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神殺しなんて俺は知らない
頭を潰す…定石だけどね?
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「勇者様、おかえり、なさい。
心配、してなかった、けど。
無事、良かった。」
真夜中の宿屋に戻ると、玄関脇の椅子でウトウトしていたのだろうか、アミアが俺を見るなりハッとして、駆け寄ってきた。
多分、師弟コンビはもう寝ているのだろう。
「なんだ…先に寝てればよかったのに。お腹減ったから、俺は何か食べてから寝るよ。」
動いたからだろう。もう深夜だというのに、俺の腹の虫が壮大な音を立てる。
「そうだと、思った。だから、宿屋のご主人に、お願いしておいた、よ。お夜食。」
アミアが微笑む。タイミングがマジで神。
「やったぁ!ありがとうな!
…ま、詳細とか、今後のこととかは…明日話すよ!先に寝てて!」
駆け出した俺はすぐに立ち止まり、笑顔で振り向いて、俺の背中を心配そうに見守るアミアに声をかけた。
「うん、わかった。おやすみ。」
多分、アミアはああ見えて、感情移入しやすい、繊細な子なんだろう。
あの子の不安は、俺に向けられた者なのか、それともミレットに対してのものなのか、今はまだ分からない。
とにかく、俺はご主人のご厚意に甘えるとしよう。
「結論から言って…
記憶を読んでも、親玉の居場所は分からなかったな。かなりデカい組織な上、アイツはわりと下っ端で…ボスがどこにいるか、教えてもらえてなかったみたい。
まぁ…他人には言えないような仕事をする立場だったようだ。」
俺たちは、朝ごはんをがっつきながら淡々と会話を始める。五月蝿いのが1人いなくなって、俺の心はとても晴れやかだ。
「ふーん。で、これからどうするんだい?来て早々に、この街には用が無くなっちまったじゃないか。」
シャミィは腕をプラプラと振って見せ、いかにもつまらなそうな顔で言葉を並べる。
そうなのだ。
到着したその日に、この街にいた『神殺しの団』は壊滅させてしまったワケだから。だが。
「それなんだけどさ。どうもおかしいんだよな。」
「何か、ある、の?勇者様。」
俺は腕を組み、天井を仰ぐ。
「なんかさぁ…。それっぽい連中が、今朝すでにこの街に入ってきてるみたいなんだよなぁ。」
その瞬間。
宿屋の外から、まるで隕石でも降ってきたかのような、とてつもない轟音が聞こえてくる。
…まぁ確認しなくても、何が起こってるのか、スキルでわかってるんだけどね。
どうやら俺を殺すために、手段は選ばないつもりのようだ。
隕石、というのはあながち間違ってはいないようで、上空から巨大な火球が次々とこの建物目掛けて降り注いでいるのだ。
「なんか、私これ、慣れて、きた。」
「わかる。ワンパターンすぎじゃない?
すごい必死になってきてるよな。」
宿屋の人たちは大慌てで、テーブルの下に隠れたり、その場に身を伏せたりしているが、俺たちは相変わらず、食後のコーヒーを堪能していた。
勿論火球は、建物全体をバリアで覆って防いでいる。街の人たちに迷惑はかけられないからな。
「記憶読んだ限り、ミレットは援軍呼んでなかったみたいなんだよな。
だから『コイツら誰なんだよ』って話。
神殺しの団なら、いくらなんでも対処が早すぎるかな、って。」
そう言って、俺は広範囲にバリアを張ったままおもむろに立ち上がり、ゆっくりとドアを開け、宿屋の外へと歩を進める。
20人ほどだろうか。スキルで敵の魔導士たちの位置は把握済みだ。
そして俺はその位置座標、ピンポイントに、致命傷にはならず、感電する程度の威力の魔法を発生させた。
「ぐあァッ?!」
あちこちから悲鳴が上がり、ドサ、と倒れる音がした。
俺は港町の美しい建築の壁や屋上に飛び移り、そして素早く伝い、近づき、敵の姿を確認する。
すると、いかにも魔導士らしい、アミアが着ているような黒いローブに身を包み、仮面を着用し顔を隠した男がノビているのだった。
「変なのが倒れてたら、街の人たち驚くよな。一ヶ所に集めとくか。」
スキル「神通念動力」で、20人ほどの身体を一気に持ち上げ、俺が立つ大きな建物の屋上に、宙を渡るように一斉に集める。
みんな同じな服装だ。制服だろうか。
「顔なんてどーせ知らないから、とっとと記憶だけ読ませてもらうかね。」
手のひらを、そっと頭にかざす。
「…ふーん…。まぁ、一応他のヤツらのも覗いておくか。」
垣間見える、他人の思考と記憶。
コイツらは、やはり神殺しの団で間違いない。1度に20人、しかも魔導士だけ、と考えれば、かなり大きな勢力であることがうかがえる。
それよりも、気になるのは…。
「精神干渉…。操られてるヤツと、自分の意思で動いてるヤツがいるな…。」
わかったことがある。
コイツらは、組織のボスの何かしらの「魔法」によって、指示を受けてここに現れたこと。
そしてその正体は、ごく僅かな団員にしか知られておらず、謎に包まれていること。
「やっぱり…頭を潰すのが手っ取り早いよな。さて、どうするか。」
心配、してなかった、けど。
無事、良かった。」
真夜中の宿屋に戻ると、玄関脇の椅子でウトウトしていたのだろうか、アミアが俺を見るなりハッとして、駆け寄ってきた。
多分、師弟コンビはもう寝ているのだろう。
「なんだ…先に寝てればよかったのに。お腹減ったから、俺は何か食べてから寝るよ。」
動いたからだろう。もう深夜だというのに、俺の腹の虫が壮大な音を立てる。
「そうだと、思った。だから、宿屋のご主人に、お願いしておいた、よ。お夜食。」
アミアが微笑む。タイミングがマジで神。
「やったぁ!ありがとうな!
…ま、詳細とか、今後のこととかは…明日話すよ!先に寝てて!」
駆け出した俺はすぐに立ち止まり、笑顔で振り向いて、俺の背中を心配そうに見守るアミアに声をかけた。
「うん、わかった。おやすみ。」
多分、アミアはああ見えて、感情移入しやすい、繊細な子なんだろう。
あの子の不安は、俺に向けられた者なのか、それともミレットに対してのものなのか、今はまだ分からない。
とにかく、俺はご主人のご厚意に甘えるとしよう。
「結論から言って…
記憶を読んでも、親玉の居場所は分からなかったな。かなりデカい組織な上、アイツはわりと下っ端で…ボスがどこにいるか、教えてもらえてなかったみたい。
まぁ…他人には言えないような仕事をする立場だったようだ。」
俺たちは、朝ごはんをがっつきながら淡々と会話を始める。五月蝿いのが1人いなくなって、俺の心はとても晴れやかだ。
「ふーん。で、これからどうするんだい?来て早々に、この街には用が無くなっちまったじゃないか。」
シャミィは腕をプラプラと振って見せ、いかにもつまらなそうな顔で言葉を並べる。
そうなのだ。
到着したその日に、この街にいた『神殺しの団』は壊滅させてしまったワケだから。だが。
「それなんだけどさ。どうもおかしいんだよな。」
「何か、ある、の?勇者様。」
俺は腕を組み、天井を仰ぐ。
「なんかさぁ…。それっぽい連中が、今朝すでにこの街に入ってきてるみたいなんだよなぁ。」
その瞬間。
宿屋の外から、まるで隕石でも降ってきたかのような、とてつもない轟音が聞こえてくる。
…まぁ確認しなくても、何が起こってるのか、スキルでわかってるんだけどね。
どうやら俺を殺すために、手段は選ばないつもりのようだ。
隕石、というのはあながち間違ってはいないようで、上空から巨大な火球が次々とこの建物目掛けて降り注いでいるのだ。
「なんか、私これ、慣れて、きた。」
「わかる。ワンパターンすぎじゃない?
すごい必死になってきてるよな。」
宿屋の人たちは大慌てで、テーブルの下に隠れたり、その場に身を伏せたりしているが、俺たちは相変わらず、食後のコーヒーを堪能していた。
勿論火球は、建物全体をバリアで覆って防いでいる。街の人たちに迷惑はかけられないからな。
「記憶読んだ限り、ミレットは援軍呼んでなかったみたいなんだよな。
だから『コイツら誰なんだよ』って話。
神殺しの団なら、いくらなんでも対処が早すぎるかな、って。」
そう言って、俺は広範囲にバリアを張ったままおもむろに立ち上がり、ゆっくりとドアを開け、宿屋の外へと歩を進める。
20人ほどだろうか。スキルで敵の魔導士たちの位置は把握済みだ。
そして俺はその位置座標、ピンポイントに、致命傷にはならず、感電する程度の威力の魔法を発生させた。
「ぐあァッ?!」
あちこちから悲鳴が上がり、ドサ、と倒れる音がした。
俺は港町の美しい建築の壁や屋上に飛び移り、そして素早く伝い、近づき、敵の姿を確認する。
すると、いかにも魔導士らしい、アミアが着ているような黒いローブに身を包み、仮面を着用し顔を隠した男がノビているのだった。
「変なのが倒れてたら、街の人たち驚くよな。一ヶ所に集めとくか。」
スキル「神通念動力」で、20人ほどの身体を一気に持ち上げ、俺が立つ大きな建物の屋上に、宙を渡るように一斉に集める。
みんな同じな服装だ。制服だろうか。
「顔なんてどーせ知らないから、とっとと記憶だけ読ませてもらうかね。」
手のひらを、そっと頭にかざす。
「…ふーん…。まぁ、一応他のヤツらのも覗いておくか。」
垣間見える、他人の思考と記憶。
コイツらは、やはり神殺しの団で間違いない。1度に20人、しかも魔導士だけ、と考えれば、かなり大きな勢力であることがうかがえる。
それよりも、気になるのは…。
「精神干渉…。操られてるヤツと、自分の意思で動いてるヤツがいるな…。」
わかったことがある。
コイツらは、組織のボスの何かしらの「魔法」によって、指示を受けてここに現れたこと。
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