疾風迅雷アルティランダー

エルマー・ボストン

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第一話 未知との大遭遇

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瓦礫と鉄くずの山が出来上がり、辺りにはもうもうと土煙が巻き起こる。
総司はアルティランダーの姿勢を立て直し、恐る恐るコックピットのハッチを開ける。

「チキショー、もうちょっとで宇宙人、直接ぶっ飛ばせたのになぁ。こんな終わり方無いだろ、ったく。」

総司はおもむろに操縦席を車椅子モードに変形させ、コックピットのハッチを開く。
そして、よりごちゃごちゃになった渋谷の街に降下し、ペッ、と口の中に溜まった血を吹き出した。

「無事か、総司!お前、やっぱりスゴいわ!俺が見込んだだけの男だよ!」

士郎からの通信だ。

「やったね兄ちゃん!日本を救ったヒーローだ!」

鉄矢が大はしゃぎで声を上げている。

「良かった、総司さん・・・!早く帰ってきてね。帰るまでがヒーローなんだから。」

百合子が、泣きながら謎の理論を展開している。

「ああ、みんなありがとう!すぐに帰・・・ん?!」

「何だ?どうした、総司?!」

歓喜に湧く面々の声に安堵しつつ、総司の眼は、路地裏で震える人間の姿を捉えた。

「逃げ遅れた人だ!おっちゃん、住所伝えるから救急車を・・・」

「あっ兄ちゃん、車椅子の緊急通報ボタンを押して!その場所がGPSですぐに分かるんだ!」

鉄矢が気を利かせて叫ぶ。

「わぁ便利!でも!テプラはダサいんだよ!
・・・とにかく、あの人を助けねぇと!」

大慌てで、車椅子を走らせる総司。
うずくまる人影に近付くと、それは俯いて半ベソをかき、ぬいぐるみのようなものを抱きしめる女の子・・・

ジャネットであった。

煙幕を張り離脱した彼女は、バンキッシュを小型化し、人目に付かなそうなその場所まで逃げ、隠れていたのだった。だが、兄と母船が思い切り吹き飛び、パニック状態であった。
サラリと書かれたが、バンキッシュはある種の機械生命体である。宇宙の神秘というやつだ。

「君、大丈夫か?!今救急車呼んだから、もう安心だぞ!」

その声に驚いたジャネットは、ビクッ、と身体を跳ねさせ、総司の顔を見上げた。
見知らぬ土地で見知らぬ男に、迷子のときに声を掛けられる。これほど不安なことはないであろう。

「(こ、この声、さっきの!)」

恐怖に駆られるジャネットは、すぐに目の前の男がアルティランダーのパイロットである事実に気付いた。しかし、そんな彼女をよそに、総司は、ついさっきまでロボットで殴りあっていた相手の肩にそっと手を置いた。
全く気づいていないようだ。

「怪我してないか?!とにかく落ち着くんだ・・・心配いらない。・・・君は、海外の人かい?随分変わった服装をしているんだな。面白いぬいぐるみも持っているし。」

このぬいぐるみこそ、スゴい技術で小型化したバンキッシュであることは、総司にも分からなかった。
総司は怯える異国の少女の気を紛らわせようと、通じるかどうかもわからない言葉と可能な限りの笑顔で、必死に語りかける。
そしてジャネットは、戦っていた地球人の思わぬ優しさに、そして、自らの服装の露出の多さを指摘されたことに対し、カッと頬を赤らめ、叫んだ。

「んなっ、へ、へいきだし!ありがと!じゃーね!」

一気に恥ずかしくなったジャネットは、総司の手を払いのけて立ち上がり、一目散に駆け出した。脱兎の如く、とはまさにこのことである。

「・・・げ、元気そうで何より。つーか、日本語上手いなー。」

宇宙人の翻訳機能はスゴいのだ。
総司は、目付きの悪い少女の後ろ姿を、呆然と見送った。


「山田。宇宙人と戦っていた謎のロボット、どうしたの。」

夕焼けの光の中に立つスタードレッドに、社長から通信が入る。

「お嬢様、ですから南とおよ」

「あーもううるっさいわね!話を逸らすんじゃないわよ!」

「・・・申し訳ございません。飛び去った宇宙船の捜索をしている間に、見失いました。」

「はぁ。本当にアンタ阿保ね。もういいわ、とにかく帰ってらっしゃい。謎の機体・・・速やかに対処しなければ。どこが開発したのか分からないけれど、あの技術力…おかしいもの。」

自分で種を蒔いておきながらそれを意に介さない秘書に呆れつつ、ため息混じりに呟いた。マスコミも騒ぐだろう。スタークラウン社にとって、明るい未来ばかりではいかなくなってしまった。



「たっだいまー!」

ガラガラと爽快な音を立て、車椅子のまま古い家屋の玄関の戸を開けると、すぐそこにまで、食欲をそそるダシの良い香りが漂ってきていた。とっぷりと日が暮れ、世間は既に夕飯時である。

「待ってたぞ総司ィ!いやぁー想像以上だったわ!」

「お帰り総司兄ちゃん!すごかったなぁ、僕明日学校で自慢できるよ!健ちゃんにはもう話したんだよ!すっごい驚いてた!」

「・・・お帰りなさい。本当に、無事で良かったわ。とにかく手を洗って。お腹空いたでしょ?みんな待ってたの。早くご飯にしましょう?」

坂田家の面々は、思い思いの方法で、全力で総司を出迎えた。共通しているのは、皆満面の笑みであることくらいだ。
バリアフリーでない坂田家の中を、疲れ切った総司は鉄製車椅子から降り、3人の力を借りて、ゆっくりと進む。

「やー悪いな、俺までご馳走になっちゃってさ!遠慮なく頂くけど。」

手を洗い、うがいを済ませた総司は、ヨダレを垂らしながら、居間のテーブルの横に腰を下ろした。その上には、質素ながら落ち着く香りを放つ料理の数々が並ぶ。

「総司よ、お前のお陰で俺の夢、かなり前進したぜ。本当にありがとうな。」

総司の向かいに腰を下ろした士郎が、感慨深そうに、そして心の底から感謝を述べた。

「何言ってんだよ、そりゃ俺だって同じさ。おっちゃんのおかげで、俺はまた夢を見られる。あっ、お互い様、ってやつかもな?!ハハハハハハ!」

「ちげぇねぇ!ガッハハハハ!」

2人の男は、仲良く豪快に大笑いをキメる。

「でもまさか、総司兄ちゃんに割とまともなネーミングセンスがあるとは思ってなかったよ!僕カッコよくて好きだな、アルティランダー!」

「そうね、良い名前よね。総司さんハイご飯。たくさん作ったから、お腹いっぱい食べてくださいね。」

兄妹も、仲良く総司を褒め称える。

「ありがと、うまそー!俺も百合ちゃんの肉じゃが好きなんだよね!今時肉じゃが食べる機会なんてなかなか無えから余計に?!」

「お前も幸せモンだな総司。」

「や、やだ総司さんたら。いいお嫁さんになるだなんて・・・。ちょ、ちょっとおじいちゃん変なこと言わないで!」

「姉ちゃんすごい暴走してる落ち着いて!早く食べようよ、僕お腹空いて死にそう!」

賑やかな団欒のひと時は、普段と変わらない日常の一コマの様に見えた。しかし、この日は4人にとって、かけがえのない日であることを、彼らの内の一人として知る由もなかった。

「じゃ、いっただっきまぁーす!」

地球に、大きな危機が迫っている。しかし人々は、今日も明るく、前向きだ。
こうして、人々の夢は加速していくのであった。



「ふふ。彼が特異点ですか。まさか、『彼女』の思いがこれほどとは、恐れ入りました。
もう少し…泳がせておくとしますかねぇ。」
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