
「冒険者か…」
あんまりいい思い出がねぇんだけど…まともな冒険者からは話を聞いてみたいんだけど、王都まで行けば冒険者とかと話せるだろうか?
護衛は必要とかいわれるなら…ティルカでいっか。暇だっていってたし…軍でも下っ端ってのは気楽でいいな。
『そんなことよりも、本題っす。ご主人には人間じゃない血が入ってるっすか?』
ああ、そうだった。やたらと話がずれてしまうな。やっぱり眠気がきてるせいだな。
「それは当然だろ。他の種族の血は流れてるぞ。獣人とか…あ、お祖母様はエルフの先祖返りだったから、エルフとかもな。スキルとかを考えれば…たぶん、ドワーフも流れてるはずだ」
純潔主義が横行してもまったく興味がなく、恋愛一直線っていうのがフェスマルク家の家風だ。元凶は…初代のフェスマルクの奥さんがぞっこん押しかけ女房だったらしく、うちは一目惚れでしか結婚しない呪いがかかっている。
なんて父様が酒を飲み交わしながら、にやっと笑って俺とエセニアを見て教えてくれた。
母様にのちほど父様は叱られるように仕向けたのはいうまでもない。
一目惚れか…まぁケルンはまさに血筋というか呪いを受けているな。
かなり美人の人だったらしいけど、呪い関係のスキルでも持っていたんだろうか。
『エルフ…精霊はどうっすか?』
「精霊様?精霊様と結婚?そんなのが可能なのか?」
『なくはないっす。精霊はエルフに転じるっす!…ただ、下級とかじゃないとできないっす。器が壊れるっすからね』
「転じる…転生か?」
精霊様と結婚をするなんてお伽噺でも聞いたことのない話だ。いや、この世界の中ではないだけで、別世界では聞いたことがあるが…とはいえ、お伽噺の話でしかない。
転生だとしても棒神様いわく記憶は無へと帰るっていってたから、前世が精霊様とはわからないと思うんだけど。
『転生…なんか聞いたような言葉っすが、人とし生まれるってことすか?』
「ああ。輪廻転生っていうのはわかるか?」
『なんすか?それって?』
人間に限らず生き物は生と死を繰り返し、あるときは人間、あるときは動物、あるときは魚、あるときは虫と転生を繰り返す。
その輪から離れることを目的とした宗教は意外と多くの世界にある。生と死の克服や存在をあげるというお題目を持っている。
そんなことをかいつまんて説明する
『んー…ちょっと違うんっすよね。精霊が転じるのはそのまま人に転じるんすよ。記憶もそのままっす。受肉して肉体を人にするっす。でも、肉体が朽ちたら精霊に戻るっす』
どうも輪廻転生ではないようだ。
杖の言葉で浮かんだのは『取り憑かれる』だ。もしくは寄生なんだが、中身のない肉体に精霊様が入り込むってことなんだろうか。
あと記憶がそのままっていうのはやはり転生ではないんだろう。
「記憶もか…ってことは、本人のまま肉体の種族だけが変わるってことか?…つまるとこ俺とかお前みたいな感じってことか?」
俺たちのように意識だけを人形にいれることができるってことなのかと問えば杖は葉っぱを縦に振る。
『その認識でいいと思うっす。自分も受粉のときはあの姿じゃないとだめらしいっすから』
「受粉は置いておいて…精霊様が肉体を得て人になるか…珍しいんじゃねぇか?それって」
人族と精霊様では時間の概念が違う。一緒にいる時間は精霊様にとっては一瞬だろう。紛れ込んで生活をする精霊様が本当にいるのかと思ってしまったのだ。
あっても珍しいのかと思えば否定された。
『そうでもないっす。昔っからあるみたいで、エルフの血統が魔法の才能があるのも、魔法に耐えれるってのも精霊の記憶があってのことっす。それを子供に伝えればエルフが魔法を得意になるのも変じゃないっすよ』
そういや、エルフは精霊の子っていわれてたりするが、そういう事実があってのことか。
なるほどな。杖の言葉で確信が持てた。
「ご先祖様がもしかしたらそうかもしれないが、だったらケルンは精霊様ではないな」
ケルンは魔力が那由多もある棒神様に選ばれた子供だ。精霊様の記憶はない。もちろん、取り憑いているような状態の俺も記憶はない。
むしろ棒神様に記憶はなくなったといわれたのだから、俺が精霊様ってこともないな。
『でも、本人でないとすると魔法を使う器はなかなか広がらないっすから…自分が歯止めになるっすけど…極力避けた方がいいっすね』
俺に眉があればぴくりと動いただろう。
ケルンに危害がある魔法なのか?
「それって…反動が強いのか?」
『回復も遅くなるっす。肉体も精神も衰弱していくっす』
衰弱。クオーレお祖父様の死因だ。
「お祖父様が氷の魔法使いだったのもご先祖様の影響があったんだろうか?…短命だったのもそれが原因か?」
『ご主人のおじいさんのことは知らないっすけど、そうだと思うっすよ。前線とかにいたら便利っすからね』
便利…便利だからとお祖父様は前線にいたのか?そう思うと…怒りではないが、もやっとした気持ちがわいてくる。
『それと気に』
「お兄ちゃん?どこー?」
葉っぱを話好きなおばさんのようにぶんぶんと手招きしていた杖だが、ケルンの声にびくっと反応してすっと杖に巻き付いて動きをとめる。
またろくでもないことをいうつもりだったんだろうな。
「俺はここだぞー。飲み物を飲んでたんだ。起きたのか?」
ちゃんと寝かしつけていたんだが、まだ眠りが浅かったのか。
「うん…おしっこ…」
「そうか。ついていこうか?」
「うん…待っててね?」
「おう」
さすがにトイレの中には入らないが扉の前で待っていてやる。寝ぼけてたまにトイレの中にも連れてかれるが今日は寝ぼけてないようだ。
子供の成長って本当に早いもんだな。
そんなことを噛み締めてトイレを済ませたケルンと部屋に戻って一緒に寝た。
手を繋いで寝たからか、子供体温に引きずられて俺も熟睡してしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
八月はほぼ毎日投稿します。
次の章のプロトを書いたり、夜勤の仕事を始めたりとわたわたしておりますが、更新をしていきたいと思います。
それと賞に応募しました。人が読んでくれている実感が持てると執筆速度が速くなるのもあります。
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