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第一章 はじまりの王都編
第三話 残酷な異世界
しおりを挟むとりあえず俺は1500ゴールドの入った袋を握りしめて、この道の先にある王都へと向かっているところだ。
そして、俺は歩きながらこれからのことについて考えていた。
――ひとまずは、この1500ゴールドで装備を整える事からだな。
冒険するんだからやっぱり剣や防具はもちろん、回復アイテムなんかも必要だろう。
流石にこんなくたびれたスーツでは駄目だ。いざモンスターとの戦闘になった時に、この防御力皆無のスーツじゃ絶対死ぬ。
確信を持って言える。間違いない。
俺のゲーマーとしての勘と、生存本能がしきりにそう訴えている……ような気がする。
『間違いない』とか言った数秒後に『ような気がする』とかブレッブレもいいとこだが、あまり深く考えてはならない。
まぁ、どうせこのスーツの扱いは、RPGによく出てくる最も初期の防具『布の服』と同等くらいだろうし、いい感じの装備が手に入ったらさっさと着替えよう。
そして武器だ。
正直、こっちの方が大事だろう。
いくら防御力を高くしたところで、持っている武器がそこらへんの木の棒ぐらいのクソ雑魚攻撃力しか持っていなかったら、モンスターを倒す事が極めて難しくなる。下手したら先にこっちがやられてしまうだろう。
これはゲームに関しても同じ事が言えるかもしれない。
RPGゲームをプレイした事がある人に、攻撃力と防御力のどちらに重点を置くかを聞けば、大抵の人はちょっと迷った後に攻撃力と答えるのではないだろうか。かく言う俺もそうだ。
っていうか、攻撃より防御に力を入れる人を今まで見た事がないんだけど。ただ単に俺の周りにいなかっただけなのか?
話が逸れた。
それでだ。
色々考えた結果、取り敢えず最初の武器は剣にしようと決めた。
近接武器は慣れるまでめちゃめちゃ危ないだろうが、弓や銃のような遠距離武器だと弓矢や銃弾に金が掛かって仕方がない。
ある程度お金を稼いで、経済的に余裕が出てきたら遠距離武器にしてもいいだろう。
そして、ここまで装備を整えたらこの近くの雑魚モンスターを狩りまくって、コツコツレベル上げと金稼ぎを頑張っていこう。
……と、ここで俺の中に1つの疑問が生まれた。
そういえば、この世界はレベルやステータスとかの概念はあるのか?
今時の異世界ファンタジーと言ったらステータスありきみたいな部分があるから、出ないなんて事はまず有り得ないだろうが。
あ、けど俺ステータスの出し方分かんねぇ。
ありがちなところだと「ステータスオープン!」とか、何とか適当な事言っとけばなんとかなるでしょ。
『思い立ったが吉日』ということわざもあるんだから、早速やってみよう。
すぅぅぅとダイソン並の吸引力で空気を吸い込み、肺を限界まで膨らませる。
そして、カッと眼を見開き吸い込んだ空気を一気に解き放った!
「ステェェェェェタスッッッ!!オォォォォォプゥゥゥゥンッッッッ!!」
バサバサバサ!と近くから鳥の群れが一斉に羽ばたく音が聞こえてきた。
俺が今まで生きてきた中で1番大きな声を出して叫んでやったぞ!
すれ違う人々の冷たい視線を感じながら、いつステータス表示が出るんだろうなとワクワクしながら待っていた。
―――そして、そのまま10分以上が経過した。
………………出ねぇな。
いくら待ってもステータス欄が現れる気配が無い。
もしかして掛け声が「ステータスオープン」じゃなかったのかもしれないなぁ……。いや、イントネーションがおかしかったという可能性もある。
とにかく現時点でステータスを表示する正確な方法を知らないので、この件については一旦保留にする事にしよう。
まぁ、ステータスやレベルの表示なんて物は、後で使えるようになるのがファンタジーの常識だからな。今は城から出た直後だし使えないのも当然だわな。
仲間が出来たら聞いてみるのもありかも知れない。
そうだそうだと、さっきの掛け声とは打って変わって誰にも聞こえないような小さい声で自分自身を励ます。
ともあれ!なんだか冒険らしくなってきたんじゃないか!?
ついさっき城で起こったやり取りなどすっかり忘れて、俺はスキップしながら王都へと向かった。
しばらく進むと、ようやく王都に到着した。
俺の知ってる異世界は、主人公に合わせて知能レベルが極端に低かったり、飲んだり食べたりするだけで英雄扱いされ、気が付いた時には自分のパーティには女の子ばっかりでハーレムが出来上がっている、まさにそこは楽園のような場所。
いざとなれば現代での知識を使って店を開いて大金持ちになったり、国を作ったりして王様になったり、孤児院開いてハーレム作ったりして何とでもなるんでしょ?
……と、いうイメージが俺の中にはあった。
それだけに、王都に到着して辺りを見渡してみた俺のガッカリ感は凄まじいものがあった。
………普通にコンビニあるんだけど。
俺は呆然と聞いたこともない名前のコンビニを見つめて立ち尽くす
ま、まぁ、異世界にコンビニくらいあってもおかしくないよな(震え声)。だって、今の時代のコンビニって全国展開だよ?セブ○イレブ○なんて全国に1万店舗以上あるくらいだから、異世界にもチェーン展開しててもおかしくないよな。
そりゃそうだよと誰にともなく呟きながら、店の前で仁王立ちしてブンブンと首を縦に振る不審者一名。
だが、まだだ。
まだ希望が完全に消えたわけじゃない。
今回たまたまコンビニを見つけたが、もしかしたらこの世界に唯一存在する『勇者専用コンビニ 異世界支店』かもしれないぞ。
大丈夫、大丈夫と呟きながら、俺は心の中で『文明レベルが高くありませんように』と僅かな希望に縋る様に祈り続けた。
そうして王都の様子をじっくり見て回った。
で、その結果はどうだったのか。
簡潔に言おう。
元の世界に帰りたくなった。
町を見て回った俺の目に入ってきた物は、全て俺の想像する理想の異世界像からかけ離れていたからだ。
何で家電量販店があるの?
何でショッピングセンターがあるの?
何で現代日本でも見た事あるような店があちこちにあるの?
何で道路が舗装されてんの?
なんでちょっと歩いただけなのに、さっき見たコンビニとは違う名前のコンビニが4つもあるの?ここはコンビニ激戦区ですか?
そもそも元いた世界と、この異世界の何が違うのか分からない。もしかして、あれか?実は俺、異世界に召喚されてないってパターンか?
いや、流石にそれはない。
俺は、後ろを振り向きさっき出てきた城を見やる。
………うん、ちゃんとあるな。
え、じゃあやっぱりここは異世界か。
あー、そっかそっか……。
混乱する俺の頭の中を、いくつもの疑問符がグルグルと飛び回る。
いつまで悩んでいても仕方がないので、俺はおぼつかない足取りで、冒険に必要な物は全て揃っているであろうショッピングセンターへと向かうのだった。
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