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異世界なんて俺は知らない
『ステータス』って、どういうこと?
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自分でもわからないうちに、公衆の面前で、俺は叫んでいた。腹の底から。力の限り。
そして、ふと我に返る。
「(あ、やべ!思わず…!)」
俺は慌てて、恐る恐るおじさんの顔に眼を向けた。
すると、どうだろう。おじさんは眼を見開いて、表情一つ、瞼一つ動かさず、その場で固まっていた。まるで銅像にでもなったかのように。
「あ、あれ?」
呆気に取られた俺は、すぐさまキョロキョロと周囲を見渡してみた。
おじさんだけではない。
あれだけ賑わっていた、街行く大勢の人々が皆、銅像のように微動だにしなくなっていたのだ。
「はぁい。女神ディメニアの降臨でーす。」
「うわァァァァァァビックリしたァァァァ!!」
何が何だか分からずにいた俺の背後から、突如として金髪女神がぬるりと現れた。
「本当にアナタは無礼ですね。女神に向かって何たる態度。折角、お困りかと思い、こうして時を止めてまで出てきてあげたというのに!」
ディメニアは、かなりご立腹のご様子だ。表情こそ柔和な状態を保っているが、初遭遇の時と比べ、だいぶ声が荒ぶっている。
「いや、驚くだろ…今までいなかった人が背後から突然現れたら…。」
俺も負けじと不満をぶつける。
「はいはい。アナタの理屈っぽさに付き合っていると、話が進みませんから。
一通り勝手に説明しましょう。
異世界でも言葉が通じた理由。それこそ
『神々の通訳』という『神々の加護』です。
アナタは今、あらゆる言語も、アナタの認識できる言語に翻訳されます。私と会話ができているのも、同じ理由。」
「神々の加護、地味だなぁ。」
長々と、淡々と説明する女神に向かい、ボソッと嫌味を放つ俺。
一瞬ムッとしたようだが、意に介さず女神は続ける。
「アナタが持つ『加護』は、それだけではありません。この世界の闇を打ち砕くための『スキル』、『能力値』、『称号』など、アナタのいわゆる『ステータス』を、一度確認してみるとよいでしょう。モリモリ加護を付与しましたから、私も全ては把握していないのです。」
最早理解が追いつかない。
ステータス?確認?どういうことだ?
「『ステータス・オープン』と唱えてご覧なさい。アナタの眼前に、アナタに関するあらゆる能力値が、数値やデータとなって可視化されます。」
尚も淡々と、業務的に説明を続けるディメニア。
いやいやいや。さらっと何ワケわかんないこと言ってんだ。
データ?可視化?
冗談も大概にしてほしい。
「あーもう!いいから早く唱えなさいな!話が進まないと言っているでしょう?!」
いら立ちを募らせる女神に叱られ、そして気圧され、俺は仕方なく
「ス、ステータス・オープン…。」
唱えてみた。すると目の前に、本当にゲームのステータス画面のようなものが、未来的なデバイス表示の如く現れたのだった。
「うわ…何これ、こわ…。え?個人情報じゃないの?」
「異世界で個人情報も何もないでしょう!そういうものなのです、異世界転生は!
もう!早めに確認なさい!しましたね!とにかくアナタは、この世界ではほぼ『最強』です!その力で、闇を打ち払うのです!
全てはアナタの思うがまま!
はい、もうわかりましたね!アナタと話してると、何だかすごく疲れるので!
私は帰ります!」
勝手にいろいろ進めておいて、何たる言い草だ。こちらの言い分をまるで聞こうとしない。
女神はくるりと俺に背を向け、するっと消えかけていく。
「えっ?!ちょ、まっ!『闇』って何よ?!打ち払う、って、どこで何をどうやって?!」
俺は手を伸ばし、何とか疑問を解決しようと試みた。
「はぁ…アナタくらいの年頃の方々は、
少なくとも今の説明でテンションぶち上がって、いい感じの顔つきになるものなんですけどねぇ。
一つ言い忘れてました。
そのステータス画面から、アナタ好みの
『神々の加護』、一つだけ選んで習得できます。早めにお願いしますね。
この説明も、ルールみたいなものなので。それでは、ごきげんよう。」
そう言い残すと、女神は灯りが消えるかのように、しゅるんと姿を消した。
そして気付けば、ヨーロッパ風の街並みを行く大勢の人々は、何事も無かったかのように動き出していた。
「ん?どうかしたかい?
とにかく旅行者なら、まずは宿を見つけるとよいだろう。
あそこの『ふくろう亭』が、私ゃオススメだよ。」
おじさんは、思考を停止させたこんな俺にも、親切に対応してくれている。
それにあてられ、俺はようやく思考が復活した。
そういえば、お腹が減っていたんだった。
「あっ!はい!ありがとうございます…!」
俺はひとまず人気の無い路地裏へ行き、
ステータス画面を一通り確認することにした。
・称号:神々の代行者、勇者
・Lv:100
・力:999(スキル補正: ×2倍)
・魔力:999(スキル補正:×2倍)
・速さ:999(スキル補正:×2倍)
・防御:999(スキル補正:×2倍)
・幸運:MAX
・スキル:
「武具を極めし者」
「魔術の深淵」
「破邪剣聖」
※その他のスキルを見る↓
・選択スキル:未選択
・・・何だこれ。
そして、ふと我に返る。
「(あ、やべ!思わず…!)」
俺は慌てて、恐る恐るおじさんの顔に眼を向けた。
すると、どうだろう。おじさんは眼を見開いて、表情一つ、瞼一つ動かさず、その場で固まっていた。まるで銅像にでもなったかのように。
「あ、あれ?」
呆気に取られた俺は、すぐさまキョロキョロと周囲を見渡してみた。
おじさんだけではない。
あれだけ賑わっていた、街行く大勢の人々が皆、銅像のように微動だにしなくなっていたのだ。
「はぁい。女神ディメニアの降臨でーす。」
「うわァァァァァァビックリしたァァァァ!!」
何が何だか分からずにいた俺の背後から、突如として金髪女神がぬるりと現れた。
「本当にアナタは無礼ですね。女神に向かって何たる態度。折角、お困りかと思い、こうして時を止めてまで出てきてあげたというのに!」
ディメニアは、かなりご立腹のご様子だ。表情こそ柔和な状態を保っているが、初遭遇の時と比べ、だいぶ声が荒ぶっている。
「いや、驚くだろ…今までいなかった人が背後から突然現れたら…。」
俺も負けじと不満をぶつける。
「はいはい。アナタの理屈っぽさに付き合っていると、話が進みませんから。
一通り勝手に説明しましょう。
異世界でも言葉が通じた理由。それこそ
『神々の通訳』という『神々の加護』です。
アナタは今、あらゆる言語も、アナタの認識できる言語に翻訳されます。私と会話ができているのも、同じ理由。」
「神々の加護、地味だなぁ。」
長々と、淡々と説明する女神に向かい、ボソッと嫌味を放つ俺。
一瞬ムッとしたようだが、意に介さず女神は続ける。
「アナタが持つ『加護』は、それだけではありません。この世界の闇を打ち砕くための『スキル』、『能力値』、『称号』など、アナタのいわゆる『ステータス』を、一度確認してみるとよいでしょう。モリモリ加護を付与しましたから、私も全ては把握していないのです。」
最早理解が追いつかない。
ステータス?確認?どういうことだ?
「『ステータス・オープン』と唱えてご覧なさい。アナタの眼前に、アナタに関するあらゆる能力値が、数値やデータとなって可視化されます。」
尚も淡々と、業務的に説明を続けるディメニア。
いやいやいや。さらっと何ワケわかんないこと言ってんだ。
データ?可視化?
冗談も大概にしてほしい。
「あーもう!いいから早く唱えなさいな!話が進まないと言っているでしょう?!」
いら立ちを募らせる女神に叱られ、そして気圧され、俺は仕方なく
「ス、ステータス・オープン…。」
唱えてみた。すると目の前に、本当にゲームのステータス画面のようなものが、未来的なデバイス表示の如く現れたのだった。
「うわ…何これ、こわ…。え?個人情報じゃないの?」
「異世界で個人情報も何もないでしょう!そういうものなのです、異世界転生は!
もう!早めに確認なさい!しましたね!とにかくアナタは、この世界ではほぼ『最強』です!その力で、闇を打ち払うのです!
全てはアナタの思うがまま!
はい、もうわかりましたね!アナタと話してると、何だかすごく疲れるので!
私は帰ります!」
勝手にいろいろ進めておいて、何たる言い草だ。こちらの言い分をまるで聞こうとしない。
女神はくるりと俺に背を向け、するっと消えかけていく。
「えっ?!ちょ、まっ!『闇』って何よ?!打ち払う、って、どこで何をどうやって?!」
俺は手を伸ばし、何とか疑問を解決しようと試みた。
「はぁ…アナタくらいの年頃の方々は、
少なくとも今の説明でテンションぶち上がって、いい感じの顔つきになるものなんですけどねぇ。
一つ言い忘れてました。
そのステータス画面から、アナタ好みの
『神々の加護』、一つだけ選んで習得できます。早めにお願いしますね。
この説明も、ルールみたいなものなので。それでは、ごきげんよう。」
そう言い残すと、女神は灯りが消えるかのように、しゅるんと姿を消した。
そして気付けば、ヨーロッパ風の街並みを行く大勢の人々は、何事も無かったかのように動き出していた。
「ん?どうかしたかい?
とにかく旅行者なら、まずは宿を見つけるとよいだろう。
あそこの『ふくろう亭』が、私ゃオススメだよ。」
おじさんは、思考を停止させたこんな俺にも、親切に対応してくれている。
それにあてられ、俺はようやく思考が復活した。
そういえば、お腹が減っていたんだった。
「あっ!はい!ありがとうございます…!」
俺はひとまず人気の無い路地裏へ行き、
ステータス画面を一通り確認することにした。
・称号:神々の代行者、勇者
・Lv:100
・力:999(スキル補正: ×2倍)
・魔力:999(スキル補正:×2倍)
・速さ:999(スキル補正:×2倍)
・防御:999(スキル補正:×2倍)
・幸運:MAX
・スキル:
「武具を極めし者」
「魔術の深淵」
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※その他のスキルを見る↓
・選択スキル:未選択
・・・何だこれ。
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