猜疑心の塊の俺が、異世界転生して無双するとかマジあり得ない

エルマー・ボストン

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異世界なんて俺は知らない

ここ本当に異世界?

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「わぁ~、ヨーロッパだぁ~。」

俺は思わず、率直な感想を、誰もいないにも関わらず口にしていた。

いつの間にか、小高い丘の上に放り出されるように寝転がっていた俺は、上半身を起こして、あたりを見回した。
目の前は、一面のどかな風景。
川のせせらぎや、鳥の鳴き声が、どこからともなく聞こえてくる。
そして少し遠方には、何やら特徴的な街らしきものが見えている。

周囲を円形に壁で囲まれ、やや中央には川が通っている。
遠目からはハッキリとわからないが、石造で白い壁面、屋根は茶色がかった住居と思しき建造物が、詰まったように建てられている。

うん。異世界なんてあるワケがない。
知らないけど、ヨーロッパのどこかだろう。

ただ、それはそれで謎が残る。
俺が「死んだ」というのは、実感として恐らく間違いない。
それなのに、生前と同じような感覚や体型、服装までもそのままで、ヨーロッパのどこかに今こうして立っているのは、いささかおかしな話だ。

「うーん…まぁでも、『死』ってどういうことなのか、『死んだらどこへ行くのか』とか、そういうのはわかってなかったワケだもんな…。死んだの初めてだし、案外そういうモンなのか…?」

独り言が多くなる。自分でもちょっとこわい。

疑問は尽きない。ただ、胃袋の中身は尽きたようで、腹の虫がぐるると鳴った。

「お腹が空く、ってことは、まぁ、生きてるのは間違いないのかな…。」

仕方が無く、ひとまず俺は尽きた胃袋を満たすべく、街らしき場所を目指し、進むことにした。

それにしても、牧歌的というのだろうか。穏やかで、爽やかな空気だ。そよぐ風に、山々の緑が揺れる様は、眼に心地よい。
それでもって、万が一ここが異世界だというのなら、代行者だの勇者がいなくても、平和そのものなのではなかろうか?

そんな疑念を抱えながら、どれだけ歩いただろう。俺はようやく、街の入り口にたどり着いた。
空腹に空腹が重なり、もう一度死にそうだ。道中、木の実などを見つけたりもしたが、食えるのか、毒があったりしてもイヤなので諦めた。
入り口から街の様子を眺める。
並び立つ露店に、商売に精を出す人々。活気があり、皆にこやかだ。

やはり、平和にしか見えない。

そして街の入り口でふと、ある問題が頭をよぎる。

「…言葉、通じるのかな。」

ヨーロッパなのだとしたらお手上げだ。
フランス語やイタリア語など、ネット等で見聞きしたことはあるが、マジで何を言っているのかわからなかった。
何語なのかの判別すら難しいだろう。

…英語でギリだ。
頼む。ここはイギリスであってくれ。

空腹は、俺に勇気と行動力を与えてくれる。
とにかく急ぎ街に入り、一番近くにいた、気の良さそうな太めのハゲたおじさんに、意を決して話しかける。

「は、はろー、ないすとぅーみーちゅー。」

「おや、見かけない顔だね。服装も変わっているし、旅行者かい?」



・・・



「なんで日本語喋ってンだァァァァァァァァ!!!」
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