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第二話 城勤めの忠義 其の壱
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夜も更けてきた江戸城本丸、御休息御庭。
徳川吉宗は、今日一日の職務を終え、縁側に腰かけていた。
庭の隅の、大きくもない桜の木を眺めて、一息をつく。吉宗は将軍の座についてすぐ、江戸の各所で桜の植樹を進めたことで知られている。江戸っ子の花見文化の始まりである。
「上野の桜は、どうだろうか」
「…夏らしく、瑞々しい青葉をつけておりました」
誰もいないはずの庭から、吉宗の独り言に返す声がある。
「相変わらず、伝わるのが早い」
吉宗は満足げに言う。東屋の奥から小柄な美少年、いや、少女が歩み寄る。真鈴であった。
「すまぬな、このような時分に呼びだしてしまい」
「いえ、滅相もないことでございます。何というか…思い立ったが吉日とも申しますし、上様らしいというか」
「そなたも前よりは粋なことを申すようになったではないか」
吉宗は笑う。さて、と縁側に腰を下ろし、居住まいを正した。
「一報が入ったもので、早いに越したことはないと思ったのだ」
片膝を立てて平伏していた真鈴は顔を上げた。
「城下より、行方知れずとなった者がおる」
「出奔ということですか」
「それは分からぬ。徒士組の、新田宗右衛門という者なのだが、次の勤め先を伝えるため使者を向かわせたところ、10日ほど留守にしていると妻が申すのだ。だが、そのような届けは出ておらぬので、問題ではないかと、若年寄の方で少々騒いでいてな」
「その妻は行き先を知らぬのですか?」
「城に長く詰めることになったと聞かされていたらしい。だが、新田は半月ほど登城していないので、それは偽りだったことになる」
吉宗は腕を組んで唸った。
「真鈴、そなたはどう思う?」
「はっ…直々ではないとはいえ、上様からの命令を受けることができないのは、幕府に仕える身として褒められたことではないかと。それに、本当の行き先を言わないということが引っかかります。あるいは、何かの危険にさらされているか」
「わしも同じ考えだ」
吉宗が思案するような視線を向けたのを見て、真鈴は尋ねる。
「上様は、何か踏んでいらっしゃるのですか?」
「いや、そういう訳ではないが…とにかく、新田の行方を探ってほしい。どちらにせよ、幕臣が姿を消すというのは見過ごせぬ」
「承知いたしました」
「うむ。頼んだぞ」
吉宗は立ち上がり、小姓の持つ灯りに照らされながら廊下を奥に歩いて行った。それを見届けると、真鈴は小さく頭を下げ、身を翻した。
庭を取り囲む塀を越え、木々を伝い、屋根を飛び移る。御庭番ならば堂々と門を通って江戸城に出入りすればよいのに、真鈴はあえて必ずこそこそ忍び込むようにしていた。道場では剣術しか教えてくれない。御庭番は武士の派生であるし、そもそも忍びの技は堂々と学ぶわけにはいかず、仲間内で自然と伝えられるものだった。
「昔、父上と恭吾から色々教わったなあ…」
真鈴は呟いた。城勤めの侍たちが帰宅していく時分だが、流石真鈴の忍びの技、本丸から内堀まで、誰にも気づかれていない。
桜田屋敷とは反対側の神田橋門を出て、下谷方面に向かった。
武家屋敷の並ぶ通りを進んでいくと、だんだん雰囲気が変わってくる。黒塗りの高い塀が続いていたのが、土壁や伸びきった雑草がちらほら見られるようになってきた。手入れが行き届いている家ばかりではないようだ。
「この辺りが御徒町…」
御徒町は、その名の通り禄の低い徒士組の屋敷が並ぶ一帯を指した。
「新田の屋敷は…?」
真鈴はある程度の上級幕臣の屋敷は把握しているが、徒士組までどれが誰の屋敷なのかは知らない。辺りを行き来してみたが、人に聞こうにも、夕餉時が終わった頃で人通りはほとんどないのでどうしようもない。
「明日にするか…」
早く仕事を始めてしまいたい気持ちはあったが、恭吾に心配をかけたくもないので今夜は切り上げることにした。
既に真鈴の頭の中では、これからどうやって調べを進めていくか計画が出来上がっていた。緊張もあるが、同時に御庭番としての本能なのか、場違いだとは分かっているが少し楽しみでもあった。
翌日、真鈴は再び御徒町にいた。
路地を入ると、ちょうど門前を掃いている用人がいた。
「すまぬが、一つ聞いてもよいか」
高慢そうな口調で尋ねた。糊のきいた着物を越後屋で用意してもらい、いかにも幕府の役人らしく振舞えと恭吾に念を押されて来たのである。
腰の曲がった用人は随分と遅く振り返った。70は超えていそうな老人である。
「新田宗右衛門殿の屋敷はいずこだろうか」
「はあ…えー、新田様でしたら、そこの角を左に行って、確か一番手前のお屋敷ですが」
「さようか。だが新田殿は近頃家にいないそうだな」
「ああ、そのようでございますね。いろいろと忙しいのだと聞いておりますが、何日か前に幕府のお役人様がいらして、奥方様も少々気をもんでいたようですね」
「なるほど…かたじけない」
短く礼を言って、真鈴は用人の言ったように道を進んだ。
その屋敷は、広さこそ十分だったが、両隣の屋敷と比べると殺風景に見えた。玄関には草履が一足もなく、庭に面した障子は昼間だというのに閉め切られている。
「新田殿のお屋敷か」
真鈴が玄関で声をかけても、誰かが出てくる気配もしない。
「失礼する。新田宗右衛門殿の件で参りました」
もう一度声を張り上げると、床の軋む音がして、色の白い細身の女が現れた。30過ぎくらいだろうか、どちらかといえば美形だが、瘦せていて髪もところどころほつれている。
真鈴と目が合うと、女はゆっくりと口を開いた。
「夫のことで…」
「あ、ああ、上様より、宗右衛門殿の行方を探れと命じられた者です」
「それは、ご苦労でございました…宗右衛門の妻の、詩穂と申します。狭苦しいですがどうぞ」
真鈴は徒士組の禄が低いというのは知っていたが、詩穂を見ているとこんなにも不憫な生活をしているのかと思えてくる。
居間に通され、薄い茶を出される。真鈴は早速尋ねた。
「宗右衛門殿と詩穂殿の、二人暮らしなのですか」
「ええ。元は隠居した義父と住んでいたのですが、3年前に亡くなりました。私たちは子供もいないので、家はどうなってしまうのだろうとよく話しておりました」
「宗右衛門殿は行方知れずになっていると」
「はい。お城勤めが忙しいと言われていたので、そうなのだと信じ込んでいました。けれどお役人様が、夫はほとんど城に来ていないと…」
詩穂は暗い顔で話した。
「お恥ずかしい話ですが、うちには借金があるのです。義父よりも前の代からずっと…二人でどうにかそれを返そうと努力していて。私も内職をしていたのですが、元々体が弱いせいで続けられませんでした。夫も最近はほとんど仕事がなかったので、この一件でやっと大きな仕事が入ったのだと、私一人でぬか喜びしてしまいましたが…まさかどこにいるのかも分からないなんて」
「借金ですか…ならば尚更、宗右衛門殿がいなくなって生活は苦しくなってしまうのではないですか。お金が入らなくなってしまうのだから」
「…そのことなんですが」
うつむいていた詩穂は顔を上げて、真鈴の顔をためらいがちに見つめた。
「な、何ですか?」
「まだお伝えしていないことがあって」
「はあ…」
「夫はこの10日ほどは、一度も帰ってきていません。けれどその前から、2,3日家を空けることは時々あって。金を作ってくる、と出ていって、朝に帰ってきては本当に1両小判を置いていくんです。私はてっきり、お城で夜警があるのだとばかり」
「1両も…!」
真鈴は驚きを隠しきれなかった。
「徒士組の普段の仕事で、1両なんて数日でそう簡単に手に入るはずがない…でも、なんで隠していたんですか?」
「私も、夫が普通の仕事をしてきているわけではないのは感づいていましたが、あの時は確信もなかったし…それが知れてしまうのが怖くて。生活を楽にするために、頑張ってくれているのだろうと思ってしまったから」
「それは…」
「でも、これをお話ししなければきっと夫は帰ってきてくれないのですよね」
真鈴は、何と言えばよいのか分からなかった。
徒士組の低い給金で、借金を返しつつ生計を立てるのは難しいというのは予想できた。ここまできて、真鈴は宗右衛門が詩穂には言えないやり方で金を作っているとしか思えなかった。
「詩穂殿」
「は、はい…」
「気持ちは分かりますが、宗右衛門殿に少しでも疑いがある限り、私はそれを見過ごすことはできない、としか言えません」
「…そうですよね。でもいいんです。お金に困ることなくちゃんとした生活をするためでもありますし、夫が戻ってきてくれるだけで」
詩穂は頷いた。その顔は暗くはなかったが、笑顔にも程遠いものだった。真鈴の技量では、その心中を察することはできなかった。
「宗右衛門殿を探し出します」
そう約束して真鈴は新田邸を後にした。
家のことを思って何でもする夫と、それを懸命に応援する妻。宗右衛門と詩穂の関係が、なぜか羨ましく感じてしまった。
徳川吉宗は、今日一日の職務を終え、縁側に腰かけていた。
庭の隅の、大きくもない桜の木を眺めて、一息をつく。吉宗は将軍の座についてすぐ、江戸の各所で桜の植樹を進めたことで知られている。江戸っ子の花見文化の始まりである。
「上野の桜は、どうだろうか」
「…夏らしく、瑞々しい青葉をつけておりました」
誰もいないはずの庭から、吉宗の独り言に返す声がある。
「相変わらず、伝わるのが早い」
吉宗は満足げに言う。東屋の奥から小柄な美少年、いや、少女が歩み寄る。真鈴であった。
「すまぬな、このような時分に呼びだしてしまい」
「いえ、滅相もないことでございます。何というか…思い立ったが吉日とも申しますし、上様らしいというか」
「そなたも前よりは粋なことを申すようになったではないか」
吉宗は笑う。さて、と縁側に腰を下ろし、居住まいを正した。
「一報が入ったもので、早いに越したことはないと思ったのだ」
片膝を立てて平伏していた真鈴は顔を上げた。
「城下より、行方知れずとなった者がおる」
「出奔ということですか」
「それは分からぬ。徒士組の、新田宗右衛門という者なのだが、次の勤め先を伝えるため使者を向かわせたところ、10日ほど留守にしていると妻が申すのだ。だが、そのような届けは出ておらぬので、問題ではないかと、若年寄の方で少々騒いでいてな」
「その妻は行き先を知らぬのですか?」
「城に長く詰めることになったと聞かされていたらしい。だが、新田は半月ほど登城していないので、それは偽りだったことになる」
吉宗は腕を組んで唸った。
「真鈴、そなたはどう思う?」
「はっ…直々ではないとはいえ、上様からの命令を受けることができないのは、幕府に仕える身として褒められたことではないかと。それに、本当の行き先を言わないということが引っかかります。あるいは、何かの危険にさらされているか」
「わしも同じ考えだ」
吉宗が思案するような視線を向けたのを見て、真鈴は尋ねる。
「上様は、何か踏んでいらっしゃるのですか?」
「いや、そういう訳ではないが…とにかく、新田の行方を探ってほしい。どちらにせよ、幕臣が姿を消すというのは見過ごせぬ」
「承知いたしました」
「うむ。頼んだぞ」
吉宗は立ち上がり、小姓の持つ灯りに照らされながら廊下を奥に歩いて行った。それを見届けると、真鈴は小さく頭を下げ、身を翻した。
庭を取り囲む塀を越え、木々を伝い、屋根を飛び移る。御庭番ならば堂々と門を通って江戸城に出入りすればよいのに、真鈴はあえて必ずこそこそ忍び込むようにしていた。道場では剣術しか教えてくれない。御庭番は武士の派生であるし、そもそも忍びの技は堂々と学ぶわけにはいかず、仲間内で自然と伝えられるものだった。
「昔、父上と恭吾から色々教わったなあ…」
真鈴は呟いた。城勤めの侍たちが帰宅していく時分だが、流石真鈴の忍びの技、本丸から内堀まで、誰にも気づかれていない。
桜田屋敷とは反対側の神田橋門を出て、下谷方面に向かった。
武家屋敷の並ぶ通りを進んでいくと、だんだん雰囲気が変わってくる。黒塗りの高い塀が続いていたのが、土壁や伸びきった雑草がちらほら見られるようになってきた。手入れが行き届いている家ばかりではないようだ。
「この辺りが御徒町…」
御徒町は、その名の通り禄の低い徒士組の屋敷が並ぶ一帯を指した。
「新田の屋敷は…?」
真鈴はある程度の上級幕臣の屋敷は把握しているが、徒士組までどれが誰の屋敷なのかは知らない。辺りを行き来してみたが、人に聞こうにも、夕餉時が終わった頃で人通りはほとんどないのでどうしようもない。
「明日にするか…」
早く仕事を始めてしまいたい気持ちはあったが、恭吾に心配をかけたくもないので今夜は切り上げることにした。
既に真鈴の頭の中では、これからどうやって調べを進めていくか計画が出来上がっていた。緊張もあるが、同時に御庭番としての本能なのか、場違いだとは分かっているが少し楽しみでもあった。
翌日、真鈴は再び御徒町にいた。
路地を入ると、ちょうど門前を掃いている用人がいた。
「すまぬが、一つ聞いてもよいか」
高慢そうな口調で尋ねた。糊のきいた着物を越後屋で用意してもらい、いかにも幕府の役人らしく振舞えと恭吾に念を押されて来たのである。
腰の曲がった用人は随分と遅く振り返った。70は超えていそうな老人である。
「新田宗右衛門殿の屋敷はいずこだろうか」
「はあ…えー、新田様でしたら、そこの角を左に行って、確か一番手前のお屋敷ですが」
「さようか。だが新田殿は近頃家にいないそうだな」
「ああ、そのようでございますね。いろいろと忙しいのだと聞いておりますが、何日か前に幕府のお役人様がいらして、奥方様も少々気をもんでいたようですね」
「なるほど…かたじけない」
短く礼を言って、真鈴は用人の言ったように道を進んだ。
その屋敷は、広さこそ十分だったが、両隣の屋敷と比べると殺風景に見えた。玄関には草履が一足もなく、庭に面した障子は昼間だというのに閉め切られている。
「新田殿のお屋敷か」
真鈴が玄関で声をかけても、誰かが出てくる気配もしない。
「失礼する。新田宗右衛門殿の件で参りました」
もう一度声を張り上げると、床の軋む音がして、色の白い細身の女が現れた。30過ぎくらいだろうか、どちらかといえば美形だが、瘦せていて髪もところどころほつれている。
真鈴と目が合うと、女はゆっくりと口を開いた。
「夫のことで…」
「あ、ああ、上様より、宗右衛門殿の行方を探れと命じられた者です」
「それは、ご苦労でございました…宗右衛門の妻の、詩穂と申します。狭苦しいですがどうぞ」
真鈴は徒士組の禄が低いというのは知っていたが、詩穂を見ているとこんなにも不憫な生活をしているのかと思えてくる。
居間に通され、薄い茶を出される。真鈴は早速尋ねた。
「宗右衛門殿と詩穂殿の、二人暮らしなのですか」
「ええ。元は隠居した義父と住んでいたのですが、3年前に亡くなりました。私たちは子供もいないので、家はどうなってしまうのだろうとよく話しておりました」
「宗右衛門殿は行方知れずになっていると」
「はい。お城勤めが忙しいと言われていたので、そうなのだと信じ込んでいました。けれどお役人様が、夫はほとんど城に来ていないと…」
詩穂は暗い顔で話した。
「お恥ずかしい話ですが、うちには借金があるのです。義父よりも前の代からずっと…二人でどうにかそれを返そうと努力していて。私も内職をしていたのですが、元々体が弱いせいで続けられませんでした。夫も最近はほとんど仕事がなかったので、この一件でやっと大きな仕事が入ったのだと、私一人でぬか喜びしてしまいましたが…まさかどこにいるのかも分からないなんて」
「借金ですか…ならば尚更、宗右衛門殿がいなくなって生活は苦しくなってしまうのではないですか。お金が入らなくなってしまうのだから」
「…そのことなんですが」
うつむいていた詩穂は顔を上げて、真鈴の顔をためらいがちに見つめた。
「な、何ですか?」
「まだお伝えしていないことがあって」
「はあ…」
「夫はこの10日ほどは、一度も帰ってきていません。けれどその前から、2,3日家を空けることは時々あって。金を作ってくる、と出ていって、朝に帰ってきては本当に1両小判を置いていくんです。私はてっきり、お城で夜警があるのだとばかり」
「1両も…!」
真鈴は驚きを隠しきれなかった。
「徒士組の普段の仕事で、1両なんて数日でそう簡単に手に入るはずがない…でも、なんで隠していたんですか?」
「私も、夫が普通の仕事をしてきているわけではないのは感づいていましたが、あの時は確信もなかったし…それが知れてしまうのが怖くて。生活を楽にするために、頑張ってくれているのだろうと思ってしまったから」
「それは…」
「でも、これをお話ししなければきっと夫は帰ってきてくれないのですよね」
真鈴は、何と言えばよいのか分からなかった。
徒士組の低い給金で、借金を返しつつ生計を立てるのは難しいというのは予想できた。ここまできて、真鈴は宗右衛門が詩穂には言えないやり方で金を作っているとしか思えなかった。
「詩穂殿」
「は、はい…」
「気持ちは分かりますが、宗右衛門殿に少しでも疑いがある限り、私はそれを見過ごすことはできない、としか言えません」
「…そうですよね。でもいいんです。お金に困ることなくちゃんとした生活をするためでもありますし、夫が戻ってきてくれるだけで」
詩穂は頷いた。その顔は暗くはなかったが、笑顔にも程遠いものだった。真鈴の技量では、その心中を察することはできなかった。
「宗右衛門殿を探し出します」
そう約束して真鈴は新田邸を後にした。
家のことを思って何でもする夫と、それを懸命に応援する妻。宗右衛門と詩穂の関係が、なぜか羨ましく感じてしまった。
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作家 蔵屋日唱
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