え〜っと、私を悪役令嬢にする世界なんて必要ないですわ！

5.マイケル・ミラー

　キングダムスクールでは共通の科目として、国語、数学、歴史を学ぶ。

　そして、選択科目として礼儀作法コースと経営コースのどちらかと、剣士コースと魔道士コースのどちらかを選択することになる。

　ちなみにセレーナは入学せずとも前世の知識で一通りの勉強はできるし、歴史もある程度家庭教師から習っていたので成績はいい方だと思う。

　それに起業もしているから、経営のことなど学ばなくても問題ないし、むしろ数年前から講師として来てくれないかと誘われているが丁重にお断りしている。

　魔道士コースに関してもそうだ。セレーナは修行を重ねた結果、特級魔道士よりも強くなってしまっていた。

　セレーナ的には魔力を抑えた上で今の自分がどのくらい強いのか知りたくて鑑定をしてもらったのだが…。

　数値を見て周りが騒ぎ出して、あれよあれよという間に国王の下へ連れて行かれた。

　もう少し抑えるべきだったな…と反省はしたが、後悔先に立たず。

　まぁ、幸い国王の魔力よりは低かったからその辺はよかったけど。下手に国王世に高いと反乱と見做されることもあるからね。

　それでも予想外だったのは国王の次に強い特級魔道士長の役職をもらってしまったこと。

　面倒臭いので一度は辞退したのだが、実務は今まで通り特級魔道士が行うし、有事の際に戦ってくれればいいと言われたのでこれを了承した。

　念のため誓約書も書いたけど、義姿に偽名なので効果はないと思うが、とりあえず素性は検索しないことと、あともう一言書き足してから、サインをしておいた。

　ちなみに特級魔道士長はセレーナもちろん仮の姿のマイケル・ミラーという30代後半の男性の話なのだが。

　外見は某イケメン俳優だ。声も似せた。

（でも、仕方ない。目的のために通うしかない。むしろ、入学する事でチャンスが巡るかもしれないわ）

　ポジティブポジティブ！

　そして、セレーナはきゃっきゃウフフな生徒で溢れかえる学校を見て、深くため息をついた。

「私、やって行けるかしら。」

不安しかなかった。


xxx


　不安なことほど的中するもの。

（世の中理不尽だわ～）



　先程、早速ウザい出来事があった。

　セレーナが学校を見てため息をついた瞬間、後ろから「きゃっ」という声が聞こえた。

　セレーナは嫌な予感がしたので、そのまま後ろを振り向かずに無視して歩き出した。

　するとセレーナから3メートル後ろの方から、「大丈夫か？」という大声と「お、お姉様が…！ひっく」という大声が聞こえてきた。

　セレーナは何もしていないというのに、何故セレーナの名前が呼ばれたかが分からい。

　それにあの声…嫌な予感しかない。

（さっさと行きますか）

　そう思った瞬間、背後に弱々しい微弱な殺気を感じたので、軽く威圧してみた。

　すると、その弱々しい微弱殺気が消えたので、セレーナは"なぁんだ。虫か"と思いクラス発表の掲示板へとそのまま向かった。

　まさかうしろで、短髪赤髪の生徒が腰を抜かしてちょっぴり粗相をしていることにセレーナは気づくことはなかった。

　ちなみにこの出来事は"イベント"と呼ばれるものだった。

　元々はヒロインである義妹ミリアが義姉のセレーナに足を引っ掛けられて転んだところを偶然目撃した騎士候補のダニエルがミリアを優しく解放するというものだった。

　だが実際にはミリアがセレーナを見つけて嫌がらせをしようと思い駆け寄ろうと思った瞬間に勝手に転けて騒いだ事により駆けつけたダニエルがミリアの「お姉様が…！」というセリフを聞いて勝手に勘違いをした。

　そして謎の正義感でミリアが見つめる先にいたセレーナを咎めようとしたところ、謎の威圧に遭い、腰を抜かして粗相をしてしたところを、ミリアがダニエルに駆け寄り介抱する…というものになっていた。