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妖精と騎士
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リコレッタは声をかけて後悔をしていた。
驚かせてしまえば妖精は死んでしまうのではないかと。
なるべく優しく声をかけたつもりだ。ただ、リコレッタの声量は並の淑女では出せない。
またひどくかすれた声は少年期の終わりのような声をしている。
結果、彼らの中で少し食い違うことになる。
「もしや新しい騎士の方ですか?」
目の前の妖精が聞くのでリコレッタは、自分の身分を当てたのはやはり妖精なのかと思った。
公爵から餞別がわりに公爵領内の騎士の叙任を受けてから後宮にきていたのだ。
だから新しい騎士というのは間違っていない。
「よく気づかれましたな!さすがは妖精だ!」
「妖精?…僕はレオといいます。あなたは?」
レオと呼ばれた妖精…見た目は美少女のように見える彼に、リコレッタは親しみをこめて右手を差し出しながらいう。
「私はリコと呼んでくれ!レオ殿は騎士を目指しておられるのか?」
「…レオとお呼びください。やはり、似合いませぬか?」
レオはかなり驚いた表情をしながらリコレッタの手を握る。握った手は自分の手よりも骨ばって、剣だこがあり、あまりにも自分と違うので恥ずかしくほほを染めた。
まるで薄紅の花が咲きほころびかけているような艶やかさを秘めている。
「何をおっしゃるか。騎士を目指すは男子の本懐にございますぞ!」
「私が男子にきちんと見えますか?」
「はて?確かにレオは女人のごとき肌艶で、可憐なれど、立ち振舞いや何よりその目の奥には、男子の血のたぎりがみえますぞ?」
リコレッタはレオの言葉に本心から言葉を返した。
見た目は美少女のようなレオではあるが、所作の所々は男子であるとリコレッタは見抜いてた。
これは、リコレッタが幼少の頃より父である公爵から人体の急所や、いかに暗殺者を退治するかを教わるおりに、人間の動きや構造を叩き込まれたからだ。
武に関することのみは集中力があがるためなのか、一度で覚えるが、彼女はいまだに八の段のかけ算は怪しい。
そのくせ、仮想の戦場で軍隊や敵軍という形でなら、即座に暗算で計算をしてみせるという異才がある。
そして、彼女は父親から教わってきたことをレオに伝えただけだ。
「男子たるもの騎士となり、戦場で散るが本懐なり」
公爵が娘に教えることではない。
「…僕が…男に…嬉しいです」
ふわっとレオが笑うと、リコレッタは胸がしめつけられるような感覚に落ちた。
『食あたりか?』
彼女は初めての感覚に戸惑うことなく食あたりであると決めつける。さきほどの蛇が加熱不足だったのかと考えたのだ。
「あの…リコにお願いがあります」
「なんでございますかな?」
体を動かせば食あたりも治るかと考えていると、レオが目を伏し目がちにしながらリコを見上げる。
「ぼ、僕に!剣術を教えてください!」
上目使いにリコの手を握る姿に、またもや胸がしめつけられるようなような感覚になりつつも、リコレッタはにっと笑ってうなづいた。
リコレッタの笑みでレオは頬をさらに染めたのだが、リコレッタは気にすることはなかった。
かくして、騎士と妖精とお互いが思いながらの交流は始まった。
驚かせてしまえば妖精は死んでしまうのではないかと。
なるべく優しく声をかけたつもりだ。ただ、リコレッタの声量は並の淑女では出せない。
またひどくかすれた声は少年期の終わりのような声をしている。
結果、彼らの中で少し食い違うことになる。
「もしや新しい騎士の方ですか?」
目の前の妖精が聞くのでリコレッタは、自分の身分を当てたのはやはり妖精なのかと思った。
公爵から餞別がわりに公爵領内の騎士の叙任を受けてから後宮にきていたのだ。
だから新しい騎士というのは間違っていない。
「よく気づかれましたな!さすがは妖精だ!」
「妖精?…僕はレオといいます。あなたは?」
レオと呼ばれた妖精…見た目は美少女のように見える彼に、リコレッタは親しみをこめて右手を差し出しながらいう。
「私はリコと呼んでくれ!レオ殿は騎士を目指しておられるのか?」
「…レオとお呼びください。やはり、似合いませぬか?」
レオはかなり驚いた表情をしながらリコレッタの手を握る。握った手は自分の手よりも骨ばって、剣だこがあり、あまりにも自分と違うので恥ずかしくほほを染めた。
まるで薄紅の花が咲きほころびかけているような艶やかさを秘めている。
「何をおっしゃるか。騎士を目指すは男子の本懐にございますぞ!」
「私が男子にきちんと見えますか?」
「はて?確かにレオは女人のごとき肌艶で、可憐なれど、立ち振舞いや何よりその目の奥には、男子の血のたぎりがみえますぞ?」
リコレッタはレオの言葉に本心から言葉を返した。
見た目は美少女のようなレオではあるが、所作の所々は男子であるとリコレッタは見抜いてた。
これは、リコレッタが幼少の頃より父である公爵から人体の急所や、いかに暗殺者を退治するかを教わるおりに、人間の動きや構造を叩き込まれたからだ。
武に関することのみは集中力があがるためなのか、一度で覚えるが、彼女はいまだに八の段のかけ算は怪しい。
そのくせ、仮想の戦場で軍隊や敵軍という形でなら、即座に暗算で計算をしてみせるという異才がある。
そして、彼女は父親から教わってきたことをレオに伝えただけだ。
「男子たるもの騎士となり、戦場で散るが本懐なり」
公爵が娘に教えることではない。
「…僕が…男に…嬉しいです」
ふわっとレオが笑うと、リコレッタは胸がしめつけられるような感覚に落ちた。
『食あたりか?』
彼女は初めての感覚に戸惑うことなく食あたりであると決めつける。さきほどの蛇が加熱不足だったのかと考えたのだ。
「あの…リコにお願いがあります」
「なんでございますかな?」
体を動かせば食あたりも治るかと考えていると、レオが目を伏し目がちにしながらリコを見上げる。
「ぼ、僕に!剣術を教えてください!」
上目使いにリコの手を握る姿に、またもや胸がしめつけられるようなような感覚になりつつも、リコレッタはにっと笑ってうなづいた。
リコレッタの笑みでレオは頬をさらに染めたのだが、リコレッタは気にすることはなかった。
かくして、騎士と妖精とお互いが思いながらの交流は始まった。
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