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プロローグ
白い世界で
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目が覚めて最初に見えたのは、視界いっぱいの白。よく見るとそれは天井のようで、彼が自分が寝転がっているということに気付くのは簡単だった。
彼から少し離れた場所から微かに感じるのは、かつて彼が大好きだった懐かしい気配。
「そこ…に…?」
目も口も久々に動かすので、なかなか上手く話すことが出来ない。しかし今の彼にとって、そんなことはどうでもよかった。そこに貴方がいるのを、確かに感じるから。
__やっと追いついた。
彼は安堵の息を吐く。そして掴めないと分かっていながらも、ゆっくりとその気配に向かって手を伸ばした。
…良かった、ちゃんと動く。指先に走った痺れも、寝起きの鈍った体には何だか心地がいい。
その痛みを噛み締めるように体を起こすと、まるでその体が自分のモノではないかのような窮屈感と、ふわふわとした浮遊感に襲われた。
地面に足はしっかりとついているというのに、自分はとうとうおかしくなってしまったのだろうか。
そんなことを少し考えた彼だったが、それもすぐに止める。今はそんなこと、本当にどうでもいいのだ。
早く探さないと。
そこにいるはずの貴方を。気配しか感じられなくても、確かに伝わってくるその温度を。手遅れになる前に。また離れてしまう前に。この手で抱きしめて、記憶の中にあるその存在をしっかりと確かめたいから。
足に繋がる鎖も、体中に巻き付く管だって気にならない。見つけ出して、それでもう一度、今度こそ一緒に…。
そして見つけた。見えない壁を挟んだその向こうに。彼と同じように鎖で繋がれ、血を吐きながらのたうち回る彼の大切な者の “気配” と、彼が憎んでやまない__人間の姿を。
あぁ、またこうなるのか。今回も大切な者を守れずに終わるのか。
彼の脳裏に過去の記憶が浮かび上がり、無力感と人間への憎悪で埋め尽くされていく。
……いや、違う。またこうして会うことができたんだ。もうあの日の過ちは繰り返さない。繰り返してはいけない。絶対に、何があったとしても守り抜いてみせる。
ねぇ、ボク…今ならなんでもできる気がするんだ。
本当にね、そんな気分なんだよ。
だからさ、もう少しだけ待ってて。
ボクの大切な______
彼から少し離れた場所から微かに感じるのは、かつて彼が大好きだった懐かしい気配。
「そこ…に…?」
目も口も久々に動かすので、なかなか上手く話すことが出来ない。しかし今の彼にとって、そんなことはどうでもよかった。そこに貴方がいるのを、確かに感じるから。
__やっと追いついた。
彼は安堵の息を吐く。そして掴めないと分かっていながらも、ゆっくりとその気配に向かって手を伸ばした。
…良かった、ちゃんと動く。指先に走った痺れも、寝起きの鈍った体には何だか心地がいい。
その痛みを噛み締めるように体を起こすと、まるでその体が自分のモノではないかのような窮屈感と、ふわふわとした浮遊感に襲われた。
地面に足はしっかりとついているというのに、自分はとうとうおかしくなってしまったのだろうか。
そんなことを少し考えた彼だったが、それもすぐに止める。今はそんなこと、本当にどうでもいいのだ。
早く探さないと。
そこにいるはずの貴方を。気配しか感じられなくても、確かに伝わってくるその温度を。手遅れになる前に。また離れてしまう前に。この手で抱きしめて、記憶の中にあるその存在をしっかりと確かめたいから。
足に繋がる鎖も、体中に巻き付く管だって気にならない。見つけ出して、それでもう一度、今度こそ一緒に…。
そして見つけた。見えない壁を挟んだその向こうに。彼と同じように鎖で繋がれ、血を吐きながらのたうち回る彼の大切な者の “気配” と、彼が憎んでやまない__人間の姿を。
あぁ、またこうなるのか。今回も大切な者を守れずに終わるのか。
彼の脳裏に過去の記憶が浮かび上がり、無力感と人間への憎悪で埋め尽くされていく。
……いや、違う。またこうして会うことができたんだ。もうあの日の過ちは繰り返さない。繰り返してはいけない。絶対に、何があったとしても守り抜いてみせる。
ねぇ、ボク…今ならなんでもできる気がするんだ。
本当にね、そんな気分なんだよ。
だからさ、もう少しだけ待ってて。
ボクの大切な______
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