229 / 229
第七章 ケモナーと精霊の血脈
わがまま
しおりを挟む
「まだ探検したい!クヤと遊びたい!」
「課題をみんなとやるんだろ!まずは課題だ!課題!」
聞き分けがよかったのが一転して、ぶーぶーと文句をいっている。やけに素直だと思っていたが、昨日と同様に探検をしてクヤと遊べると思い込んでいたようだ。
なんでそう思ったのかは不明だ。脈絡もなく決めてしまうんだよな…俺も同じとこがあるからわかるけど。
迷子になるのはそれが原因といわれても治らないものは治らない。諦めてもらおう。主にミルディにはな。
とはいえ、こうして駄々をこねていても目的の場所にはちゃんと足を向けている。
それはいいんだけど速度は遅いし、たまに立ち止まるし…いくらなんでも課題をしたくなさすぎるだろ。
俺は肩の上に腰かけて、ケルンの膨らむほっぺをつついている。
ミルディにはケルンが授業の間に俺に付き合ってもらい、図書館で集めた本を運んでもらっている。一歩どころか三歩後ろなのは、ケルンからの駄々光線に負けるとわかっているからだろう。道行く人が二度見してるぐらいには、効果があるみたいだ。俺には効かないけど。
なんというか、普段は素直ないい子なんだが、こういう教育の場ってのは、自分の意見をいえるようになるって面ではとてもいい場所だな。
なにせこんだけ駄々をいうのは初めてかもしれないんだ。世間じゃこのぐらいの歳の子が駄々をこねるのは普通だと思うんだが、あんまりそういうのがケルンはなかったから珍しいというよりも、面白い。
ほっぺも柔らかいから押しても絶妙な弾力性がある。もちもちだ。
「うにゃー!ほっぺつんつんしないでー!反撃ー!」
「ははっ。すまん。もちもちしてるから…そんなに課題が嫌か?やらないといけないんだぞ?」
嫌がっているかと思ったら、あんまり嫌がらず俺の体にぐりぐりとほほをすりよせる。
ミルディが目をそらしたけど、笑うとこか?
まぁ、見てわかるように、ここまでだめだといったら、一般的な子供は口うるさい保護者に対して嫌いとかいってくるだろうけど、残念ながらうちのケルンは他所の家の子とはまったく違う。
肩から俺をつかんで手のひらの上に立たせる。
「難しいもん!それより…僕の大好きなお兄ちゃん…僕といいことして遊ぼ?」
「いい笑顔でいうんじゃねぇよ…流れ弾当たった人が胸を押さえたぞ」
「え?」
ふわって笑って首を横にするな。いつもの純粋無垢な笑みと違って、艶っぽく、流し目つきとかやめろ。キラキラの流れ弾に当たった生徒が崩れ落ちて震えているぞ。
「しっかりしろ!」
「無理…きゅって…いいこと…エッロ…あ、遊ぶって…うっ…」
「落ち着け!もろもろ押さえないと殺されるぞ!最悪、そこは潰せ!命があれば回復魔法か薬でなんとかなるから!」
はは。女が三人集まるとうるさいという言葉があって姦しいなんて言葉があるが、男が三人集まってもうるさいもんだ。
邪な気持ちにならなければ俺以外からも何もされないと思うぞ。膨らむのは妄想だけにしておけ。一応自重したみたいだから見逃すけどな。
違うところが膨らむなら全力の拳で相手する。潰すどころか穴を開けれる自信がある。
ってか、誰だ。こんな風なおねだりの仕方を教えたのは。
おねだりのレベルが上がってもケルンはケルンのままなのか、すぐにいつもの表情に戻った。
「えー…ほんとーにだめー?」
「だめなものはだめ…というか、誰からその技を教わったんだ?」
その人とはオハナシをしないといけないな。人によってはお話で済ませてやるけど…拳骨付きで。
「んーとね、マティ君がね、こうやってお願いするとね、お兄ちゃんはいうことを聞いてくれるって教えてくれたよ?マティ君の弟がやってるんだって。あと、きれーなおねーさんがおうちに来たときに教えてくれたんだって」
マティ君のお父さんはケルンを通して会ったことがあるが、まだ弟君には会っていないな。
たぶん、ケルンと仲良くなれそうなんだよな…ウサギのぬいぐるみとかお気に入りだったし…自分より小さい子と触れあったことはないけど、どこかで小さい子と交流させてみるか。
綺麗なおねぇさんは交流させるつもりはないけどな。ケルンには早い。
マティ君に俺の拳骨はかわいそうだから、アシュ君に裁いてもらうか。
視界の先を見てそう思った。
「そんなこといってないで…ほら、あの後ろ姿は誰だ?」
「アシュ君!マティ君!クラリスちゃんもいるね!」
アシュ君とマティ君、クラリスちゃんが三人でかたまっている。マティ君は手を振り、アシュ君とクラリスちゃんは軽く頭を下げてこちらに挨拶をしてきている。
三人を見つけたことで、ケルンのテンションは上がりだし、歩く速度も上がった。
ってか、跳ねてるようにリズムをとっているが…ずれてるんだよなぁ…リズム感がないというか…うん。課題は大変だな。
しかし、まったくあれだけ駄々をこねていたのに、もう気持ちが切り替わってやがる。まぁ、そこもケルンのいいところか。
ぞくりと背中に悪寒が走る。
すぐに後ろを振り向く。誰だ。
「エフデ様…どうかなさいましたか?」
「お兄ちゃん?忘れ物したの?」
「いや……ほら、行こうぜ」
廊下だからもちろん人がいないわけではない。けれど、俺たちの方を見ている学生はいない。
気味が悪い…変に神経が過敏になっているせいかもしれないな。
俺はそのとき、なぜか深く考えるのをやめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かなり遅れました。
実は転職と夜勤が重なってしまって執筆の余裕がなかったのですが、シフトが変わりますのでぼちぼち執筆できそうです。
「課題をみんなとやるんだろ!まずは課題だ!課題!」
聞き分けがよかったのが一転して、ぶーぶーと文句をいっている。やけに素直だと思っていたが、昨日と同様に探検をしてクヤと遊べると思い込んでいたようだ。
なんでそう思ったのかは不明だ。脈絡もなく決めてしまうんだよな…俺も同じとこがあるからわかるけど。
迷子になるのはそれが原因といわれても治らないものは治らない。諦めてもらおう。主にミルディにはな。
とはいえ、こうして駄々をこねていても目的の場所にはちゃんと足を向けている。
それはいいんだけど速度は遅いし、たまに立ち止まるし…いくらなんでも課題をしたくなさすぎるだろ。
俺は肩の上に腰かけて、ケルンの膨らむほっぺをつついている。
ミルディにはケルンが授業の間に俺に付き合ってもらい、図書館で集めた本を運んでもらっている。一歩どころか三歩後ろなのは、ケルンからの駄々光線に負けるとわかっているからだろう。道行く人が二度見してるぐらいには、効果があるみたいだ。俺には効かないけど。
なんというか、普段は素直ないい子なんだが、こういう教育の場ってのは、自分の意見をいえるようになるって面ではとてもいい場所だな。
なにせこんだけ駄々をいうのは初めてかもしれないんだ。世間じゃこのぐらいの歳の子が駄々をこねるのは普通だと思うんだが、あんまりそういうのがケルンはなかったから珍しいというよりも、面白い。
ほっぺも柔らかいから押しても絶妙な弾力性がある。もちもちだ。
「うにゃー!ほっぺつんつんしないでー!反撃ー!」
「ははっ。すまん。もちもちしてるから…そんなに課題が嫌か?やらないといけないんだぞ?」
嫌がっているかと思ったら、あんまり嫌がらず俺の体にぐりぐりとほほをすりよせる。
ミルディが目をそらしたけど、笑うとこか?
まぁ、見てわかるように、ここまでだめだといったら、一般的な子供は口うるさい保護者に対して嫌いとかいってくるだろうけど、残念ながらうちのケルンは他所の家の子とはまったく違う。
肩から俺をつかんで手のひらの上に立たせる。
「難しいもん!それより…僕の大好きなお兄ちゃん…僕といいことして遊ぼ?」
「いい笑顔でいうんじゃねぇよ…流れ弾当たった人が胸を押さえたぞ」
「え?」
ふわって笑って首を横にするな。いつもの純粋無垢な笑みと違って、艶っぽく、流し目つきとかやめろ。キラキラの流れ弾に当たった生徒が崩れ落ちて震えているぞ。
「しっかりしろ!」
「無理…きゅって…いいこと…エッロ…あ、遊ぶって…うっ…」
「落ち着け!もろもろ押さえないと殺されるぞ!最悪、そこは潰せ!命があれば回復魔法か薬でなんとかなるから!」
はは。女が三人集まるとうるさいという言葉があって姦しいなんて言葉があるが、男が三人集まってもうるさいもんだ。
邪な気持ちにならなければ俺以外からも何もされないと思うぞ。膨らむのは妄想だけにしておけ。一応自重したみたいだから見逃すけどな。
違うところが膨らむなら全力の拳で相手する。潰すどころか穴を開けれる自信がある。
ってか、誰だ。こんな風なおねだりの仕方を教えたのは。
おねだりのレベルが上がってもケルンはケルンのままなのか、すぐにいつもの表情に戻った。
「えー…ほんとーにだめー?」
「だめなものはだめ…というか、誰からその技を教わったんだ?」
その人とはオハナシをしないといけないな。人によってはお話で済ませてやるけど…拳骨付きで。
「んーとね、マティ君がね、こうやってお願いするとね、お兄ちゃんはいうことを聞いてくれるって教えてくれたよ?マティ君の弟がやってるんだって。あと、きれーなおねーさんがおうちに来たときに教えてくれたんだって」
マティ君のお父さんはケルンを通して会ったことがあるが、まだ弟君には会っていないな。
たぶん、ケルンと仲良くなれそうなんだよな…ウサギのぬいぐるみとかお気に入りだったし…自分より小さい子と触れあったことはないけど、どこかで小さい子と交流させてみるか。
綺麗なおねぇさんは交流させるつもりはないけどな。ケルンには早い。
マティ君に俺の拳骨はかわいそうだから、アシュ君に裁いてもらうか。
視界の先を見てそう思った。
「そんなこといってないで…ほら、あの後ろ姿は誰だ?」
「アシュ君!マティ君!クラリスちゃんもいるね!」
アシュ君とマティ君、クラリスちゃんが三人でかたまっている。マティ君は手を振り、アシュ君とクラリスちゃんは軽く頭を下げてこちらに挨拶をしてきている。
三人を見つけたことで、ケルンのテンションは上がりだし、歩く速度も上がった。
ってか、跳ねてるようにリズムをとっているが…ずれてるんだよなぁ…リズム感がないというか…うん。課題は大変だな。
しかし、まったくあれだけ駄々をこねていたのに、もう気持ちが切り替わってやがる。まぁ、そこもケルンのいいところか。
ぞくりと背中に悪寒が走る。
すぐに後ろを振り向く。誰だ。
「エフデ様…どうかなさいましたか?」
「お兄ちゃん?忘れ物したの?」
「いや……ほら、行こうぜ」
廊下だからもちろん人がいないわけではない。けれど、俺たちの方を見ている学生はいない。
気味が悪い…変に神経が過敏になっているせいかもしれないな。
俺はそのとき、なぜか深く考えるのをやめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かなり遅れました。
実は転職と夜勤が重なってしまって執筆の余裕がなかったのですが、シフトが変わりますのでぼちぼち執筆できそうです。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(43件)
あなたにおすすめの小説
【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!
くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました!
イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。
あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!?
長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!?
二人共あの小説のキャラクターじゃん!
そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!!
へっぽこじゃん!?!
しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!?
悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!!
とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。
※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。
それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください!
※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい
※不定期更新なります!
現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
いつも楽しみに読ませてもらってます。
置手紙の話しが二話続けて同じ話になっていますよ。
更新楽しみにしています。
ご指摘ありがとうございます。システムの不具合だったのかもしれませんが、なぜ二重に?と自分でも不明であります。
これからも更新していきますのでよろしくお願いします。
最新の登場人物
魔力が魔欲になっている箇所が
闇
エセニアを呼んでが読んでに