3 / 3
1-3
しおりを挟む
「あーあ、見つかっちゃった」
「ちょっ、それなんだよ……」
「ごめんね。見つからないうちに行こうとしてたんだけど、もう無理みたい」
「悪い、何言ってんのかわかんねー。なぁ、本物の高原は?」
「ここにいるよ、天道。俺が〝高原円〟」
自分が高原だと名乗る天使はそう言って見慣れた顔で微笑んだあと、天道に背を向けてフェンスに向かって歩き出し、天道も慌ててその後を追った。
「どこ行くんだよ」
「この間の答え、教えてあげようと思って」
「答えって、どういう」
「〝天使を殺す方法〟」
「は……」
呆気に取られる天道をよそに、高原は軽々とフェンスを超えると、突然自らの羽をひきちぎっていく。ひどく耳障りな音と共に、美しかった白は血の色で赤く染まり、高原の顔はみるみるうちに歪んでいった。
「な……なに、してんだよ!?」
「こうしないと死ねないから。じゃあまたね。俺の大好きな人」
それはまるでスローモーションのように見えた。ゆっくりと身体が傾いて、宙に投げ出される。天道は慌ててフェンスをよじ登り、咄嗟に手を伸ばした。
「高原!」
気が付けば身体が勝手に動いていた。高原にこんなところで死んで欲しくない、ただその一心だった。
そんな天道の捨て身の行動に、高原は信じられないとばかりに大きく目を見開いた。
「天道———」
間髪入れぬ所で手を掴み安堵した瞬間、そのまま地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。このまま落ちたらきっと助からない。迫り来る衝撃に備えながら、せめて高原の顔だけでも守りたく両手で抱え込んだ瞬間、突如ふんわりと身体が宙に浮いた感覚がした。
「え……?」
驚いて顔をあげると、高原は目を細め天道を愛おしそうに見つめていた。その背中には後光がさしているかのように輝いていた。
「ありがとう天道、俺のために」
「あの、ここは天国か? オレたち、死んじゃった?」
「ううん、生きてるよ。あ、でも俺は死んだかも?」
「あ?」
驚いて起き上がるとそこはちゃんとした地面で、高原にあれだけついていた血はどこにもなくなっていた。
「あの、よくわかってねーんだけど、高原は人間じゃないんだよな?」
「えっとね、実は俺、元々天使なんだよね」
「天使……?」
「それでね、天使は人に恋をすると死んじゃって。さっき天使としての俺は死んだ。天道のせいで」
「オレのせいで? はぁ?!」
「そう。だから、天道は俺を殺した罪で一生俺から離れられなくなりました」
「……ちょっと、待って」
突然の加害者扱いに、天道は頭がくらくらした。一体高原は何を言っているのだろう。もしかしたら落ちたショックでどこか頭を打ったのかも知れない。
「落ちたショックで頭は打ってないよ。意識もちゃんとしてるし」
「なんでオレの心の声がわかったんだよ」
「へへ、秘密。でね、俺本当は人間界でやらなきゃいけない事があったんだけど、天道のせいで天使じゃなくなったから、責任取って欲しい」
「責任って……どうすりゃいいんだよ」
真顔の高原が迫ってきて、とてつもなく嫌な予感がした。ここから早く逃げ出したい。なのに身体は動かない。まさに絶体絶命だった。
高原はそんな天道の心を読んでか、にんまりと笑うととんでもなく甘えた声でこう言った。
「俺を天道のお嫁さんにしてくんない?」
高原の背後で真っ白な鳩たちが空へ飛び立っていった。
「ちょっ、それなんだよ……」
「ごめんね。見つからないうちに行こうとしてたんだけど、もう無理みたい」
「悪い、何言ってんのかわかんねー。なぁ、本物の高原は?」
「ここにいるよ、天道。俺が〝高原円〟」
自分が高原だと名乗る天使はそう言って見慣れた顔で微笑んだあと、天道に背を向けてフェンスに向かって歩き出し、天道も慌ててその後を追った。
「どこ行くんだよ」
「この間の答え、教えてあげようと思って」
「答えって、どういう」
「〝天使を殺す方法〟」
「は……」
呆気に取られる天道をよそに、高原は軽々とフェンスを超えると、突然自らの羽をひきちぎっていく。ひどく耳障りな音と共に、美しかった白は血の色で赤く染まり、高原の顔はみるみるうちに歪んでいった。
「な……なに、してんだよ!?」
「こうしないと死ねないから。じゃあまたね。俺の大好きな人」
それはまるでスローモーションのように見えた。ゆっくりと身体が傾いて、宙に投げ出される。天道は慌ててフェンスをよじ登り、咄嗟に手を伸ばした。
「高原!」
気が付けば身体が勝手に動いていた。高原にこんなところで死んで欲しくない、ただその一心だった。
そんな天道の捨て身の行動に、高原は信じられないとばかりに大きく目を見開いた。
「天道———」
間髪入れぬ所で手を掴み安堵した瞬間、そのまま地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。このまま落ちたらきっと助からない。迫り来る衝撃に備えながら、せめて高原の顔だけでも守りたく両手で抱え込んだ瞬間、突如ふんわりと身体が宙に浮いた感覚がした。
「え……?」
驚いて顔をあげると、高原は目を細め天道を愛おしそうに見つめていた。その背中には後光がさしているかのように輝いていた。
「ありがとう天道、俺のために」
「あの、ここは天国か? オレたち、死んじゃった?」
「ううん、生きてるよ。あ、でも俺は死んだかも?」
「あ?」
驚いて起き上がるとそこはちゃんとした地面で、高原にあれだけついていた血はどこにもなくなっていた。
「あの、よくわかってねーんだけど、高原は人間じゃないんだよな?」
「えっとね、実は俺、元々天使なんだよね」
「天使……?」
「それでね、天使は人に恋をすると死んじゃって。さっき天使としての俺は死んだ。天道のせいで」
「オレのせいで? はぁ?!」
「そう。だから、天道は俺を殺した罪で一生俺から離れられなくなりました」
「……ちょっと、待って」
突然の加害者扱いに、天道は頭がくらくらした。一体高原は何を言っているのだろう。もしかしたら落ちたショックでどこか頭を打ったのかも知れない。
「落ちたショックで頭は打ってないよ。意識もちゃんとしてるし」
「なんでオレの心の声がわかったんだよ」
「へへ、秘密。でね、俺本当は人間界でやらなきゃいけない事があったんだけど、天道のせいで天使じゃなくなったから、責任取って欲しい」
「責任って……どうすりゃいいんだよ」
真顔の高原が迫ってきて、とてつもなく嫌な予感がした。ここから早く逃げ出したい。なのに身体は動かない。まさに絶体絶命だった。
高原はそんな天道の心を読んでか、にんまりと笑うととんでもなく甘えた声でこう言った。
「俺を天道のお嫁さんにしてくんない?」
高原の背後で真っ白な鳩たちが空へ飛び立っていった。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる