天使を殺した話

むーたんぽんぽん

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「天道は知ってる? 天使を殺す方法」

 高原のあまりに突飛な発言に、天道はお弁当を食べていた手を止めて顔をあげた。

「天使? あの、翼が生えた人間の」

 一瞬聞き間違いかと思ったが、高原はいつになく真剣な顔をしていた。

「うん。天使。翼が生えてて金髪で美人でカッコいい」
「はぁ……そもそも、天使なんて存在がこの世にいるとは思えないんだけど。それに、その天使とやらはお前みたいな造形なの?」
「はは、バレた? っていうのは冗談で。例えばさ、天道ならどうやるかなって気になっただけ」
「どうやる、と言われてもさ、そんな物騒な事考えたことない。天使でも人間でも、殺すだなんて」
「……だよね。うん、やっぱり俺の好きな天道だわ」

 途端に高原の表情は明るくなり、子供をあやすように天道の髪を撫でたあと、それっきり話は別の話題に移った。
 高原がサッカー部に入ったのはこの春のことだった。転校生だった高原はクラスでも浮いていて、そんな時日直で同じになった天道が声を掛けたのがきっかけだった。それが縁で二人でよく昼ごはんを食べるようになり、部活も一緒だから仲良くなるのに時間はかからなかった。高原は三人兄弟の末っ子らしく甘えん坊で、スキンシップも激し目だったが、一人っ子の天道にはそれが可笑しいだなんて一ミリも考えた事がなかった。
 だが日に日その距離は近くなっていて、外国の挨拶ばりに頬にキスをされるようになってからは、なんとも言えない不思議な気分だった。だから、今日の突飛な発言も何か裏があるんじゃないかと思ったが、それ以降高原の口からその話題が出ることはなかった。
 そんな事があったのもすっかり忘れていたある日、天道の身の回りで不思議なことが起こるようになった。

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